【運動能力と体力の低下】骨折する子が増加、原因は、対策は

【体力低下】骨折増加の原因と対策
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子供の運動能力や体力が低下しています。
その結果、ちょっとしたことで骨折してしまうケースが増えています。

学校で子供が骨折する率は、50年前の2倍以上になっています。

運動能力と体力の低下がもたらす弊害は、骨折だけではありません。
生きる意欲や社会適応性などにも悪い影響を与えます。

子供たちの運動能力と体力は、どれくらい落ちているのでしょうか。

なぜ、運動能力や体力が低下すると、骨折しやすくなるのでしょうか。

なぜ、子供たちの運動能力や体力は低下したのでしょうか。

この記事では、こうした疑問に答えたうえで、子供の運動能力と体力を向上させる方法を紹介します。

子供の運動能力や体力はどれくらい落ちているのか

文部科学省の諮問機関である中央教育審議会(以下、中教審)は「子供の体力は長期的に低下傾向にある」と断言しています(※)。
さらに、この現状について「極めて憂慮すべきこと」と、警鐘を鳴らしています。

まずは、この問題が一体どれほど深刻なのか探っていきます。

※参考:https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/021001a.htm

1985年ごろから低下傾向「体を思うとおり動かせない子も」

体育館の床文部科学省は1964年から「体力・運動能力調査」を行なっています。
それによると、子供の運動能力と体力は、昭和60年(1985年)ごろから低下傾向に転じました。
さらに、体を思うとおり動かす能力も低下しています。

その一方で、身長と体重の体格は、昔より向上しています。
体格が向上すれば身体能力は高まるはずなので、体格が向上しているのに運動能力と体力が落ちている現状は、とても深刻であると考えられています。

例えばソフトボール投げでは、1985年の11歳は男子34.0メートル、女子20.5メートルでしたが、2018年の11歳は男子27.9メートル、女子16.8メートルでした。

1985年と比較すると、男子は17.9%ダウン、女子は18.0%ダウンでした。

また、少し古い数字ですが、1,000メートル走では、2000年の13歳女子は、1985年の13歳女子より25秒も遅くなっています。

身長は、1985年の11歳は男子143.2センチ、女子145.5センチでしたが、2018年の11歳は男子145.5センチ、女子147.1センチでした。

1985年と比較すると、男子は1.6%アップ、女子は1.1%アップしています。

運動している子としない子の差が広がっている

二極化のイメージ運動能力と体力の「格差」も深刻化しています。

運動系の部活動などをしている子供の運動能力と体力は、していない子供より上回っています。
そして、運動能力と体力が優れている子供はますます向上し、運動能力と体力が低下している子供はますます低下している傾向が顕著になっています。

中教審は、子供の運動能力と体力の「二極傾向が強まっている」とみています。

運動能力と体力の「格差」が拡大しているということは、運動をする機会は存在するのに、その機会をみすみす逃している子供が増えていることを意味しています。

つまり、子供たちに運動する機会を提供するだけでは、この問題を解決できないことになります。

体を思うとおり動かすことができない、とは

  1. 靴の紐を結べない
  2. スキップができない
  3. リズムを取って体を動かすことができない

といった子供が増えています。

体を思うとおりに動かすことができないのです。

体を自分の意志で動かしたり、高度な動きをしたりするには、神経の発達が欠かせません。
しかし、運動をしない子供は、神経の発達が進みません。

学校の健康診断のチェック項目に、2016年度から新たに「両腕とも痛みなく、完全に上まで上げられない」「片足立ちを5秒保てない」「体を前屈、後屈できない」「関節に痛みがある」「しゃがみ込むことができない」といった項目が追加されました。

まるで、高齢者向けの健康チェックのような内容です。
それくらい、子供の「体を思うとおり動かすことができない」化が、深刻になっているということです。

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骨折する子供が増えている

独立行政法人日本スポーツ振興センターによると、学校における骨折は、30年前(1990年ごろ)の1.550年前(1970年ごろ)の2.4になっています。

子供の骨折事情については、単に増えているだけでなく、興味深い傾向が現れています。

骨折「中学で急増」なのに「未就学児は横ばい」の謎

子供の年代によって、骨折事情が次のように変化しています。

・中学生の骨折:子供全体の増加傾向を「はるかに上回る」増加傾向

・高校生の骨折:子供全体の増加傾向を「やや上回る」増加傾向

・小学生の骨折:増加傾向にあるが、子供全体の増加傾向よりは「下回る」

・未就学児(幼稚園児など)の骨折:横ばい(増えていない)

ニッセイ基礎研究所は、年代ごとに骨折の増加傾向がばらついているのは、運動との関わり方が影響していると指摘しています。

体格がよくなっているので運動部で無理させられている?

野球グラウンド中学生で骨折率が急増し、高校生でも増加傾向が継続している原因には、運動系部活動の練習の高度化とオーバーワーク化があります。

子供たちの体格は向上しているので、運動系部活動の指導者たちは、子供に早くから高度な技を習わせようとします。
また、運動系部活動の競争が激しくなっていることから、練習をさせすぎてしまうオーバーワークが発生しています。

これらはいずれも、骨折リスクを高めてしまいます。

骨折が多い部活は、中学生はバスケット、サッカー、フットサルです。
高校生はバスケット、サッカー、フットサル、野球です。

運動系部活動がない、小学生や未就学児では、骨折率の増加傾向が弱いか横ばいなので、「運動系部活動原因説」は信憑性があります。

危険な遊具やケガをする遊びから遠ざけられているから

では、未就学児の骨折率が横ばいであることは歓迎できることなのかというと、そのような単純な話にはなりません。

骨折が増えていないのは、危険な遊具が減ったことと、ケガをするような遊びをしなくなったためだからです。

もちろん、骨折をしないことは「よいこと」です。
しかし理想は、未就学児の運動能力や体力が向上して、少しくらい危険な遊びをしても、少しくらいケガをしても、骨折しない体ができることです。

保護者は、未就学児なら簡単に、危険な遊具やケガをする遊びから遠ざけることができます。
それで骨折の増加を抑制できています。
しかし、保護者のコントロールが利きにくくなる小学生になると骨折が増えてしまいます。
その結果、中学生になって骨折が急増し、高校生になっても増え続けてしまったわけです。

なぜ運動しないと骨折しやすくなるのか

医師医学的な話をします。

運動をしないと骨折しやすくなるのは、直感的に「そうなのだろう」と理解できますが、この相関関係は医学的にも証明されています。

東京大学医学部母子保健学教室などが、日々の歩行量が少ない肥満体系の子供に、従来の1.52.0倍の歩行を課したところ、「骨吸収マーカー」が減少し、「骨量」が増加しました。

「骨吸収」とは、骨が壊される現象のことです。
骨は、ずっとそのまま硬いわけではなく、骨の古い部分が壊され(骨吸収され)、新しい骨がつくられる(骨形成される)ことで、硬い状態を維持しています。

人の成長期は「骨吸収(古い骨が壊れる)<骨形成(新しい骨がつくられる)」となるので、骨が太く長く硬くなります。

しかし年齢が上がるとともに「骨吸収>骨形成」となり、骨がもろくなっていきます。

そのため、「骨吸収マーカーが減少する」傾向は、骨にとっては「よい現象」といえます。

「骨量」は「骨密度」とも呼ばれ、骨をつくっているカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの「詰まり」具合のことです。
骨量の数値が大きいほど、ミネラルがぎっしり詰まっていることを意味して、よい骨といえます。

東京大学医学部母子保健学教室などの研究は、運動習慣が低い人に運動習慣を課すと「骨の状態が改善する」ことを証明しています。

それで「運動をしないと骨折しやすくなる」のは事実であることがわかります。

運動能力低下のその他の弊害

運動能力と体力の低下が招く弊害は、骨折だけではありません。
子供によっては、その他の弊害のほうが深刻になる場合があります。

健康的な体をつくることができない

ブルーな気持ち骨折の増加は、「健康的な体でなくなったこと」が引き起こす現象のひとつにすぎません。
逆の見方をすると、骨折が増えているということは、健康的な体でない子供が増えている、とみることができます。

子供のころから運動をすると、体が丈夫になり、バランスのとれた体をつくることができます。
また、子供のころから運動習慣を身に着けておけば、生涯にわたって健康的で活動的な生活習慣を続けることができます。

先ほど、子供たちのなかで、運動能力と体力の「格差」が広がっていると紹介しました。
格差が起きるのは、運動しない子供は、ますます運動から遠ざかるようになるからです。

運動習慣がない子供は、上手に運動ができません。
運動が上手にできないと「恥ずかしい」「周りから笑われる」という気持ちになってしまいます。
また、上手に運動ができないと、楽しくありません。
これが、運動嫌いな子供が、ますます運動を嫌いになるメカニズムです。

運動習慣がない子供は、ますます不健康な体になってしまうわけです。

肥満になり生活習慣病を誘発する

運動不足による不健康な体の代表は、肥満でしょう。
学校保健統計調査によると、1970年から2000年までの30年で、男女ともに肥満傾向児の割合が増えています。

肥満傾向児とは、子供たちの平均体重の20%増以上の体重の子供のことです。

特に男子は、614歳の各年齢で23倍に増加しています。

これは、「子供の高血圧」や「子供の高脂血症」が危惧されるレベルです。
さらに、将来の糖尿病や心臓病、脳の病気につながりかねません。

心臓病や脳の病気は、放置すると死の病になります。
死亡しなくても、心筋梗塞や脳梗塞を発症すると、重度の後遺症が残ることがあります。

生活への意欲が減る

運動会「元気な子供」「ハツラツとした子供」と聞いて、どのような子供をイメージするでしょうか。
体を思いっきり動かしているシーンを想像するのではないでしょうか。

子供が全身を使って動き回ることこそ「元気」なのです。
元気さは、心の健康も増進します。

また、体を使った遊びのなかで子供は、「遠くまで飛べた」「速く走ることができた」「高く上がることができた」といった成功体験をします。
成功した喜びは「意欲」や「有能感」を芽生えさせます。

したがって運動能力が低い子供や、体力がない子供には、その反対の現象が起きるので、元気さも、成功体験も、意欲も、有能感も減退してしまいます。

社会適応能力が低下する

子供の体を使った遊びでは、複数の子供が群がることが多いでしょう。
スポーツになれば、さらに多くの子供たちが集まります。

子供は、遊びやスポーツのなかで、ルールを守ることや、自分を出すこと、自分を抑えること、他の子供たちとコミュニケーションを取ること、保護者以外の大人と接触することなどを覚えていきます。

そのため、運動しない子供や外で遊ばない子供は、社会適応能力が身につかないことが危惧されます。

認知的能力の発達に影響する

運動をしている人は、脳を活発に使っていることがわかっています。
運動には、

  1. 全体状況の把握
  2. 素早い方向転換
  3. 俊敏な身のこなし
  4. 次の状態の予測
  5. 筋肉や関節の微調整

といった、複雑で難解な動きが求められているからです。
そのような動きを間違いなく実行するには、脳をフル回転させなければなりません。

脳を活発に使うと、運動制御機能や知的機能が促進されます。
その結果、認知的能力が発達します。

また子供たちは遊びのなかで、次々と新しいルールをつくったり、新しい遊び方を開発したりします。
これは創造力を養うことにつながります。

運動習慣がない子供は、認知的能力や創造力を発達させる重要な機会がひとつ失われるわけです。

子供の運動能力や体力が低下している原因

ここまでで、次のことがわかりました。

・子供の運動能力と体力は確実に低下している
・運動しないことで骨折する子供が増えている
・運動能力の低下は「不健康」「生活意欲の低下」「社会適応能力の低下」「認知的能力、創造力への悪影響」を招く

なぜ、ここまで深刻になってしまったのでしょうか。

なぜ、子供は運動能力や体力が低下する状況に追い込まれたのでしょうか。

なぜ、運動しない子供が増えたのでしょうか。

子供の運動能力や体力が低下している原因は、大人にあります。

大人の頑張りが災いした?

子供たちの運動能力と体力が低下した原因は、文部科学省の「幼児期運動指針」に明記されています(※)。

この内容は、次のようにまとめることができます。

・科学技術の発展で生活が便利になり、歩くことや体を動かす機会が減った

・必ずしも高い体力や多くの運動量を必要としなくなった

・こうした経験をした大人が、子供の体を動かす遊びや子供の身体活動を軽視するようになった(子供を遊ばせなくなった)

・さらに子供は、家事の手伝いの機会すら減った

・都市化や少子化は、子供の遊ぶ場所や遊ぶ仲間、遊ぶ時間の減少を招いた

・交通事故や犯罪への懸念も、子供を遊ぶ機会を減らしている

科学技術の発展も高度な都市化も、今の大人たちや、その前の世代の大人たちが一生懸命つくりあげてきたものであり、日本が世界に誇ることができる成果でもあります。

しかしそれが、まわりまわって、子供の遊ぶ機会を奪い、子供から運動能力と体力を奪っていった、というのです。

文部科学省は、この現象は「子供の心の発達に重大な影響を及ぼす」と述べています。

では、子供の保護者達は、何をすればよいのでしょうか。

※参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/undousisin/1319771.htm

どのような対策があるのか

文部科学省の「幼児期運動指針」には、保護者たちが子供に「するべきこと」が、かなり具体的に示されています。それを紹介します。

34歳の子供に「するべきこと」

34歳の子供は、日常生活や体を使った遊びの経験をある程度積んでいることから、動き方が上手になります。
身体感覚が高まり、巧みな動きもできるようになります。

そこで保護者は、34歳の子供に、次のようなことをさせてみてください。

  • 屋外での滑り台、ブランコ、鉄棒などの固定遊具での遊び
  • 室内での巧技台やマットなどの遊具を活用した遊び
  • 立つ、座る、寝ころぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がるなどの「体のバランスをとる動き」
  • 歩く、走る、はねる、跳ぶ、登る、下りる、這(は)う、よける、すべるなどの「体を移動する動き」

45歳の子供に「するべきこと」

45歳は、基本的な動きが定着するころです。
全身のバランスを取る能力が発達して、用具の操作が上手になります。
また、友達と一緒に運動することに楽しさを感じ始めます。

そこで保護者は、45歳の子供に、次のようなことをさせてみてください。

  • なわ跳びやボール遊びなど、体全体でリズムを取る遊び
  • 用具を巧みに操作したりコントロールさせたりする遊び
  • 持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、こぐ、掘る、押す、引くなどの動き

56歳の子供に「するべきこと」

駆け回る子供たち56歳になると、無駄な動きや力みが少なくなり、動きがさらに上手になります。
全身運動が滑らかで巧みになり、全力で走ったり跳んだりすることに心地よさを感じます。

友達との関係性が強化され、目的がある集団行動や力を合わせた行動、役割分担を決めた遊びをするようになります。

保護者は、45歳の子供に、次のようなことをさせてみてください。

  • ボールをつきながら走るなど、基本的な動きを組み合わせた運動
  • 「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」「用具などを操作する動き」を、より滑らかに遂行する
  • 複雑な動きの遊び
  • 鬼ごっこなどの、ルールを決めた遊び
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まとめ~体力は生涯の宝

もう一度、子供の年代別の骨折の増加の傾向を確認しておきます。

・中学生の骨折:子供全体の増加傾向を「はるかに上回る」増加傾向
・高校生の骨折:子供全体の増加傾向を「やや上回る」増加傾向
・小学生の骨折:増加傾向にあるが、子供全体の増加傾向よりは「下回る」
・未就学児(幼稚園児など)の骨折:横ばい(増えていない)

大人は、未就学児や小学生を、危険な行動から遠ざけることで、骨折から守っています。

しかし、大人の目が離れた瞬間、つまり中学生になった瞬間に、骨折が急増します。
その勢いは高校でも続いてしまいます。
中学生や高校生は体格がよいので、運動系の部活動で無理をさせてしまい、骨折を引き起こしています。

本来は、小さな子供をしっかり遊ばせたり運動させたりして、少しくらいの危険な行動なら、骨折など引き起こさない体をつくってあげなければなりません。

子供の運動能力と体力の低下は、大人のせいであることは明白です。
そうであるならば、今こそ大人が、子供の運動能力と体力を高めてあげなければならないはずです。

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この記事を監修した人

チーム個別指導塾
「大成会」代表
池端 祐次

2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。


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公開日:2020年5月28日 更新日:2024年2月28日
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