「うちの子が全然勉強したがらなくて困っている」という親御さんはいませんか?
なかには、お子さんが受験生なのにちっとも勉強しなくて心配だ、という親御さんもいるでしょう。
受験生に限らず、小学校低学年から大学受験生まで、どうしたら自分から勉強する子供になるのだろうかと悩む親御さんは大勢います。
そこで今回は、子供が自ら勉強しない理由と仕組み、解決法まで解説したいと思います。
大人の声がけは意味がない?
子供たちに、自分から進んで学習させることは、とても難しいことなのです。
それでも大人たちは、勉強を「しなければならないもの、けれどもできれば避けたいもの」と考えるため、勉強をしない子供を目にすると、たまらず「声がけ」をしてしまいます。
けれども声がけは、やってはいけないというものではありませんが、まず効果は期待できないと思ったほうがいいでしょう。
声がけしたにもかかわらず、子供たちが勉強を始めない姿を目にした大人は「声がけの種類が悪いのではないか。もっと別の声がけがあるのではないか?」と思ってしまいます。
声がけにも様々ありますが、例えば、「勉強しなさい」「宿題しなさい」といった指示命令型の声がけだけでなく、「そろそろ勉強やったほうがいいんじゃないの?」「もう時間よ」といったものも示唆型の声がけといえます。
残念ながら、そうした声がけによって子供が自ら前向きに勉強するようになることは難しいでしょう。
なぜなら、もしも大人の声がけによって、子供たちが進んで学習するようになるのであれば、その「魔法の言葉」はすでに世の中に広まっていて、今では自ら進んで勉強する子供だらけになっているはずだからです。
けれども今現在、残念ながら、そのような事実はありません。
このことは「大人の声がけにはあまり効果がない」という結果をはっきりと証明しているといえるでしょう。
声がけに効果が期待できないのであれば、大人は子供が自分から勉強するのをじっと待つしか方法がないのでしょうか?
その答えは、半分イエスで、半分ノーです。
自ら進んで勉強する子供になってほしい、と大人が思うのであれば、子供に対して出来ることはとても少ないかもしれませんが、まったくゼロということはありません。
例えば、子供たちに対して「あれしなさい、これしなさい」と言わないことも、その中のひとつです。
なぜなら、普段から指示や示唆、あるいは命令ばかりされている子供は、自ら考えたり行動したりすることをやめてしまうからです。
では、自主性に任せて子供が自分からやる気になるのを待つしか方法はないのでしょうか。
進んで学習するための「仕組み」づくり【習慣化】
指示を与えることなく、子供が自分から進んで勉強するようになるために、ここで提案したいのが、「声がけ」ではなく「仕組みを作る」ことです。
つまり、子供が進んで学習するための「仕組みを作る」のです。
この「仕組み」作りに大人が積極的にかかわることで、状況が改善するケースがあります。
そのためには「習慣化」と「好奇心」がとても大切となります。
順に説明しましょう。
【習慣化】今ある習慣に、新しい習慣を加える方法
ご飯を食べる、お風呂に入る、歯をみがくといったことは、すでに日常のなかで習慣化されたタスクです。
このような「今ある習慣」に、新しい習慣を組み込んでしまいましょう。
例えば、歯をみがく前や朝起きた時、朝食の前にプリント学習に取り組む、といったことができます。
この方法は、すでに多くの家庭で取り入れられているやり方で、比較的習慣化しやすいといわれています。
さらには、子供が未就学児のころのような比較的小さいときから行う方が効果的なようです。
小さなときから「このスタイルが当たり前なのだ」という状態にしておくことで、同じことをするにしても苦になりにくく、身に付きやすいでしょう。
【習慣化】「見える化」させる方法
やるべきことを「見える化」させることで、自ら進んで行動するようになるといわれています。
方法は簡単で、やるべきことを手帳などに書き、終わったら消し込みをして、ポイント化するという仕組みです。
「見える化」させることのメリットの一つには、いつ・何をしなければならないかが明確になることです。
さらに、やるべきことがまだ終わっておらず、消し込みがされていなければ、「消し込みをしたい」という気持ちが出てきて、自ら消し込めるような行動をするようになるという仕掛けもあります。
ゲームのようにポイント化して続けていくと、今までの記録が数値化されて、自分の成長が「見える化」することができ、さらにやる気につながっていきます。
習慣化することで、やっている内容がさほど楽しくなくても、継続することができるというメリットがあります。
例えば、歯磨きという習慣は決して楽しいものではないですが、毎日の習慣になっていることで継続することができます。
もしも勉強を習慣化できれば、毎日継続して勉強することになります。
うまくいけば自然と学力が上がりその結果、さらに「やる気」につながるでしょう。
ここでのコツは、習慣化するには例外の日を作らないということです。
例えば、勉強であれば、学校のある平日の学習ももちろんですが、休日でも5分でもいいから「やった」という実績を残しておくことが大切です。
「三日坊主」という言葉があるように、インターバルをおくと、人は再開するのに大きなエネルギーが必要になるので、なかなか再開できなくなる場合が少なくないからです。
進んで学習するための「仕組み」づくり【好奇心】
学校の勉強はやる気が出なくても、自分の興味があることなら自ら進んで学べるという人は多いのではないでしょうか。
「子どもの頃は、歴史の勉強が嫌いだったのに、大人になってから大河ドラマを見て急に戦国時代にハマった」という大人は少なくありません。
そんな大人なら、本を読んだり、ネットで検索したりして、自分から歴史を学んでいくでしょう。
小さな子どもでも、鉄道好きな子は、大人が何も言わなくても鉄道に関する知識をどんどん吸収して学んでいきます。
つまり、興味・関心があるかないかということも、学習する上では決定的な要因の1つになるのです。
興味・関心といった好奇心があれば、子どもは自主的に行動します。
ということは、勉強そのものを通じて好奇心を引き出す仕組みを作り出せれば良いのではないでしょうか。
本来ならば、学校の勉強や宿題が子供の「好奇心(興味・関心)」を満たしてくれればいいのですが、残念ながら、現実は必ずしもそうではありません。
そのため子供たちには、場合によって大人の手助けが必要となるのです。
やり方としては、勉強内容を子どもの好奇心と「リンク」させる方法があります。
その例を2つ紹介しましょう。
好奇心を勉強の「内容」にリンクさせる方法
子供の好奇心を勉強内容にリンクさせる方法ですが、例えば、「鬼滅の刃」が好きな子供を例にあげてみます。
算数の速さの文章題の中に「太郎君」と「花子さん」が登場した時には、「鬼滅の刃」主人公の「炭治郎」「禰豆子」に置き換えてしまいます。
もしも鉄道好きの子であれば、東海道線と新幹線に置き換えてしまうなどです。
この方法は、ありえないような場面が作られるため、笑いとともに、子供たちの好奇心をそそる効果があります。
取り組みにくい問題などにあたったときには、子供たちにとって身近で興味が持てそうな用語に置き換えて説明すると、より効果的です。
好奇心を勉強の「形式」にリンクさせる方法
子供はゲーム・クイズ・なぞなぞが大好きです。
このことから、勉強も、ゲーム・クイズ・なぞなぞの一種と思えてしまえば、好きになってくれる可能性が高いでしょう。
例えば、国語であれば大人が読み聞かせをして、問題にさしかかった時には、設問をクイズ風に読んであげましょう。
テレビのクイズ番組のように制限時間を20秒・30秒などと設定し、答えられなかった時には「ヒント」を言ってあげます。
クイズ番組ではヒントを与えるケースも良くあることですね。
また、算数の計算問題であれば、ストップウォッチで計測したり、制限時間を決めて正答率を記録するのも効果的です。
新記録更新!の時には一緒に喜んで盛り上がるようにすれば、親子で楽しい勉強時間を過ごすことができるのではないでしょうか。
子供によって成績が異なるのは獲得する知識の量が違うから
学校でも塾でも、子供たちに対して教える内容と量は同じです。
子供たちは必ずどの先生からも平等に教えてもらっています。
けれども、成績にバラつきが出るのはなぜなのでしょうか?
それは、成績の良い子供は同じ授業からでも多くのことを学びとることができるのに対して、成績が良くない子供は授業から学ぶ量がとても少ないからと考えられます。
この違いはどこから来るのかというと、子供が「自ら学ぼうとするかどうか」によって差が出るのです。
ただ教えてもらうのを待っている子供たちは、どうしても授業からの学ぶことが少なくなってしまいます。
それに対し、分からないことを調べたり他の人に聞いたりすることができる子供は多くを学ぶことができ、成績も伸びます。
つまり、成績の違いは教えてもらった量ではなく、子供自身が自分で学んだ量によって決まるのです。
学ぶための方法、つまり「勉強の仕方=勉強法」も大切です。
成績が良い子供は自然と勉強法を身につけているといえます。
勉強法がわかっているので、勉強がどんどん進み、それに比例して学力が上がるのです。
一方、成績があまり良くない子供は勉強法を知らないことが多いようです。
勉強方法がわからないので何をしたらいいのかがわからないのです。
このような子供たちが、勉強法を身につけることで自分から勉強を始めるようになった、というケースは少なくありません。
もしも勉強の仕方がわからない、という子供がいたら、大人が少し手をかけてあげて、勉強がしやすい仕組みを作ってあげたり、好奇心を刺激してあげてみてください。
そうすることで、自ら勉強を始めるようになるかもしれません。
勉強が苦手な子供に大人ができること
「なかなかやる気が出ない」「勉強に取りかかるまでに時間がかかる」といった、勉強が少し苦手な子供に対して、大人ができることは、ほかに何があるでしょうか。
勉強が苦手な子供たちは、「勉強は大変なものだ」というように、勉強に対するイメージが凝り固まってしまっているケースが多いようです。
けれどもこのことは大人の私たちにも言えることです。
例えば膨大な量のタスクをこなさなければならなくて、それにどれくらい時間がかかるのか見当もつかない場合は、ついつい後回しにしてしまい、なかなか取りかかることができないのではないでしょうか。
けれどもしこれが、10分くらいでこなせる量の仕事であれば、気楽に取り組めるはずです。
それは子供でも同じことがいえます。
もしも子供がやる気が出ないようなときには、そのこにとってすぐに終わるくらいの量まで学習量を減らすことが大切です。
その時には、直接子供にどれくらいの量ならばすぐに勉強を始められるのかと率直に聞いてみることをお勧めします。
それを受けて無理なく取り組める量まで減らすことができれば、子供にとって心理的なハードルがぐっと下がります。
いやいや勉強し始めるのではなく、ごく自然に取りかかることができるように変わるはずです。
子供にとっての最適なボリュームがどのくらいなのかは、大人としても迷うところですが、勉強量は子供自身に決めてもらうのがいちばんいいでしょう。
例えば、
「毎日、漢字何個だったら覚えられそう?」
「計算の問題、いくつならやり切れる?」
と、訊ねてみてください。
もしも子供の答えがあまりにも少なかった時にも、基本的には、子供自身が決めた量を尊重してあげましょう。
大人から見て、もう少し増やしてみても問題がなさそうなら、「あなたならもっとできると思うから、もうちょっとだけやってみない?」と前向きに提案してみてもいいかもしれません。
それでも子供が少ない量を主張するのなら、お互いに納得できる妥協点を探ってみてもいいと思います。
大人のなかには、子供の勉強量を減らすことに不安を感じてしまう人もいるかもしれません。
けれども、今が「宿題すらなかなかやらない」「勉強し始めるのに時間がかかる」という状況であるならば、短時間で終わるような勉強量まで減らしてみて、ゴールがよく見えるようしてあげることが先決です。
このように、最初は極力少ない量から、小さな勉強習慣を身につけることから始めてはいかがでしょうか。
大人としては不安に思うかもしれませんが、ミニマムな勉強量がずっと続くわけではありません。
日々の習慣のなかに勉強を無理なく組み込むことができれば、徐々に勉強量を増やすこともできます。
また、もしも子供の勉強に親が関わる場合は、ずっとつきっきりになることは現実的ではありません。
はじめの段階では親は子供をサポートする形から始めていき、徐々に子供自身でできるようにしてあげるといいでしょう。
時には子供が失敗することがあるかもしれませんが、その失敗から学ぶということも大切で、親にはそれを受け止める広い心も必要です。
子供への指示はなるべく少なくして、子供自身が自分で考えられるようにするといいでしょう。
低学年のうちはリビング学習がおすすめ
小学生のうちはリビングで勉強することが多くの人からすすめられています。
理由としてはいくつかありますが、いちばんのメリットは「安心感」です。
子供が「ひとりで勉強しているのではなく、誰かがそばにいてくれる」と思える安心感は、勉強する際に大きな励みになります。
大人からするとリビングは雑音が多くてうるさくないか心配になりますが、子供の目線でいえば、親がリビングで仕事や家事をしていることは、いつもの風景であって気にならないようです。
中学生くらいになれば、子供によってはプライベート空間が必要なケースも出てきますが、小学生のうちは、親の目が届くリビングでの学習がおすすめです。
ただし気を付けてほしいことは、親が子供の「監視役」にならないようにすることです。
親の目が届くといっても、親が子供の「監視役」になってしまうと、リビング学習のメリットは一気になくなってしまいます。
「勉強をしているかどうか親からいつも見張られている」と子供が思ってしまうことがないようにしましょう。
同じように、勉強中にうるさく口をはさむことも良くありません。
子供からすれば、「親がごちゃごちゃうるさいから自分の部屋に行こう」と逃げたくなります。
基本的に、リビング学習では、親は子供から聞かれたこと以外は答える必要はありません。
親は子供から質問されたときに答えたり、頼れる場所にさえなっていれば、それで十分なのです。
子供がリビングで勉強を始めた時は、「わからないことがあったら聞いてね」と、簡単な声がけだけをしておき、あとは家事や仕事など、いつもどおりに過ごしてください。
リビングでは、親は子供のあくまでも相談相手という立場に徹底して、普段と同じ行動をして普段と同じ風景を作ることを心掛けましょう。
そうすることで、リビングが子どもの学習にとって一番良い環境になるのです。
最近は、親が在宅で仕事をしているケースも増えました。
子供が勉強している横で親が仕事をすることは、子供に対してとてもよい影響を与えます。
家で見せる姿と違う仕事向けのお父さんやお母さんの姿を目にすることで、子供はいろいろ感じるものです。
隣で親が働く時の姿を見ることは、子供の勉強の邪魔にならないどころか、むしろ子供自身で将来のことや仕事のことを考えるためのいいきっかけになることでしょう。
こうした大人の後姿を見て、自ら学習を始めるようになる子供もいるようです。
大人が自分から学ぶ姿勢を見せることが大切
先述しましたが、リビング学習のメリットは、親から子供の姿が見えるという以上に、子供から親の姿が見えるということです。
もしも子供が自ら進んで学ぶ子になってほしいと親が願うならば、親自身が子供の近くで何かを学ぶことが一番かもしれません。
子供たちは、親や大人が語る言葉ではなく、親や大人が実際にする行動をよく見ています。
親が自分で勉強している姿を子供が見たことがなければ、子供が自ら学ぶようになることは困難ではないでしょうか。
自ら学ぶ子供になってほしいと、もしも親が願うなら、学ぶことがどれくらい楽しくて、役に立つ体験であるのか、お手本を示さなければいけません。
もしも親が学ぶ中で、分からないことが出てきた時や困った時には、もちろん自分で調べても良いのですが、子供が大きければ、子供に教えてもらってもいいでしょう。
子供たちは教えられる体験は嫌というほど経験していますが、自分が教える立場に立つことは、とても新鮮に感じるはずです。
おそらく多くの大人たちは、子供や若者よりも経験や知識を多く持っているので、子供や若者に対して、教えたり与えることができるはずだと、無自覚に思ってしまいがちです。
けれども大人たちが本当にするべきなのは、与えることではなく受け取ること、答えよりも問いかけの方だといえるのではないでしょうか。
なぜなら、コミュニケーションは必ず双方向ですることだからです。
他人に影響を与えるために人ができる一番のことは、相手から何かを正しく受け取ることです。
つまり、子供に学んでほしいと思うのならば、大人自身が何かを学ぶことが、子供にも良い影響を与える一番の方法といえるでしょう。
もしも、勉強をするのが苦手だという親御さんがいたら、子供と一緒に読書をすることから始めてみてはどうでしょうか。
家族そろって、リビングでの読書を習慣化するのも良いかもしれませんね。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。