課題解決型学習【PBL】とは?他の学習法との違いや実施する学校をご紹介

課題解決型学習【PBL】とは?

私たちが毎日のように目にするテレビやインターネットのニュースでは、国内外のさまざまな時事問題が取り扱われています。

多岐にわたる課題をいったいどのように解決していけばよいのでしょうか?

課題を解決するための学習法である「課題解決型学習」について解説します。

世界中に蔓延るさまざまな課題

現代社会における課題のなかには”一筋縄”ではいかないもの、すなわち解決が技術的に困難な課題や、利害が絡み合った深刻な課題、一朝一夕では到底解決できない長期的視野をもって取り組むべき課題などが多く存在します。

今現在であれば、ウクライナとロシアの長引く戦争や、台湾有事、新型コロナウイルス感染拡大にまつわる医療や社会経済の課題が典型例ではないでしょうか。

SDGs視野を転じると、近年大きく騒がれるようになった地球環境の問題、いわゆる「持続可能な開発目標(SDGs)」もそうした課題群のひとつです。

気候変動の原因とされる温室効果ガス排出による地球温暖化、海洋のプラスチック汚染など、地球規模の環境問題は一刻の猶予も許されない、待ったなしの課題が山積みです。

火力や原子力の利用からグリーンエネルギーへの移行や、従来のプラスチックや電池に代わる新たな素材など、新たなテクノロジー開発やテクノロジーを支える政治的調停が期待されています。

いずれの課題も放っておけば、私たちがいま生きる現代だけでなく、数十年後の未来の生活や、子どもや孫の世代にまで確実に続く将来への禍根となります。

また、食糧や資源の問題を本気で解決するには地球にとどまらず、月や火星など他の惑星に飛び立ち、人類にとって未知の世界である宇宙開発をすべきでしょう。

ここにも多大なる困難な課題が待ち受けています。

その他、政治・経済・国際・法律・科学・環境・教育・文化など、解決すべき課題をもつ分野は枚挙に暇がなく、増え続ける世界人口とともに課題も増加する一方です。

こうした千差万別の課題に柔軟に対応する力を育む新たな取組みのひとつが「課題解決型学習」です。

課題解決型学習とは?他の学習法との違い

チェック課題解決型学習(PBL)は”Project Based Learning”の略称です。

特定のプロジェクトを通して、自ら問題を発見して解決する能力を養うための学習法です。

イメージがつきにくいかもしれませんが、課題解決型学習の対極にあるのは、教室で教師の話すことをただ一方的にひたすら聞く授業のような受動的な学習です。

課題解決型学習の対義語には「科目進行型学習(SBL、Subject Based Learning)」があります。

また、課題解決型学習のイメージに近い言葉として、「アクティブラーニング」を想起する方もいるかもしれません。

主体的に学びを広げる「アクティブラーニング」と、受動的な学習である「パッシブラーニング」という区分けでは、課題解決型学習は前者に含まれます。

言い換えれば、アクティブラーニングの中でプロジェクトに従って行い、問題解決を目的とするタイプのものが課題解決型学習と呼ばれます。

従来のパッシブラーニング型の学習では「正解や正答が予め定められており、それを導くための解法を求める」ことに重点が置かれていました。

それに対し、アクティブラーニング型の学習では「正解や正答、場合によっては解法すら未知の問題・課題に対し、問題解決を導くための解法を見出す」ことを目指します。

課題解決型学習では、とりわけひとつのプロジェクトを設定し、多人数が協力し合って一つのゴールを達成することを目指します。

プロジェクトの正解や正答となるのは、予め設定されていたゴールの場合もあれば、進行状況によってゴール設定を変える場合もあります。

このように課題解決型学習は、いかなる課題が発生しても対処できる柔軟な発想や解決法を養います。

どうして課題解決型学習なのか?~ラーニングピラミッド~

では、なぜ課題解決型学習が”より良い学習法”とされるのでしょうか?

従来のやり方に沿った「知識の積み上げ」によって、課題を解決することも不可能ではありません。

ひたすら授業を受けたり、教科書の内容を丸暗記して内容を理解することと、どのように違うのでしょうか?

じつは従来の学習法と比べると、課題解決型学習は柔軟性が高いだけでなく、”効率的”と言われています。

ピラミッドこのことを視覚的に理解するには「ラーニングピラミッド」という図解が適しています。

ラーニングピラミッドは課題解決型学習に関係が深いため、以下に説明しましょう。

ラーニングピラミッドは学習の効率を「学習定着率」とし、いろいろな方法論の学習定着率を高さ順に図示したものです。

上に行くほど理解度が浅くなり、下に行くほど理解度が深まることに注意してください。

このピラミッドの頂点にあるのは、授業などの<講義>で、その学習定着率は5%程度とされます。

仮に60分の授業を聞いていたとすると、理解できるのは20分の1の「3分程度」ということです。

がっかりするかもしれませんが、ノートやメモをとらず、復習やアウトプットをしないとそんなものかもしれません。

その下にある層は<読書>です。

学習定着率は10%程度となっており、もし200ページの本を読んだとすると、しっかり記憶に残っているのは20ページくらいということになります。

本の難易度にもよるでしょうが、なんとなく実感に合っていますね。

本を読むよりも、効率の良い学習法は?

さらに下の層にあるのは<視聴覚>です。

視聴覚とはテレビ番組や動画などを視聴することにあたり、学習定着率は20%程度です。

1時間の教養番組を観たとすると、だいたい20分くらいの内容は覚えているのではないでしょうか?

本を読むよりは眠くならず、わかりやすいことが多いでしょう。

その下の層にあるのは<デモンストレーション>で、学習定着率は30%程度です。

「実演」をみることに相当し、理科の授業で先生の実験をみることや、工場見学に行くことなどが含まれます。

画面でただ観るのと違い、実演者に質問したり会話できるため、実際の手順を見る方が印象に残るのは間違いありません。

その下の層(下から3番目)にあるのは<グループ討論>で、学習定着率は50%程度です。

討論ではグループ内の他のメンバーと、内容の是非について議論を交わします。

討論を行うためには前提知識をもっているだけでなく、瞬発的に論理を組み立てて自分の意見を主張する必要があります。

課題解決型学習でも必要となるグループ討論のプロセスですが、ここまできてようやく内容全体の半分くらいを理解できるというわけです。

その下の層(下から2番目)にあるのは<自ら体験する>で、学習定着率は75%程度です。

自然現象であれ、実験であれ、プログラミングであれ、身につけるためには「自分でやってみる」ことが真の理解に欠かせません。

行動すること、とにかくやってみることの大切さがここに表れています。

最強の学習法とは?~ラーニングピラミッドの最下層~

では、ラーニングピラミッドの最下層にある”最強の学習法”とは、どんな方法なのでしょうか?

最下層にあるのは、なんと<他の人に教える>で、学習定着率はなんと90%程度です!

体験することが最良の学習法だと思っていた方には、少し意外だったかもしれません。

じつは他の人に教えることの中には、「自分で体験する」ことが含まれています。

何であれ、人にわかりやすく伝えるためには、まず自分でやってみないと始まらないからです。

ただし、限られた体験だけでは深いところまで理解が及びません。

理解が及ばない部分に関しては、他の方法を尽くして知識を補う必要があります。

そのうえではじめて、第三者に余すところなく伝達することが可能になります。

この<他の人に教える>ことは、いわゆるプレゼンテーションにあたり、課題解決型学習では必須のプロセスになっています。

このように、課題解決型学習には学習定着率が50%を超える<グループ討論><自ら体験する><他の人に教える>のプロセスがすべて含まれているため、効率が極めて高い学習法なのです。

課題解決型学習の強みとは?

輝く地球極端な例ですが「宇宙」を例にとって、課題解決型学習の強みを考えてみましょう。

日本人の中で、”本当の意味”で宇宙について知っている人は未だ数える程しかいません。

知識としての「宇宙」に詳しい人はたくさんいるかもしれませんが、宇宙空間の無重力や、宇宙船から見た地球の景色の息を呑む素晴らしさや感動は、いちど体験してみない限り分かりません。

加えて、宇宙の美しさや荘厳さだけでなく、宇宙空間の孤独や静寂のような、ある意味ではネガティブな側面も含めたリアルな心の動きを味わった人にしかわからないものがあります。

一度でも宇宙に行ったことのある人であれば、そうした手触り感の部分に肉薄した感情を伝えることもできるでしょう。

とはいえ、宇宙空間を構成する物質や、月の大気の組成、火星の含水量などに関する専門知識となると、単に宇宙に行っただけの民間旅行者ではやはり物足りない部分も多々あります。

その点、狭く厳しい関門を突破した正真正銘の宇宙飛行士であれば、宇宙ステーションや宇宙空間で過ごした体験だけでなく、体系的な専門知識を兼ね備えているため、はじめて他人に教えることが可能になります。

課題解決型学習でも机上の知識のみならず、”生きた体験”を重視する点は同じです。

対象プロジェクトに対し、知識だけを大量に調べ尽くした”宇宙マニア”になるのではなく、実際に無重力空間の中で体を動かし、トラブルの解決法を探る能動的な”宇宙飛行士”になる必要があります。

逆に言えば、どのような分野の課題に取り組む際も、”未知の宇宙”に旅立つのと同じような心持ちで取り組む姿勢が大事ということです。

この意味では、課題解決型学習へのシフトは「未知の分野(=宇宙)の問題を解決するために、マニアではなく、解決型人材を量産すること」とも言い換えられます。

そうしてはじめて、自ら問題解決にあたり、第三者(=地球にいる人)に正しく問題の所在を伝え、課題解決を早める人材を増やすことができるでしょう。

課題解決型学習のメリット

課題解決型学習にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

(1)知識が習得しやすい

課題解決型学習は上述の「ラーニングピラミッド」の下層~最下層に位置するため、学習定着率がきわめて高いことがメリットです。

また、高い学習定着率だけでなく、課題に関心をもつことで知識欲が湧くため、学びの好循環にもつながります。

(2)表現力が身につく

課題の解決にあたるには、要点と対処法を整理して、的確に伝達することが不可欠です。

グループ内外でのプレゼンテーションやディスカッションを通して、問題解決に欠かせない表現力を身につけられます。

(3)社会的課題の素養がつく

二つの四つ葉目標が曖昧な机上の教科学習と違い、明確な問題意識と目的をもった個々の課題に取り組むことで、学習の目的や意義を知ることができます。

これらの”生きた知識”は、授業や本の知識の習得だけでは身につけづらいものです。

いま社会で問われている課題は何か、どのような問題解決の手法があるのかなどを課題学習を通して有機的に学ぶことができます。

課題解決型学習のデメリット

万能にみえる課題解決型学習にも、デメリットが存在します。

(1)教科によっては学習効率が下がる

学びは「知識の習得」と「経験を重ねる」ことが両輪となって前に進むものです。

したがって、後者を重視する課題解決型学習は、生徒や状況によっては知識不足に陥るというデメリットがあります。

論語にも「思ひて学ばざれば則ち殆し」という文言があります。

経験を重ねることは大切ですが、だからといって基礎的な知識をおろそかにせず、教師側が経験に関連づけた知識を教示しましょう。

(2)教師側のスキルが求められる

ホワイトボードで説明する女性チューター役となる教師には従来の学習とは違った役割が求められます。

つねに状況を把握し、生徒の学力やタイミングに合わせて、適切なアドバイスやサポートを提示しなくてはなりません。

サポートが足りないと生徒だけでは経験不足で紛糾したり、逆に過度なアドバイスやダメ出しを与えると生徒の自由な発想を妨げたり、やる気を損ねたりしてしまいます。

適度な舵取りのバランスが必要です。

(3)評価が困難

現実的に大きな問題は、評価が難しいことです。

まず立案時に、プロジェクトの適切な達成目標や出口を定めることが容易ではありません。

また、達成目標に対するプロジェクトの進行度を客観的に定義するには、多角的な見方が必要です。

さらに、グループでプロジェクトの遂行を図ることの多いため、個人個人の評価はきわめて困難です。

結局、教師独自の裁量や、生徒同士の多数決といった曖昧な指標に委ねられることになります。

課題解決型学習は”大学型の学び”

ゼミ別の観点で言うと、課題解決型学習は大学のゼミや研究室で行われるサーベイやリサーチの手法に似ています。

一般には、大学卒業後に社会に出ると、個人もしくは不特定多数の他人と協同しながらプロジェクトを進めることになります。

その前段階となる大学では、プロジェクト学習や模擬リサーチなどを行います。

つまり、課題解決型学習はこれまで大学で行っていたような発展的な教育プロセスを前倒しして、小中学校や高等学校で行う試みともいえるでしょう。

これはアクティブラーニングにも同じことがいえます。

文部科学省が定める新しい学習指導要領には「社会的自立と社会参画の力を育む教育」の一環として、「実社会との接点を重視した課題解決型学習プログラムに係る実践研究」とあります。

その内容は「小・中・高等学校において、地域の具体的な課題の解決に取り組んだり、社会を構成する自立した主体となるために必要な知識について理解を深め、社会的な課題について探究したりする」ことです。

大学型の学び”である課題解決型学習が前倒しされたのは、問題解決力を個人個人が身につけることが実社会に強く求められているからといえるでしょう。

課題解決型学習を実施している学校

課題解決型学習はどのように実施されているのでしょうか?

小・中・高等学校の実施事例を以下にご紹介します。

京都市 立命館小学校

課題解決型学習の一環として人気ゲーム「マインクラフト」の教育版を用いた授業を行っています。

6年生のグループは「京都の観光名所を案内しよう」という共通テーマに基づき、京都・宇治の名所である平等院鳳凰堂などの地元の観光名所をマインクラフト内で作成しました。

作成にあたっては、歴史的建造物の調査・訪問・設計・制作の過程が含まれています。

徳島県上板町立高志小学校

地域の産業を学びながら環境などに配慮する「エシカル消費」を通じた地域活性化プロジェクトを実践しています。

規格外野菜など廃棄される作物を学校給食に活用して収穫ロスを減らしたり、ニンジンの皮をむかずにキャベツの芯を利用するなどの工夫を行い、食品ロスを減らす取り組みをしています。

京都府舞鶴市立大浦小学校

課題解決型学習としてSDGsをテーマに「海洋マイクロプラスチック問題」や「持続可能な海洋資源の活用」等について体験的に学んでいます。

この取り組みではアウトプットを重視し、学年ごとに発達段階に応じたスピーチやプレゼンテーションを取り入れることで、自分の考えを伝える力と相手の考えを聞く力を養います。

大阪府箕面市 アサンプション国際中学校高等学校

さまざまな教科を対象に幅広く課題解決型学習に取り組んでいます。

数学の授業を例にとると、シンキングワークシートを用いて授業の補助をしたり、グループごとに分かれてディスカッションをするなど、学びを円滑にするための工夫がこらされています。

兵庫県神戸市 松蔭高校

全国へ広がった「Blue Earth Project」は、地球環境保護の実践や啓発をしている団体です。

課題解決型学習が始まる前から行われていたプロジェクト型のキャリア教育ですが、課題解決型学習の参考となるノウハウが詰まっています。

このように、課題解決型学習は実際に地域や社会を変える取り組みに発展できる可能性を秘めています。

まとめ

制服を着た女子高生課題解決型学習はさまざまなプロジェクトを通して多人数で協力し、実践的な問題解決を図る学習法です。

主体的な学びを育むアクティブラーニングのひとつであり、全国の小・中・高等学校で多種多様な取り組みがすでに始まっています。

課題解決型学習を受動的な科目進行型学習と対比すると、従来の一方向授業や暗記学習は”知識の詰め込み”であると悪い方向に捉えがちです。

一方、「ラーニングピラミッド」の考え方では、学習定着率が高い学習法の混合ともとれます。

この見方に立てば、課題解決型学習はオルタナティブ(代替的)な方法というより、むしろ従来型学習の延長線上にあるレベルの一段高いやり方です。

したがって、一足とびに課題解決型学習を行うことが最良かどうかはケースバイケースです。

スキルのある教員体制を整えたうえで、基礎学力が定着した集団で実施するか、もしくは前提知識を与えてから実施するのが望ましいといえます。

知識と体験のバランスに留意しつつ、課題解決型学習の長所を上手く活用し、子どもたちの問題解決力を養いましょう。

この記事を監修した人

チーム個別指導塾
「大成会」代表:池端 祐次

2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。


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公開日:2022年10月27日
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