子供の教育には莫大なお金がかかります。
勉強や生き方を子供たちに教える教育者たちは専門の訓練を受けているので、その人たちの人件費は安くありません。
また子供たちに与える教材は、1年ごとに別のものを用意しなければならないのでコストがかかります。
それでも公立中学までは無料ですが、高校も大学も専門学校も、子供が進学するたびに家計から多額の教育費を支出しなければなりません。
そのお金を調達する手段のひとつに教育ローンがあります。
教育ローンが一般的な借金と決定的に異なるのは
- 金利が低い
- 長期返済できる
という2つの点にあります。
教育に使うお金は社会的に重要であり、家庭には切実な問題になるので、教育ローンは返済が楽になるように設計されているのです。
今回のコラムでは、北海道ならではの事情と合わせ、教育ローンの内容について紹介します。
北海道民の教育負担は重い
北海道民の教育負担は、他の都府県に比べて「重め」といえそうです。
厚生労働省の都道府県別1人平均月間現金給与額(事業所規模5人以上2009年)によると、道民の平均給与は278,351円/月で、47都道府県中30位でした。
つまり道民の給料は全国の下位グループに入っていることになります。
全国平均の315,294円/月より36,943円/月も低い額です。
トップ3は東京都411,211円/月、大阪府343,383円/月、愛知県326,379円/月です。
ワースト3は宮崎県253,455円/月、佐賀県253,013円/月、沖縄県248,021円/月です。
大学まですべて国公立の学校を卒業すれば、教育費だけの額は都道府県でほとんど変わりありません。
国公立の教育の値段は、ほぼ全国一律だからです。
したがって、家計の収入である給料が少ないほど、教育費の負担が重くなることになります。
つまり北海道民の教育費の負担感は、沖縄県民よりはるかに軽いものの、東京都民よりはるかに重い、ということができます。
教育にいくらかかるか
日本政策金融公庫によると、子供1人が高校入学から大学を卒業するまでに保護者が支出した教育費の総額は935万円です。
これは公立と私立を合わせた平均額ですので、公立学校に通うとこれより安くなり、私立に通うとこれより高くなります。
935万円の内訳は、高校3年間が238万円、大学4年間が697万円となっています。
このなかには、交通費やアパート代、学生寮費などは含まれません。
したがって、道民が子供の東京の私立大に通わせると、軽く1,000万円を超えてきます。
また教育費は、人数が多いほど割安になることがほとんどないので、子供が増えると倍々で増えていきます。
つまり2人なら2,000万円、3人になら3,000万円かかるわけです。
そこで教育ローンの重要性が増してくることになります。
教育ローンには大きくわけて、国の制度と民間の制度の2つがあります。
民間の教育ローンはたくさん種類があるので、この記事では北海道を代表する金融機関である、北洋銀行のものと北海道銀行のものを紹介します。
国の教育ローンとは
「国の教育ローン」は正確には、日本政策金融公庫が扱う教育ローンのことです。
詳しくみていきましょう。
お得感はあるが1人350万円では少ない?
「国の教育ローン」の特徴を箇条書きにします。
- 対象となる学校:高校、大学、大学院、専修
- 各種学校など
- 使い道:入学金、授業料、受験料、教科書代、通学費用、在学のための家賃など
- 融資限度額:子供1人当たり350万円
(外国の大学などに6カ月以上滞在するときは450万円) - 金利:固定年1.78%(母子
- 父子家庭などは固定年1.38%)
- 返済期間:15年以内
- 保護者の収入制限あり
- 借入日の翌月から返済をしていくことになるが
卒業までは利子のみの返済でも構わない - 教育資金融資保証基金による保証、または連帯保証人のどちらかが必要
- 日本学生支援機構の奨学金との併用可能
- 子供の学力は不問
金利1.78%は「とても安い」
金利が年1.78%は「とても安い」といえます。
しかも返済期間が15年間なので、350万円借りても、金利を除くと毎月の返済は19,444円/月(=350万円÷15年÷12カ月)で済みます。
「働いてから返す」ことができる元金据え置き
また、返済は原則、翌月から始まりますが、子供が在学中は金利の支払いのみを選択することもできます。
金利が1.78%なので、350万円の1年間の金利支払いは62,300円となり、月5,000円程度の返済で済みます。
元金の350万円の返済は、子供が卒業してから始めることができます。
つまり、子供が在学中は「小さな借金返済」だけで済み、子供が働いてから「大きな借金返済」をスタートできるわけです。
この方法を「元金据え置き返済」といいます。
年収790万円以下の世帯が対象
このように、国の教育ローンなら返済の負担はそれほど重くありません。
しかしいくつか「使いにくさ」があります。
国の教育ローンは、富裕層は使うことができません。
このローンを使うことができるのは、世帯年収が子供が1人の場合は年収790万円以内、2人の場合は890万円以内、3人の場合は990万円以内の世帯です。
また、教育資金融資保証基金による保証、または連帯保証人のどちらかが必要です。
一般的に借金の連帯保証人を探すことは難航します。
そして教育資金融資保証基金による保証を受けるにはお金がかかります。
1人350万円で足りる? 私立中学は難しい?
そして国の教育ローンの最大のネックは、子供1人あたり350万円しか借りられないことです。
高校から大学まで935万円かかるので、その37%しか手当てすることができません。
借金なので借りる額は少ないほうがいいのですが、これでは足りない世帯もあるでしょう。
そこで民間の教育ローンが必要になる人も出てくるでしょう。
また、子供が中学生の場合は対象外になってしまうので、子供を私立中学に入れるときの資金は調達できません。
北洋銀行の教育ローン
北洋銀行の教育ローンでお金を借りると、中学から大学院までの次の費用に使うことができます。
・予備校
・学習塾
・受験費用
・入学金
・授業料
・在学中の費用
・制服代
・教科書代
・仕送り …など
借りられるお金は1回1年分ですが、審査にパスすれば何回でも借りることができます。
北洋銀行でも在学中の元金据え置き返済が可能です。
金利2.3%はやや高め
北洋銀行の教育ローンの金利は2.3%で、国の教育ローンの1.78%より高くなっています。
その差は0.6%ですので、100万円を借りたとき、初年度の1年間の金利の支払いは6,000円の差が生じることになります。
ただ、北洋銀行の教育ローン以外のその他のローンの金利は4.0%です。
したがって北洋銀行も「教育に使うお金」であることを重視して、割引していることがわかります。
また北洋銀行では、融資額(借金の額)が300万円以下の場合は、所得証明が要りません。
がんを発症したら返済が要らなくなる
教育ローンを借りた保護者ががんを発症したら、治療費にお金がかかったり仕事を辞めたりしなければならなくなるでしょう。
もしくは、保護者が亡くなってしまうことも考えられます。
そのような事態に陥ると、教育ローンの支払いが滞ってしまいます。
学校に通っている子供がその借金を返済していくことはほぼ不可能です。
もしそうなれば、通学を中断して働かなければならなくなるかもしれません。
そこで北洋銀行では、教育ローンを借りる人が「がん保障付団体信用生命保険」に加入できるようにしています。
この保険に入っていれば、保護者(教育ローンを借りる人)が、がんと診断されたり、高度障害を発症したり、死亡したりした場合、保険金がおります。
その保険金で、教育ローンの残高(残りの借金)を支払うことができます。
つまり、保護者に万が一の事態が起きたら借金を返済しないで済むので、子供は教育を受け続けることができます。
ただ、がん保障付団体信用生命保険に加入するには条件があります。
対象は51歳未満の人で、金利が0.3%上乗せされます。
つまり、北洋銀行の教育ローンの元の金利は2.3%なので、これが2.6%になるわけです。
使い勝手はよさそう
教育ローンで借りたお金は、使い道が限定されます。
しかし北洋銀行の教育ローンで借りるお金は、教育に関わることであれば幅広く使うことができます。
例えば、道内の子供の場合、東京の大学に進学することもあるでしょう。
その場合、保護者は仕送りをしなければなりません。
北洋銀行の教育ローンは、仕送りに使っても構いません。
東京でのアパートの家賃に使うこともできます。
また、教育ローンを借りるには審査を通過しなければならないのですが、北洋銀行では最短2週間で審査を終えます。
そして事情があれば、2週間をさらに短縮させることも検討してくれます。
例えば、合格するはずがないと思っていた私立大学に合格して、急遽多額の入学金を振り込まなければならなくなった場合などに対応してもらえます。
さらに、慌てて審査を受けなくて済むように、子供の合格が決まる前に仮審査を済ませておくことができます。
こうしておけば、子供が合格したらすぐにお金を借りて入学金と授業料を支払うことができます。
仮審査の結果は3カ月間有効です。
インターネットで教育ローンを申し込めば金利が0.1%下がるサービスも行っています。
北海道銀行の教育ローン
北海道銀行も教育ローンを販売しています。
基本的な内容は北洋銀行と同じなので、北海道銀行だけが行っている部分や、北洋銀行と異なるところを紹介します。
金利は2.975%、最大1,000万円まで融資
北海道銀行の教育ローン(カード型)の金利はやや高めの2.975%です。
北洋銀行は2.3%でした。
ただ、融資限度額は最大1,000万円に設定されています。
子供1人の高1から大学卒業までの教育費の総額は935万円ですので、1回借りれば、高校3年間と大学4年間の教育費をまかなうことができます。
1,000万円を一気に借りることが心配という方は、1,000万円の「借り入れ枠」を設定してもらい、必要なときに必要な額だけ利用することもできます。
融資期間は17年間で、対象は中学生以上です。
例えば大学医学部に進む場合、大学は6年間通わなければなりませんし、大学を卒業した後に大学院に2年間通う人も少なくありません。
そうなると、大学院を卒業するとき最も若い人で23歳になっています。
17年間借りることができれば、中学入学からしっかりカバーできます。
まとめ~教育ローンは「よい借金」
教育ローンであっても借金なので、返済義務はあります。
しかし教育ローンで借りるお金は、子供に高度な教育を受けさせるためだけに使うので「よい借金」といえるでしょう。
そのため、金利が安い「国の教育ローン」もありますし、民間の銀行も「頑張って」金利を引き下げています。
いわゆる出世払いも可能ですので、お金のことで進学をあきらめる前に、ぜひ前向きに検討してみてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。