大学での学びには、どんな種類があるのか?
大学での学びは、高校までのように、「国語」「数学」「家庭科」といった教科に分かれて学習するわけではありません。
自ら決めたテーマについて、深く研究するということが、高校までの学びとは大きく異なる点です。
進学した大学で、自分が何について学びたいのか、どんな研究をしたいのか、といった研究分野を選ばなければなりません。
進路決定には、志望大学とともに、志望の「学部」を決める必要があります。
そこでここでは、大学の学部についての紹介をしようと思います。
大学の学部には「人文科学系統」「社会科学系統」「自然科学系統」と、大きく分けて3つの系統があります。
- 「人文科学系統」
文学・語学・哲学・心理学・歴史学・考古学・文化人類学などが該当します。主に、文学部の学科として専門分野ごとに研究がされています。 - 「社会科学系統」
法学・経済学・経営学・政治学・商学・社会学・国際関係学などが該当します。これらの分野は、大学の中で、文系の主要な学部として据えられています。 - 「自然科学系統」
理学・工学・農学・医学・農学・宇宙工学などが該当します。これらの学問の中では、自然事象を扱い、その法則性を明らかにしようとする学問です。これらの分野は、大学の中では理系の学部として据えられています。
この3系統の他にも、文系にも理系にも属さない「文理融合型」の学部も近年増えています。
具体的な例をあげると、日本大学の文理学部、慶應義塾大学の総合政策学部などがあります。
こうした「文理融合型」の学部では、人文科学と自然科学が融合したタイプの学問を学ぶことになるため、入試科目も従来の文系理系の枠にとらわれない教科選択が可能です。
英語と数学から1科目選択ができるなど、文系・理系の縛りなく受験することが出来るようになっている点がユニークです。
そのほかにも、スポーツ系の学部や芸術系の学部なども文系理系を問わず受験できますが実際に受験するためには、スポーツや芸術などの、専門的に特別な受験対策をする必要があることが多いです。
文系・理系学部の受験科目について 高校でどんな準備をするべき?
大学の文系・理系学部どちらも、実際に大学で学びを深めるときに必要な知識や学力を測るため、入試で必ず受験しなければならない科目があります。
受験に必要な教科を学ぶためには、高校の時点で、将来文系・理系どちらの道に進みたいのかを、あらかじめ決定しておかなければなりません。
というのも、それによって高校での履修科目が変わってくるからです。
多くの高校で、文系クラスでは、国語や社会を中心に学び、理系クラスでは数学や理科を中心に授業を選択します。
ちなみに、英語については、文系・理系問わず入試教科に含まれることがほとんどなので、どちらのクラスでも同じように学びます。
また、高校にもよりますが、理系クラスから文系クラスに変わることはできても、文系クラスから理系クラスに変更することはかなり難しいので、もし迷っている人がいたら、とりあえず理系科目の勉強を進めるため、理系クラスを選択することをおすすめします。
あなたは文系悩?理系悩?
そもそも自分にはどんな学びが向いているのだろう、自分には文系・理系どちらの適性があるのだろう、と疑問に思った人は、次のような話がありますので、そちらもぜひ参考にしてみてください。
「文系悩」「理系悩」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
一概にこれだけ人間性を判断することはできませんが、ものごとを複雑に表現することを好む「文系悩タイプ」と、物事がシンプルで規則正しいことを好む「理系悩タイプ」があると言われています。
どちらのタイプなのかを見分けることができる有名な話がありますので、ぜひ考えてみてください。
どのように答えましたか?あまり深く考えずに、直感で答えてみてください。
答えを、30円と答えた人は「文系脳」、130円と答えた人は「理系脳」と言われています。
「文系脳」である場合、「代金は170円だから、300円のうち200円をレジで渡したはずだ。だからお釣りは30円。」と支払いの場面を具体的にイメージして考えます。
「理系悩」の場合は「所持金は300円で代金は170円だから300円-170円=130円がお釣りだ。」とシンプルに考えます。
「文系悩」の人は、具体的なイメージや、表現の多彩さや巧みさを重視する傾向があります。
例えば、小説の中では、冬の夜の寒々とした星空を見て、「悲しみ」という自分の中にある感情と結び付けて表現されることがあります。
この場合、作者は「文系悩」で、心の中にある感情を、なるべくそのまま読者に伝わるよう「悲しみ」と星空を結び付け、あえて回りくどい複雑な表現をするのかもしれません。
対して、「理系悩」の人は、数字や客観的事実、正確さや規則正しさを重視する傾向があります。
同じ星空を眺めた時にも「理系悩」の科学者は、星の動きや規則性について様々な疑問が沸き上がり、それについての法則を突き止めたくなるのかもしれません。
文系・理系主な学部紹介
では、実際に大学の学部にはどのような学部があるのでしょうか。
ここでは文系学部・理系学部に分けてそれぞれ紹介していきます。
文系学部
法学部
法学部はさまざまな法律について学ぶ学部です。
法律の種類は非常に多く、憲法をはじめ、民法、刑法、商法、行政法、労働法と、多岐にわたります。
中学・高校で学んだ「法」について、より深く学びながら研究をする学部です。
法学や政治学に興味があり、それらを学んで将来に活かしたい人や、レポートを書くことよりも試験勉強、特に暗記科目が得意な人に向いています。
将来弁護士や司法書士、公認会計士、税理士、国家公務員や地方上級公務員になりたい人におすすめです。
経済学部
経済学部で学ぶ内容は大きく分けて、「理論経済学」「応用経済学」「思想と歴史」3つに分類されます。
「理論経済学」は、経済活動のモデルを作り、数理的に分析していく学問です。
ミクロ経済学、マクロ経済学などと呼ばれる分野がそれにあたります。
ミクロ経済学では、ものが売買される価格と量、需要と供給によって決まる理論などを学び、小さな視野で経済の動きを見る一方、マクロ経済学は、国民所得や失業率などを対象として、国全体での経済を考え、より大きな視野で経済を見る学問になります。
「応用経済学」は、理論経済学で培った基本的な知識を、より現実の経済に当てはめる学問です。
現実に即した実践的な内容を学びます。
もう一つは、経済学の「思想と歴史」の分野です。
経済史、政治経済学、経済思想などが当てはまり、この分野では他の分野とは異なり、人文科学系統よりの内容を学ぶこともあり、数学をあまり使いません。
経済学や政治学、身近な生活にある社会の動きに興味がある人や、文系の中でも、数学を使う学問なので、数学に対しあまり苦手意識がない人に向いています。
また、将来起業したい人や、経営に興味がある人、金融機関に勤めたい人におすすめです。
文学・人文学部
人文学部は大きく分けて「言語系」、「思想系」、「歴史系」、「行動系」の4つの分野があり、扱う分野の幅が非常に広い学部です。
主に文学を扱う「言語系」では、日本の古書や他の国の文学に数多く触れる学問です。
文章理解をはかるだけでなく、外国語文学の場合は翻訳を行うなど、様々な文学作品を数多く読み、研究します。
「思想系」は、主に哲学を研究する学問で、授業では哲学・倫理・宗教などを主に学びます。
哲学や倫理について深く考えるので、かなりの思考力が必要な学問です。
「歴史系」は、過去に起こった物事を取り上げ、残された物や建造物、文章などから研究する学問で、歴史学や考古学、文化人類学がそれに当てはまります。
一次資料を正確に読み取り、事実かどうかを検証していくという、非常に根気のいる学問です。
「行動系」は、人間の認知・行動を学び、人がどのような状況でどのような行動をするのかを研究する学問で、心理学や社会学がそれに当てはまります。
心理学は人を用いた実験を中心とした授業が多いです。
歴史や哲学、心理学に興味がある人や、数多くの文献を読み込んで研究することがメインになるので、本を読むことが好きな人、資料研究を根気よく続ける自信がある人におすすめです。
教育学部
教育学部には、大きく分けて「教員養成系」と「教育学系」の2つの分野があります。
「教員養成系」は小・中学校の教員を要請することが主な目的なのに対し、「教育学系」は、教育やその関連領域に関する基礎的な教育研究が主な目的です。
教育学や日本の教育制度に興味がある人や、子どもが好きで、将来は教師や教育機関に携わりたい人におすすめです。
外国語学部
外国語学部では、実用的な外国語能力を身につけ、対象の言語を巧みに使いこなすことができることや、その言語が使用されている国や地域に関する文化など、さまざまな研究を進めます。
文法や語法をはじめ、言語史、語彙論(ごいろん)、語源研究、方言研究といった言語学とともに、その国の社会や経済のあり方といった、社会科学の領域へも踏み込んで研究します。
興味を持っている国があり、その国の言葉を話せるようになりたい、という希望を持つ人や、異文化交流や国際社会、グローバル化に興味がある人におすすめです。
また、習得した言語運用能力を活かし、商社や外資系企業、航空会社などのグローバル企業や、英語教員や国際公務員、通訳になりたい人におすすめです。
理系学部
医学部
医学部では、大きく分けて、基礎医学、臨床医学、社会医学を学びます。
医師の養成をするために、病気の治療と健康の維持・増進を目的とした学問を学びます。
医学部の医学科は、大学6年間学び卒業試験に合格後、毎年2月中旬に行われる医師国家試験を受け、合格すれば医師として働き始めることができます。
医学部に進学して、きちんと大学で勉強と実習を重ね、国家試験に合格すると、必ず医師として働くことが出来るので、職に困らないというのも特徴ですが、そこまでの道のりには、必死の努力が欠かせません。
実直で努力家というのも、医学部に進学する人には重要な素質だと言えます。
医学部には、何といっても病気の治療をしたい、人の役に立ちたいといった志を持ち、医者になりたい、という希望を持つ人におすすめです。
また、授業での人体の解剖に抵抗がないことや、真面目にコツコツ勉強できる熱心さがある人が向いています。
薬学部
薬学部は、薬などを含む化学物質を、人間の健康や病気治療との関わりから研究する学部です。
薬学部の学科には、「薬剤師を育成する6年制」と「薬学研究を行う4年制」があります。
どちらのカリキュラムでも、有機化学や薬科学、分析化学などを研究する「基礎薬学」と、製薬学、医療薬学、衛生薬学などを研究する「応用薬学」の2つに分かれます。
薬学部には、基本的には薬剤師など、人々が「薬」を安全に使用できるような手助けをする職業を志望する人が進学します。
医学部と同様、6年制であれば国家資格を得られるので、将来にわたって就職に役立ちます。
特に、出産や育児のために一度仕事を離れる可能性の高い女性は、薬学部に進学して資格を得ようとする人が多く、人気となっています。
化学が好きで、薬の安全性などを研究したい、という希望がある人や、几帳面で勉強熱心、人とコミュニケーションを取ったり、人に教えることが好きだ、という人に向いている学部です。
歯学部
歯学部では、歯と口全体の健康を守るため、治療や矯正、加工にかかわる医学と医術を学びます。
多くの歯学部・歯学科は、医学部と同様に6年制で、所定の科目を履修後、歯科医師国家試験に合格すると歯科医師になることができます。
卒業後は臨床研修をし、病院歯科や歯科医院に勤務します。
独立し、歯科医院や審美歯科医院を開業する人もいます。
他にも、大学の教育や研究に携わったり、関係省庁・保健所の職員と医療関連企業の研究開発部門で専門スタッフとして活躍する人もいます。
歯科医師になりたいという希望を持つ人には必須の学部です。
また、勉強熱心で、繊細で細かな作業が得意な人、コミュニケーションを取るのが好きな人におすすめです。
農学部
農学部では、生物学を基礎にした、農学を中心とする教育がおこなわれており、非常に幅広い分野の教育・研究がなされています。
例をあげると、農学、園芸学、畜産学、農芸化学、農業工学、農業経済学、国際地域開発学、資源生物科学、応用生命科学などです。
農場や実習林を保有し、実際に現地に赴いて実習をしている大学も数多くあります。
農学部では、農業や、農業をルーツに発展してきた産業や領域についての研究や、品種の改良や害虫対策をはじめとする栽培技術、事業として継続させるための農業経営、行政による支援のあり方を問う農業政策などを通じて、「人と自然が共生するための方法」を研究しています。
近年は、地球規模の環境破壊、途上国を中心とした食糧危機といった深刻な問題が広がるなかで、そのような問題を解決することを中心的な目的とし、それに伴ってバイオテクノロジーなどの先端科学も研究します。
動植物が好きな人や、農業や飼育に興味がある人、実習科目も多いため、体を動かすことが好きな人に向いています。
また、環境問題に興味がある人や、バイオテクノロジーについて深く知りたい、薬品や化粧品の開発・研究をしたい人におすすめの学部です。
理学部
理学部は、数学科、物理学科、化学科、生物学科、地学科などに分かれています。
大学によっては「理工学部」として理学部と工学部がまとめられているところが多くあります。
その場合は、理工学部内で、それぞれの学科に分かれる形が取られています。
近年では、理学部と工学部の研究内容が、相互に重なる分野も出てきており、垣根がなくなりつつあるようです。
理学部では、高校で学習する「数学」「物理」「化学」「生物」「地学」の延長線上で、さらに高度な研究を行います。
それらの研究を深めるためには、豊かな発想力や想像力も必要となってきます。
理学部には、数学、物理、化学、生物、地学といった教科が好きな人、自然や宇宙について実験や研究をしたい人、将来学芸員になりたい人や、研究職に就きたい人、高校で理系科目を教えたい人におすすめです。
工学部
工学部では、住居や家電機器、新素材開発、生命工学など非常に幅広い分野の「モノづくり」に関わる研究をする学部です。
大学の研究では、実験や実習がほとんどになります。
理論を学ぶ学問色が強い理学部に比べて、工学部では、より実践的で実用性の高い技術を身に付けることが目的となります。
卒業後は、さらに高度な研究を続けるため、大学院へと進学する人が他の学部よりも多くいるのが特徴です。
また、実践的な技術を身に付けられるので、機械系・電気系・材料系・情報系・建築・土木系など、各メーカーへの就職が有利なようです。
工学部には、モノづくりが好きで、工学の研究成果を人々のためにどう活かせるのかを常に考えられる人が向いています。
工学部は、理論的に考えることが得意だというだけでなく、長時間研究室で実験や研究を行うことも多いため、集中力や体力に自信がある人に向いています。
また、モノづくりがしたい人、実験や研究に専念したい人、実用的な技術力を身につけたい人、技術を活かせる職に就きたいという人におすすめです。
文理融合学部
近年増えているのが、文系と理系の両方の要素を併せ持つ研究を行う学部です。
「学際系」の学部とも呼ばれ、既存の学部系統にとらわれない、総合的・分野横断的な学問を指します。
一つ例に挙げてみると、環境問題について解決するための研究があります。
その際に、二酸化炭素排出量を国同士で取引するといった、政治的アプローチ、企業に規制をかけるための法学的アプローチ、更には根本的に排出量を減らす車を考える工学的アプローチなどがあり、文系・理系両方の側面から問題解決のためのアプローチを行います。
もう一つは、情報理論やネットワーク理論研究です。
情報理論というと、従来は理系学部での研究がメインでしたが、現代の情報社会では「ネットリテラシー」の必要性が特に問われているため、世の中の人たちがネットワークを正しく使えるようにすることを考えるのは、社会学的な研究の1つと言えます。
ネットワーク自体に関する数学的な研究と、ネットワークを使用することに関する社会学的な研究、両方からのアプローチで情報ネットワークについて考えます。
このように、様々な学問からのアプローチを総合的に判断し、考えていく学問が「文理融合」系の学部です。
興味分野がまだ明確ではない人や、新しいことに興味があり、従来の規則に縛られたくないという人、世の中の事象について幅広い多角的な視野から研究したい人などに、おすすめの学部です。
まとめ
以上、大学の主な学部について簡単にまとめてご紹介しました。
自分が大学で学びたいこと、将来就きたい仕事などと照らし合わせて、後悔のないように大学の学部を選び、ぜひ受験に挑んでください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。