2005年に発売された「脳を鍛える大人のDSトレーニング」により、爆発的に流行した脳トレ。
このゲームソフトは日本で350万本以上、世界では1900万本以上という大ヒットを記録しました。
現在でも東大生が考えた脳トレや脳トレをまとめたサイトが多く存在します。
多くの方が簡単な計算やパズルゲームといった脳トレを行った経験があるのではないでしょうか。
このように脳トレというのはすでに多くの人がご存知の言葉であり、脳トレが思考力や記憶力を高めるということも当然のように認識していることだと思います。
しかし、複数の研究にて脳トレに本当に効果があるのか?と疑問が呈されているのです。
実際に2016年には脳トレの効果が認められず、脳トレゲームの提供を行っていた企業に対して約2億円の罰金処分が下される という事態がアメリカで起こりました。
そこで当記事では脳トレに関する様々な研究をご紹介。
加えて脳トレの例題や脳の活性化のために必要なことなども併せてご紹介いたしますので、ぜひ最後までお読みください。
脳トレに効果はない!?複数の研究で効果が否定されている
それではまず脳トレの効果を否定している研究からご紹介いたします。
脳トレゲームを行なった結果記憶力に関する回答率が17%低下
まず最初にご紹介するのは2009年にフランスのレンヌ大学に属するAlain Lieury教授が行った研究です。
この研究では67人の10歳児を4つのグループに分け、2つのグループにニンテンドーDSを使った記憶力コースをプレイさせ、もう一つのグループには紙と鉛筆を使ったパズルを与え、残りのグループには通常通りの授業を行うという実験を行いました。
そして7週間の期間を経た後、子供達にロジックテストや言葉の暗記などのテストを受けさせたところ、記憶力に関する問題の回答率はDSの記憶力コースをプレイしたグループは17%低下、紙と鉛筆を使ったパズルを与えられたグループは33%向上という結果が得られたのです。
また論理に関する問題の回答率はDSの記憶力コースをプレイしたグループと紙と鉛筆を使ったパズルを与えられたグループが10%向上、通常通りの授業を受けたグループは20%向上という結果でした。
脳トレをした結果特に変化なし
次にご紹介するのは2010年にBBCの科学番組「Bang Goes The Theory」とケンブリッジ大学のAdrian Owen博士が共同で行った研究です。
この研究では1万人以上を対象に脳トレ系ゲームに効果があるか検証するという大規模な実験が行われました。
対象者は「論理的思考力を鍛える脳トレ系ゲームをするグループ」「短期期間を鍛える脳トレ系ゲームをするグループ」「脳トレ系ゲームはやらずネットサーフィンするグループ」の3つに分けられ、6週間後にテストを受けました。
その結果、上記3つのグループの成績は特に目立った差がないことが明らかになったのです。
クロスワードや数独では知力低下は防げない
最後にご紹介するのは2018年にイギリスのグランピアン州国民保健サービスとスコットランドのアバディーン大学などが共同で行った研究です。
この研究では子供の頃に知能テストを受けた498人に対しておよそ64歳から15年間、5年間に渡って記憶力の処理能力のテストを実施しました。
その結果クロスワードや数独を解いても知力に差は見られず、「クロスワードや数独を解いても知力低下は防げない」と結論づけるに至ったのです。
脳トレ研究の今は?最新の研究報告をご紹介
上記にて脳トレの効果を否定する3つの研究をご紹介しました。
研究結果を受けて「脳トレには効果が無いのか・・・」と残念がった人もいることでしょう。
しかし、残念がるのはまだ早いかもしれません。
なぜなら最新研究にて「脳トレには効果がある」と結論づけられているためです。
早速以下にてその内容をご紹介します。
論理パズルに定期的に取り組む50歳以上の人の脳は平均8歳若い
イギリスのエクセター大学とキングス・カレッジ・ロンドンが2019年に行った研究にて、「クロスワードパズルや数独などを定期的に行っている50歳以上の人は、より賢い脳を持っている」と発表されました。
この研究では19000人以上を対象に認知テストを実施し、クロスワードパズルや数独を解くことと脳の機能との相関関係を探る実験を行いました。
その結果、定期的に論理パズルに取り組んでいる人ほど注意力や記憶力に優れ、取り組んでいない人と比較して脳が平均8歳若いことがが明らかとなっているのです。
脳トレ効果の見える化が進む
近年では脳トレを行なった際に脳がどのような動きを行うのか視覚的に確認できる研究も進んでいます。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」の監修で知られる川島隆太教授が指揮をとり、脳波の計測装置の開発が行われているのです。
この装置は集中すれば照明器が赤色に光り、リラックスすれば黄、緑、青色に変化するようになっており、リアルタイムで脳の活動を把握することができます。
現状としてこの装置を利用した脳トレ効果に関する研究は報告されておりませんが、今後エクセター大学とキングス・カレッジ・ロンドンで発表されたような研究結果が報告されるようになるかもしれません。
オススメの脳トレゲームをご紹介!
ここまで読んで脳トレゲームそのものに興味が沸いてきた方もいらっしゃるかもしれません。
そこで以下にオススメの脳トレゲームをいくつかご紹介します。
クロスワードパズル
クロスワードパズルはヒントを元に、縦横に交差したマスに該当する言葉を埋めていくゲームです。
発祥は1913年に雑誌「ニューヨークワールド」にアーサー・ウィン氏が掲載したものだそうです。
数独
数独は3×3のブロックで区切られた9×9の正方形の枠内に1〜9の数字を入れていくゲームです。
縦横(場合によっては斜め)の各列や太線で囲まれた3×3のブロック内に同じ数字が1つしか入らないように数字を入れていきます。
簡単な計算
「3+3」「6×9」など簡単な計算も脳トレとして人気があります。
楽しむコツはできる限り早く計算を行うことです。
ゲームではタイムトライアルが行われていることも多く、その記録をどんどん短くしてく楽しさがあります。
マッチ棒パズル
マッチを一本の直線として指定された形を作るパズルです。
「マッチ棒で作られた30に一本足して都道府県名を作りなさい」「マッチ棒で作られた10から1本動かして半分の数字にしなさい」など一見すると、どうすれば良いかわからないものが多く非常に人気があります。
脳を活性化するためにはどうすれば良いの?
上記にて脳トレの効果を否定する研究と肯定する研究をそれぞれご紹介いたしました。
脳トレの効果は未だ議論が交わされており、明確な結論は出されていません。
「じゃあ脳に良いと明言されていることは何も無いの?」と感じた方も多いかもしれないですね。
そのような方のためにぜひご紹介したいのが「話食動眠」です。
これは生涯にわたって脳や健康を保つ方法の研究を行う生涯健康脳住宅研究所が提唱している言葉で、脳を活性化する4つの習慣「会話」「食事」「運動」「睡眠」の4つをまとめたものです。
以下にてその詳細をご紹介いたします。
会話をして人とコミュニケーションをとる
まず最初にご紹介するのは「会話をして人とコミュニケーションをとる」ということです。
普段意識することはほとんど無いと思いますが会話をすることは脳を大きく刺激し、言語機能のある前頭葉に加えて頭頂葉、後頭葉を刺激します。
また効果が出るためには毎日継続することが重要となるため、最低でも1日1回は会話をすることを心がけましょう。
料理をする
次にご紹介するのは「料理をする」ということです。
料理は材料選びから下ごしらえ、味付けや盛り付けなど考えることが連続します。
そのため脳には非常に刺激的で、前頭葉や頭頂葉、後頭葉などあらゆる部分を活性化するのです。
また食材は魚や、野菜、穀類と食物繊維が豊富な食品も脳に良いことで知られています。
適度な有酸素運動をする
次にご紹介するのは「適度な有酸素運動をする」ということです。
やや息が上がる程度の有酸素運動を30分ほど行うと神経細胞のエネルギー源が作られ、海馬が大きくなります。
また30分ほど時間を取るのが難しいのであれば、10分程度のウォーキングや軽いランニングでも構いません。
実際にカリフォルニア大学と筑波大学の共同研究では、10分ほどの軽い運動でも記憶力が向上することが報告されています。
適切な睡眠時間をとる
最後にご紹介するのは「適切な睡眠時間をとる」ということです。
適切な睡眠時間というのは子供と大人によって異なり、幼児は10〜13時間、小・中学生は9〜11時間、高校生は8〜10時間、大人は7〜9時間と言われています。
適切な睡眠時間を取ることで脳に蓄積する異常なタンパク質「アミロイドβ」を洗い流すことができるのです。
また昼寝も脳に効果的ですが、睡眠時間は15分程度にしましょう。
それ以上の睡眠をとってしまうと夜に眠りにくくなってしまいます。
まとめ
以上、「脳トレは本当に効果があるのか?」という疑問に関するさまざまな論文および脳を活性化する4つの習慣をご紹介しました。
現状として脳トレが脳を鍛えられるかどうかということに関しては明確な結論は出ていません。
が、悪影響が出るということではもちろん無いので趣味として楽しむのには十分でしょう。
また脳を活性化する4つの習慣というのは誰でも実践ができる簡単なものです。
もし脳を良い状態にしたいということであれば、まずは会話や料理、運動、睡眠を心がけることから始められてみてはいかがでしょうか。
当記事がその参考になれば幸いです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。