近頃、ニュースなどで「SDGs」という言葉を耳にすることが多くなりました。
話題の中に何気なく入っていることも多く、意味が分からずに戸惑ったという人もいるかもしれませんね。
今回は、「SDGs」って何?という疑問を持った人達へ向けて、「SDGs」について改めてわかりやすく解説していこうと思います。
SDGsとは何のこと?
SDGsは、Sustainable Development Goalsの頭文字をとって名付けられた名前で、「持続可能な開発目標」のことを指します。
2015年9月に開催された国連サミットで生まれました。
2001年に、「ミレニアム開発目標(MDGs)」というものが策定されましたが、SDGsはこの後継となります。
SDGsにある「持続可能な開発」とは、現代の人々が暮らしやすく、将来の世代もよりよく暮らし続けることができる開発のことです。
貧困や飢餓、環境破壊、気候変動、ジェンダーや人権といった、幅広い課題の解決に取り組むことと同時に、地球上の「誰一人取り残すことなく(leave no one behind)」持続可能な経済成長を目指すというものです。
そのために設定されたのがSDGsであり、2030年までに達成するべき17の目標とそれに次ぐ169のターゲット、達成の度合いをはかるための232の指標が採択されました。
開発目標というと、発展途上国へ向けた目標ととらえられがちですが、SDGsは発展途上国にだけ当てはめるものではなく、むしろ日本のような先進国が率先して取り組むべき問題や、全人類に当てはまる普遍的課題が多く掲げられています。
なぜSDGsが生まれたのか?
それでは、なぜ当時の国連でSDGsが取り上げられ採択されたのでしょうか。
貧困や紛争、感染症、気候変動、資源の枯渇など、いまを生きる私たちは、これまでにない数多くの課題に直面しています。
そして今のような生活を継続すれば、この先人類は安定してこの世界で暮らし続けることができなくなってしまうと言われています。
そんな危機感から生まれたのがSDGsです。
世界中の様々な立場の人々が話し合い、課題を整理し、解決方法を考え、具体的に2030年までにどうするべきか、私たちが達成すべき目標は何なのかを示しました。
それが「持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals:SDGs)」です。
SDGsは、「持続可能な世界」を実現するための、いわばナビのようなもの。
けれども、SDGsを地球規模の問題や世界全体の課題としてとらえてしまうと、あまりにも漠然としすぎていて、実現不可能とあきらめてしまう気持ちになるかもしれません。
そうではなく、身近な社会の課題とSDGsとのつながりを知ると、「持続可能な世界を築くためには、何をしたらいいのか。また、今の自分はどのように目標達成に貢献できるだろうか。」ということが分かると思います。
こうしたことを念頭に、私たちが目指すべきゴール、SDGs 17の目標の内容を見ていきましょう。
SDGs(SustainableDevelopment Goals)の17の目標を知ろう
SDGs の17個の目標すべて理解するのは難しいかもしれません。
そんな時はまず、自分にとって身近な事柄や興味のあること、住んでいる地域でのことと照らし合わることをお勧めします。
どこか遠い世界で高い理想を掲げて作られた目標ではなく、実は身近にある課題のなかに、17の目標が当てはまることを発見できるかもしれませんよ。
では、紹介します。
【目標1】貧困をなくそうあらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせることを目標にします。
【目標2】飢餓をゼロに飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進することを目標にします。
【目標3】すべての人に健康と福祉をあらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進することを目標にします。
【目標4】質の高い教育をみんなにすべての人々への、包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進することを目標にします。
【目標5】ジェンダー平等を実現しようジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行うことを目標にします。
【目標6】安全な水とトイレを世界中にすべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保することを目標にします。
【目標7】エネルギーをみんなにそしてクリーンにすべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保することを目標にします。
【目標8】働きがいも経済成長も包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進することを目標にします。
【目標9】産業と技術革新の基盤を作ろう強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図ることを目標にします。
【目標10】人や国の不平等をなくそう各国内及び各国間の不平等を是正することを目標にします。
【目標11】住み続けられるまちづくりを包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現することを目標にします。
【目標12】つくる責任つかう責任持続可能な生産消費形態を確保することを目標にします。
【目標13】気候変動に具体的な対策を気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じることを目標にします。
【目標14】海の豊かさを守ろう持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用することを目標にします。
【目標15】陸の豊かさも守ろう陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止することを目標にします。
【目標16】平和と公正をすべての人に持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築することを目標にします。
【目標17】パートナーシップで目標を達成しよう持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化することを目標にします。
持続可能な未来を実現するために
SDGsは今まさに、世界中の人々が一つになって未来に向かって取り組むべき課題の数々といえます。
ひょっとしたら、「持続可能な世界を実現するための目標が17個もあるなんて、多すぎる」と思った人もいるかもしれません。
けれども、それらの目標をひとつずつ調べてみると、その内容や分野が実に多岐にわたっているため、ひとつに、またはいくつかにまとめてしまうことはできないのです。
なぜこのように多くの目標を設定しているのかといえば、これら17の目標は、互いに関連しあい、同時に解決を目指していかなければならないものだからです。
とはいえ、すべてを把握するには課題の数が多すぎるという意見ももっともです。
そこで理解しやすいように、それぞれの目標をいくつかのグループに分けてみることにしましょう。
SDGsの17の目標に設定されたものは、大きく分けて次のような3種類+1個にすることができます。
それは、「経済課題」「社会課題」「環境課題」そして、「パートナーシップの課題」です。
そしてもっと詳細に見ると、経済課題は社会課題に支えられ、社会課題は環境課題に支えられています。
そして、パートナーシップは、上記の経済・社会・環境すべてとかかわりを持っていることがわかります。
では、それぞれの課題は、どのような目標を含んでいるのでしょうか。
まずは、「経済課題」です。これは、働き方・生産・消費に関する課題になります。
「経済問題」は、次のような目標を含みます。
【目標8】働きがいも経済成長も
【目標9】産業と技術革新の基盤を作ろう
【目標10】人や国の不平等をなくそう
【目標12】つくる責任つかう責任
次に「社会課題」、これは健康や教育に関する課題です。
社会問題は、次のような目標を含みます。
【目標1】貧困をなくそう
【目標2】飢餓をゼロに
【目標3】すべての人に健康と福祉を
【目標4】質の高い教育をみんなに
【目標5】ジェンダー平等を実現しよう
【目標7】エネルギーをみんなにそしてクリーンに
【目標11】住み続けられるまちづくりを
【目標16】平和と公正をすべての人に
また、「環境課題」は、気候や生物に関する課題です。
環境課題は、次のような目標を含みます。
【目標6】安全な水とトイレを世界中に
【目標13】気候変動に具体的な対策を
【目標14】海の豊かさを守ろう
【目標15】陸の豊かさも守ろう
そしてSDGsのなかで最後に掲げられるのが「パートナーシップ」という課題です。
パートナーシップの課題は、上記の経済・社会・環境すべてとかかわりを持っています。
このように、どの課題も他の課題と関連しており、切り離して考えることは不可能です。
2030年に持続可能な社会の実現を目指すためには、もはや一つの課題だけに取り組めば解決するという簡単な話ではありません。
この世界は様々な事象が交わりあい、常に多彩な要素から成り立っています。
現代社会に蔓延する問題の原因はひとつではなく、複数の要因によって問題が顕在化しているのです。
また、こうした多様な課題に取り組まなければならないという現状が示しているということは、私たちが「すべての課題に対してすべての人類が取り組まなければならない現実が今そこにあるのだ」という危機的認識を持たなければならない、ということにほかなりません。
これらの課題に対し、多くの人たちが速やかに取り組むことこそ、最終的に「持続可能な世界」に到達できる唯一の方法といえるでしょう。
そのためには様々な方向からの解決アプローチが必要なのです。
幸いなことに、現在すでにSDGsの取り組みを始めている団体は少なくありません。
持続可能な社会の実現のための動きは、実は様々な分野、団体で以前から始まっていたのです。
それでは、具体的にどのような取り組みがされているのでしょうか。
次にSDGsの実際の取り組み例を2例紹介したいと思います。
セサミストリートに見るSDGsの具体的な取り組み例
まずは、身近な子供向けテレビ番組の取り組み例です。
あなたは「セサミストリート」というアメリカの英語教育番組をご存知でしょうか?
1969年にアメリカで放映を開始して以来52年にわたり、SDGsが重視する「多様性の重要さ」を子供たちに伝え続けてきたテレビ番組です。
現在は放映していませんが、日本でもかつて長い期間放映されていました。
テレビ番組は知らなくても、エルモやクッキーモンスターなどの可愛らしいキャラクターたちを、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
セサミストリートでは、その制作過程において、いくつかのアプローチを大切にしています。
1つは「子供の早期教育にコミットする」ということ、また2つ目は「世界中にいる子供たちの、その場所その時のニーズに合うものを届ける」ということです。
ところで、「子供たちに向けたアメリカのテレビ番組」と聞いて、皆さんはどのような登場人物が出演していると思いますか?
セサミストリートはアメリカの番組ですが、そこには時代と共に多様なキャラクターたちが登場しています。
例えば、ホームレスのキャラクターや里子として育つキャラクター、南アフリカではHIV陽性という5歳の少女のキャラクターが登場します。
最近では、難民キャンプで生活している男の子と女の子のキャラクターが登場して、大きな反響がありました。
実際に、セサミストリートは、難民キャンプで教育を展開しており、現地では、そこで生活している子供たちが、このキャラクターに自分のことを投影しながら一緒に困難を乗り越えていくような姿が見られたそうです。
このように、ステレオタイプのアメリカ人の子供ではなく、多様な環境で育つ世界中の子供たちに受け入れられるような教育コンテンツにするべく、番組の制作に注力しています。
様々な場所に、様々なニーズを持っている子供たちがいるということを把握して、その子供たちに届くコンテンツを広げていこうと考えているのです。
また、新しいキャラクターを生み出す時には、現状の把握やニーズの分析などに十分な時間をかけ、専門家と話し合いを重ねながらじっくりと作り上げていきます。
それと同時に、新キャラクターとともに提供するコンテンツなども制作し、それらの効果測定なども行いながら、エビデンスをしっかりとって進めていくそうです。
例えば、2015年に初めて自閉症のキャラクターが登場していますが、その開発は2010年頃から始められました。
その当時、アメリカでは68人に1人の子供が自閉症と診断されているというデータがありました。
子供たちの自閉症の診断数が増加しているにも関わらず、まだまだ社会の理解が進まなかった背景もあり、このキャラクターが初めて世に出た時には大きな反響がありました。
セサミストリートの活動、そしてすべてのキャラクターには、多くの研究とリサーチの結果が反映されており、常にエビデンスで実証されたものを展開しています。
SDGsの観点では、セサミストリートは特に次の4つの項目を目指すべきゴールとして取り組んでいます。
<セサミストリートが取り組むSDGs 4つの目標>
【目標3】すべての人に健康と福祉を
【目標4】質の高い教育をみんなに
【目標5】ジェンダー平等を実現しよう
【目標6】安全な水とトイレを世界中に
セサミストリートは、今後も、世界中の子供たちに幼少期から良質な教育を届けていくということをミッションに活動していくそうです。
未来の子供たちに投資をするということは、教育・医療・経済などの面において様々な利益を生みだすということがあらゆるリサーチによって示されています。
多くの専門家やパートナーの意見をもとに、早期教育の重要性を伝えつつ世界中の子供たちを支援すること、それがSDGs促進において「セサミストリート」が果たす役割だとしています。
危機的地球環境を改善させるために。
そして持続させていくために
もう一つ例に挙げます。
SDGs促進においては、なんといっても地球環境を悪化させない取り組みが必要です。
「プラネタリーバウンダリー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
プラネタリーバウンダリーは、「地球の限界」または「惑星限界」とも呼ばれ、地球温暖化や人類が抱える難題を理解するキーワードとして活用されています。
現在人類が地球システムに与えている負荷は飽和状態にあり、気候、水環境、生態系などが本来持つ回復力の限界を超えると、非常に高い確率で不可逆的な変化を起こしてしまう可能性があります。
そうした壊滅的変化を回避するためには、人類が生存できる限界がどこなのかを知ることが重要です。
この限界点のことを「プラネタリーバウンダリー」といいます。
画像参照:wikipedia
環境省は、窒素とリンがバウンダリーを超えてしまっていることを平成25年度の環境白書で紹介しています。
窒素もリンも、生物や植物の生長に重要な栄養素です。
窒素もリンも自然界のなかでゆっくり循環しており、それ自体は悪いものではありませんが、過剰に溜まってしまうと、生物多様性に影響を与える危険性があります。
環境省では、窒素とリンの健全な循環を取り戻せることを目指しています。
そのために陸と海を一体化し、藻場や干潟など生物が棲める場所づくりを考えるための制度の検討や導入に向けた準備を行っています。
また、地球は水の惑星といわれていますが、実は97.5%は海水で、真水は2.5%しかありません。
その真水の多くは、氷河や南極大陸などの氷や地下水などであり、私たちが実際に使える水は0.01%程度といわれています。
また、地球上の陸地は地表全体の3割ほどしかありません。
この3割の陸地の中で農業に使える「有効土層」は、表面から50cmから1mくらいです。
私たちが農業に使える土地の部分は、表面にあるごくわずかな土壌でしかないのです。
使うことができる地表の土をこれからも持続的に使っていくためには、生産力を高め、品質も維持していかなければなりません。
農産物を作る際は、過不足なく必要な時期に必要なだけの養分を土に与えることが大切です。
そのためには、土壌の性質を診断し、足りない養分などを見極め、必要に応じて肥料を与えることが重要になってきます。
そのためには、肥効調節型肥料の利用や側条施肥などの技術を導入することで、必要に応じた肥料の量を適切に見極めて施肥量を減らすことや、それによりトータルの施肥コストも低減効果も期待できます。
土地も水も利用できるのはごくわずかですから、持続可能な方法で大切に使っていくことがとても重要です。
身近なことからSDGsへの取り組みを
ジャンルの異なる2つのSDGs取り組み例を紹介しました。
この2例はそれぞれ全く別の方向へ向かったアプローチにも見えますが、「持続可能な世界を目指す取り組み」という角度から眺めると、どちらも同じ方向を目指しています。
2030年に、私たちの住む世界がどのようなものになっているのかはまだ知ることはできません。
けれどもいまを生きる私たちは、SDGsの課題を意識しながら生活することで、少しでも目標の達成に近づいていくことを目指していくべきでしょう。
一人一人の小さな意識の変化が、世の中の大きな流れを作り出すことを、私たちは今までの歴史の中で学びました。
持続可能な社会の実現のためには、少しずつでも、身近なところから、自分たちができる取り組みから始めてみてはどうでしょうか。
わたしたちの小さな力を合わせて、SDGs達成のために、世の中の流れを少しずつシフトすることが大切なのだと思います。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。