文部科学省が定めた学習指導要領の「生きる力」って何?

学習指導要領「生きる力」って何?
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文部科学省は2020年3月、新たな学習指導要領を公示しました。

2021年度の現在、小学校ではすでにこの指導要領に基づくカリキュラムが始まっています。

同じように中学校、高等学校でも順次開始される予定です。

新学習指導要領の中には「生きる力をはぐくむ」という理念が盛り込まれています。

「生きる力」とは何でしょうか?

この「生きる力をはぐくむ」という理念は、大人たちが今まで学校で受けてきた教育、「ゆとり」とも「詰め込み」とも異なる教育方針です。

ここでは、「生きる力」とは何なのか、「生きる力」をはぐぐむためにどのような学習をするのか、また今の子どもたちになぜ「生きる力」が必要なのか、その理由について紹介したいと思います。

学習指導要領とは何?

文部科学省「生きる力」について言及する前に、学習指導要領とは何なのかについて少し触れましょう。

学習指導要領とは、全国にあるすべての学校で、一定の水準を保つように文部科学省が定めているカリキュラムの基準です。

これが学校で作られる時間割のもとになっています。

この学習指導要領は、長い間同じものが使われているのではありません。

10年に一度見直しされて、改訂されることになっています。

それは、子供たちが生きていくために必要な資質や能力をその時代に応じてふさわしいものにするためです。

2020年度からの新学習指導要領も例外ではありません。

社会のグローバル化や急速な情報化、技術革新が目覚ましい変化の時代をこれからの子供たちが生き抜かなければならないでしょう。

そうしたことを踏まえ、新学習指導要領には「生きる力」について、次のように記されていました。

学校で学んだことが、子供たちの「生きる力」となって、明日に,そしてその先の人生につながってほしい。

これからの社会が、どんなに変化して予測困難な時代になっても、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現してほしい。

そして、明るい未来を、共に創っていきたい。

これまで大切にされてきた、子供たちに「生きる力」を育む、という目標は、これからも変わることはありません。

一方で、社会の変化を見据え、新たな学びへと進化を目指します。

生きる力 学びの、その先へ

新しい「学習指導要領」の内容を、多くの方々と共有しながら、子供たちの学びを社会全体で応援していきたいと考えています。

(文部科学省HPより)

新学習指導要領に盛り込まれた「生きる力」は、子供たちにとって身につけるべき重要な能力であり、学校教育カリキュラムの中心に据えられるべきものだという意図を感じることができます。

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文部科学省が定義する「生きる力」とは?

成長のイメージ文部科学省では「生きる力」をどのように定義しているのでしょうか。

「生きる力」には知・徳・体といった三つの重要な要素があるとしています。

「知」は確かな学力、「徳」は豊かな人間性、「体」は健康や体力のことです。

それぞれの詳細は次のように示されています。

・「知」確かな学力…基礎、基本を確実に身につけ、社会がどのように変化しようとも、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力のこと。

・「徳」豊かな人間性…自らを律しつつ、他人と共に協調し、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性のこと

・「体」健康・体力…たくましく生きるため健康で過ごすことや体力をつけること

生きる力とは、この「知」「徳」「体」3つの力がバランス良よく組み合わされた力のことだと新学習指導要領では表現しています。

また、この「生きる力」の要素を支えるものとして新学習指導要領では三つの柱をあげています。

それが「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力など」「学びに向かう力、人間性等」です。

これらは、子供たちが「生きる力」を身につけるために必要な資質や能力だとしています。

知識及び技能基礎的・基本的な知識を学びながら、実際の社会や生活の中のさまざまな場面で活用できることを目指しています。
身につけた技能を自分の経験などと関連づけることで、様々な場面で活用でき、習熟した技能となります。
思考力、判断力、表現力など問題の解決方法を考える時にはまず結果を予測し、次の問題発見・解決につなげられなければなりません。
この未知の状況に対応できる力のほか、自分の考えを持ちそれを文章で表現すること、お互いの考えを伝え合いグループとして考えをまとめられる力のことを指します。
学びに向かう力・人間性等これは、主体的に学習に取り組み、感情をコントロールして、客観的にとらえる力や、他人を尊重し、互いのよさを生かして協働する力などを指します。
また、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりがあることや、それら学んだことを人生や社会に生かそうとする力のことを言います。

これら「生きる力」を支える「三つの柱」は、教科書だけを覚える学びではなく、関わるすべての人たちで「何のために学ぶのか」という学習の意義を共有することが大切です。

ゆくゆくは、すべての教科の教育現場で、授業の創意工夫や教材の改善ができるようになることを理想としています。

そのために、文部科学省の新学習指導要領では、これら「三つの柱」に基づく子供たちの学びを後押ししているのです。

新学習指導要領で教科は変わる?学ぶ量はどうなる?

教室新学習指導要領で、新たに取り組むことや今まで同様にこれからも重視することは何なのでしょうか。

具体的には、体験活動や外国語教育の充実など、各教科で「生きる力」を育むための教育内容へカリキュラムが改訂されています。

そして、それに伴い標準授業数も増加しました。

新学習指導要領の特徴には、以下のようなものがあります。

言語活動

国語を要としたすべての教科で、論理的な考え方やコミュニケーション能力、豊かな感性を育むことを重視し、子供たちの言葉の力を育みます。

理数教育

繰り返し学習や、観察・実験などにより科学的に探究する学習活動、データを分析し、課題を解決するための統計教育を充実させています。

プログラム2020年度に小学校でプログラミング教育が必修化されたことも話題になりました。

プログラミング教育では、コンピュータがプログラムによって動き、社会で活用されていることを体験・学習します。

現在日本では世界に通用するIT人材を育てることが急務とされており、そうした産業界からの要望に応え、ITの基礎であるプログラミング的思考を意識した学習を取り入れました。

伝統や文化に関する教育

日本で長い間育まれてきた郷土の伝統や文化を学びます。

その学びを受け、国際社会で活躍できる人材の育成を目標としています。

その学びの一環として武道のカリキュラムも含まれます。

道徳教育の充実

基本的な生活習慣を身につけることや自分への信頼感、思いやりの心を育みます。

また、様々な出来事を自分ごととして考え、それについて議論する授業などを通じ、道徳性を育みます。

法律やルールについての理解を深めることや、年齢に応じた教材や体験活動を通じて、主体的に判断し、適切に行動できるような学習をとりいれます。

体験活動

宿泊学習(小学校)、職場体験(中学校)、奉仕体験や就業体験(高等学校)を重点的に行い、子供たちや生徒の社会性や豊かな人間性を育みます。

小学校段階における外国語活動

「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を総合的に育みます。

まずは英語の音声や基本的な表現に慣れ親しみ、楽しみながら言語や文化に対する理解を深めることを目標にします。

積極的なコミュニケーションが図れるようにし、中学校の学習へスムーズに接続できるようにします。

そのほか、社会の中で自立し、他者と連携・協働して社会に参画する力を育む「主権者教育」、契約の重要性や消費者の権利と責任などについて学習し、自立した消費者として行動する力を育む「消費者教育」、幼児期から高等学校段階まで,全ての学校で障害に応じた指導を行い、一人一人の能力や可能性を最大限に伸ばす「特別支援教育」なども含まれます。

「生きる力」はどのように学ぶもの?

クローバーを差し出すビジネスマン「生きる力」をはぐくむ教育は、以前の「ゆとり」教育や「詰め込み」教育とも異なる新しい教育方針です。

その教育の実現のためには、基礎的・基本的な知識や技能の習得、思考力・判断力・表現力などの育成、そのどちらもが必要であるとされています。

今回の新学習指導要領は、それぞれ両方の力をバランスよく伸ばすために、新たな方法を取り入れ提示しています。

それが「アクティブラーニング」と「カリキュラム・マネジメント」の二つです。

アクティブラーニング

アクティブラーニングとは、能動的学習のことを指します。

従来の学校の授業のように、一人の先生から多くの生徒が一方的に学習内容を教わるスタイルではなく、生徒自らが能動的に学びに向かうよう設計された学習法のことです。

具体的には、グループワークやディベートが代表的な授業スタイルとしてあげられます。

授業を通じて、生徒の認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験といった能力を育むことが目的です。

アクティブラーニングは、主体的・対話的で深い学びを行うという視点から「何を学ぶか」だけでなく「どのようにして学ぶか」を重視して授業を改善する方法といえます。

カリキュラム・マネジメント

PDCAサイクルカリキュラム・マネジメントとは、社会の課題に対応できる能力の養成と教育課程を計画的に編成し、教育の質を高めることです。

「生きる力」を盛り込んだ新学習指導要領を実行するためには、生徒の言語力・情報活用力・問題発見力・問題解決力といった多くの能力を高め、現代社会が抱えるさまざまな問題に対応できる資質を育てなければなりません。

そのためには、教科を横断した学習が不可欠であり、教育の質を高め学習効果を最大化させるようなカリキュラム・マネジメントの確立が必要です。

そのためのポイントは以下の三つであると示されています。

  • 教科横断的な視点で、学校の教育目標達成に必要な教育課程を組織的に配列すること。
  • 子どもたちの実態や地域の現状に関する調査結果とデータに基づいて教育課程を編成、実施した後に評価と改善を行うPDCAサイクルを確立すること。
  • 地域と連携し、教育に必要な人材や資源を学校の外部に求めること。

これまでの改訂では、教育課程の内容を見直すことばかり着目されてきました。

しかしながら、今回の学習指導要領の改訂で教育内容が大きく変わると同時に、上記の三つのポイントを念頭に置いて、カリキュラム・マネジメントの確立をする必要が出てきました。

新しい学習指導要領では、授業の質的転換を目指しています。

それは生徒たちの主体性を引き出しながら、深い学びの実現を目指すといったものです。

そのためには、知能や技能のみならず、思考力や判断力、表現力の育成が必須となります。

そして、こうした能力の育成は一教科だけで行えるものではありません。

教育課程を構成するすべての教科が、役割を果たさなければならないということはもちろん、教科をまたいだ教育課程の編成も求められます。

例えば、国語で養った言語能力を他の教科でも育成するような授業の仕組みが必要です。

授業は教科書の順番通りに行わなければならないという決まりはなく、むしろこれからは、生徒の実態と教育目標に応じた授業計画を立てるべきとなるでしょう。

そこでは、カリキュラム・マネジメントを確立して、教育活動の質を向上させ、学習の効果を最大化させることが重要になると考えられているのです。

保護者たちができることは?

親子で学習する様子「生きる力」を育むためには、実は学校のカリキュラムだけでは不十分です。

学校だけでなく家庭や地域で連携していく必要があります。

朝のあいさつや家庭での手伝いといった家庭教育は、教育のスタート地点ともいえるものだからです。

また、子供を取り巻く教育環境を整えるために、学習ボランティアや安全パトロールのような、学校外で学校活動を支援してくれる地域の人の力が必要となります。

こうして様々な大人と接することで、子供たちは多様な力を身につけることができます。

学校だけでなく、家庭・地域・社会全体で子どもの教育に取り組むことが、子供たちの「生きる力」を育むことにつながるのです。

では、わが子の「生きる力」を育むために保護者ができることは何でしょうか。

例えば、学校での学びを日常生活で活用することや、家庭での経験を学校生活に生かせるようにすることがとても大切なのではないでしょうか。

ほかにも保護者の皆さんはぜひお子さんが学校で学んだことについて耳を傾け、それについて話し合ってみてください。

保護者や大人の働きかけが、子供たちの「生きる力」を育む大きな原動力になるのです。

  • 学校や友達のこと,地域や社会の出来事など家庭での会話が多い。
  • テレビ・ビデオ・ゲームをする時間など、家庭内でルールを決めている。
  • 子供に読書や新聞を読むことをすすめている。
  • 子供に最後までやり抜くことの大切さを伝えている。
  • 自分の考えをしっかり伝えられるようになることを重視している。
  • 地域や社会に貢献するなど、人の役に立つ人間になることを重視している。

このような保護者の働きかけがある子供の学力は高くなる傾向があるとの結果も出ているようです。

なぜ子供たちに「生きる力」が必要なのでしょうか?

ひらめき新たに「生きる力」の育成を盛り込んだ改訂学習指導要領は、小学校で2020年度から、中学校では2021年度から、そして高等学校は2022年度から開始されます。

なぜ、今回の学習指導要領では「生きる力」の育成に焦点があてられたのでしょうか?

ひとつには、これまでの国内外の学力調査などから、従来の日本の教育制度の不十分な点が判明したということがあげられるでしょう。

具体的には思考力・判断力・表現力等を問う読解力問題や記述式問題、知識・技能を活用する問題などに多くの課題が見つかりました。

それだけでなく、家庭での学習時間、学習意欲、学習習慣・生活習慣の違いにより読解力や成績の差が広がっていることや、自己肯定感の低さや将来への不安、体力の低下なども問題視されています。

それだけではありません。

グローバルビジネスのイメージ現代人に求められる能力が、社会構造の変化にともない、従来と全く異なってしまったことが「生きる力」を育むべき一番の大きな要因と言えます。

現代社会は、新しい知識や情報、新技術などが、政治・経済・文化など、社会のあらゆる領域で活動の基盤となり重要性を増しています。

これを「知識基盤社会」といい、1990年代半ばに明らかになった社会構造です。

OECD(経済開発協力機構)が定義した知識基盤社会に必要とされる主要能力(キーコンピテンシー)を先取りした考え方が、「生きる力」の中には含まれています。

キーコンピテンシー」とは、個人の成功と社会の発展にとって価値がある能力で、さまざまな状況での複雑な課題に応えることができる能力のことです。

国際的に共通する現代人の主要な能力の一つとされています。

現代のような情報化社会では、新しい知識が生まれると瞬く間に世界中に波及し、グローバル化していきます。

知識には国境がないからです。

これは一見歓迎すべきことにも見えますが、実際はその知識が正しいのかどうか、自分で判断することも必要となります。

また、影響力のある知識であるほど、国や企業、個人の間で争いの原因になることも考えられるのです。

インターネットが私たちの生活へ浸透したことによる情報化社会、AIの普及などにより、これからの社会は生活が大きく変わると予想されます。

これから激しく変化する知識基盤社会の時代では、どのような変化が起きても社会に対応できる力を養わなければなりません。

変化を前向きに受け止め、人生をより豊かにしていくためにどうすべきか主体的に考え出すことがとても大切になるのです。

これからの社会がどんな変化をしても、未来がどんなに予測困難であっても、子供たちには自らの課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、判断して行動し、それぞれに思い描く幸せを実現して欲しい。

2020年度から始まった新学習指導要領には、そうした願いがこめられています。

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まとめ

これから新学習指導要領がいよいよ本格的にスタートします。

予測困難な未来を担う子供たちに向け、その内容は従来の学習指導要領に比べてとても奥深いものといえるでしょう。

これまで日本の学校教育が、国際的視点から比較的劣ると考えられた分野を中心に内容を充実させているとともに、様々な新しいチャレンジも盛り込まれています。

保護者や大人たちができることは、学校とともに子供たちのやる気や自信を引き出し、子供たちを暖かく見守ることで、「生きる力」の育成をしっかりと支えることではないでしょうか。

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この記事を監修した人

チーム個別指導塾
「大成会」代表
池端 祐次

2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。

「大成会 西18丁目教室」
教室長
日野浦 大河

2017年北海道教育大学卒、中学・高校の社会科教員免許保持。現在は2023年8月にオープンした「大成会 西18丁目教室」の教室長を勤める。家庭教師時代の経験から、成績の伸びを決める一番大きなものは生徒さん自身のやる気であると痛感し、そのやる気を刺激する方法を日々模索している。


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公開日:2022年5月3日 更新日:2024年2月28日
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