「きちんと知識をつけて社会に出てほしい」そんな親御さんの気持ちにお子さんはいつでも応えてくれるわけではありません。
本記事ではお子さんが勉強してくれない時にどのような働きかけが適切なのかを教育の専門家目線から解説します。
お子さんによって勉強しない理由は様々で個別に対応する必要はありますが極力どのケースにも対応することの出来るものを掲載しています。
子どもが勉強しない理由
前者では「勉強が楽しくない、わからない」が代表的な例として挙げられます。
実際、勉強がわからなくなったから勉強しないといった事例は多いです。
厄介な点は算数・数学や英語といった既習事項をあとの単元でも使用するようないわゆる「積み上げ型」の教科である場合、わからない単元のフォローアップと待ってくれない授業についていくことを同時に行わなければならない点です。
後者の例は少しイメージがし辛いですが、お子さんの得意な能力を活かしきれていないと言い換えていただければ問題ありません。
人には五感が備わっていますが、個人によってどの能力を使えば効率的に学習出来るかは変わってきます。
読む・書く・聞く・話すのうち、得意な技能を活かすことが勉強に対する意欲にも関わってきます(五感には味覚も含まれますが、学習との関連性が無いためここでは言及していません)。
どうしても「勉強は机に向かって読み書き」というイメージがあるため、親御さんとしては受け入れがたい部分もある事です。
親御さんの経験からどうしても勉強といえばノートに覚えたいことを繰り返し書くことであるというイメージがあることは否定しません。
実際筆者もそのようにして勉強してきた事実もありますし、多様な学び方については大学で教育を学ぶまで考えたこともありませんでした。
これからの教育は、例えば英語の場合、聞くことや話すことが中心となることが予想されます。
これまでの読み書きを中心とした学習ではグローバル社会に求められる「世界で活躍できる人材」の育成には馴染まないという理由からです。
親御さんとしては例えば英語だと「入試に対応できる文法や単語をしっかりと教えてほしい」といった不安はありますが、教科によって適切な学習方法が違うようにお子さん一人ひとりによっても学習方法の適正は違ってきます。
今後約10年は「話すことができる」人材育成を中心に教育はシフトします。
進んで勉強に取り組む2種類の動機
お子さんに限らず人は勉強しようと思うとき、何かしらの動機をもって取り組みます。
更にその動機は「内発的なもの」と「外発的なもの」に分けられます。
言い換えると「勉強が楽しくてやっている」状態と「ご褒美が貰えるからやっている」状態です。
外発的な動機づけとは外部からのご褒美によって学ぶ意欲を湧き上げる動機づけの方法です。
ゲームが欲しいから勉強する、お小遣いを上げてもらうために勉強する、褒めてもらうために勉強するなどが当てはまります。
この動機付けのメリットは子どもが望んでいるご褒美を与える事で学習へ向かわせる事が可能なため比較的容易である事です。
デメリットは子どもがご褒美に依存してしまうリスクが有ることです。
そのため学習が進むに連れて次に紹介する内発的な動機づけへと移行することが望ましいです。
内発的な動機づけとは子どもが自身の知的好奇心によってモチベーションを保つことの出来る動機づけの方法です。
もっと知りたい、上手に英語を話したい、そろばん教室で一番の成績を取りたいなど自分の内部から湧き上がっている学習動機は全て内発的動機づけによるものです。
どの親御さんも最終的には子ども自身の知的好奇心に従って学んでほしいと望んでいます。
しかし内発的動機付けを行うためには学習に対する壁を取り除く必要があり、多くの親御さんは外発的な動機づけから内発的な動機づけへの移行に苦労されています。
次項からは子どもが外発的な動機から内発的な動機へと移行するための理論や例をご紹介します。
勉強は基本的には苦痛である
基本的には勉強とは苦痛なものです。
私達の学生時代を思い返してみて下さい。
授業が終わり休み時間になると一目散に校庭に飛び出し鬼ごっこやボール遊びに全力を注ぐ、次の授業開始を知らせるチャイムが鳴ったときには「また勉強か…」と肩を落としズルズルと教室に戻っていく。
子どもも同じです。
出来るものなら外で思い切り走り回りたいし、みんなでゲームをしたい。
なぜなら遊ぶことは楽しいことだからです。
いかにして勉強を苦痛なものと思わせないかがモチベーションを保つコツです。
子どものモチベーションを高める保護者の働きかけ
それでは勉強を苦痛だと感じることなく楽しいものだと思わせるために我々大人はどのように働きかけるといいのでしょうか。
現在、教育では「アクティブ・ラーニング」という言葉が謳われています。
ひとことで言うと「子どもが自分から勉強することの出来るような教育をしよう」という事です。
このアクティブ・ラーニングの原理をご家庭でも応用することによって、ご自宅でも子どもが自然と勉強するきっかけとなります。
アクティブ・ラーニングの基本的な原理は、勉強を苦痛に感じない楽しい学習方法です。
例えば英語だと、従来の文法・翻訳法から脱却し、英語の話されている場面を映像としてイメージしながら理解するといった学習法がとられています。
この学習方法は場面を想像しながら英語を学ぶので実用的でかつ記憶に残りやすい事がメリットとして挙げられます。
イメージしやすい生活に密着した設定だと自分が英語を話す機会を理解しやすく、しかも応用の効く実践的な英語を身につけることができます。
実際の話、入試などでも単語や空欄補充、アクセントの問題が多く文法そのものを問われる問題は少ないです。
むしろ表現の幅が広がり入試問題でも柔軟に対応できる力が身につきます。
勉強そのものが楽しくなることは言うまでもありません。
頭の中でイメージを膨らませることによって効率的な学習が期待できるのは英語だけではありません。
筆者の専門外にはなりますが、数学の場合も単に図形を見るだけにとどまらず「この平面図形を回転させると、どのような立体になるのか」など様々な角度から考える事になります。
柔軟に考えを応用できる力を付けさせることによって予測不可能な将来に向かって自分から進んで考える事のできる大人へと成長します。
子供とのコミュニケーションが勉強のやる気にも繋がる点について、以下の記事でも詳しく紹介していますので、合わせて読んでみてください。
我が子の野心に火をつけろ!親子で楽しめる学習法
これまで主に理論について解説しましたが、実際にその理論を応用した学習方法を紹介します。
筆者の専門は英語なので紹介できるものも英語に限りますがなるべく他の教科にも応用が可能な形でご紹介します。
実物にふれる
英語だとイラストの描かれたカードを見せながら音声を聞かせる方法が挙げられます。
音声とイメージを結びつける事で日本語の介入がなくなり英語を英語のままで理解できるという理論です。
数学だと実際に図形を作って、それを分解してみる。
理科の場合だと実際に食塩水を蒸発させてみるなど応用が可能です。
実物を見るという学び方はコメニウスというチェコの教育家が17世紀に発案しており、それを基にした教育法も多く展開されています。
確立している学習法なので安心して家庭学習に取り込むことが可能です。
勉強そのものが嫌いな子どもでも楽しむことの出来る最もベーシックな方法です。
対話する
会話の中で勉強する方法です。英語で日記を書かせて、それについて会話してみる等といった方法があります。
他にも、夕飯時にニュースを見ながら「衆議院と参議院の違いってなんだっけ?」のような会話を自然に取り込むことで子どもも抵抗なく考える事ができます。
生活と学習を結びつけることによって「今勉強していることは大人になっても役に立つんだ」と実感することが出来ます。
子どもが「社会に出ると役に立たないから」という理由をつけて勉強したがらない場合はとても効果的な学習法です。
一緒に考える
子どもが机に向かい始めました。
考えても考えても分からないという問題が出てきた時には「分からないね」で済ませることなく一緒に解き方を考えてみることをお勧めします。
親御さんが一緒に考える事で勉強時の孤独感も和らぎますし、難しい問題を解くことが出来た達成感を親子で共有できます。
そうするともっと勉強が楽しくなり内発的な動機が高まります。
親御さんも昔の記憶を頼りにして考える事になるので、自身の脳トレに効果的であることも一緒に考えることをおすすめする理由の一つです。
人の記憶は袋の中に知識を貯め込むイメージで考えると分かりやすいです。
忘れてしまったと思っている昔の記憶は、実は「取り出しにくい状況になっているだけ」で脳は覚えています。
思い出すという行為を繰り返すと知識も定着しやすくなるので、子どもとどれだけ勉強したことを覚えているか競ってみるのも面白そうですね。
理系のお父さんの説明は分かりづらい?
小学生の子どもが居るご家庭での話ではありますが、理系のお父さんが算数の宿題を手伝うと逆効果であるケースがあります。
「公式」を教えてしまうことで小学生は困惑してしまいます。
まずは算数と数学の違いについて話さなければなりません。
小学校で行われる算数は「基本的な計算のみを使って工夫して計算する」ことに重点が置かれています。
小学生の頃を思い返すと、わからない数字に当てはめる記号としてx(エックス)という記号は習わなかったのではないでしょうか。
求める数字を記号化する事はあまり重要視されておらず、むしろ視覚的に空であることが分かりやすい四角形や円を代わりに当てはめています。
対する数学では小学校で学んだ算数的な考え方を基にして「効率よく解答を導き出すための方法を駆使する」事に重点が置かれています。
算数では限られた方法のみを使って答えを求めるのに対し、数学では効率よく問題を解くプロセスの選択が重要です。
数字に対する考え方が違うと、求められる考え方も違います。
算数の宿題を手伝う際は公式など数学的な考え方を教えるのではなく、問題に示されている情報のみを使って一緒に考えてあげると子どもも楽しく分かりやすいと感じるようです。
小学生の間は発想力を鍛えられるよう仕向けることをお勧めします。
まとめ
本記事では子どもが勉強しない理由を理論として紹介し、実際にどう対処すると効果的なのかという所までを言及しました。
免責:本記事は紹介している商品について、効果を保証するものではありません。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。