四工大(東京理工系4大学)という大学グループをご存知でしょうか。
これは、芝浦工業大学・東京都市大学・工学院大学・東京電機大学という東京都内に本部キャンパスを置く4つの理工系大学について指す言葉のことを言います。
GMARCH、SMARTといった言葉のように、似たような偏差値の大学グループで、予備校や受験生たちによって便宜的に名付けられたものではなく、この四工大という言葉は4つの大学間の連携を表す言葉を表しています。
大学間の連携をすることで、より学びやすく、研究しやすいというメリットを学生たちが享受できる仕組みになっています。
具体的な例を一つあげると、各大学院の相互開放があげられます。
それぞれの大学が得意な分野を大学院間にて融通し合うことで、豊富な科目の中から多様な教育メニューや科目を履修することができます。
そしてこれは、総合大学のカリキュラムの数を優に超える科目数となっていますので、四工大で学ぶ学生は、より広い分野の中から学びたい科目を履修することができるようになっています。
四工大(東京理工系4大学)の成り立ち
「四工大(東京4理工)」が発足したのは、1996年1月。発足当初は東京都内に本部を置く芝浦工業大学、東京電機大学、東京都市大学(旧武蔵工業大学)の理工系3大学でした。
その後、1998年3月に工学院大学が加わり、いまの四工大となりました。
なぜ「四工大(東京理工系4大学)」が誕生したのでしょうか。
発足当時の日本の社会情勢を振り返ると、当時はバブル景気がいよいよ終わりを迎え、先の全く見えない不景気の時代に突入するという時期でした。
そんな世相を反映してか、当時の受験生たちの進路希望大学の傾向として、以前とは異なる次のような変化がありました。
ひとつには、将来の安定性を重視して、知名度の高い総合大学の人気が高まったこと、もう一つは都内の就職率の低下や地元志向から、都内の私立大学ではなく地方の国公立大学へと流れてしまったことです。
こうした「理工系離れ」「東京離れ」という向かい風の時期に「四工大(東京4理工)」を発足させたのには大きな理由があります。
これまでの日本の経済基盤を確立する技術者を多く輩出してきたのは、まぎれもなく東京理工系大学であるとの大きな自負からという理由が一つと、もう一つには、これから将来の日本経済を見据えた時、最先端の技術を学べる東京の理工系大学が一致団結し、不況の中にあっても、次代を担う技術者を養成しなければならない、との大きな使命感があったからでした。
このような経緯から「四工大(東京4理工)」を、大不況・東京の理工系大学受難の時代であるにもかかわらず、発足させることとなったのでした。
四工大(東京理工系4大学)の概要
この四工大(東京理工系4大学)発足当時は、大学院の相互開放が主な活動でした。
それぞれの大学の得意な分野を、大学院にて融通し合い、総合大学に負けない多様な教育メニューを学生に提供しました。
その結果、現在では豊富な選択肢の中から科目を選択することができるようになり、現在その内容は総合大学のカリキュラム数を優に超える科目数となっています。
また、学部生が大学院進学を見据えた時に、それぞれの大学院へ無試験で進学できるというメリットもあります。
それは、各大学の学部生が相互に大学院修士課程に入学できる「特別推薦入試制度」を設けているためです。
推薦枠は各大学1専攻につき1名。
幅広い専攻を選択できることは大学院希望者にとっては大きな魅力となっています。
さらに、各大学で開講する学部や大学院修士課程の授業を履修できる「単位互換制度」も実施しています。
ちなみに聴講料等は、免除されているので、多くの授業の中から選択することができ、学びの幅を大きく広げることができます。
四工大(東京理工系4大学)の受験難易度ですが、現在この四大学のなかで一番難易度が高いのが芝浦工業大学(偏差値は50.0~60.0)です。
偏差値や受験生のイメージとしては、次に東京都市大学、東京電機大学、工学院大学といった順の難易度になるようです。
東京都内に本部を持つ私立大学群のMARCHとの比較がよく話題になりますが、MARCHが文系総合大学群、四工大(東京理工系4大学)が理工系大学群と、まったく異なるタイプの大学であることを考えると、単純に同じ土俵では比べられないのではないのでしょうか。
あえて偏差値だけでいうのならば、芝浦工業大学はMARCHレベル、他は日東駒専レベルとの意見もあります。
芝浦工業大学
芝浦工業大学の偏差値は、50.0~60.0です。
建築学部は偏差値 55.0~60.0、工学部は偏差値50.0~57.5、デザイン工学部は偏差値 52.5~55.0、システム理工学部は偏差値50.0~55.0などとなっています。(第2回全統記述模試)
芝浦工業大学の創立は1927年。
創立者の「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という実学教育を継承し、日本の技術立国を支える多くの技術者・研究者を世に送り出してきました。
就職先の各企業からは、卒業生は堅実な人材であるとして高い評価を受けています。
現在の芝浦工業大学の250以上ある研究室では、機械、生命、物質・化学、電気電子情報、数理科学、建設、デザインの7系統に分類されており、独自の研究テーマが設定され、深い専門的な学びを実現しています。
大きな特色としては、「世界に学び、世界に貢献する人材」の育成をめざしている点です。
主な取り組みとして、工学英語研修や海外インターンシップなど海外留学プログラムを拡充させ、海外の学生や技術者と専門分野のコミュニケーションを取れる「グローバルエンジニア」の育成に力を入れています。
また、英語による授業開講を実施し、多様な国々からの留学生を受け入れています。
こうした取り組みから、2014年には文部科学省スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)にも採択されました。
このように、時代に則した教育研究を行い、次世代を担う高度な専門知識と技術をあわせ持ったエンジニアの育成を目指している点が大きな特徴です。
芝浦工業大学のキャンパスは3か所で、湾岸エリアの豊洲、緑豊かな大宮、優れた立地の芝浦にキャンパスがあります
豊洲キャンパスは、ビジネスと暮らしが融合する産業創造の新拠点としての機能を持ち、2022年春には第二校舎が完成予定です。
研究棟では、最新実験機器によるさまざまな研究が行われています。
広大な敷地と多くの緑に囲まれている大宮キャンパスにはSIT総合研究所(先端工学研究機構棟)があります。
ここでは、脳血管疾病、心臓疾患などの発生プログラムの解明や、ロボット技術の研究など最先端国家プロジェクトが進行中です。
都心へのアクセスが抜群で、流行の中心地にある芝浦キャンパスでは、デザインを学ぶ学生にとって刺激的な好環境のキャンパスです。
卒業後の主な就職先は、東日本旅客鉄道(20人)、東海旅客鉄道(17人)、SUBARU(14人)、大和ハウス工業(12人)、本田技研工業、NECソリューションイノベータ(各10人)、日本電気、大成建設、竹中工務店(各9人)、積水ハウス、日本発条(各8人)、SCSK(7人)、キヤノン、京セラ、清水建設、長谷工コーポレーション、スタンレー電気、オカムラ、フジタ(各6人)、東京電力ホールディングス、ソフトバンク、鹿島建設、大林組、戸田建設、伊藤忠テクノソリューションズ、日立システムズ、アズビル、アルファシステムズ、クレスコ、アウトソーシングテクノロジー、横浜市役所(各5人)となっています。
東京都市大学
東京都市大学の偏差値は42.5~57.5です。
メディア情報学部は偏差値 55.0~57.5、情報工学部は偏差値 52.5~57.5、建築都市デザイン学部は偏差値 47.5~55.0、環境学部は偏差値 47.5~50.0、理工学部は偏差値45.0~50.0、都市生活学部 は偏差値 52.5、人間科学部は 偏差値 42.5~45.0となっています。(第2回全統記述模試)
東京都市大学が誕生したのは、2009年。武蔵工業大学と東横学園女子短期大学が融合拡充されて生まれた大学です。
建学の精神は「公正・自由・自治」であり、実学重視の教育方針のもと、高度な専門性の獲得や、国際水準を備えた幅広い分野で活躍できる確かな実践力を持った人材の育成をめざしています。
「東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)」は、1年次からの準備教育と、2年次4か月間の留学を合わせた2年にわたる独自の国際人育成プログラムです。
全学部の学生が対象で、休学することなく4年間で卒業できるということから、年間300名を超える学生がオーストラリアへ渡っています。
キャリアサポート体制も整っており、就職に向けたさまざまな取り組みを行っていることで、就職に強いというのも特徴です。
全国平均に比べて優位な就職実績を収めているということからも、文部科学省による学生キャリア支援に対する補助金事業に採択され、最高評価の「S評価」を獲得しています。
キャンパスは、理工学部・建築都市デザイン学部・情報工学部のある世田谷キャンパス、環境学部・メディア情報学部がある横浜キャンパス、都市生活学部・人間科学部のある等々力キャンパスの3拠点があります。
主な就職先は学部別に次のようになっています。
工学部は、大成建設(10人)、横浜市役所(9人)、東日本旅客鉄道、富士電機各(各6人)など。
知識工学部は、日立システムズ、日立情報通信エンジニアリング(各4人)、伊藤忠テクノソリューションズ、オカムラ、ISID-AO(各3人)など。
環境学部は、大和リース、アジア航測、石勝エクステリア(各2人)、東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、本田技研工業、清水建設、キヤノンマーケティングジャパン、アイリスオーヤマ、足立区役所(各1人)など。
メディア情報学部は、日本電気(5人)、日立製作所(3人)、SCSK、大塚商会、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(各2人)など。
都市生活学部は、大和ハウス工業、イオンモール、パナソニックリフォーム、清水総合開発、共立建設(各2人)など。
人間科学部は、渋谷区役所(福祉職・保育職)(5人)、世田谷区役所(保育職)、大田区役所(福祉職)、日本郵便(各2人)など。
工学院大学
工学院大学の偏差値は50.0~60.0です。
建築学部は偏差値 55.0~60.0、工学部、情報学部は偏差値52.5~55.0、先進工学部は偏差値50.0~57.5となっています。
工学院大学の起源は、1887年に創立された「工手学校」で、工科系私立大学では伝統のある大学です。
2020年4月、先進工学部にて学部と大学院を一体に捉える6年一貫教育「大学院接続型コース」を導入しました。
これは、入学時に学科を選択するのではなく、将来の進路を見据えた履修モデルを選択するというものです。
2年次より希望学科に所属し、所属学科の分野(主専攻)と関連分野(副専攻)を横断的に学ぶことで、広い視野や複眼的な思考を養います。
工学院大学の学びの特徴として、アクティブラーニングにより理論と実践をバランス良く身につけることがあげられます。
また、将来の国際人を育成すべく、「ハイブリッド留学プログラム」というカリキュラムがあります。
担当教員を海外に派遣し、現地提携校にて正規の授業を開講するので、留学先大学への授業料の支払は不要です。
専門科目の授業は日本語で、ホームステイでの滞在中の生活は英語で行う、というハイブリッド環境による留学生活を送ることができるのが特徴です。
全学部の1・2年生が学ぶ八王子キャンパスは、広大な敷地に大規模な実験施設や研究施設を整備しています。
ここでは高度な教育・研究を支える施設や設備が充実しており、有意義なキャンパスライフを過ごすことができます。
新宿キャンパスでは、全学部の3年生が学び、4年次は所属する研究室により通学キャンパスが異なります。
主な就職先は、学部別に次のようになっています。
先進工学部は、大気社(5人)、小糸製作所、ミネベアミツミ(各3人)、キユーピー、三機工業、スズキ、タチエス、日本電産、日本電子、ロッテ(各2人)など。
工学部は、スズキ(4人)、東京都住宅供給公社、三菱電機ビルテクノサービス、ミネベアミツミ(各3人)など。
建築学部は、大和ハウス工業(9人)、大成建設(8人)、積水ハウス、野村不動産パートナーズ(各7人)、アキュラホーム、竹中工務店(各6人)など。
情報学部は、NECネッツエスアイ、日本システムウエア(各5人)、エヌ・ティ・ティエムイー(4人)、SOMPOシステムズ、TDCソフト、凸版印刷、富士ソフト(各3人)など。
東京電機大学
東京電機大学の偏差値は42.5~55.0です。
システムデザイン工学部は偏差値50.0~55.0、未来科学部は偏差値47.5~52.5、工学部は偏差値 45.0~50.0、理工学部は偏差値 42.5~52.5となっています。
東京電機大学が掲げている建学の精神は「実学尊重」。
これは、技術を学ぶだけでなく実社会で役立てることをめざすということです。
そのため、充実した実験・実習科目を設置し、学生の創意工夫の力を育てる教育を数多くとり入れ、各学部では特色のあるカリキュラムを編成しています。
システムデザイン工学部では、「工学と人間科学からの価値創造」に挑戦すること、未来科学部では、3学科の協働を進め人間中心のデザイン力を養うこと、工学部では、低学年次と高学年次で工学の多彩な学びを用意しています。
理工学部では、6学系16コースで、1年次は学系の共通科目を学び、2年次で主コースと副コースを選択します。
副コースは他学系から選択することもできます。
特色ある実践的な学びが多方面から評価されていることもあり、「東京電機大学は就職に強い」と多くの卒業生たちは実感しています。
2019年3月卒業生の就職内定率は99.1%、それぞれが大学で学んだ専門分野を生かし技術職として就職しています。
総合電機メーカー、自動車メーカー、鉄道会社のような誰もが知る企業だけではなく、一般的に知名度が低くても技術力のあるメーカーなど、グローバルで活躍する企業への就職者も多くいます。
また、卒業生たちの就職先企業への満足度も高く、企業からは真面目でコツコツと問題解決に取り組む人材であると高評価を受けています。
東京千住キャンパスでは、システムデザイン工学部、未来科学部、工学部、工学部第二部の学生が学んでいます。
交通のアクセスも良く、最先端技術による省CO2のエコキャンパスとなっていて、免震、制震、非常用設備など防災機能が充実しています。
埼玉鳩山キャンパスでは、理工学部の学生が学びます。
広大な敷地は自然環境に恵まれ、勉学に最適です。
約300台が駐車できる学生駐車場があり、自動車通学も可能です。
全面人工芝のグラウンドがあり、授業だけでなく他大学との交流試合などにも利用されています。
主な就職先は学部別に次のようになっています。
未来科学部は、NTTテクノクロス、大和ハウス工業(各4人)、NECソリューションイノベータ、キヤノンITソリューションズ(各3人)など。
工学部は、スズキ(6人)、SUBARU(5人)、アズビル、日本電産(各4人)、東日本旅客鉄道、キヤノン、住友電設、富士電機、日本電気(各3人)など。
理工学部は、東日本旅客鉄道(8人)、SUBARU、凸版印刷(各3人)、沖電気工業、大日本印刷、スズキ(各2人)など。
まとめ
各大学の特徴を紹介しましたが、それぞれに特徴があることがおわかりいただけたのではないかと思います。
総じて理工系の大学といっても、それぞれ専門の技術研究だけにとどまらず、英語教育や国際プログラムにも、力を入れているということが一昔前と異なる点かもしれません。
これは、これからの社会で必要とされる、「グローバルエンジニア」として育成することを重要視しているという姿勢の表れではないでしょうか。
また、実学重視ということもあり、研究が直接就職に結びつきやすいからなのでしょうか、就職に関しても高水準で安定的という点も注目すべきことです。
就職率の高さや、就職先への満足度が高いということはとても魅力的です。
また、卒業生たちは、堅実で真面目に業務に取り組む人柄であると、就職先の企業から高い評価を得ています。
これは、卒業生たちが社会人として、各分野で生き生きと活躍していることの表れといえるのではないでしょうか。
知名度やランキングではない、四工大(東京理工系4大学)の真の実力をぜひ見極めた上で、志望校選びの参考にしていただけると幸いです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。