中学校・高校の期間は、思春期真っ盛りのお子さんが大きく成長する時期です。
お子さんが中学校や高校に進学すると、”子離れ”を意識し始めると同時に、新たな悩みに直面される頃かと思います。
友人との付き合いが楽しくなり、部活動に入るなど、学校生活が充実します。
それまでとは違い、親子でべったりすることは少なくなるでしょう。
反面、10代の学校生活には問題もつきものです。
学習面、人間関係、部活動、家庭面など、多くの子はこのうちいずれかの悩みやトラブルを抱えており、またこれら全ての問題を抱えている子もいるでしょう。
担任の先生・親御さん・お子さんの間で行われる三者面談は、そうした問題を発見し、対処する絶好の機会です。
以下では、三者面談の際に「聞くべきこと」や「聞かれること」、学年ごとのポイント、注意点などについて解説します。
三者面談の概要
三者面談とは先生・親御さん・お子さんの三者が集い、学習や学校生活について問題点がないかを話し合うための場です。
通常は学期末に行われ、生徒全員に対して順次面談が行われます。
ひと組あたり時間にして10-15分程度の短時間の面談です。
かつて親御さんも緊張しながら、自身の進路について話し合ったご経験があるのではないでしょうか。
三者面談は保護者面談と違い、「お子さんご本人も同席する」のが特徴です。
したがって、保護者面談のように一方的に話を進めるのではなく、あくまでお子さんのための場として気遣う必要があります。
ここに三者面談の難しさがあります。
お子さんが小学生のうちは、右も左も分からず、会話も拙いお子さんに代わって親御さんが主導権をにぎって話を進めていたでしょう。
ところが、子どもは年々凄まじいスピードで成長していきます。
色々な知識や世の中の常識を身につけるようになり、自我が芽生え、会話も上達してきます。
場合によっては、お子さんの方が口達者になり、会話のスキルが親御さんをしのぐ場合もあります。
こうなると立場も逆転し、思いを主張してもお子さんから思わぬ反発をくらいかねません。
このように、三者面談の成否はひとえに親子関係がうまくいっているかどうか、事前に意見のすり合わせが十分にできているかどうか、などがポイントとなります。
親御さんとお子さんの心構え
では、三者面談にどのような心構えをもって臨めばよいでしょうか?
大事なことはあらかじめ問題点や悩みを整理しておくことです。
そのためには、事前に親子で相談しておくことが必要です。
ふだんろくに会話もしていないような親子が、三者面談に限って悩みごとを共有するのは難しいため、普段からのコミュニケーションの質や量がカギになります。
とは言うものの、お子さんはもう小学生ではなく、忙しい学校生活を送っており、まとまった時間を取りづらいのが現実です。
頻繁でなくても構いませんが、できるだけお子さんと適度なコミュニケーションをとっておきましょう。
10代の子育ての至言のひとつに「少年は手を離せ、目を離すな」という言葉があります。
何気ない会話を通じて、学校の成績・学校生活・友人関係・部活動などについて親御さんがある程度のことを察し、信頼関係を築いておくのが大切です。
また、先生のポリシーや性格、通っている学校によっても重視する点は違うため、面談の仕方は千差万別です。
三者面談とは別に、お子さんと先生の間で進路相談や、親御さんと先生の間で保護者面談が組まれていると思います。
こうした機会を利用して、三者面談では何を話したらよいかを相談するなどして、最低限の情報をつかんでおきましょう。
【学年共通】三者面談で聞くべきこと
三者面談は、担任の先生のアドバイスをお子さんと共に伺える貴重な機会です。
面談は時間が限られているため、関心のある事柄を要領よく、見落とすことのないように話さなければなりません。
ここでは、どの学年でも三者面談において聞くべきポイントをいくつかの観点からみていきます。
<学習面>
まず、各教科における学習進度、授業態度、授業中に発言しているかなどをチェックしましょう。
そのうえで、現時点の得意教科と苦手教科、得意教科の伸ばし方、苦手教科の対処法、家庭学習の仕方、今後の目標など、基本的な事項を把握しましょう。
また、面談の時期が定期テストや実力テストの前であれば、テスト範囲からどのように出題されるか、テストの性格、どのように事前学習を進めればよいか、なども聞いておきましょう。
逆にテストを受けた後であれば、学年やクラスの平均点の結果や、お子さんの順位、復習の仕方や次回の勉強の仕方など、気になることを質問できるでしょう。
<生活面>
続いて、大事なのは学校生活に関することです。
お子さんの学年、状況、性格によっては学習面以上に大事な場合があります。
クラスに馴染んでいるか、親しい友人関係、一人ぼっちになっていないか、いじめを受けていないか、学級活動や主要教科以外の授業で役割を果たしているか、協調性は感じられるかなど、お子さんによって聞くべきポイントは多岐にわたります。
とりわけ、仲間はずれやいじめのサインの早期発見は重要です。
たいていのお子さんは思春期の微妙な年頃に差し掛かっており、仮に問題があってもはっきりと言わないことも多いです。
致命的な事態を招かないために、少しでも異変や違和感を感じている場合は恐れず積極的に先生に尋ねてみましょう。
<課外活動>
課外活動には放課後の部活動やクラブ活動、場合によってはボランティア活動なども含まれます。
課外活動はお子さんの成長にとって、学習面同様に大切です。
部活やクラブに加入している場合、楽しめているか、熱心かつ積極的に参加しているか、チームの仲間に馴染めているか、顧問の先生とうまくやっているか、悩みはないかなどについて聞き、状況を把握しておきましょう。
また、担任の先生と顧問の先生の間で連絡をとっているかも確認しておきましょう。
課外活動は内申点にも関係するため、チェックを怠らないようにしましょう。
三者面談で「聞かれること」
三者面談で多く聞かれるのは、先生にとってみえない部分です。
それはやはり家庭での学習状況や過ごし方、時間の使い方です。
学習面では、毎日何時間くらい机に向かっているか、宿題や予習・復習などをしているか、集中しているかについて聞かれると思います。
事前によく把握しておき、できるだけ具体的かつ要領よく状況を伝えましょう。
その他生活面では、どのように過ごしているかについて聞かれると思います。
スマートフォンの有無やどれくらい触れているか、お手伝いはしているか、習い事はしているか、きょうだい喧嘩はないか、睡眠や食事は十分とれているかなどがポイントになります。
これらは学習といっけん関係ないようにみえても、先生にとっては大事な情報です。
テレビ・スマホ・ゲーム・SNSに熱中し過ぎていたり、健康面で何らかの問題がある場合、学習面に大きく関わってくるからです。
また、お子さんが入学したばかりのときは、小学校(中学校)のときはどんな様子だったかを伝えましょう。
転校してきたばかりのときは、以前の学校の状況を詳しく伝えましょう。
どんな情報であれ、伝える際に効果的なのは時系列を把握しておくことです。
過去・現在のそれぞれの状況を整理したうえで、できるだけ詳しく伝えると、先生もお子さんの素性をより深く理解できます。
物事の原因がクリアになるほど、今後に向けたさまざまな対処法を考えやすくなるでしょう。
【学年別】三者面談のポイント
同じ三者面談とはいえ、12歳の中学1年生と18歳の高校3年生では面談の仕方やお子さんへの接し方も大きく異なってきます。
ここでは、三者面談における学年別のポイントをみていきましょう。
<中学1年生>
小学校から中学校へ上がるときは、子どもにとってとても大きな変化です。
中学受験を経て私立や国立などの中学校に進学すると人間関係や校風もガラリと変わり、最初は戸惑うことも多いでしょう。
学習面だけでなく、友達との関係もリセットされ、不安を感じているからです。
また、地域の公立中学校へそのまま進学した場合でも、学習面で難しくなり、クラス替えによって友人関係も大きく変わり、部活動が始まるなど、多くの変化に慣れていないものです。
何事もスタートは大事ですから、この時期の三者面談では学習面だけでなく、クラスや部活動、中学生活に馴染んでいるかについて逐一チェックすることが重要です。
<中学2年生>
1年が経つと、中学校生活にもある程度慣れてきたかもしれません。
ところが、”中だるみ”と呼ばれる状態に突入するのがこの時期です。
学習面も部活動も慣れきってしまい、入学当初の緊張感が失われてしまい、目標もなくダラダラしがちなのがこの時期の特徴です。
学習面では、予習・復習の学習習慣が身についているか、授業を集中して聞いているか、積極的に発言しているか、授業態度はどうかなど、基本的なポイントが身についているか、担任の先生の意見を伺っておきましょう。
また、人間関係が濃厚になるのは良い反面、いじめなど負の面も発生しやすくなります。本人の様子からだけではなかなか判別しにくいので、クラスや部活でいじめに遭っていないか、関わっていないか、前兆がないかなど、この機会によく確認しておきましょう。
<中学3年生>
中高一貫校でない限り、高校受験を控えているのがこの学年です。
高校受験を受ける多くのお子さんにとって、受験は初めての経験になるでしょう。
したがって、学習面の進度や志望校などをよく吟味する必要があります。
仮に学習面で何ら不安がないお子さんであっても、まだ精神的に未熟な中学生です。
受験特有のプレッシャーにのまれて心理面でナーバスになっていることは少なくありません。
不安にならないよう、自分に自信をもたせるなど、メンタル面でのサポートをすることが肝要です。
一方、中高一貫校で高校受験がない場合も要注意なのがやはりこの学年です。
受験がないからと油断しきってしまい、”中だるみ”真っ盛りになるからです。
中だるみ対策について先生に相談しましょう。
この時期は英語・数学などの主要教科をはじめ、学習内容が難化し始める頃です。
覚えることが増えるだけでなく、抽象的で高度な内容が多くなるため、普段の学習ペースをあげていかないと一気に授業についていけなくなります。
とりわけ中高一貫校ではまわりのお子さんのレベルも高いため、プレッシャーも一段と高く、学習面・精神面ともに手厚いサポートが欠かせないでしょう。
<高校1年生>
高校1年生は新たなスタートとなる大事な学年であり、大学受験を目指すうえでもいよいよ本格的なスタートとなります。
高校生になると受験を経験し、不安定な時期を過ぎたためか、多くのお子さんが良い意味で落ち着きをみせるようになります。
この精神的な落ち着きが良い方に作用すればよいですが、悪い方へいくと勢いが失せてしまう”燃え尽き症候群”が問題です。
学習面では中学校とガラリと変わり、全ての教科で質も量も大きく上がります。
多くのお子さんにとって、まるで別物のように感じるものです。
中学校までは学習面で全く問題なかったようにみえるお子さんも、実力がみえてくるにつれて、自信を失うことも多いです。
また、この学年で決断を迫られる大きな分岐点は、文系・理系の選択です。
お子さんの特性や性格をよく見極めた上で選択をしないと、後々、時間を無駄にすることになってしまいます。
したがって、この学年での三者面談は案外重要です。
中学校までとは気持ちを切り替えて、長時間の予習・復習を計画的にきちんとやり、また部活動に所属している場合は両立するための精神的な強さをお子さんに身につけてもらう必要があります。
場合によっては、部活動を諦めるなど、何らかの決断をしなければなりません。
本人が納得のいく学習・生活スタイルを確立してもらうため、三者でよく話し合いましょう。
<高校2年生>
この学年では、やはり”中だるみ”が問題になってきます。
高校生活に入り、幸先の良いスタートを切れたお子さんもモチベーションが徐々に低下することがあるからです。
学習面では目標を見失いがちなこの時期、小刻みな目標をもたせることがカギになります。
また、周りの状況をよく聞き、卒業後の進路や志望校を考えるなど、進路面の相談を徐々に本格化していきましょう。
<高校3年生>
大学受験本番の年であり、部活動に熱中していたお子さんも学習に本腰を入れる時期です。
進路を見定め、志望校を決定するためには、事前に本人の考えを明らかにする必要があります。
また、どのように学習を進めていけばよいか、具体的な内容や学習時間だけでなく、志望校や偏差値、合格者の情報など、相談・確認すべきことは山ほどあります。
三者面談では、これらを決められた時間内に効率よく話し合わなければなりません。
志望校のすり合わせなど、親子間のコミュニケーションを密にし、万全の準備をしたうえで面談に臨みましょう。
三者面談でやってはいけないこと、注意点
三者面談ではいずれの話題でも、お子さん抜きの話にならず、お子さんの面前でダイレクトに話ができます。
それが三者面談のよいところであり、また注意すべきところでもあります。
思春期の子どもは一般的に過敏な状態にあり、自意識過剰なのが普通です。
大人からすると何でもないようなことでも、人から言われたことを気にしたり、恥ずかしかったりするものです。
人目を気にしがちな女の子であれば、なおさらです。
たとえば、「家ではだらしなくしている」「朝はひとりで起きられず、毎朝起こしている」「テスト前も勉強をせず、ゲームばかりしている」などと、本人の悪いところを不用意に明かすようなことは控えましょう。
幼い頃と違い、お子さんはもう立派な一人の人間です。
本人が気にしなければ構いませんが、不必要に話すことはプライバシー違反になります。
「口は災いの元」というとおり、軽はずみに口にして、思わぬところから親子関係を悪くしないよう注意が必要です。
たとえ、それらが真実であったとしても、洗いざらい暴き立てないようにしましょう。
むしろ、先生に何か指摘されても取り繕うようにし、「私はあなたの味方である」というメッセージを伝える方が親子関係にとって生産的でしょう。
三者面談を前向きに捉える
一方で、三者面談を上手く問題解決に利用するのも大切です。
お子さんと先生の関係もあるので、何でもかんでも打ち明けてよいわけではありませんが、基本的には「問題や、問題と感じられること」は三者で共有することで建設的・平和的な解決に向かうことが多いものです。
多くの問題は情報不足が原因で起こるものです。
場合によっては本人の心配をよそに、大人同士の対話であっさりと解決することもあります。
とはいえ、本人が嫌がるようなプライバシーや、神経質な話題、デリケートな話題に関しては注意が必要です。
特に受験直前になるほどお子さんの気持ちはナーバスになるため、話す内容には細心の注意を払わなくてはなりません。
面談でいきなりセンシティブな話題を持ち出すと逆にデリカシーを疑われるので、お子さんに事前に話していいか、許可をとっておくとよいでしょう。
三者面談を進路決定に活用する
学年が上がるにつれて、三者面談でウェイトをより占めるのはやはり「進路相談」です。
お子さんと親御さんで希望の進路や志望校が異なる場合、厄介なことになります。
面談がうまく進まず、先生も板挟みになり、困惑してしまうでしょう。
次第によっては、親子関係にヒビが入る原因にもなります。
このような事態を未然に防ぐためには、三者面談の前に事前によくすり合わせをしておくことが大事です。
コミュニケーションを絶やさず、お子さんの希望進路や志望校を聞き出し、何度も話し合うことです。
たとえ合意がとれなくても、「自分はこう思っているけど、この子はこう思っている」と互いの意思を確認しておくことが大事です。
それでも尚、反抗期から親御さんの意見は聞き入れてもらえないことがあります。
このような場合、先生に第三者としての客観的な意見を言ってもらうことで、聞く耳を持つこともあります。
最終的にどちらかが折れるか、妥協案を見出せるかもしれません。
三者面談をうまく進路決定に活用できれば理想的といえるでしょう。
まとめ
三者面談を円滑に進めるポイントは、お子さんをよく観察し、日頃から成長をつぶさにみておくことです。
思春期は成長が早いため、気がつけば別人のようになり、「去年は素直に聞いてくれたのに…」と思うこともしばしばです。
適切な距離感を考えたうえで、親子間で十分なコミュニケーションをとらないと齟齬をきたし、三者面談が滞る原因となります。
お子さんの学習成績やパフォーマンスが良い場合でも、芳しくない場合でも、希望する高校や大学への進学を目指すうえで、三者面談は非常に重要なターニングポイントになります。
「三人寄れば文殊の知恵」と言われるとおり、気づかなかった問題の解決を導き、クリアになった目標へ三人四脚で進むための実りある機会になります。
難しく捉えず、ポイントをしっかり押さえて三者面談をポジティブに活用しましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。