「大学に入って留学をしてみたい!」こういった思いを抱いて、日夜勉強に励む受験生も世の中には多くいるのではないでしょうか。
実際に文部科学省が2019年1月に発表した「外交人留学生在籍状況調査及び日本人の海外留学者数等について 」によると、2017年度の日本人留学生の数は105,301人で、この数字は近年ずっと伸び続けています。
このように「留学」というのは多くの学生にとって憧れの一つと言えるでしょう。
そしてその留学先の一つとして最も人気なのがアメリカです。
先述した文部科学省のデータによると、日本人留学生105,301人のうち19,527人がアメリカに留学しており、これは留学生数最多となっています。
留学希望者の中にも「留学するならアメリカが良い」という思いを抱いている方も多いのではないでしょうか。
しかし、そういった方々にぜひ一点あらかじめ知っておいていただきたいことがあります。
それは「アメリカの学生は非常に勉強熱心である」ということです。
留学と聞くと、何となく華やかで楽しいキャンパスライフを連想してしまいますが、アメリカの学生の多くが日夜必死で勉強をしているのです。
当記事ではそんなアメリカの学生の実情をご紹介すると共に、改めて留学することの意義を解説いたします。
アメリカと日本の大学生の時間は本当に違う?その理由は?
さて、冒頭で「アメリカの学生は非常に勉強熱心である」という結論をいきなり記載いたしましたが、こちらに関しては疑問が残るか方もいらっしゃるかもしれません。
「本当にアメリカの学生は勉強熱心なの?自由奔放なイメージも強いけど?」こういった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで上記の結論が正しいのかデータや実際に留学した方の感想を基に検証いたします。
データから検証した場合は?
まずデータからアメリカの学生の勉強時間を見てみましょう。
今回は文部科学省が2012年に発表した「学生の学修時間の現状 」を参照いたします。
この発表の中では日米の大学生の1週間あたりの勉強時間を比較した結果が掲載されていました。
以下に引用します。
0時間:日本9.7%/アメリカ0.3%
1〜5時間:日本57.1%/アメリカ15.3%
6〜10時間:日本18.4%/アメリカ26.0%
11時間以上:日本14.8%/アメリカ58.4%
日本では1週間あたりの勉強時間が「1〜5時間」が57.1%で最多だったのに対し、アメリカでは「11時間以上」が58.4%で最多となっています。
またアメリカの大学生が平日1日にどれくらい勉強しているかということを調査したUNITED STATES DEPARTMENT OF LABORの「Time use on an average weekday for full-time university college students」によると、平日1日の勉強時間は3.3時間であることがわかりました。
これらのデータからやはり「アメリカの学生は勉強熱心である」と結論づけられるでしょう。
ちなみに上記で参考にした「学生の学修時間の現状 」の中には学年別および専門別の日米間の比較もなされており、以下のような結果となっています。
1年生文系:日本8.9時間/アメリカ13.3時間
1年生理系:日本9.6時間/アメリカ15.7時間
4年生文系:日本14.5時間/アメリカ13.1時間
4年生理系:日本28.6時間/アメリカ16.6時間
日本の4年生理系は卒論の準備などで極端に勉強に割く時間が忙しくなる一方で、アメリカの場合は学年度ほとんど勉強時間に変化が見られません。
これは学年問わずコンスタントに勉強に向かうアメリカの大学生の姿勢を浮き彫りにした結果ですね。
実際に留学をした方の印象から検証した場合は?
では次に実際にアメリカに留学した方の印象を検証してみましょう。
以下にアメリカに留学した方や教鞭を執った方3名の感想を引用いたします。
アメリカに上陸して自分の中で何が変わったか。とてもくだらないことを書くようですが、勉強時間が増えました。異常なほど増えました。アメリカの学生はよく勉強する。という言葉を聞いたことがあると思いますがこれはある程度事実です。ただ彼らは勉強時間を盛る傾向にあるので口先だけで言われるのはあまり信じてはいませんが。少なくとも、勉強をきちんと学期中コンスタントにこなさなければ単位がもらえないのは事実です。
モンタナ大学の学生に過去10年間教えてみて、とにかく勉強量の多さとその真剣な勉強ぶりには驚かされた。アメリカの大学生の中には、週日平均睡眠時間が3~4時間で、1週間何百ページにもなる課題図書の購読をこなす学生も多い。学生たちのファッションは実にシンプルで、学内で化粧をしている女子学生はまれである。毎週金曜日の午後以外はひたすら勉強という感じである。
「アメリカの大学教育の現状」(2004年)より
私はアメリカのアリゾナ州の大学の語学学校に通っています。基本的には午前中に授業あり、宿題や復讐などに追われる毎日です。私が通っている語学学校のプログラムでは、1時間30分の授業ひとつに対し、自宅学習が2時間ほど要求される内容となっています。
1日にライティング、オーラルコミュニケーション、グラマーまたはリーディングの3クラス受講しているので、自宅で6時間ほど勉強が必要になります。しかし、実際には日常的に6時間も勉強することはありませんが、宿題のボリュームが多いときや、テストの時期には6時間で足りないほどで、週末も出かけることなく勉強に追われるようになります。
上記データの中で「アメリカの学生の平日1日あたりの勉強時間は3.3時間」という統計結果がありましたが、実際にアメリカに留学した方や教鞭を執った方でもその通りに「アメリカに行くと勉強時間が増える」「アメリカの学生は勉強熱心」といった印象を持っているようです。
このようにデータや実際の印象などから検証した結果、やはり「アメリカの学生は勉強熱心」と結論づけられるでしょう。
なぜアメリカの学生は勉強熱心なの?
さて、「アメリカの学生は勉強熱心」と結論づけた次は「そもそもなぜアメリカの学生は勉強熱心なのか?」ということに関してご説明します。
調査をしてみた結果、それには主に2つの理由があることが原因としてあげられるようです。
早速以下にご紹介しますね。
GPAが就活に直結する
まず最初にご紹介するのは「GPAが就活に直結する」ということです。
GPAとは「Grade Point Average」の略称で学業の成績が優秀であるかの指標となるものです。
そしてアメリカではこのGPAの結果が就活に直結します。
これは新卒採用であってもポテンシャルよりも実力を重視する傾向にあることが影響しています。
「この学生が現段階でどのような能力を持っているか?」ということで採用するか否かを判断するのです。
そのため、アメリカの学生は有利に就活を進めるために必死に勉強に励むのです。
もちろん日本でもGPAが就活に全く影響が無い、というわけではありませんがほぼ重視されない傾向にあり、東洋経済ONLINEの「勉強しない大学生が、量産されるメカニズム 」という記事では以下のような負のスパイラルが生まれてしまっていると指摘しています。
1.企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。
2.学生としては、マジメに勉強しても「得」がありませんから、簡単に単位が取れる授業を選びます。
3.先生としては、教育に真剣に取り組むと、自分の講義を選択する学生が減ります。それよりは、簡単に単位を与えるようにして、自分の研究に力を入れるほうがメリットがあるし、楽です。
4.学生としては、簡単に単位をくれる授業も多いし、卒業だけなら簡単にできます。やっぱりマジメに勉強しても「得」がありません。
5.(=1.)企業としては、大学の成績はあてにならないので、採用の参考にしません。
このような就活システムの違いがアメリカと日本の学生の勉強時間の差を産んでいていると言えそうです。
そもそも学びの意欲が高い人の割合が多い
次にご紹介するのは「学びの意欲が高い人が入学している」ということです。
このことを説明するために文部科学省が2007年に発表した「25歳以上の入学者の割合(大学型高等教育機関)の国際比較 」を参照します。
このデータの中では25歳以上の大学入学者つまり学生社会人の割合は日本が2.7%であったのに対し、アメリカはおよそ24%とほぼ10倍に近い差があることが分かっています。
ちなみにOECD諸国の平均は20.6%のなので、平均と比較しても非常に低い数字です。
一度社会人を経験してから改めて大学に入る人が多いというのは、やはり学びの意欲が高い人が多く入学していると結論づけられるでしょう。
まとめ:留学した際には勉強に向かう姿勢も学び取ろう!
以上、アメリカの学生が勉強熱心であることの客観的データとその理由をご紹介しました。
こういった内容を読むと「アメリカだと勉強がハードなんだ・・・自分にはついていけるかな」と不安になる方も多いことでしょう。
しかし、勉強熱心であるか否かということは日本人学生の能力が低いことにはなんの関係もありません。
「GPAが就活に直結する」というようにシステムの関係であることも多いのです。
またサークルやバイトに励むといった形でキャンパスライフを謳歌するのも悪くありませんが、しっかりと目的意識を持って勉強に励むというのもまた充実したキャンパスライフを過ごせると思います。
そういった勉強に対する姿勢を留学先で学ぶというのも今後の人生で大きな糧になるのではないでしょうか。
それに付随して異国の文化を実際に肌で感じ取ったり、英語力を高めたりとアメリカの留学で会得できるものは数多く存在します。
このように留学というのは日本にいるだけではなかなか得られない経験を積むことができるチャンスが多くあるのです。
留学を検討中の方はぜひ一歩踏み出してみてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。