最近でこそ「学歴は関係ない」という意見も、ちらほら聞かれるようにはなりましたが、今でも高卒・大卒という最終学歴は、人物評価の面でかなり考慮される機会が多いと言えるでしょう。
そこで今回のコラムでは高卒と大卒の違いについて解説いたします。
必ずしも万人が当てはまるとは言えませんが、参考までにご覧頂ければ幸いです。
高卒と大卒、何が違う?
高卒と大卒の違いは、次のような点があげられます。
- 高卒は実は少数派。高卒・大卒それぞれの人数が違う
- 就職先の企業規模、職業選択の幅や仕事内容が違う
- 就職の際の書類選考で通過する確率が、圧倒的に大卒の方が有利
- 初任給や平均年収、生涯賃金が違う
- 高卒は早く社会に出る分経済的・精神的自立が早い反面、大卒は多くの学費が必要
主な違いは、上記のようになります。
学歴を重視した場合には、大卒の方がメリットも多いと言えます。
しかしながら、場合によっては、大卒だからこその懸念点もありますし、高卒ならではのメリットも少なからず存在します。
次に、大卒のメリットとデメリット、高卒のメリットとデメリットについて、具体的に見ていきたいと思います。
大卒のメリットは?
大学へ行くことや大卒であることのメリットとしては、どんなことが考えられるでしょうか。
考えられるメリットは、次のような点があります。
希望する専門分野、興味のある専門分野が学べる
大学進学で得られる最大のメリットとしてあげられるのが、学びたい学問、専門分野を、思う存分学べるということでしょう。
特に、希望する職業がすでに決定しており、特定の専門教育課程を経なければ、その資格が取得できないとなれば、なおさらです。
資格取得のための大学での専門の学びが必要となります。
自分が極めたい専門分野や、就きたい職業がもうすでに決定しているような人は、その分野の学問を究め、資格取得をするためにも、大学進学を目指すことをおすすめします。
大卒という学歴が将来の保険となりうる
最終学歴が「大学卒業」ということで、将来就職する際に、採用条件が「大卒以上」となっていたとしても、希望する企業にチャレンジすることができます。
また、新たに学びたいことを見つけた時にも、社会人向けの大学院へ通うこともできます。
その際には、働きながら学べるコースもあるようです。
さらに、なんらかの理由で一時的に働くことがなくなり、経歴に空白期間があったとしても、大卒であれば、再就職などのハードルが下がるといったこともあります。
このように、今後社会で生きていく中でのあらゆる場面で、「大卒」という学歴が、自分のポテンシャルを担保してくれるものとなり得ます。
学歴が「保険」のような働きをしてくれることが、大きなメリットのうちの一つであると言えます。
大学での勉強をしながらも、アルバイトやサークル活動を楽しむことができる
大学生の本分はあくまでも勉強なのですが、大学の4年間は時間的にもゆとりがあり、すでに就職して働いている同年代の人たちと比べてみても、授業時間の他に、余裕がある時間が多いということも事実です。
アルバイトやサークル活動の他にも、金銭的な負担は増えますが、留学や海外旅行、ボランティア活動やダブルスクールなど、その時にしかできない経験を満喫する人も少なくありません。
時間がたっぷりある学生のうちに、働き始めてからは絶対にできないような貴重な経験を積めるというのも、大学生のうちならではと言えます。
大卒のデメリットは?
メリットばかりのように見える大学進学ですが、実は場合によっては、デメリットとなるケースもあります。
大学へ行くことのデメリットを、次にあげてみましょう。
受験や学費、大学進学には莫大な費用がかかる
大学進学の最大のデメリットとしてあげられるのが「お金がかかる」ということです。
大学は義務教育ではなく、高度な学問を研究する研究機関です。
その高い水準の学問教育を享受するために、現在の日本では多くの費用を必要とするということが、どうしても避けられません。
大学入試準備として、高校や塾の勉強費用や受験費用、大学卒業までの学費と、大学進学にまつわる費用は、トータルで数百万円~数千万が必要となります。
奨学金を借りるという方法もありますが、借金であることには変わりありません。
働き始めてから、月々の返済額が重くのしかかり、経済的な苦労が長く続くというケースも少なくないようです。
これだけの高い費用をかけたとしても、大学卒業後は学歴不問の仕事に就き、高卒の人と待遇が同じということも十分あり得ます。
「これなら高卒でも良かったかもしれない」と感じる人も、なかにはいるかもしれません。
大学4年間を無駄に過ごしてしまう人もいる
進学した大学で、充実したキャンパスライフが送ることができればよいのですが、高校と異なり大学は、良くも悪くも自由度が高く、学生個人の自主性に任される部分が多くなります。
そのため残念なことに、人によっては勉強をさぼってしまい、授業や学校へ行かなくなってしまったり、日々ぼんやりと無気力に過ごしてしまったりする人もるようです。
もしも、高卒で就職していればその4年間を、働いてスキルや知識を蓄えることもできますし、収入を得ることもできます。
この4年間で、大きな差が開いてしまうことも場合によってはあり得ることです。
社会に出るタイミングが遅くなる
高校を卒業してすぐに就職する場合、10代から社会に出て働くことになります。
一方、大卒では早くても22歳、浪人や留年をした場合は23~25歳、大学院へ進学することにもなれば、20代後半から社会人生活がスタートします。
年齢的に大卒の方が社会に出るタイミングが遅くなります。
新卒で就職してから数年後、キャリアチェンジを考えたときに、年齢が上がることで条件が不利になり、転職に時間がかかるなどの可能性はあるかもしれません。
また、若くしてやりたいことや就きたい職業がはっきりと決まっており、そのために学歴が必要ないということであれば、早く社会に出ることで、活躍の機会が増え、キャリア形成がスムーズに進むということも考えられます。
この場合、大学進学をすることが、かえってデメリットとなる可能性が大いにあると言えます。
まだまだ学歴社会であるといっても良い日本において、大卒であること自体を後悔する人はほとんどいないのかもしれません。
しかしながら、貴重な大学生活の4年を何の目的も目標もなく、漫然とだらだら過ごしてしまった・・・と後悔する人は少なからずいます。
もっとまじめに勉強をすればよかった、という後悔もよく耳にします。
大学生は社会人と比べて自由な時間がとても多く、この4年間をしっかりと自分なりの目的や目標をもって有意義に過ごすことで、社会に出てからの充実度が変わってくると言えるでしょう。
実りのある大学4年間としたいものですね。
高卒のメリットは?
それでは、大学へ進学せずに、高校卒業後すぐに働くという選択をした場合のメリットは何があげられるでしょうか。
実力主義の仕事・会社であれば活躍しやすい
高卒でも、その人の実力を正当に評価してもらえる業界や会社であれば、問題なく活躍できるでしょう。
学歴不問の企業に入社して、適性のある仕事で成果をあげることができれば、場合によっては、大卒よりも高い収入を得られるケースも十分考えられます。
高卒という学歴であっても、仕事が評価され、なおかつ昇進することがあれば、将来的には自分よりも学歴のある大卒の部下ができる、といった可能性も考えられます。
学費がかからなくて済む
大学に進学しないことで、その分の費用を用意する必要がなくなります。
そのため、家庭の経済的な負担がかなり軽減されるでしょう。
もしも、大学進学で奨学金を借りた場合には、就職してから返済しなくてはならなくなりますが、そういった将来の経済的負担もなくなります。
高卒ですぐに就職すれば、あとは仕事をして稼ぐだけ、となりますので、この先多くの費用がかかるという心配は少なくなるでしょう。
経済的・精神的に早く自立できる
大学へ進学する場合は、少なくとも4年間、大学卒業までは、親に学費を出してもらったり、仕送りなど生活の面倒を見てもらったりする事になります。
高卒で就職ができれば、その時点で経済的に自立することができます。
また結婚・子どもを持つといったライフイベントを、前倒しで経験することもできます。
経済的に自立ができれば、若いうちからマイホームや自家用車の購入についても検討しやすいでしょう。
高卒のデメリットは?
高卒であることのメリットに対して、デメリットはというと、次のようなことが考えられます。
自由な時間が少ない
大学生と高校卒業後すぐに働き始めた人とでは、自由に使える時間量が全く違います。
そのため、働き始めると、高校で仲の良かった友人とも疎遠になってしまったという人も珍しくありません。
年は若くとも社会に出れば、会社以外で職場の人との付き合いもあるでしょう。
また帰宅してからも、仕事に必要な資格取得のための勉強をしなければならない、といったケースも少なくありません。
なかには、学生の頃よりも就職してからの方が、多く勉強しているという人もいるほどです。
このように、社会に出て働き始めると、学生の時よりも圧倒的に忙しくなり、自由に使える時間が少なくなると言えます。
大卒よりも基本給が低い
高卒で就職すれば、最初の4年間は大学生に比べると経済的に余裕があるかもしれません。
しかしながら、大学生が卒業して就職すればその立場は逆転することが多いです。
企業の基本給を比較すると統計上では、大卒より高卒の方が低い傾向にあるようです。
長い目で見ると、大卒者の方が収入面で恵まれているということはあるといえるでしょう。
視野が狭くなり、選択肢が狭まるケースもある
自分に合った職業や、なりたい職業に就きたいと、誰もが望んでいます。
しかし、自分に合った、なりたい職業がわからないという人も少なくありません。
大学に進学した人ならば4年という期間に、じっくりと将来の選択肢を吟味できます。
しかし、高卒で就職する人には、その猶予がありません。
そんな人たちの中には、どんな職業が自分に合っているのかをしっかりと見極めることができず、仕方なくアルバイトで生計を立てたり、あるいは、ニートとして時間を費やす人もいます。
その結果、時間が経てば経つほど視野が狭くなってしまい、自ら選択肢を狭めてしまう人も少なくありません。
高卒で後悔したという人の理由の多くは、何といっても大卒と比べて相対的に収入が低い点があげられます。
20代の若いうちは、そこまで差を感じにくいかもしれませんが、年齢を重ねるにつれ、大卒者との給与の差が大きくなり、「大学に行っておけばよかった」と感じることもあるようです。
大卒と高卒の違いを十分に理解したうえで、それでもあえて高卒を選択した場合や、高卒しか選択肢がなかったという場合は、それほど問題はないでしょう。
しかしながら、大学へ進学できる環境にあったものの、「なんとなく」高卒を選択するつもりだという人は、以上の点を参考にしながら、一度立ち止まって今後のことを考えてみるのもいいかもしれませんね。
大卒の資格がないと難しい職業はある?
日本では、職業選択の自由は認められてはいるものの、現実には資格がないとなれない職業は多く存在します。
医師、薬剤師、歯科医師、教師
医師や薬剤師という仕事は、医科大学や薬科大学を卒業して、国家資格を取得しなければなることができません。
教師も、教員免許を取得するためには、大学で教職課程の単位を取得することが必須となります。
研究職、開発職
食品や医薬品、化学系などの研究職や開発職などは、専門的な知識と学力が必要です。
これらの仕事に就く人は大卒か大学院卒でなければ難しいといえます。
法曹(弁護士、裁判官、検事)、非常勤を除く大学教授
これらは、大卒資格が必ず必要とされているわけではありませんが、大卒もしくはそれ以上の専門知識や経験が要求されます。
大学で専門的に学ばなければ、現実的になることが難しい仕事と言えるでしょう。
大企業総合職
学生の就職人気ランキングに入っているような有名大企業は、大卒か大学院修了を応募資格としていることが多いです。
一定規模以上の企業の場合は、大卒の人材は、将来的に会社の幹部候補の「総合職」として採用され、大企業の本社や中枢で働くことが多いようです。
一方、高卒では、職務を限定された採用が比較的多いことが特徴としてあります。
企業規模の小さな中小企業であれば、高卒の総合職採用を行っていることもまれにあるようですが、大手企業では、高卒の総合職採用はほぼありません。
大企業の総合職を目指すのであれば、基本的に大卒以上の資格が必要です。
余談ですが、宇宙飛行士という職業になりたいという夢を持っている人はいますか?
日本で宇宙飛行士になるためには、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が募集する宇宙飛行士候補者選抜試験に合格しなければなりません。
この試験の応募条件のなかには、「大卒以上であること」という条件があります。
宇宙飛行士になるには、大学を卒業する必要がありますね。
また、幼稚園教諭、保育士、客室乗務員(CA)などになるためには、大卒資格は必須ではなく、専門学校や短大卒でもなることができます。
高卒でも実は目指せる職業
それでは、大卒の資格がどの分野においても有利に働くのかといえば、決してそうではありません。
以下のような仕事であれば、最終学歴がたとえ高卒でも、十分活躍することができる仕事です。
- 実力主義、学歴不問の仕事
- 高卒でも取得可能な資格の専門職
- 全国チェーン店舗の販売員といった、多くのマンパワーを必要とする仕事
- プログラミングやITなどの、個人の能力を活かせる仕事
たとえば、航空機パイロットという仕事を例に挙げてみましょう。
高卒でパイロットになる方法のひとつにあげられるのが、自衛隊に入ることです。
海上自衛隊のパイロットとなる、航空学生採用の応募条件は、高卒(見込み)以上となっています。
そこに採用されると、地上や実機で専門の教育を受けた後、早ければ4年後には、パイロットの資格を取得できます。
パイロットの資格があれば、自衛隊で経験を積んでから民間航空会社に転職することも可能です。
子供たちの将来なりたい職業として、よく上位にあがる新幹線運転士も、高卒の資格があれば応募することができます。
新幹線運転士になるには、新幹線を運行しているJR系列の鉄道会社に入社する必要があります。
JRでは、総合職は基本的に大卒者のみ対象で、採用が限られますが、駅員や乗務員になるためのコースは、高卒でも応募できるようです。
さらに、日本のトップ、内閣総理大臣のような国会議員についてはどうでしょうか。
国会議員は、国民による選挙で選ばれますが、立候補するための条件は、学歴は特に関係ありません。
選挙に当選して国会議員となり、さらにそのなかで指名されれば、内閣総理大臣になることができます。
歴代の内閣総理大臣の中では、第81代の村山富市氏は旧制明治大学専門部政治経済科卒で、現代の短大卒という学歴になります。
第64・65代の田中角栄氏に至っては、最終学歴は高等小学校卒となっています。
将来の幅を広げるなら進学がおすすめ
大卒、高卒、それぞれにメリット・デメリットがありますが、将来の幅を広げたいという場合には、まずは大学へ進学することを考えてみてはいかがでしょうか。
大学進学がベストですが、短大・専門学校への進学もメリットは多くあります。
以下のような点からも、進学をするという選択をおすすめしたいと思います。
就職活動する際に大卒なら一度に複数の企業を受けることができる
高校生が就職するときには「一人一社制」とよばれるルールがあることをご存知でしょうか。
就職活動で高校生は、一度に一社の企業しか応募ができない、というものです。
仮に、選考中にその企業が自分に向いてないかもしれない、と思ったとしても、辞退することができず、その結果、採用後にミスマッチが起きてしまうということもあり得ます。
大卒の就職活動では、同時に応募できる数に制限はないので、複数の業種が全く異なる企業にも応募することが可能です。
初任給や生涯賃金が、高卒より大卒の方が多い
大卒と高卒では、給与面で差がある場合がほとんどです。
厚生労働省の資料では、平成30年の初任給平均額は、大卒が20万6,700円、高卒が16万5,100円とあります。
高卒では大卒者に比べ4年早く就職できるとはいえ、初任給の時点ですでに約4万円の開きがあります。
当然、生涯賃金では大卒者が大きく上回ります。
仮に、高卒者が42年、大卒者が38年働くとすると、生涯賃金の概算は、
- 高卒者・・・約1.8億円
- 大卒者・・・約2.5億円
となり、約7,000万円の差となります。
大学受験や学費にかかる費用を差し引いたとしても、大卒者の方が収入の面で有利であることは、疑いのない事実であると言えます。
ここまで大卒と高卒の違いについて簡単に紹介しました。
これらの情報が、今後の皆さんの進路選びに役に立つことができれば幸いです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。