高校受験を控えて志望校を決める際に重要なことの一つとして「私立か公立か」があります。
また私立公立の選択は保護者の方の教育方針によって意見が大きく分かれるところです。
また私立高校を受験する場合と公立高校を受験する場合では入学試験の内容や対策も少し異なります。
北海道における公立高校と私立高校の違いを学びましょう。
北海道の高校は全部で289校
北海道には私立公立含めて289校の高校があります。
これは東京に次ぐ全国二位の多さを誇り、全国三位の大阪府(259校)と大きく差が開いています。
内訳としては私立高校が56校、公立高校が233校。
およそ8割の高校が公立高校となっています。
大半の高校は石狩管内、特に札幌に集中しています。
後志管内では小樽市に、空知管内では岩見沢市に、渡島管内では函館市に、上川管内では旭川市に、オホーツク管内では北見市に、胆振管内では室蘭工業地帯にそれぞれ集中しているようです。
その他の振興局に関してもその地域を代表する都市に高校が集中している事が伺えます。
私立高校はほとんどが札幌・旭川・函館に集中している構図となっています。
この事から札幌市以外にお住まいの方は必然的に公立高校を選択する可能性が高いことが言えるでしょう。
高校受験で気になる事
保護者として高校受験について疑問に思う点を3点ピックアップしました。
特に子どもが初めての受験で心配な時によくある質問をまとめています。
基本的な考え方として、高校は義務教育ではないという点が重要です。
現在は高校進学が当たり前と考えられており世間の認識もそれで間違いはありませんが、制度上は義務教育ではない点に留意したいです。
内申点について
中学生の子どもをお持ちの保護者の方であれば一度は子どもから「内申点」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。
高校入試は当日の試験点数とこの内申点で合否を判定する仕組みになっています。
中学では真面目、テストの点数もよいAさんを例に考えてみましょう。
Aさんは普段は勉強が出来るものの、当日の入試では風邪をひいてしまい思うように問題を解くことが出来ませんでした。
この際に内申点が総合的な点数をカバーする形になります。
内申点は普段の中学生活での評価と言っても過言ではありません。
当日の試験で思うように力が出せなかった場合でも中学生活3年間の努力や素行も評価に組み込むことが出来る仕組みが内申点です。
それでは内申点はどのようにして決定されるのでしょうか。
中学生の子どもが真っ先に取り組むことと言えば先生のお手伝いです。
少しでも先生からの評価をあげようと努力している様子が微笑ましいと感じる方も居られるでしょう。
北海道では成績表の数字(評定と呼ばれるもの)で内申点を決定しており、先生の手伝いを行ったからと言って内申点が上がるわけではありません。
ただし因果関係が無いかと言われるとそうでも無く、先生の手伝いを行った事で印象が良くなり、評定をオマケしてくれるという可能性は否めません。
つまり評定が上がることになるので内申点とは関係ないとは言えません。
ただし基本的には授業をしっかりと受けてテストで良い点数を取るという地道な努力が内申点アップに直結します。
北海道では中学一年生から三年生まですべての最終評定を用いて内申点を決定しています。
その内申点の合計点数によって内心ランクと呼ばれるものが決定され、それを高校入試に用いることになります。
この内申ランクは志望校決定の際の目安にもなるものなので覚えておいて損はありません。
具体的な計算式は以下のとおりです。
②二年生の学年末評定の合計 ×2
③三年生の学年末評定の合計 ×3
①+②+③が内申点です。
9教科で計算します。
- Aランク:315〜296
- Bランク:295〜276
- Cランク:275〜256
- Dランク:255〜236
- Eランク:235〜216
- Fランク:215〜196
- Gランク:195〜176
- Hランク:175〜156
- Iランク:155〜136
- Jランク:135〜116
- Kランク:115〜96
- Lランク:95〜76
- Mランク:75〜63
内申点ランクは315が最大で20失うごとにランクが一つ下がります。
評定は5段階で計算し同ランク内でも内申点が高いほうが有利です。
なお内申ランク制度を導入しているのは北海道だけですのでご注意ください。
参考までに三年間オール4だった場合の内申点は252点(Dランク上位)、オール3だった場合は189点(Gランク中位)です。
札幌にある東西南北の公立高校の場合はAランクかBランクを目指さないといけません。
この内申点ランクをどのように使用するかと言うと具体的には以下のとおりです。
A高校ではAランクの生徒は当日のテスト250点以上で合格、Bランクの生徒は270点以上… のように高校はランクごとの合格最低点数を設定します。
そのため低ランクに位置する生徒ほど入試の難易度が増し、ある程度のランクで事実上の足切りに遭う事になります。
学区について
現在は全国的に学区撤廃の動きが盛り上がっていますが、土地の広い北海道ではそのようにはいかないようです。
北海道ではおおよそ振興局に沿って19の学区が定められており、範囲の広い上川管内やオホーツク管内、胆振管内は更にいくつかの学区に分けられています。
越境入学も一応可能なようですが交通機関などの制限によって下宿を余儀なくされるケースがほとんどでしょう。
最も考えられるパターンは小樽市在住の中学生が札幌市の高校を受験する場合です。
越境入学には2つのパターンが有り、石狩学区へ越境する場合と石狩学区以外へ越境する場合です。
前者は定員の5%までを、後者は定員の10%までを越境者入学の為の枠として設定しています。
小樽市在住の場合は後志管内でトップクラスの成績を持っていないと越境は現実的ではありません。
また札幌市立高校の場合は扱いが異なりますので越境を考えているご家庭は一度学校の先生と相談していただくことをお勧めします。
ただし越境入学に関しては普通科に限った話でそれ以外の学科に関しては原則学区制度はありません。
ただし高校所在地の管内受験生を優遇する可能性はあります。
全部落ちたらどうなるの?
北海道では内申ランク制度によって実質的に受験可能高校が分けられているため、基本的には入試に落ちるということはありません。
また札幌市以外では全体的に人口減少の傾向がありますので定員割れが発生する高校もあるでしょう。
公立高校に不合格になった際は基本的に滑り止めの私立高校に入学することが現実的ですが、最悪のケースとして私立高校を受験していない・私立高校も不合格になったというケースが考えられます。
非常に稀なケースですがこの様な場合は公立高校の二次募集に期待するしかありません。
これは公立高校の入試で定員割れが発生した場合に行われるもので一般的には面接が行われる事になっています。
もし二次募集が行われなかった場合は通信制高校などへの出願となります。
ですが全部の高校で不合格を経験することは非常に稀ですので基本的には考慮する必要はありません。
公立高校について
公立高校とは都道府県や市町村が公共事業として運営している学校の事を指します。
大抵の場合は「北海道立XXX高等学校」「札幌市立XXX高等学校」のように自治体が運営している事が分かるようになっています。
公立高校の特徴について
公立高校では小学校中学校と同様にお住いの地域の税金を使い学校が運営されています。
教員は基本的に教育委員会が任命した公務員で教員の給料は私達の税金から支払われます。
学校設備なども同様です。
自治体の公共事業として行われており、教育を受ける権利を保証するために授業料は低く設定されています。
参考までに北海道立高校の年間授業料は全日制で118,800円となっています。
これに学用品や教科書代、制服代を含めた金額が年間にかかる費用の総額となります。
私立高校と比較してある程度の水準以上の教育を受けることが出来るほか、養育費が家計を圧迫する割合も少なくなりますので大半の方は公立高校を選択します。
また一定基準を満たした場合は授業料の免除や奨学金の貸与・支給もありますのでご確認いただければと思います。
※参考:北海道教育委員会 – 公立高等学校生徒に対する授業料等の免除・奨学金の貸付等
北海道における公立高校の入試システムと対策方法
北海道の公立高校を受験するにあたって注意したい点は「学校裁量問題」の存在です。
2021年の実施を最後に廃止される裁量問題の目的は応用力をはかる事で学校の裁量で大問を差し替える形となっています。
その他は他の都道府県とおおむね共通の手法で行われています。
合格者の決定方法ですが二段階あります。
まず最初に募集人数のうち70%を内申点と当日の点数の合計で選抜し、残りの30%を内申点重視・当日点重視の選抜方法で15%ずつ合格とするようになっています。
試験問題に関しては全道共通の問題となっており書店や楽天などで過去問題集を手に入れる事ができます。
インターネット上でダウンロードが出来ますが、可能であれば書き込みなどにも対応できる書籍として持っておくと良いでしょう。
公立高校の入試に関してはどの都道府県もそうですが大体の傾向というものは決まっています。
内容は変われど毎年出題されている単元は同じということもあります。
そのため対策としては容易であることが予想されます。
まずは過去問題集を入手し子どもの苦手を把握することから始めましょう。
苦手な部分はその都度参考書を活用し早めの対策を心がけるようにしてください。
私立高校について
私立高校は学校法人と呼ばれ私立学校法に基づいて設置される高校を指します。
公的機関が運営しているわけでは無いので教員はすべて会社員という扱いになります。
「学校法人XXX学園」などと記載のある学校はすべて私立学校になります。
私立高校の特徴について
私立高校は自治体運営の公立高校とは違い学校法人と呼ばれる会社が経営している事が特徴です。
公立高校は公共事業であるため利益を追求することはありませんが、学校法人の場合は企業であるため利益を出さないといけません。
そのため授業料が高額である場合が多く、教材なども独自のものを利用しているケースが少なく有りません。
授業料以外にもお金が掛かるということを理解して置かなければなりません。
公立高校と比較しお金がかかる事が一番の違いですが、私立高校ではそれを逆手に取った高品質な教育に力を入れている事がしばしばあります。
公立高校の予算では現実的でないパソコンやタブレットを用いた先進的な授業や附属大学との連携など魅力的な教育を行っています。
生徒が授業料を支払う=学校の収益となるため定員以上の生徒を合格させることも少なくなく、公立高校へ進学するための合格辞退を考慮した合格者を出すことが一般的です。
そのため学校のレベルによっては合格しやすい印象を持っている方も少なくないでしょう。
北海道における私立高校の入試システムと対策方法
私立学校では公立高校のように自治体主体の均一化されたシステムではなく学校独自の入試問題で入学者選抜を行っています。
そのため過去問分析などには専用の問題集を手に入れる必要があります。
北海道の私立高校だけでも50校あまりと各高校の傾向と対策方法を一概に申し上げることは出来ませんが、過去問題集にはたいてい出題傾向と対策のポイントについて記載があるはずなので、そちらを参考に受験対策を進めることとなります。
私立高校では出題傾向が公立高校と比較してより強い傾向にあります。
中には「お決まり」とも呼べるほど毎年出題されているような問題もありますので目を凝らして注意深く観察してみると良いでしょう。
出願校の選び方ですが、基本的に専願の場合は優遇されますのでレベルの高い高校に挑戦する場合も悩むことはあまりありません。
併願の場合だと自分のレベルと合致する学校を中心に洗い出す必要がありますが、公立高校への入試に失敗した場合には通う必要が生じてきますので妥協して選ぶということが無いようにしましょう。
受験科目は3パターンに分かれており「英国数パターン」「5教科パターン」「それぞれのパターンに面接が加わる場合」が一般的です。
面接対策を行いたい際は学校の教員や学習塾の責任者に相談の上プログラムを組むようにしましょう。
北海道の高校紹介
北海道の高校について紹介します。
今回は特に進学に力を入れている高校をピックアップしました。
難易度はどの学校も高いですが、合格できるように余裕をもって勉強スケジュールを組むように心がけてください。
札幌北高校
札幌市北区に校舎のある札幌北高校です。
偏差値は71と道内トップクラスで華々しい進学実績を誇っています。
学校HPでは最新の進学実績が平成30年度となっており少々古い情報ではありますが東京大学に4名、京都大学に2名、大阪大学に8名、東北大学に9名と有名大学への進学実績は良好です。
北海道大学へは122名を進学させており、全国の医大へは27名が進学しています。
倍率は1.3倍とまずまずですが内申ランクではAが絶対条件です。
8割以上の生徒がAランクでの入学となるためご注意ください。
制服は伝統的なセーラー服で良くも悪くも「普通」といった感想を持ちそうです。
※参考:札幌北高校HP
札幌南高校
札幌南高校は札幌市中央区の幌平橋駅近くに位置しています。
札幌北高校と同様に偏差値は71と非常にハイレベルな学校であると言えるでしょう。
平成31年度の進学実績を確認すると北海道大学へは現役で64名が合格、東京大学へは14名、京都大学への進学者は8名、大阪大学へは16名と進学実績では札幌南高校が目立っています。
医学部への進学も平成31年度は現役浪人の合計で58名と非常に多いことがお分かり頂けます。
倍率は1.3倍と平均的な倍率ですが、内申ランクはAランクが必須でBランク以下の中学生では苦戦を強いられる事が予想されます。
札幌南高校は制服がありませんので通学用の服の確保に注意する必要があります。
※参考:札幌南高校HP
札幌東高校
札幌東高校は札幌市の白石区菊水にある高校です。
偏差値は68と少し他の高校と差が開いています。
SSD(Self Study Dayの頭文字をとったもの)と呼ばれる札幌東高独自の教育施策があり、内容は土曜日の学校開放です。
不明な点は先生に質問できる体制が整っているなどサポート面では札幌東高校は充実しています。
大学進学は北海道大学・GMARCH・関関同立と中堅公立大学が中心です。
倍率は1.6倍と少し高めなので内申点ランクはやはりAを確保したいところです。
他の三高に引けをとっているとは言え、ハイレベルな高校であることには代わりありません。
制服はセーラーで札幌北高校のものと比較すると紺一色となります。落ち着いた印象です。
※参考:札幌東高校HP
札幌西高校
札幌西高校は西28丁目に位置する高校で近くには円山公園もあります。
偏差値は71と北・南と並ぶトップクラス校として知られています。
札幌南高校と同様に制服がなく自由な服装が可能である事が特徴的です。
進学校としても名高く北海道大学に86名が、東京大学に1名が、京都大学に6名が進学しています。
私立大学でも早慶上智・関関同立など毎年コンスタントに進学実績を積んでいます。
倍率は平成31年度で1.6倍とやや難しい競争率となっています。
札幌西高校を受験する際も内申点ランクはAをキープして臨みましょう。
※参考:札幌西高校HP
さいごに:特に理由がなければ公立を
公立高校と私立高校の違いについて中心に解説しました。
特別な理由がない限りは費用が安く、道や市が責任を持って授業を行ってくれる公立高校へ進学させるべきでしょう。
私立高校は特徴的な教育を行っている事から大変魅力的に映りますが、費用がかさむため家計との相談を行い計画的に決めましょう。
私立高校への進学で経済的な負担が大きい場合は一定条件のもと国や道からのサポートを受けられる場合があります。
下記の北海道教育委員会HPから「教育費の負担軽減」を選択し、支援制度についてご覧になってください。
※参考:北海道教育委員会HP
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。