「思うように勉強が進まない…」「なんだか気分が乗らない…」
こんなときは、勉強の「邪魔モノ」が入っている可能性があります。
邪魔になるモノ・人・現象・思考などは、目的の達成を妨げます。
昔から”邪気”と呼ばれるこれらの障害物を取り除くことは、受験勉強を進めるうえでも大切です。
目的を達成するには「やるべきことをやり遂げること」と同じくらい、「やるべきでないことをやらないこと」が大事になるからです。
勉強の「邪魔モノ」14選と、いますぐ始めるべき対策を解説します。
成功者たちの共通点
突然ですが、成功者たちの「共通点」は何だと思いますか?
毎日欠かさず読書をした、毎日○時間勉強した、アイディアを書き溜めた、リスクを恐れなかった、たくさんの人と交流した、食事や睡眠に気をつけた、自己投資を惜しまなかった、世界中を旅した、質素倹約に励んだ…など、何か特別なことをやったと思いがちです。
もちろん、そのような要因もあるかもしれませんが、「何が成功要因になったか」は目的や人によって大きく異なるものです。
それとは別に、本質的な共通点が指摘されています。
それは「無駄なことをしなかった」ことです。
人生において、行動の選択肢はほぼ無限にあります。
一般に、「何かをやる」ことより「何かをやらない」ことの方がよっぽど重要です。
成功者たちのサクセスストーリーは、その足どりを振り返ると往々にして全てがつながっているようにみえます。
とはいえ、その多くは生まれや育ちがごくふつうの人間であり、時間が人よりたっぷりあったり、大富豪の家に生まれていたり、何か特別な才能に恵まれていたわけでもありません。
時間は有限であり、与えられた時間はみな平等です。
人間なので無駄な時間をゼロにすることは無理でも、時間の”無駄撃ち”をできるだけ少なくすることは目標達成や成功にとって大切です。
成功者が「無駄なことをしていない」ようにみえるのは、時間の使い方が極めてうまいからなのです。
そのぶん、他の人より「やるべきこと」「価値があると思われること」に十分な時間を割くことができ、成果が出やすくなるのです。
この考え方を受験勉強に応用すると、「無駄なもの=注意をそらすもの」との付き合いを断つことが重要です。
必ずしも息抜きの時間をなくすわけではありませんが、極力減らすことが大事になってきます。
集中力が極限まで高まる”ゾーン”とは?
「注意をそらすもの」を減らすと、学習に不可欠な集中力が高まります。
日頃よく使う言葉ですが、「集中力」とはいったい何のことでしょうか?
「集中」とはどのような状態を指すのでしょう?
集中とは脳内の注意を対象とする物事に向けることで、集中力はその度合いです。
集中力が極限まで高まった状態は”ゾーン(=区域)”と呼ばれます。
何らかの空間に入るようなイメージで、「別次元の集中」などと言われる所以です。
このとき、脳のリソースは対象物に全て振り向けられるため、最大のパフォーマンスを発揮します。
取り組んでいる物事に本当に集中すると、まわりのものが一切目に入らず、何が起こっても全く気にならなくなります。
話しかけられても、話しかけられていることにさえ、気づかない。
これが本当の集中であり、仏教で言うところの”無我の境地”です。
さらに、ほとんど”無意識”のうちに、思いもよらなかった解決法がひらめいたりします。
ある意味では、自分自身の能力を超えることができるのです。
”ゾーン”に入りやすいと言われるのは、スポーツや楽器演奏など体を動かしている最中ですが、学習の最中に入れることが理想です。
ハッと気づけば、短時間で大量の問題を解いていたり、ハードルの高かった難問もスイスイ解いていることでしょう。
パフォーマンスを引き出す”フロー状態”
では、どのようにしてゾーンに入ればよいのでしょうか?
集中力は1か0かではありません。
「1=ゾーンの状態」だとすると、最初は0から始まり、徐々に1まで高まっていくものです。
机に向かってテンポ良く問題を解いているうちに、0から0.2へ、0.2から0.4へと徐々に集中が高まっていきます。
バランスよく集中が高まっているこの状態を”フロー状態”と呼びます。
ところが、フロー状態はさまざまな「注意をそらすもの」によって、容易に崩れてしまいます。
すると、また0からやり直しになり、それまでの時間が無駄になります。
これではいくら勉強時間があっても足りません。
逆に言えば、集中をうまくコントロールできるようになれば、短い時間でも大きな収穫が得られるようになります。
良い意味で「要領のいい人」は、フロー状態に入るための時間が短く、自分が集中しやすいコツを知り得ているのです。
したがって、学習するうえで適切な目標はフロー状態を維持し、願わくは”ゾーン”の状態までもっていくことです。
そのために環境の整備、つまり「注意をそらすもの=邪魔モノ」を遠ざけることが必要になるのです。
外的要因①レベルの合わない問題
取り除くべき勉強の「邪魔モノ」のうち、まず外的要因から挙げていきましょう。
最も重要なのは、「解くべき問題」の選択です。
「フロー状態」は丁度よい問題を好み、簡単すぎる問題も難しすぎる問題も嫌います。
頭が退屈、もしくは混乱してしまうからです。
まわりに合わせる必要はありません。
自分の現状のレベルをよく知ったうえで、解いている問題のレベルが今の自分にピッタリ合うものにしましょう。
受験のゴールは得てして高いもの。
よく陥りがちなのは、到達目標に合わせて難しすぎる問題を選んでしまうことです。
そうではなく、目指すべき地点に早くたどりつくためには、山登りの道のように無理なくステップアップできる経路を設計しなければなりません。
平坦な道でも、険しい崖でもダメなのです。
具体的には、問題集や参考書の「適切なレベル選択・分野選択」になります。
選択の仕方がわからない場合は、先生や友人にアドバイスを求めてください。
適度に頭をつかい、スラスラ解ける状態を自ら作り出しましょう。
外的要因②片付いていない物
なんだか妙に気になって、勉強に集中できなくなった経験はありませんか?
よくみると、机の周りに何気なく置いてある物や、乱雑な散らかりが気になっていたりします。
注意は無意識のうちにそらされるものです。
動物実験でも、注意をそらすものがないとマウスの学習成績が向上することが示されています。
学習効率を上げるために、机の上や部屋の「整理整頓」は必須です。
外的要因③テレビ
「注意をそらす」代表的存在であるテレビ。
1日何分と決めて、ルールを守れればそれでよいですが、ついダラダラ観てしまうものです。
番組表を観ない、オフタイマーをかける、コンセントを抜く、布をかけておくなど、気が散らないようにすることが肝心です。
同居する家族の配慮も必要になるでしょう。
外的要因④本やマンガ
夢中になって読み出すと、あっという間に時間を消費する存在です。
テレビ番組と違い、いつだって後から読むことができると自分に言い聞かせ、不要な本やマンガは部屋から締め出しましょう。
外的要因⑤スマートフォン
現代の受験勉強の大敵といえる、スマートフォン。
動画やゲーム、SNSやLINEなど、ありとあらゆる「注意をそらすもの」が端末の電子チップの中に埋め込まれており、その誘惑はたいへん大きいものです。
ひと昔前にもポケベルや携帯電話、電子メールはありましたが、全く同じようなものはなく、親世代もその危険性を十分熟知していないところもあります。
さらに厄介なのは、英単語アプリなど、学習に有用なアプリも端末内で正当な位置を占めていることです。
そのため、勉強と息抜き、オンとオフが切り離しづらい存在になっています。
取り上げるわけにもいかないでしょうから、使用時間などで制限をかけるほか、本人が理解するしかありません。
スマートフォンの利用に対する自制心の有無は、大きく明暗を分けることでしょう。
外的要因⑥食べ物
頭が疲れると、甘いモノが欲しくなるもの。
何かを食べることは栄養補給や気分転換になり、学良いリフレッシュになります。
ただ、過剰な摂取、食べすぎは禁物です。
適度な空腹状態にあると、集中力はキープされます。
逆に満腹になると、睡魔が襲い、せっかく高めた集中が妨げられることもあります。
「腹八分目」に従い、適度な食事や間食を心がけましょう。
外的要因⑦友人から受ける悪影響
「類は友を呼ぶ」と言われる通り、学習意欲や志の高い友人が周囲にいると、自分のレベルも次第に上がります。
この好循環に入ると、相乗効果がはたらくようになります。
他方、友人によっては逆の効果も起こり得るので要注意です。
目標が異なる友人や志の低い友人、いわゆる「悪友」の存在は受験期には問題になります。
水のように、人間はほうっておくと低い方向に流されてしまうからです。
目指すものが大きく違う場合、付き合いは控えなければなりません。
それが仮に、幼い頃からの大切な友人だったとしても同じです。
やるべきことが異なり、向いている方向性が違うだけで人間性の優劣ではありません。
受験期にはほどほどの付き合いにとどめる方が、お互いのためになることをドライに理解する必要があります。
逆に、同じような志をもつ仲間はかけがえのないものです。
切磋琢磨できる友人づくりを心がけましょう。
外的要因⑧音楽や騒音
音楽をかけると集中できない人もいれば、逆になんらかの雑音があった方が集中できる人もいます。
なぜか集中できないと感じる場合、静かな環境に変えたり、むしろ逆に音楽をかけたり、違ったジャンルの音楽を試してみたりしましょう。
また、都市環境では騒音はつきものです。
公道で騒いでる人がいたり、奇声を発している人がいたり、廃品回収車がやかましかったり、電車や車の通行音がしたり、向かいの飼い犬の鳴き声がうるさかったり、さまざまなな音が響いてきます。
対策としては、ヘッドホンやイヤホン、耳栓などが効果的です。
最近ではノイズキャンセル機能を備えたワイヤレスイヤホンがおすすめです。
もしヘッドホンが苦手であるなど、騒音を防ぐ手段がない場合、学校、友人宅、図書館、自習室、カフェなど、騒音の少ない環境に移りましょう。
勉強の合間に息抜きとして聴くなら以下のような曲をおすすめします。
外的要因⑨生活習慣のこだわり
意外に重要なのが、食事・睡眠・衣類などの基本的な生活習慣(ルーティン)をシンプルにすることで、余計な注意を向けないことにつながります。
米アップル社の創業者、故スティーブ・ジョブズのような忙しい経営者が同じ服を毎日身につけていることや、野球の元イチロー選手が毎日カレーライスを食べていた逸話が良い例です。
最低限の節度を押さえていれば、ルーティンにいちいち凝る必要はないのです。
脳内のリソースは有限なので、そのぶん学習に多くの集中力が使えるようになるでしょう。
外的要因⑩その他、よく分からない妨害
現代はさわがしく、心を落ち着けるのが難しい社会です。
明らかな騒音以外にも、家族の話し声がうるさかったり、家の電話が鳴ったり、来客が訪れたり、セールスが突然訪ねてきたり、排気ガスがひどかったり、住環境によってさまざまな障害があります。
クレームをつけるわけにもいきませんが、その都度、フロー状態が崩れ、せっかく養った集中が台無しにされてはたまりません。
誰のせいでもありませんが、人里離れた山奥にでも住まない限り、集中を妨げる”何か”との遭遇は付き物です。
そのため、進学校や塾などでは「勉強合宿」と目したイベントを企画することがあります。
都会の喧騒を離れて、たとえ短い期間でも目的意識を見直し、集中を高める習慣を身につけることが目的です。
ご家庭でも機会があれば数日間どこかに合宿に出かけ、ふだんとは違う環境で学習するとリフレッシュになってよいかもしれません。
内的要因①進路の悩み
勉強の「邪魔モノ」は、ここまで挙げてきた「外的要因」だけに限りません。
悩みやストレスなどの「内的要因」もあります。
すなわち、他ならぬ「自分自身」がスムーズな学習を妨げている状態です。
集中できない原因として、「自分、もしくは目に見えない部分」に問題が隠れていることが意外に多いのです。
古代中国の兵法家・孫子の兵法書には、「敵を知り己を知れば百戦殆うからず」という有名な格言があります。
集中の”敵”について知ったあとは、己自身について深く知る必要があるのです。
では、どんな心理状態になると集中できなくなるのでしょうか?
まずは定番ですが、受験生に多い「進路に関する悩み」です。
進路を決めるには成績や偏差値だけでなく、国公立/私立・大学・学部・学科・地域など選択するファクターが非常に多いため、大いに悩むものです。
将来を決める一大事だけに、受験生にとっては勉強以上に大きな問題です。
進路が決まらないと、そもそも勉強すべき教科・科目・範囲も決まらず、学習が手につかないのは当然ともいえます。
しかしながら、進路が定まらずに突き進むことは、目標地点を決めずにどこかへ出かけるのと同じです。
常につきまとう不安はやがて集中を妨げるでしょう。
進路の悩みは、いちはやく解決することが肝要です。
内的要因②経済的要因
「仮に合格しても大学に通い続けられるのだろうか?」
経済的問題がある場合、クリアする算段をみつけないと、目の前の勉強が手につかず、まともに集中することは難しいでしょう。
奨学金などの公的サポートをみつけ、ファイナンシャルプランナーやカウンセラーに相談するなど、経済的不安を取り除く必要があります。
内的要因③身体的要因
重い病気を患っている場合はもちろんのこと、たとえば偏頭痛持ちである、机に向かうとお腹が痛くなる、歯が痛い、などさまざまな身体的要因は集中の敵となります。
また、自覚症状がない場合もあります。
頭と身体は密接につながっているため、こうした肉体的問題を無視してタフな受験に立ち向かうことはできません。
医療機関で医師に相談し、適切に対処する必要があります。
また、予防となる食事も大切です。
ただでさえ、成長真っ盛りの思春期ですが、学習効果を最大限に高める食事のサポートは欠かせません。
不適切な食事は集中の大敵である一方、適切な栄養バランスは集中源になります。
脳の代謝エネルギー源となるブドウ糖、風邪予防のためのビタミンやミネラルなどを十分に摂る必要があります。
内的要因④人間関係の悩み
経済的・身体的な悩み以外で多いのは、やはり人間関係に関するものです。
学校生活で教師や友人と良好な関係を築けていないと、質の高い学習法が身につかないだけでなく、学習にも打ち込めません。
あるいは、恋愛に過度にのめり込んでいる状態だと学習時間が下がり、集中も妨げられます。
見えにくい人間関係の原因を発見し、いつでも気分爽快に机に向かえるよう、適切に状態をコントロールする必要があるでしょう。
今すぐにできる「邪魔モノ」対策
以上、外的要因10個と内的要因4個についてお分かり頂けたかと思います。
これらの「注意をそらすもの」への具体的な対策を以下にお伝えします。
整理整頓
まずは、部屋と学習机の「整理整頓」です。
学習を行う環境が整然としていないと始まりません。
学習に必要な参考書やノート、過去の試験結果など、重要な情報にすぐにアクセスするためには、常に整理されている必要があります。
断捨離
ダイレクトな対策として、「注意をそらす」外的要因を捨ててしまう方法がまず考えられます。
劇的な効果がある一方、とても大事なものだった場合、大きなショックを与えかねない”諸刃の剣”の方法です。
ショックのあまり、勉強が手につかなくなっては本末転倒です。
このような場合、「邪魔モノ」との物理的距離をとり、視界に入らないようにするのが穏当なやり方です。
引き出しや押入れにしまうだけですめば良いですが、自制心に自信がない場合、ダイヤル付き金庫にでも収納しましょう。
取り出すのが面倒なほど、良い効果が期待できます。
解禁期限を決める
自分に厳しくするだけでなく、大事なことは解禁する期限を決めることです。
全試験日程が終了した日、合格発表の日など、具体的に決めておきましょう。
頑張ったあとの楽しみ、ご褒美の設定はとても大事です。
「泣いても笑っても、あと何日我慢すれば〇〇が解禁できる!」と具体的な日数がわかれば、人間なんとか我慢できるものです。
そして、自分自身との約束をしっかり守ることも大切です。
万人に当てはまる正解はないため、自分自身の自制心と相談して「邪魔モノ」を遠ざける適度な方法を模索しましょう。
まとめ
効率的な学習に必要な集中を妨げる「邪魔モノ」には、外的なものと内的なものの2種類が存在します。
スマートフォンやゲーム機などパッと目につく物に限らず、自発的な勉強や集中を妨げている心理的要因を明らかにすることも大事です。
場合によっては、医師やカウンセラーなど専門家の助けも必要になります。
どのような習慣であれ、いったん染みついた習慣はかなり意識しなければ取り除くことは容易ではありません。
家族や友人など周囲にも相談しながら、勉強の「邪魔モノ」を物理的にも心理的にも遠ざけ、落ち着いた学習環境を作りましょう。
人間の行動は環境に大きく左右されます。
「邪魔モノ」との距離をうまくとれれば、思いのほか集中力がアップして学習は短時間で効率よく済み、パフォーマンスも間違いなく向上します。
成功に向けて邪気を取り除き、幸運を味方につけましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。