「夜間大学」をご存知でしょうか。
大学によっては「2部」と呼ぶところもあります。
定時制高校のように、夜間に学ぶ大学です。
夜間に大学に通うので、昼間に働くことができます。
つまり、収入を得ながら大学に進学することができます。
夜間大学なら、経済的な理由で大学進学をあきらめていた人でも挑戦できます。
大学を卒業すると「学士」という資格が与えられますが、夜間大学でも学士を獲得することができます。
講義の内容も昼間と同じです。
しかも夜間大学の学費は、昼間より安く設定されています。
入試のハードルも、夜間のほうが低くなっています。
ただ、夜間大学には欠点もあり、それは「世間の目」が少し冷ややかであることです。
しかし「実質」を取る人ならば、夜間大学はとてもよい選択になるはずです。
道内では国立大の小樽商大と室蘭工大と、私大の北海学園大が夜間コースを開設しています。
夜間大学のメリット
夜間大学のメリットは次の3点です。
- 働きながら学士が取れる
- 偏差値が低く、受験勉強が楽
- 学費が昼間より安い
このメリットがどれほど大きいのか、ひとつずつ解説します。
働きながら学士が取れる
経済的な理由で大学進学を断念することはとても残念なことです。
経済的な理由は、高校生のせいではないのに、大学に進学しない不利益はその高校生にふりかかるからです。
しかし多くの高校生は、経済的な理由で大学進学を断念しています。
株式会社ライセンスアカデミーという会社が2010年に、全国の高校教諭を対象に「大学の学費に関するアンケート」という調査を行いました。
「現在、大学に行きたくても行けない生徒たちは、学力より学費(経済面)の制約が強くなってきたと思いますか」という質問に対し、「とてもそう思う」と答えた高校教諭は19.3%、「ややそう思う」と答えた高校教諭は52.8%にもなりました。
つまり、大学進学をしない高校生のうち、7割以上が「しない」のではなく「できない」のです。
では学士(大卒の資格)はそれほど重要なのでしょうか。
生涯収入を増やすためには、学士はとても重要です。
日本経済新聞社によると、55~59歳の男性の平均年収は、大卒935万円、高卒741万円です。
55~59歳の女性の平均年収は、大卒747万円、高卒550万円です。
1年間の収入(年収)だけで200万円の差がつくということは、単純計算で、10年で2,000万円、20年で4,000万円の差がつくということです。
幸せはお金では買えませんが、お金は幸せを増やすことができます。
また、お金が少ないと不幸になりやすくなります。
もし、道内の高校生が、経済的な理由「だけ」で大学に行かないと決めているのなら、ぜひその考えをあらためて、夜間大学を目指してみてはいかがでしょうか。
働きながらであれば、大学の学費は支払えるでしょう。
もしその収入だけで足りなければ、奨学金に挑戦したり、教育ローンを検討したりしてみてはいいかがでしょうか。
偏差値が低く、受験勉強が楽
大学にとって夜間大学はむしろ特別な存在です。
昼間コースをメーンにしながら、夜間コースを特別に設置している、というケースが一般的です。
そして、夜間コースの偏差値のほうが、昼間コースより圧倒的に低くなっています。
例えば小樽商大は、昼間コースの偏差値は58ですが、夜間コースは53です。
偏差値5の差は「かなり大きい」といえます。
室蘭工大は昼間50に対し、夜間47です。
北海学園大は法学部で比較すると、昼間56、夜間47で、9も差があります。
昼間コースを志望するより、夜間コースを志望したほうが、受験勉強は楽になります。
ただこの「楽さ」は、同じ大学内での比較になります。
例えば、道内の国公立大でいえば、小樽商大夜間の偏差値53に対し、北海道教育大岩見沢校・釧路校・函館校、札幌市立大、名寄市立大は52です。
釧路公立大は48です。
また私大では、北海学園大法学部の夜間は47ですが、これより低い道内の昼間の大学はたくさんあります。
夜間大学だからといって「簡単」に入ることはできません。
学費が昼間より安い
夜間大学をしている大学は、夜間コースの学費を、昼間コースの半額ほどに設定しています。
詳しい数字は、あとで大学ごとに紹介します。
夜間大学への「冷ややかな世間の目」とは
もし、大学の昼間コースに進学する支障がなければ、夜間ではなく、昼間を選択することをおすすめします。
夜間大学をすすめるのは、支障があって昼間コースに進学できない人です。
昼間コースに進学できるならそのほうがよい
高卒よりは夜間大学卒のほうがメリットが大きいのですが、昼間大学卒と比べると、夜間大卒のメリットは落ちてしまいます。
それは、夜間大学には「冷ややかな世間の目」が向けられているからです。
企業は「夜間は昼間より下」と思っている?
ある夜間大学卒者は、就職活動のときに、履歴書に「○○大学(夜間)卒業」と書いて企業に送ったところ、ことごとく書類審査で落選したと振り返ります。
それで「夜間」の文字を削って、「○○大学卒業」と履歴書に書いて企業に送ったところ、書類審査を通過して、採用面接を受けることができたそうです。
しかしその採用面接のときに、大学は夜間コースを卒業したと伝えると、面接官はあわててその人の履歴書を確認したといいます。
その結果、落選しました。
夜間大学卒者の就職は、昼間コース卒者よりは圧倒的に不利になるようです。
それは多くの企業が、そして世間の多くが、「夜間大学は昼間コースより下」とみているからです。
ただもちろん、夜間大学の卒業者をリスペクトしている企業も多く存在します。
夜間大学でも、昼間コースでも、卒業すれば「学士」に変わりありません。
大学でのカリキュラムも、卒業に必要な単位数も、昼間コースと夜間コースは同じです。
「夜間」と自己申告しなくてよいが嘘はNG
履歴書に「○○大学(夜間)卒業」と書くのではなく「○○大学卒業」と書くことは違法ではありません。
ただし、企業の採用面接などで、企業側から「卒業した大学は昼間コースですか、夜間コースですか」と聞かれて、嘘をつくことは許されません。
虚偽申告で入社し多場合、最悪、解雇事由になりかねません。
また、大学によっては、卒業証明書に「夜間コース」を明記している場合があります。
小樽商大の夜間主コースの授業料と概要
それでは大学ごとに夜間コースの特徴を紹介します。
まずは小樽商大からです。
小樽商大では夜間コースのことを「夜間主コース」と呼んでいます。
授業料の年額は昼間535,800円、夜間267,900円
小樽商大の昼間コースと夜間主コースの授業料の違いは以下のとおりです。
昼間コース:282,000円
夜間主コース:141,000円
昼間コース:535,800円
夜間主コース:267,900円
4年間通うと、学費の総額は次のようになります。
計算式は「入学料+授業料年額×4年分です。
- 昼間コースの4年間の学費:2,425,200円
- 夜間主コースの4年間の学費:1,212,600円
夜間主コースは、昼間コースのちょうど半額です。
夜間主コースの特徴
小樽商大の夜間主コースの学部は商学部のみです。
昼間コースも商学部のみです。
夜間主コースの講義は、17:45~20:55までです。
小樽商大は小樽市の中心部からそれほど離れていないので、小樽市内の企業に勤めていれば、仕事が17時ちょうどに終了すれば1講目から出席できます。
また、昼間に時間が取れれば、夜間主コースの学生でも昼間コースの講義を受けることができます。
夜間主コースの受験は、一般入試と推薦入試と社会人入試があります。
小樽商大では、卒業証書や成績証明書を、昼夜コースで区別していません。
室蘭工大の夜間主コースの授業料と概要
室蘭工大の夜間主コースを紹介します。
夜間は昼間の半額
室蘭工大の学費は、小樽商大とまったく同額です。
夜間主コースの学費が昼間コースの半額になっているのも同じです。
夜間主コースの特徴
室蘭工大の夜間主コースの講義時間は17:00~21:45です。
夜間主コースの学生でも、昼間コースの講義を取ることができます。
また、室蘭工大では、夜間主コースの学生が途中で昼間コースに移行することができます。
ただし、選考を受けることになります。
室蘭工大は昼間も夜間も理工学部しかありません。
学科は、夜間主コースには「機械系コース」と「電気系コース」から選択することになります。
昼間コースには「建築土木工学コース」「機械ロボット工学コース」「航空宇宙工学コース」「電気電子工学コース」「物理物質システムコース」「化学生物システムコース」「数理情報システムコース」がありますので、夜間主コースの選択肢は少ない状態です。
北海学園大の2部の授業料と概要
北海学園大では夜間コースのことを「2部」、昼間コースのことを「1部」と呼んでいます。
北海学園大はほぼ半額
北海学園大の1部と2部の学費は次のようになっています。
2部は1部のほぼ半額になっています。
・1部(経済学部、経営学部、法学部)1,204,000円
・1部(人文学部)1,228,000円
・2部(経済学部、経営学部、法学部)609,000円
・2部(人文学部)621,000円
・1部(経済学部、経営学部、法学部)987,000円
・1部(人文学部)1,011,000円
・2部(経済学部、経営学部、法学部)493,000円
・2部(人文学部)505,000円
・1部(経済学部、経営学部、法学部)4,165,000円
・1部(人文学部)4,261,000円
・2部(経済学部、経営学部、法学部)2,088,000円
・2部(人文学部)2,136,000円
小樽商大と室蘭工大の昼間コースの4年間の学費が2,425,200円なので、私大でありながら北海学園大の2部は国立大の学費を下回ります。
2部の特徴
2部の講義時間は17:50~21:00です。
2部の学部は経済学部、経営学部、法学部、人文学部です。
文系学部は1部と同じです。
ただし、1部にある工学部は2部にはありません。
まとめ~大変だがその価値はある
昼間働いて夜勉強することは、大変なことでしょう。
昼間コースに通う一般的な大学生は、昼間学んで、夕方から自由時間を謳歌しているので、その差は大きいといえます。
それでもなお、経済的な理由で大学進学を断念するよりは、頑張って夜間大学に進んだほうがよいでしょう。
生涯年収を上がることを期待できるだけでなく「学歴は一生もの」だからです。
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この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。