母子家庭の教育問題は、離婚率もひとり親率も高い北海道では、より深刻になっています。
教育にはお金がかかるのに、シングルマザーは十分な収入が得にくいからです。
母子家庭にはどのような教育問題が発生しやすく、それをどのように乗り越えたらよいのか考えていきましょう。
教育にはお金がかかる
父子家庭よりも、母子家庭で教育問題が発生しやすいのは、教育にお金がかかるからです。
文部科学省によると、幼稚園から大学まで公立または国立だった場合の学費は、子供1人当たり大体800万円です。
そのうち国公立大学の学費は300万円くらいなので、高卒でも1人500万円が必要になります。
例えば、シングルマザーが年50万円貯金できたとしても、800万円をつくるのに16年、500万円つくるのに10年かかります。
シングルマザーの1年間の給料の支給総額(年収)が300万円の場合、年50万円を貯めるには年250万円で生活をやりくりしなければなりません。
これは「相当大変なこと」となるでしょう。
収入によって子供に与えることができる教育が限定されてしまうので、教育問題になるわけです。
なお、昨日お届けしたコラムでもご紹介しましたが、経済的な面では大学無償化などの手当も有効に活用すると良いでしょう。
他にもシングルマザー(母子家庭)における教育資金の工面は、様々な方法があります。
以下の記事も参考にしてみてください。
まずは母親が「子供の高学歴」を望もう
シングルマザーが「うちは母子家庭だから、子供には高学歴を与えることができない」と思った途端に、教育問題は解決しないまま終了してしまいます。
子供を賢く育てるほど、子供は母親の意を汲むようになります。
優しい子供であれば、母親の雰囲気や何気ない言動から「私が『大学に行きたい』と言うことは非常識」と察してしまいます。
そして、大学に行きたい気持ちを隠して「高校を卒業して早く社会に出たい」と言ったり、「大学で無駄に4年間過ごすより、その4年間でお金を稼ぐ」と言ったりするでしょう。
もし、シングルマザーが自分の子供に少しでも「大学に行ってほしい」と思ったら、お金のことはひとまず置いておき、自分の気持ちだけを子供に伝えましょう。
子供にはそのまま伝えればよいと思います。
「うちは母子家庭だから生活は確かに楽ではないが、お金のことはなんとかなる。だからもし大学に行きたいのなら、そう言ってほしい。お母さんとしては、あなたに大学に行ってほしいと思っている」
そして実際に、大学の学費については「なんとかなる」ことが少なくありません。
子供の成績がよければ、複数の奨学金を獲得できます。
また、銀行には金利が安い学資ローンが数多くあります。
大学を出れば給料のよい会社に入社できる確率が高まるので、学資ローンの返済は母子で返済することもできます。
私立大ではなく国立大に進めば、それだけで学資を節約できます。
大学無償化という仕組みもできました。
また、防衛大学校、防衛医科大学校、海上保安大学校、気象大学校など省庁大学校には、「学費なし、全寮制、給与支給、就職先確保」といった好条件のところもあります。
もちろん大卒の証である「学士号」を取得できます。
シングルマザーが教育問題を乗り越えて子供を大学に進学させるには、まずは何より母親自身が「子供を大学に進学させたい」と強く思うことが大切です。
子供が高学歴を望まない
シングルマザーが子供の高学歴を望んでいるのに、子供自身が「遠慮ではなく、本心で」大学に行きたくないと考えていたら、どうしたらよいでしょうか。
裕福な家庭の子供であっても、大学に行きたくない、高校を出て働きたい、と思うことはあります。
また、大学に行かずに早く社会に出て技術やスキルを身につけ、若くして成功した人もたくさんいます。
そのため高卒就職を否定する必要はありませんが、子供が大卒のメリットと高卒のメリットを知っていて、両者をしっかり比較して高卒就職を希望しているのかどうか、確認したほうがよいでしょう。
多くの子供は、勉強を嫌いになります。
勉強は難しく、面倒で、少しでもサボると簡単に「優劣の劣」が付けられてしまうからです。
教科書の内容を覚えていないだけで劣っているとみなされるのは、とても屈辱的です。
しかし社会に出れば、仕事の出来・不出来で評価されます。
勉強で差がつくより、仕事の内容いかんで待遇の差がつくほうが、「子供の頭」ではフェアに感じることがあります。
また、高校生くらいの子供は物欲が強いので、お金をほしがります。
それも高卒就職の動機になることがあります。
しかしこの考え方は、短絡的かつ視野が狭い、といわざるを得ません。
どれほど勉強がつらくても、学問を続けることによってしか世の中の真理は見えてきません。
また日本は学歴社会なので、大卒のほうが仕事も生活もしやすいようにデザインされています。
それは理不尽でもありますが、母親は子供に、それが厳然たる事実であることを教えてあげたほうがよいでしょう。
残念ながら「低学歴差別」と「高学歴優遇」は存在します。
そしてお金も、高卒者より大卒者のほうが、長い目でみると多く得ることができます。
さらに、高卒者より大卒者のほうが、自分が望む仕事に就きやすくなります。
もしこのような説明をしても、子供がそれでも高校を出て働きたいと訴え、なおかつ、自分の夢を、いろいろと調査してうえで語ったら、高卒就職を許可してあげてもよいでしょう。
しかしもし子供が、明確な答えを持っていなかったら、「大学に行ってそれを探せばいいのではないか」と助言してあげてはいかがでしょうか。
東京に行きたいと言っている
北海道内のシングルマザーの子供が、東京の大学に行きたいと言ったら、どうしたらよいでしょうか。
その答えは、2つあります。
- 東京に行かせてあげる
- 道内にもよい大学はたくさんある、と道内大学をすすめる
東京の大学に行かせてあげる選択肢のデメリットは1つしかありません。
それはお金が余計にかかることです。
しかしこの唯一のデメリットは小さくありません。
自宅から国立大学に通えば、学費は4年間で300万円くらいで済みます。
しかし道内の子供を東京の私立大に通わせると、800万円くらいかかることもあります。
東京の大学に通うことには「東京を知ることができる」「独り暮らしを体験させることができる」といったメリットがありますが、母子家庭で500万円(=800万円-300万円)余計にお金をつくることの大変さを考えると、大学時代に無理して東京に出なくてもよいのではないか、という答えにも合理性があります。
もし母親が、さらに500万円の学資をつくることに苦労を感じるのであれば、ぜひ子供に「道内にもよい大学はたくさんある」と道内大学をすすめてみてください。
特に国公立大がおすすめです。
北大、札幌医大、旭川医大、小樽商科大、帯広畜産大、室蘭工大、北見工大など、道内には魅力的な国公立大がたくさんあります。
しかもどの国公立大の学生も、企業から期待されています。
道内の国公立大を出ても、東京で就職できるチャンスはあります。
子供が勉強しない
母子家庭の場合、子供を監視する目や見守る目が、父母家庭より少なくなってしまいます。
子供は本能的に「勉強したくない」「遊びたい」と思ってしまうので、監視の目や見守りの目が少なくなってしまうと、勉強せずに遊んでしまいます。
また、母子家庭の男の子供は、母親を甘くみることがあります。
そして母子家庭の女の子供は、母親を敵視することがあります。
シングルマザーが「勉強しなさい」と言えば言うほど、勉強から遠ざかろうとするかもしれません。
ときに叱ってでも、子供に勉強させましょう。
そして叱るだけでなく、学問を続ける意義と、勉強をして学力を上げることの「実生活上のメリット」もしっかり教えてあげましょう。
さらに、勉強をしないことによる「実生活上のデメリット」もたっぷり教えてあげてください。
母親の指示にしたがわせるには、母親は自分の背中を子供にみせたほうがよいでしょう。
「指示にしたがわせる」という言葉に抵抗がある方は、「母親が理想を考える方向性に関心を持たせる」と表現してもよいでしょう。
いずれにしても母子家庭では、子供は母親の生きざまに大きな影響を受けるので、母親の生き方は教育問題を大きく左右します。
母の背中を見せる
母子家庭の場合、子供が多少反抗しても、シングルマザーをリーダーとする「チーム」を結成しやすくなります。
家族の結束力が強まるのです。
夫と死別しても離婚しても、シングルマザーは「ひとり親」というありがたくないレッテルが貼られてしまいます。
そのためシングルマザーは常に、強く生きていかなければならない、と緊張した気持ちを持っています。
そして母子家庭の子供は、自分の家は普通の家庭とはかなり違う、という意識を持ち続けるでしょう。
母子家庭の子供であることは100%自分のせいではないのに、劣等感を味わわなければなりません。
このように母子家庭の母親と子供は、心理的に世間から隔離されているという意識が抜けないので、結束が強くなります。
それが「チーム」という意味です。
母子家庭の子供は、唯一自分を守ってくれる母親を、絶対視する傾向があります。
しかしその強い気持ちの反動として、母親が少しでも油断してしまうと、その子供は大きく落胆してしまうかもしれません。
期待が大きいために、母親の小さなミスや小さな失敗に傷ついてしまうのです。
それなのにシングルマザーには頼れる大人が家庭内にいないことから、ついミスや失敗をしてしまうことがあります。
結束力が強いチームほど、崩壊したときのダメージは大きくなってしまいます。
そこで、子供に最高の教育を受けさせたいと考えているシングルマザーは、かなり用心して仕事や生活をしていく必要があるでしょう。
しかし安心してください。その苦労は、子供の大学合格という栄誉で報われるはずです。
まとめ~乗り越えた喜びが大きくなる
壁は高いほうが、乗り越えたときの喜びは大きくなります。
母親も子供も、経済的な困難や解決できないことへの怒りや、ときに劣等感すら感じることになります。
母子家庭における子供の教育は、シングルマザーと子供の共同作業にしたほうがよいでしょう。
子供の大学入学という大きな目標を達成するには、母親と子供の協力関係が欠かせないからです。
母親と子供の両者で子供の大学進学という目標を共有し、それに立ち向かい、それを成し遂げたときの喜びはひとしおでしょう。
勉強ができることは、本人の人生を有意義にするだけでなく、周囲の人も幸せにする力があります。
母子家庭の子供は、勉強の力を信じて、大学進学をあきらめないでください。
シングルマザーは、子供に勉強の力を教えてあげてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。