大学受験では、1年以上かけて積み上げてきた努力を、数回の入試にすべて投入することが求められます。
その貴重な努力を、一瞬で無に帰す行為が3つあります。
重い風邪、試験場間違い、そして緊張です。
この記事ではこのうち緊張を解消する方法を考えていきます。
緊張が起きるメカニズムは医学的に解明されています。
病気に薬があるように、緊張にも対策があります。
入試本番前にそれらを試して「緊張する癖」を解消しておきましょう。
緊張のメカニズム
緊張とは、張り詰めた雰囲気のなかで注意が集中しすぎている状態のことで、ネガティブな結果を引き起こす危険があります。
極度の緊張状態は「あがり症」「社会不安障害」「社交不安障害」といった病名がつきます。
あがり症は、他人に迷惑をかけてしまうことへの恐怖や、他人にマイナス評価されてしまうと思う恐怖、他人から注目を浴びるだろうとの予測による恐怖によって発症します。
その恐怖が過度の不安を生み、自律神経がバランスを崩し動悸(心臓がドキドキする症状)、大量の汗、震えが起きます。
そのような状態では本来の力を発揮できないので、作業に失敗してしまいます。
失敗が多いことや、再度の失敗を恐れるために消極的な態度を取ったりすることも、あがり症の症状のひとつと考えられています。
張り詰めた雰囲気のなかで行われる入試は、緊張しやすい人には苦痛の時間でしょう。
試験が始まってシャープペンを握るとすでに手汗をかいています。
鼓動が高まると気が散って、記憶から知識を引き出すことに苦心します。
なかなか思い出せないでいると焦りが昂(こう)じ、汗も動悸も悪化します。
現役のときに緊張で失敗した浪人生は、「今年もまた」と想像しただけで緊張状態に陥ってしまうでしょう。
適度な緊張にはよい効果をもたらすこともありますが、ここまで来ると弊害しかありません。
これから紹介する6つの対策に乗り出しましょう。
第1条:やることをやる
緊張は、不安や恐怖が引き起こすことがわかりました。
したがって不安と恐怖をなくせば、緊張を予防できます。
受験における不安は、合格するかどうかわからないときに生じます。
受験の恐怖は、受けた大学すべてに落ちることを想像すると生じます。
合格することが確実で、落ちる心配がなくなれば不安も恐怖もなくなり、緊張しなくて済みます。
そのためには、やることをやる必要があります。
受験におけるやることとは、勉強です。
これ以上勉強できないと確信できるまで繰り返し参考書を読んだり問題集を解いたりすれば、やることをやったことになります。
つまり、緊張というピンチを、勉強時間を増やすというチャンスに変えることができます。
概念図にするとこうなります。
入試での緊張を生むメカニズム
緊張する | ←不安、恐怖 | ←落ちる可能性が高まる | ←【スタート】勉強をサボる |
↓ | |||
【入試本番】汗、動悸、記憶した知識を引き出せない | |||
↓ | |||
【結果】落ちる可能性が高まる |
入試での緊張を予防できるメカニズム
緊張しない | ←不安も恐怖もない | ←合格の確率が高まる | ←勉強をする | ←【スタート】緊張したくない |
↓ | ||||
【入試本番】実力を発揮できる | ||||
↓ | ||||
【結果】合格の確率が高まる |
第2条:計画とやることメモをつくる
やることをやれば緊張しないことがわかりました。
では「やることはやった」「これ以上は勉強できない」と確信するにはどうしたらよいでしょうか。
やることとやったことを、見える化しましょう。
見える化とは、目視できるように表示することです。
やることを見える化するには、学習計画を立て、やることメモをつくります。
学習計画は、高3の4月に翌年の2月までの11カ月分を一気に作成します。
これは2、3日かけて構いませんので、しっかりつくり込んでください。
受験科目すべてについて、毎月末に参考書や問題集を何ページまで終わらせるか細かく設定してください。
そして毎日、翌日にやることをメモ書きしていきます。
翌日のやることメモは、学習計画の毎月の目標をクリアできるように定めていきます。
そして学習計画とやることメモをつくった以上は、「それを必ずこなす」「それ以外はやらない」という2つのルールを守ってください。
学習計画をクリアしたり、やることメモを実行し終えたりしたら、「完了」と記していってください。
できなかった項目については「未達」と書いてください。
これで、やったことを見える化できます。
入試が近づいたとき、学習計画とやることメモに「完了」の文字が並んでいれば、緊張の原因となる不安を解消できるでしょう。
北海道の学習塾の年間スケジュールについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
第3条:保険をかける
生命保険や年金保険は、将来の不安をなくすために、保険料というコストを支払う金融商品です。
これを大学受験に導入すれば、緊張の原因となる不安を解消できます。
受験での保険とは、確実に合格できる滑り止め大学の入試を受けることです。
受験料というコストを負担することになりますが、「最低でも浪人は(または2浪は)回避できる」と思いながら第1志望大学の入試に臨むことができます。
滑り止め大学と第2、第3志望大学は明確にわけておく必要があります。
例えば道内受験生の場合、北大を本命にしたら、小樽商科大や帯広畜産大学は第2志望大学にはなっても、滑り止め大学にすることはできないでしょう。
滑り止め大学は「保険」にしなければならないので、小樽商科大や帯広畜産大学より偏差値が低い大学を選びましょう。
第4条:割り切る
緊張は重要な場面で発生します。
重要ではないと感じている場所では緊張しません。
本命大学の入試本番を「重要ではない」と思えるようになれば、緊張しないで試験問題に向かうことができます。
本命大学を重要ではないと思うには、割り切りが必要です。
次のように思ってみてください。
- 本命大学だけが人生ではない
- 第2志望大学だって滑り止め大学だって大学だ
- ここまで勉強してダメだったら相性が悪かったと考える
この3つを自分に言い聞かせることが、割り切り方のコツです。
そしてこの3つは真実でもあります。
本命大学を定めると、そこに入ることが人生の目標のようになってしまいますが、それは正しくありません。
大学に通うのは、将来の仕事に必要な知識とスキルを身につけるためです。
必要な知識とスキルは、第2志望大学や滑り止め大学でも提供してくれます。
そして、入試で不合格になると、全人格を否定されたような気持ちになる人がいますが、そこまで深刻に考える必要はありません。
入試に出題される問題は、世の中に無数にある問題のほんの一部にすぎません。
その問題を解けなかったからといって、知識がないことの証明にはなりません。
不合格になっても「相性がなかった」と思うくらいがちょうどいいのです。
割り切ることで、本命大学に抱く強いあこがれを弱めることができます。
大好きな異性の前では緊張するのに、特別な想いを抱いていない異性がいても緊張しません。
それと同じように、本命大学をあこがれる気持ちを抑えれば、リラックスして入試を解くことができるでしょう。
第5条:験を担ぐ(げんをかつぐ)
緊張しやすい人は、験を担いでみるのもいいでしょう。
験を担ぐとは、例えば青いスニーカーを履いて受けた模試の点数がよかったら、本番の入試でも青いスニーカーを履いていく、といった行動をすることです。
験担ぎは、神頼みとは違います。
験担ぎはいわば「自分ゲーム」のようなものです。
自分の日頃の生活を分析して「こうすればそうなりやすい」と予測してみるのです。
そして実際に「こうしてそうなった」ら、「やっぱりそうなるか」と満足して終了します。
そこには宗教的な意味合いも、科学的な根拠もありません。
単なる遊びです。
しかし験担ぎは入試の準備になります。
入試本番の日に「勉強もしっかりした、滑り止め大学も受けた、割り切りもできた、そのうえ青いスニーカーも履いてきた」と思うことができたら、やることはやったという気持ちがさらに強まります。
第6条:知る
緊張は不安だけでなく、恐怖からもわいてきます。
多くの恐怖は無知から生まれます。
科学が発達していなかったころは、真剣にお化けや妖怪が恐れられていました。
科学によって超常現象が解明され、人々は恐れず暮らすことができるようになりました。
恐れを排除するには、知る必要があります。
入試の恐怖を抑えるには、過去問に取り組むとよいでしょう。
志望大学の赤本を何度も繰り返すと、出題者の息吹といったようなものを感じられるようになります。
出題のパターンがわかっていれば、問題を解くスピードのペース配分ができるようになります。
過去問を解くことは、その大学の入試を知ることに他なりません。
その他のことも知っておきましょう。
受験生なら御用達の「赤本」については以下の記事で詳しく紹介しています。
試験会場は必ず下見をしてください。
下見は前日や前々日ではなく、前週に行ってください。
入試の日と同じ曜日に下見をすることで、入試の日と同じ公共交通機関のダイヤや道路の混み具合などを体験できるからです。
そして少なくとも一度は、不合格になったときのことを想定しておいてください。
浪人をしたら塾に通うのか予備校にするのか、志望大学のレベルを引き上げるのかそのままにするのか、それとも引き下げるのか。
こうしたネガティブなシミュレーションをすることで、最悪の状況を知ることができます。
最悪の状況を想定することで「それ以上悪化することはない」という安心感が得られます。
最悪の状況が想定できれば、その状況からリカバー(回復)する策を考えることもできます。
まとめ~緊張で合否が決まることも
入試本番の試験会場で平常心でいられれば、それだけでライバルより一歩前に出ることができます。
平常心の反対の状態である緊張は、ライバルより遅れをとることになります。
入試では、数百人から数千人が同じ点数を取ります。
つまり1点の差で少なくとも100位は確実に上がったり下がったりします。
緊張するしないで簡単に数点は変わってくるので、緊張しなければ合格していたのに、緊張したばかりに不合格になることも十分起こり得ます。
緊張対策は試験対策のひとつと考えて取り組みましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。