大学生に人気のアルバイトに「家庭教師」の仕事があります。
家庭教師は、家庭教師となった先生が、小学校から大学受験生の生徒の自宅を訪問し、定期テスト対策や授業のサポート、志望校合格のための受験指導をするお仕事です。
受け持ちの生徒個人とのやりとりでスケジュールを決めるため、時間の融通が利きやすく、個人指導なので、ほかのアルバイトと比較しても時給が高く、昔から大学生に人気のあるアルバイトのうちの一つといえます。
この家庭教師のアルバイトをするときに、まず初めにだれもが迷うのが「個人契約」なのか、「家庭教師派遣会社に登録」するか、かもしれません。
今回のコラムでは、家庭教師の「個人契約」と「家庭教師派遣会社」を比較した時の両方の特徴とメリットとデメリットについてご紹介します。
個人契約の家庭教師とは?
個人契約の家庭教師とは、生徒の家庭と家庭教師とで直接契約をして指導をすることをいいます。よくあるケースとしては、知り合いの家庭の生徒を紹介してもらう、口コミでの紹介、インターネット等で見つけた生徒に勉強を教えることで報酬を得る、ということが一般的のようです。
家庭教師を個人契約でするときは、業者などの第三者を介さずに、教師個人と家庭で直接契約をすることがほとんどです。
家庭教師を個人契約ですることでの最大のメリットは、家庭教師と生徒との間に業者が入っていないため、一般的に塾の講師や家庭教師派遣センターなどを通じて紹介してもらうよりも給料が高いということが言えます。
このことは、生徒の側から見ても中間マージンがかからないため、派遣センターを通じて紹介・斡旋してもらうよりも費用を抑えられることや、希望に沿った教師を見つけやすいという点でメリットがあります。
メリットばかりかというと、そうでもなく、たとえば家庭教師のレベル感や最新で正確な受験情報を得られるという保証がないことや、万が一のトラブル対応も自分で行わなければならないというデメリットもあり、逆に大きな負担がかかってしまう可能性もあります。
生徒(親御さん)が家庭教師を個人契約する方法
生徒やその保護者が家庭教師を探していて、個人的に契約をしたいと思った時には次のような方法が考えられます。
- 個人契約のマッチングサイトを利用する
- 大学や大学生協の紹介サービスを利用する
- 知人に紹介してもらう
- 地域の掲示板などで生徒募集の案内を見る
これらの方法の中でも最近では、個人契約のマッチングサイトを利用する人が多いようです。
こうしたマッチングサイトを利用する際は、まずはサイト選びから始めましょう。サイトと言っても様々ありますので、それぞれのサイトをよく比較してから選びましょう。
個人契約サイトの中から自分の条件に合う講師を選び、候補となる大学生や社会人、プロ講師とまずはメールなどでやりとりをし、面接を行って体験授業をしてもらいます。
無料体験の結果で先生を決定し、授業曜日や時間帯、報酬の支払い日や交通費などをしっかりと確認してお互いに納得してから契約書を作成し、契約を交わします。
個人契約のマッチングサイトには大きく分けて次の三種類があります。
- ① 掲示板
これは文字通りサイトが掲示板形式になっていて、先生と生徒が掲示板を通じて直接やり取りして契約をする方法です。
掲示板を使えば同時期に複数の先生と面接を行うことはできますが、採用の進め方についても完全自己責任となりますので、十分に注意をしながら行いましょう。 - ② 連絡先紹介型
この方法は、家庭教師登録センターなどに登録されている家庭教師の中から、自分の希望にあった先生の連絡先を紹介してもう方法です。面接の手配や契約は登録センターなどの業者が仲介してくれますがその他のサポートはないので、実際の授業などのやりとりは自己責任で行います。 - ③ 契約型
こちらも家庭教師登録センターなどの家庭教師登録者の中から数名を選んで面接を行い、その中の1名と契約をする方法です。面接の手配や契約は業者の仲介がありますが、そこからのサポートはありません。
尚、昨今では「オンライン家庭教師」という選択肢もございます。
個人契約の家庭教師のメリット
家庭教師から見て、生徒と直接個人契約する方法は単純に稼ぎやすいというメリットが考えられます。
家庭教師派遣会社から家庭教師として派遣される場合には、生徒の家庭が支払った授業料から派遣会社の手数料が引かれたものが家庭教師の給与となります。多くはあらかじめ一定の時給が設定されていることがほとんどです。
それに対して個人契約の場合は、家庭教師と生徒の家庭とで報酬などについて話し合ったうえで直接契約をします。そのため家庭教師派遣会社などの仲介手数料を支払う必要がなく、直接授業料が家庭教師本人に支払われるため、派遣会社を通した時よりも給料が高くなるといえます。
家庭教師派遣会社を通して生徒を紹介してもらい、授業を行う場合の時給相場はおよそ1時間当たり1,500円からなのに対して、個人契約での時給相場は、およそ1時間当たり2,000円から、となっているデータもあります。
一方、生徒側から見た家庭教師を個人契約でお願いするときのメリットとしては、次のようなことが考えられます。
掲示板など家庭教師募集コーナーに掲載すると、沢山の候補者が集まるため、プロフィールや経歴を事前に見てから、自分で選んで受講することができます。そのため実際に先生を自分で選ぶことが出来、納得して依頼することができます。
連絡先紹介型サービスから家庭教師の連絡先を紹介してもらうと一件ごとに数千円程度の手数料が、また契約型サービスでは、一契約ごとに手数料が発生しますが、掲示板などを利用すれば無料で家庭教師を探すことが出来ます。
このように、先生選びのマッチングをする際には費用が発生することもありますが、月々の家庭教師に支払う授業料には業者に払う仲介手数料が含まれないので、単純に考えて家庭教師センターと契約する場合よりも、費用をおさえることができる点がメリットといえます。
家庭教師側から考える個人契約のデメリット
以上のように、費用面や報酬だけを比較すると、家庭教師を個人契約で始める方がメリットは大きいように感じるかもしれませんが、個人契約ならではの苦労やデメリットもあります。ここでは家庭教師から見た際のデメリットを挙げてみます。
- ① 生徒を集める苦労がある
家庭教師を個人契約で始めようと思ったら、まずは契約をしてくれる生徒を見つけなければなりません。多くは知り合いから紹介してもらったり、家庭教師マッチングサイトで生徒を募集したりする方法が一般的です。
そもそも生徒を見つけること自体が大変なのですが、何よりも家庭教師にとって重要な生徒の条件は、生徒が通いやすいエリアに住んでいるということです。そのような自分の条件に合う生徒を見つけることが、家庭教師の仕事をするなかで一番苦労する点ともいえます。
そのため、地理的に合致した条件の生徒が見つからず、なかなか仕事を始めることができないこともよくあります。条件の合う生徒を見つければ、個人契約の家庭教師は時給も高く良い条件の仕事ですが、そもそも生徒が見つからなければ収入を得ることもできません。 - ② 契約や交渉に手間がかかる
個人で家庭教師を契約する場合、生徒に提供する授業の内容などはもちろん、家庭教師の「契約内容」などの事務手続きについても自分で行わなければなりません。
例えば、指導期間や授業は週に何回行うのか、時給などの報酬、交通費などはもちろんのこと、急にキャンセルした際の補講の有無や、補講の料金などの細かなことまで、ありとあらゆることを家庭と相談し決めなければならないのです。
また、報酬や待遇に不満や疑問が生じた際にも自分で交渉しなければ改善することもできませんし、場合によってはその交渉によって生徒の家庭との関係が悪くなったり、契約そのものが解消されたりすることもあるかもしれません。
万が一の際に契約書を交わしておく必要があるケースもありますし、家庭から契約書の作成を依頼されることがあります。このように個人で契約や交渉などを行うのはとても大変です。 - ③ 情報が少なく指導に対するプレッシャーがかかることも
個人で家庭教師を行う場合、どのように教えるか、どんな教材を使うかなどは、自分で考えなければなりません。また、実際に授業をしてみると教え方が分からなかったり、生徒がなかなか理解してくれないといった悩みが生じることもあります。
家庭教師に求められるのは、成績アップや志望校合格などといった明確な目標をもとに依頼されるため、そのプレッシャーが家庭教師に重くのしかかります。万が一成績が向上しない場合は、クレームを言われたり契約を打ち切られる可能性もあるため、そういったプレッシャーに耐えなければなりません。 - ④ 家庭教師の代理や後任を見つけにくい
家庭教師の仕事のメリットの一つは、ある程度スケジュールの融通が利かせられる点でしょう。
ところが病気や長期留学といった理由で家庭教師の仕事を長期間休まなければならなかったり、辞めたりしなければならないといったこともあります。
すぐに代理や後任の家庭教師を紹介できればよいのですが、先述のように条件に合う人を見つけるのはなかなか難しいものです。 - ⑤ サポートが一切なく、トラブルは全て自分で対応しなければならない
個人契約では会社などに所属していないため、万が一トラブルが生じた際は、サポートが一切なく、すべて自力で解決しなければなりません。
あくまでも個人同志の契約なので、報酬や時間面でのメリットはありますが、様々な場面で問題やトラブルが起らないとも限りません。そんな時に個人でトラブルを解決することはとても大変なことです。
以上の点を考慮して検討しましょう。
生徒側から見た家庭教師の個人契約のデメリット
今度は生徒側から見て、家庭教師を個人契約する上でのデメリットを挙げていきましょう。
個人契約で家庭教師を探す場合は、自分で先生を選ぶことができることがメリットですが、マッチングまでに時間がかかってしまうことが往々にしてあるようです。
万が一紹介してもらった家庭教師との相性が合わなかった場合にも、紹介してもらうごとに紹介料がかかるサービスも多いため、結果的に価格が高くなることもあります。
個人では家庭教師を探すことがそもそも大変なうえに、さらに相性が良い先生を探すことは大変な苦労を伴います。授業の内容なども先生のやり方や人間性による点が大きいので、生徒と家庭教師の相性が合わないととても苦労してしまうでしょう。
しかも、もし相性が合わないと断る場合には、直接言わなければならないのも大変なことです。
家庭教師を個人で契約する場合、紹介サービスを利用した場合でも、契約後にはサポートを受けることができません。万が一家庭教師とのトラブルが発生してもどこからも仲介してもらうことが出来ないのです。万が一のトラブルを防ぐためには、自分で事前準備をしっかりと行う必要があります。
家庭教師を個人契約するうえでの生徒側からみた注意点は以下のことがあげられますので、是非参考にしてみてください。
まず、はじめに最も気を付けて欲しいことは授業料の前払いです。月額の報酬を支払ったらそのまま来なくなってしまうということも考えられます。問い合わせたくても相手の連絡先がわからないといったケースもあるようなので気を付けましょう。
また、よくあるのが肩書をしっかり確認せずに契約してしまったケース。例えば、「東大卒」などのような一流大学卒業の先生に見てもらいたいと思う人も多いかもしれませんね。けれども、そんな学歴がないのに嘘をついて家庭教師の個人契約を結ぼうとする人がいるかもしれません。そんなケースを防ぐためにも、必ず学生証や卒業証明書・身分証明書を確認しましょう。
また契約については、口約束で済ませることはせず、必ず契約書を交わすようにしてください。
個人契約の場合は、口約束で契約してしまうこともありますが、後で何らかのトラブルに遭う可能性もゼロではありません。通常は家庭教師の先生が契約書を用意する場合が多いので、契約書の内容を必ず確認します。正しく理解していないことで後から追加料金を請求される可能性もあるので注意しましょう。
万が一の時のためにも、家庭教師の住所や連絡先を確認しておくことも重要です。免許証などで現住所を確認しておくことや、電話番号やメールアドレスも確認しましょう。
そして家庭教師が来るときは、保護者が別室で控えていることも大切です。また、授業終了後には少しの時間でもいいので、報告や打ち合わせの時間をとるようにしましょう。
また、個人契約のマッチングサイトを利用して探した家庭教師と直接契約をすることはサイトの規約に違反します。最悪の場合、損害賠償を請求される可能性もあるので注意しましょう。
派遣型・登録型家庭教師とは?
個人契約は色々と大変という人は、家庭教師派遣会社に登録することがおすすめです。
家庭教師をしたい人、家庭教師をお願いしたい人、それぞれが派遣会社へ登録し、マッチングしてもらい、個人間の直接契約関係ではなく、家庭教師派遣会社から各家庭へと先生を派遣してもらう方法です。家庭教師派遣会社では、個人契約をする際の大変なことを全て担ってくれます。
そのため、生徒が家庭教師を頼む場合、一般的には家庭教師センターの方が個人契約に比べて授業料が高くなっています。けれども、個人契約の家庭教師では紹介料がかかるケースがあることや、契約後のサポートが受けられないことを思えば、家庭教師派遣会社の料金もそれほど高いとは言えないかもしれません。
家庭教師派遣会社を通じて家庭教師をするメリット
家庭教師と生徒との直接契約でなく、中間に派遣会社を入れることで手数料がかかるというデメリットはありますが、それ以上に多くのメリットがあるのも事実です。
まず一つ目には、家庭教師や生徒、お互いを紹介してくれるという点です。
個人契約で難しいマッチングを家庭教師派遣会社が行ってくれることが一番のメリットです。派遣会社が家庭教師を必要とする生徒や家庭教師をしたい人を集めて紹介してくれるので、お互いが探しあう手間がありません。
派遣会社はデータをもとに、家庭教師をしたい人に希望の条件を元に生徒を紹介してくれます。教えたい学年や得意教科、訪問地域、最寄り駅など、理想とする家庭教師の働き方を実現することができます。このことは生徒側から見ても同様のことが言えます。
さらに希望によっては1日に複数の授業ができるようにエリアが近い生徒を複数紹介してくれることもあるなど、仕事の効率を上げることもできますし、生徒側から見たら、多くの家庭教師を紹介してくれることから教師の質がある程度保証されているという良さもあります。
また、契約などの手続きは、基本的に家庭教師派遣会社がおこなうため、家庭教師側からすると契約や交渉などが必要なく授業に集中できるという点もメリットです。
家庭教師派遣会社の契約内容はシステマティックにまとまっており、特に報酬や交通費等については、家庭側も家庭教師側もがはっきりと明示されているためお互いに安心できます。
また、家庭教師への報酬は家庭教師派遣会社を通じて支払われるので、報酬を上げてほしいなどといった要望は、家庭教師派遣会社への相談になります。直接生徒の家庭へ交渉するよりも家庭教師派遣会社へ交渉するほうが、家庭教師も気が楽なのではないでしょうか。
さらに、指導前後のフォローが手厚い点もメリットと言えます。
家庭教師派遣会社は、家庭教師を派遣する前に、事前の研修を行うことがほとんどです。生徒のタイプや授業の要望、相手の家族とのコミュケーションの取り方などを、家庭教師がこれからスムーズに行うことができるような準備をしてくれます。授業後は相談やアドバイス等のフォローなども行ってくれる会社がほとんどです。また、派遣会社には長年蓄積されてきた受験校のデータや合格メソッドを持っていることが多く、具体的な要望にも応えてくれる点もメリットの1つです。
大切な生徒を預かる家庭教師は「成績を上げないといけない」というプレッシャーが常にありますが、個人ではなく、派遣会社とチームのような感覚で家庭教師をすることができます。
他にも、何らかの理由で、長期のお休みや家庭教師を辞めるなどで、後任の家庭教師を手配する必要が生じた場合、代わりの先生を手配してくれます。万が一の時に対応してもらうことができる点も安心です。
まとめ
家庭教師を個人契約で行う場合、良い条件が揃えば教師も生徒もお互いにとってメリットが多いですが、仲介する会社のサポートが受けられないのが難点です。全てのことを個人で解決しなければならないため、余計な苦労をしてしまうことも考えられます。
時給面だけでなく、待遇や条件などもしっかり考慮して家庭教師派遣会社などに登録することが無難な手段と言えるでしょう。
もしもそれでも家庭教師の個人契約をしたいという場合は、ここで取り上げた注意点をしっかり確認し、よく検討してから契約するようにしましょう。