学力の土台の教科であるともいえる「国語」ですが、案外苦手な子供は多いようです。
英語などの外国語とは異なり、日本人であるならば日本語の国語は簡単だろう…と思いがちですが、実際は一度不得意だと感じてしまうと、なかなか得意にするのが難しいのでしょうか。
ここでは、そんな「国語」について、嫌いになったり苦手意識を持たないようにして、国語を好き・得意になるための方法をいくつか紹介したいと思います。
国語力を伸ばすために、まずは「語彙力」を上げることから
語学教科である「英語」の学習をするときには、まずは「英単語(語彙力)」を覚えることが重要になりますよね。
同じことは国語についても当てはまります。
国語の読解力をアップさせるために欠かせないもの、それは「語彙力」なのです。
語彙力とは、どれだけ多くの単語、もしくは言葉の意味を知っているか、ということです。
ことわざや四字熟語、慣用表現を知っているということも語彙力に含まれます。
語彙力は、国語力や読解力の基礎となるもので、語彙力が高ければ高いほど文章の意味を容易に理解できるようになります。
逆に言えば、語彙力が低いと文章全体の意味を読みとることが難しくなります。
英語の読解問題で、知らない単語が多くて意味が理解できなかったなんてことは、学生時代多くの人が経験したのではないでしょうか。
英語の長文読解問題を取り組む際に、知らない単語が全体の5%以上あると、文章全体の意味を理解することがほぼ難しくなるということが認知心理学の研究で明らかになっています。
英語において5%というと、20語に1語の割合になります。
また数学を例に挙げると、基本的な計算問題が解けなければ、文章問題や図形問題といった応用問題が解けません。
つまり、根本的な問題として、国語のベースとなる語彙力を上げなければ、国語力・読解力の向上は見込めないのです。
実は、多くの子供たちにとって国語で扱う文章の中には、知らない言葉や意味のあやふやな熟語が数多く出てきます。
そして国語が苦手な子供たちほど文章中にある知らない単語やよくわからない表現を読み飛ばす傾向にあるようです。
いくら母国語を扱う「国語」学習であっても、文章の中に意味がわからない言葉が多くあると、文章全体の意味が理解できなくなります。
「国語は教科書の文章をよく読めばできる」という人もいるかもしれませんが、そんな簡単な一言では片づけられません。
語彙力が低く、言葉や熟語の意味がわからない状態では、文章を正確に読み取ることはできないのです。
「語彙力」は、文章を読解するのにとても重要な力と言えます。
語彙力は、国語力を支える土台、いわば基礎工事です。
大事な基礎の部分をおろそかにしては、その上に国語の力は絶対に積み上がりません。
けれども逆に、語彙力があり、多くの言葉の意味がわかるということは、人よりも多くのアドバンテージがあるともいえるでしょう。
では、語彙力はどうやって伸ばせばよいのでしょうか。
語彙力を上げるためにはどうすればいい?
難解な言葉をお子さんが読めなかった時、意味がわからないという時はどうしたら良いのでしょうか。
まずはそれが「意味がわからない言葉」だということを、子供自身が認識しなければなりません。
知らない言葉、わからない表現に出会った時、「これはどういう意味なのかな?」と子供自身で疑問を持つことが大切です。
そして、その言葉の意味を自分なりにかみくだいて理解すること、わかりやすい表現に言い換えられること、意味を調べる習慣をつけることが、語彙力を高めるためにとても大切なことなのです。
どうしても子供自身で言葉の意味が理解できないような時には、大人が意味を説明してあげても良いでしょう。
「ことわざ辞典」などのような語彙力が伸ばせる慣用句集や問題集をさりげなく用意してあげても良いかもしれませんね。
「語彙力」はまた、普段の会話の中でも育むことができます。
日常生活のなかに四字熟語やことわざ、比喩表現などを盛り込んで、子供との会話を楽しんでみてはいかがでしょうか。
例えば、天気・気候を表す言葉には、生活に密着した表現が数多くあります。
「五月闇(さつきやみ)」という言葉は、梅雨の時期の暗い曇り空を表現した比喩的表現。
雨の降り方を「しとしと」と擬音で表現する事もあり、そのバリエーションは多種多様です。
子供がもしも知らない言葉に出会った際は、その意味を教えるとともに、簡単な言葉に置き換えてあげると知識が定着しやすくなるでしょう。
また、漢字にも多くの同音異義語があります。
「はかる」という読み方の漢字は、「図る」「計る」「測る」「量る」「諮る」など数多く、そのような同音異義語は日常生活の様々な場面で登場します。
例えば「体重をはかるって、どの漢字を使うのかな?」というように普段の日常会話の中で復習しながら覚えていくと定着しやすいでしょう。
特に国語や社会は日常生活で話題にしやすい教科と言えます。
親子の会話から、子供のモチベーションを高めることができるのと同時に、親御さんが工夫して問いかけることによって学力アップも期待できます。
お子さんが学校や塾から帰ってきたときに「今日はどんなことを習ったの?」と親御さんから質問することで、お子さんは授業で習ったことを思い返して説明するようになります。
このようなことも学力の定着につながりますので、積極的に実践してみてください。
他にも、しりとりやカルタ、百人一首などを親子で楽しみながら、言葉への関心を高めると良いでしょう。
国語のテストの成績を上げるにはまず「漢字」から
語彙力を上げるのには少し時間がかかるかもしれませんが、手っ取り早く国語の成績を上げたいという人は、まず「漢字」の勉強に取り組むと良いでしょう。
漢字は国語のテストの配点の中で必ず1割から2割程度のボリュームを占めています。
漢字の点数をしっかり取れるようになると、国語のテストで安定して高得点を取れるようになります。
また、漢字は勉強にかけた時間がテストの結果に表れやすい「得点アップ効率」が高い分野です。
国語のテスト対策でまっさきに取り組むべきなのが「漢字」なのです。
しかしながら、漢字は何回も紙に書いて練習して覚えるものだという「思い込み」を持ってしまっている人が多く、このことが子供を漢字嫌いにさせている原因になっているようです。
漢字を覚えるためにひたすら紙に何回も書いて練習するのは、あまり効率の良い方法ではなく、実はあまりおすすめできません。
では、漢字の練習はどのように進めるのが効果的なのでしょうか。
具体的な漢字の苦手克服方法はコレ!①読み方
漢字に対して苦手意識を持つ子供が漢字を読めるように・書けるようにする方法はあるのでしょうか。
漢字がとても苦手な子供には、低学年で習った漢字、できれば小学校一年生からの漢字を、もう一度おさらいしていくと良いでしょう。
一見無駄が多いように思うかもしれませんが、「急がば回れ」という言葉にもあるように、漢字の土台を固めておくことは国語の応用力アップにもつながる大切なステップです。
初めは小学校低学年の漢字の「読み方」からスタートしましょう。
漢字が苦手だという子供でも、漢字を読むだけであれば難しくないものが多いはずです。
しかも漢字の書き取りと違って読み方であれば気軽に取りかかれます。
この時にポイントとしては読み方を「練習」するのではなく、「チェック」するだけだということ。
漢字ドリルなどを使って、読める漢字にはマル、読めない漢字はバツをつけるだけで良いのです。
自分の現在の学年の範囲まで読み方のチェックをしておくと良いでしょう。
チェックが終わったらその日はおしまい。
次は数日おいてから、バツがついた漢字だけをまた読めるかチェックしましょう。
一度正しい読み方の確認をしているので、読めるようになっている漢字が1回目よりも増えているはずです。
2回目も読めなかった漢字には2つめのバツをつけましょう。
バツが2個ついて読めなかった漢字は、その子にとってはなじみがなく意味がよくわかっていない言葉であるはずです。
この時点でいくら辞書を使ってその意味を自分で調べさせても上手くいかないでしょう。
そこでまず、大人がその子供に読めなかった漢字の言葉の意味を分かりやすく教えてあげます。
その後で理解できたかどうかを確かめるために、その言葉を使って子供に例文を作ってもらうのがポイントです。
文章にすることで、意味がわからないただの無機質な単語だったものが、実生活で生きる意味のある言葉に変わるのです。
また自分自身で文章を作ったことで、子供の記憶に残りやすくなります。
このようにして読めない漢字の意味を理解できたら、もう一度バツが2個ついた漢字だけを読めるようになったかチェックをしましよう。
ここでも正確に読めなかった漢字には、今までと同様、バツをつけていきます。
このトレーニングを繰り返すうちに、読めない漢字はどんどんと減っていくはずです。
具体的な漢字の苦手克服方法はコレ!②書き方
では、漢字の書き取りの勉強方法はどのようにすれば良いのでしょうか。
そこで、漢字の「部首」に注目してみてください。
漢字は、その多くが簡単な漢字である部首の組み合わせによってできています。
それぞれの漢字の部首には意味があります。
それぞれの部首の意味を知ると、漢字がただの「記号」ではなく「意味のあるまとまり」となって記憶に残りやすくなります。
高学年で習う複雑な漢字でも、部首ごとに分解することで、より簡単に覚えることができます。
例えば「問題を解く」で用いる「解」という漢字があります。
これは、「牛から角を刀で切り離す」というように、部首ごとに分解した漢字を使い意味を理解することで、簡単に暗記できますよ。
漢字の部首の意味を確認することができたら、どの学年で習う漢字かということは気にせずに、同じ部首の漢字をまとめてみましょう。
例えば「さんずい」の漢字、「にくづき」の漢字というようにグループ分けをします。
それができたら、漢字の「読み方」のトレーニングと同じように、漢字練習帳に書きとりの確認をしましょう。
読み方の時と同じように、3回くらいチェックすることを繰り返してください。
3回チェックして書けなかったら、そこで初めて紙に書いて練習します。
余談ですが、子供たちが間違えやすい漢字はほぼ決まっているので、その間違えやすい漢字をあらかじめチェックしておくことも良いでしょう。
学校で学習する順番に則って、まとまりなくバラバラと漢字をひたすら紙に書いて練習するのは効率の悪い勉強法です。
以上で紹介したような方法で、効率よく勉強することをおすすめします。
まずは「おおざっぱに覚えること」を繰り返してみてください。
漢字学習に対して、もっと意欲的に学べるようにするために、漢字検定を受検することも一つの方法です。
漢字練習はどうしても機械的な作業になりがちなため、苦手意識をもつ子供は少なくありません。
検定試験という目標を持って学習することで、励みになる子もいるでしょう。
最も難易度の低い10級は小学校1年生修了程度なので、低学年からチャレンジできますよ。
文章の意味を正確に読み解けるようになるには?
近年、スマートフォンの普及やメディアが多様化したことにより、書籍の販売部数は減少傾向と言われています。
そのため子供たちの「活字離れ」、とりわけ「読解力の低下」が問題視されています。
文章から書いてあることを「正確に読める」ということは、単に読書だけにとどまらず、日常生活の中の「相手の気持ちを読む」ということにも通じていると指摘されるほど大切なことです。
「読解力」を磨くことは、コミュニケーション能力の土台となる「相手の気持ちを読む力」も同時に養うことができるのです。
そのためには、幼児期からの読書週間がとても重要と言われています。
小さいお子さんを持つ親御さんは、子供が一人で本を読めるようになるまでは、ぜひたくさん読み聞かせをしてあげてください。
小学生になっても、子供が希望するのであれば読み聞かせを続けてあげてくださいね。
読解力を伸ばす方法① 音読で読解力を伸ばそう
子供が自分で本を読めるようになったら、学校の教科書を音読させると良いでしょう。
音読が大切な理由は、文字を「目で見る」「声に出す」その声を「耳から聞く」というように、視覚や聴覚を使って練習することができることです。
また、音読をせずに黙読をしていると、もしも子供が分からない漢字や語彙を読み飛ばしていたとしても、それに大人は気づくことが出来ません。
これでは漢字力や語彙力の向上は望めないばかりか、本に書いてある内容を完全に理解することも出来ません。
音読しているのを大人はそばで聞いてあげて、もしも子供がうまく読めなかった時には、その漢字の読み方や意味を教えてあげるようにしてください。
こうして、すらすら読めるようになるまで音読を練習しましょう。
読めるようになったら、何回も音読する必要はありません。
さりげなく「どんなお話だった?」と大人が質問してあげて、内容について話し合うと国語読解力が高まります。
読解力を伸ばす方法② 説明文は段落ごとにひと言で「要約」をしよう
国語の説明文・論説文が得意になるためにはどうしたら良いでしょうか。
このような文章を読む際に重要なのが、正しく書いてある内容の意味を読み取ることです。
この時に国語が苦手な人は「目では文章を追っているが、意味までは読みとれていない状態」になってしまうようです。
そのため、本文には書かれていない当てずっぽうな答えや自分の意見を答えてしまうのです。
こうしたことを防ぐためには、段落ごとに書かれている内容を簡潔に一言でまとめる練習をしましょう。
こうしたトレーニングをすることで、長い文章の中から、答えに当たる部分を探せるようになります。
国語の説明文・論説文の成績を伸ばすには、重要な言葉や要約内容を推測して探せることが大切なのです。
読解力を伸ばす方法③ 物語文は感情を表す言葉や行動に注目
では、物語文を読む場合のコツはあるのでしょうか。
国語の物語文を深く理解するためには、物語を場面ごとに分け、出来事や登場人物の心情の変化をまとめてみると良いでしょう。
その際に感情を表す言葉や行動などを表す言葉、例えば「いらだつ」「かんしゃくを起こす」「投げつけた」などに着目するのがポイントです。
また、「いらだつ」という言葉の意味は「心が落ち着かない」「いらいらする」などの気持ちを表す言葉であることがわかることも重要です。
この記事の初めに戻りますが、たくさんの言葉の意味かわかること、つまり「語彙力がある」ということが、とても大切になってくるのです。
国語の成績アップのためには「読書」が一番!でも…
「読み」「書き」と言われるように、国語の基本は読むことと書くことです。
この2つが得意になれば、自然と国語が得意になるでしょう。
そのためには、何といっても読書の習慣をつけることが一番と言えます。
たくさんの本を読み、読むことに慣れれば「読解力」も高まります。
読解力があれば、小説や説明文を読み解く問題も得意になることでしょう。
他教科でも教科書や関連する本を読んで知識を広げることができるだけでなく、テストの問題を理解する際にも読解力は必要です。
読書習慣があることで、国語に限らずあらゆる科目の学力の底上げが期待できるのです。
と、ここまで読書の効用について述べました。
けれども現在の子供たちを見ると、読書量が多くても国語の成績が良いという傾向が、必ずしも当てはまるわけではないようです。
以前は確かに読書量と成績の良さは比例する傾向があったはずなのですが、何故現代は必ずしもそうではなくなってしまったのでしょうか。
一つの仮説として、読書の「質」自体が、昔と今とでは変質してきたからではないかということが挙げられます。
高度な情報化社会である現代は、世の中全体が「スピード第一主義」になってしまい、読書も「早く読み終えること」「たくさん読むこと」に価値が置かれるようになっているようです。
より速く、より多くの本を読んだ子供だけが大人たちから高い評価を受けてはいないでしょうか。
こうして育てられた子供達は、速読ばかりに気をとられ、本来国語力を醸成する「精読」からどんどん離れていってしまいます。
これでは、語彙力も読解力も養われるはずがありません。
そのため現代の子供たちの国語力は全体的に低下していったのではないかと言われています。
読書の質を上げること、読書を好きになることが大切
それでは、読書の質を高めるには一体どうしたらよいのでしょうか。
大切なことは、本を速くたくさん読む「乱読」ではなく、何度も同じ本を繰り返し読む「復読」です。
10冊の本を読むのではなく、1冊の本を10回読んでみてください。
同じ本を何回も読むうちに文章の流れが明確になり、「精読」ができるようになるでしょう。
これは国語力向上において最も重要な力です。
また、その時にわからない単語が出てきたら意味を辞書で調べることができ、語彙力も上がります。
それが読解力アップにもつながります。
大人も子供と同じ本をぜひ読んでみてください。
子供と本の内容をについて共有し話題にするとより子供は読書が楽しくなり、より深く読むことができるようになるでしょう。
親子で本の話題を共有すると子供はきっと読書を好きになります。
他にも子供を読書好きにさせるためには、生活の中に本が当たり前に存在する環境をつくると良いでしょう。
家の中に本があり、大人がさりげなく楽しみながら読書をしている姿を見れば、子供が本へ関心を高めるのは自然な流れです。
子供が本好きになってしまえば、大人が何も言わなくても次々に本を手に取って自分で興味を広げていくようになるでしょう。
その頃には国語が大好きになっているに違いありませんよ。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。