国立大学は学費が一定ですが、私立大学は学費が大学によってだいぶ異なります。
文系か理系か、学部によっても、大きく違います。
一般的な私立・国立の大学受験・入学・卒業までにかかる費用については以下のコラムをご覧ください。
今回は、特に大学や学部によって異なる学費について、特に安いところはどこか、ということを焦点にして解説していきます。
医学部の学費が安い大学
医学部というと、学費が非常に高いイメージを持っている人が多いです。
ただ、国立大学の医学部はそうではありません。
国立大学の医学部は他学部と同じ学費
国立大学の医学部は、他の文学部や工学部などの一般的な学部と変わらない学費です。
私立だと医学部の学費は桁違いです。
6年間で総額3,000万円を超えることも珍しくありません。
国立大学は文部科学省の示すガイドラインにしたがって学費を設定しています。
そのため、東京大学も筑波大学も金沢大学も北海道大学も、国立大学の全ての医学部は同じ学費です。
具体的にいうと、年間の授業料は、535,800円です。
6年間でかかる学費でみると、3,496,800円です。
授業料535,800円×6に、入学金282,000円を足した値です。
学費の安い私立大学医学部を紹介
私立大学になると、桁違いの学費になります。
また、同じ大学でも年度によって学費が下がったり、上がったりします。
順天堂大学
現状、私立医学部31のなかで最も安いのが、順天堂大学です。
初年度が290万円、2年次以降が358万円で、合計で2,080万円です(※)。
※参考:順天堂大学医学部 入学金・学費
安いといっても、やはり国立と比べれば雲泥の差です。
国立は約350万円でしたから、約6倍です。
ちなみに、順天堂大学の他の学部、たとえばスポーツ健康科学部でいうと初年度1,350,000円、次年度から1,150,000円です。
4年間で4,800,000円です(※)。
医学部の4分の1です。
それでも国立の医学部のほうが100万円以上安いです。
学費の安い私立大学
文部科学省が公表しているデータによると、入学金や授業料、施設設備費など初年度納付金の合計が、私立文系平均で1,165,310円です(※)。
※参考:文部科学省 平成29年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について
国立大学は一律の年間約80万円
国立大学の場合、前述のように医学部でも他の一般的な文系・理系学部でも一律の学費です。
初年度でいうと、入学金282,000円+授業料535,800円で、817,800円です。
ちなみに国立は受験料も17,000円と安いです。
私立の場合は一般入試で35,000円かかります。
私立大学で年間100万円未満は難しい
私立大学でいうと、初年度の学費が100万円を下回ると非常に安いといえます。
さすがに私立大学だと、夜間部でもなければ90万円を切るのは難しいです。
学費が安い夜間部の紹介は趣旨が異なる
よく学費が安い大学を紹介するサイトでは、夜間部(二部)が上位を占めたランキングを公表しています。
しかし、やはり昼間の一部に通う学生が大多数ですから、あえて少数派に向けてランキングを作成する意味がありません。
そこで当たり前に昼間部を前提に、以下では学費が安い大学を挙げていきます。
傍論として、夜間部だと年間の学費が80万円を切り、70万円台や、さらに安いところだと40万円台の大学もあります。
基本的に、河合塾が公表しているデータを参考にします。
学費は、同じ大学でも学部によって異なります。
そのため、学費の安い大学を紹介するときは、学部もセットになります。
学費が安い国際学部の紹介も見当違い
最も学費の安い大学として、先の夜間学部と並んで紹介されやすいのが、近畿大学の国際学部です。
確かに初年度納入金は906,500円と非常に安いです。
ただ、ここで気をつけなくてはいけないのは、国際が付く学部の場合、留学が必修となっている可能性がある、ということです。
公表学費の他に留学費用がかかる(ex. 近畿大学国際学部)
近畿大学国際学部は、まさにこの可能性の典型です。
国際学部には、グローバル専攻と東アジア専攻があります。
どちらにしても、留学先がアメリカか中国かの違いだけで、留学が必須です。
留学中は近畿大学の学費はかからないものの、留学先の学費がかかります。
留学先の学費は、お察しの通り、近畿大学に通うより多くかかります。
たとえばグローバル専攻のELSコースでは、第一次と第二次の分納制が敷かれています。
第一次で1,638,758円~2,294,414円、第二次で1,109,815円~1,775,348円と定められています(※)。
※参考:近畿大学国際学部 留学について
学費が最も安いなどという言説に惑わされて国際学部に入れば、それこそ話が違うと感じます。
留学必須の実態を踏まえれば、学費が安い大学のランキングに入れるのは見当違いです。
東京成徳大学国際学部も留学必須
同様の理由で東京成徳大学の国際学部も除外されます。
東京成徳大学の初年度の学費は952,500円で、ちょうど近畿大学の国際学部と似たような金額です。
そして予想通り、東京成徳大学国際学部も全員留学を実施しています。
留学費用を考えれば、むしろ学費が高い、となります。
学費の安い大学(文系)は地方にある
基本的に、学費が安い大学をみつけるには、首都圏から離れる必要があります。
それこそ、近畿大学や東京成徳大学のような立地が良いところではなく、地方感がある場所でなければなりません。
学費が最も安い沖縄大学
それを証明するかのように、学費が最も安いのは沖縄大学です。
沖縄大学の人文学部福祉文化学科が 961,300円と昼間の私立大学では最安です(※)。
※参考:沖縄大学 学費について
人文学部の国際コミュニケーション学科は、962,300円です。
これまでの流れから、国際の名がついているしここも留学必須かな、と思えます。
しかし、沖縄大学は留学は必修とされていません。
そのため、額面通りの安価な学科といえます。
沖縄大学は他の学部も安く、経法商学部の経法商学科は963,300円です。
二番手は沖縄国際大学
地方の大学が安くなる、という図式の通り、沖縄国際大学もまた、沖縄大学に次いで安い学費を設定しています。
沖縄国際大学の法学部、経済学部、総合文化学部、産業情報学部が一律で971,160円です。
愛媛の松山大学が3位
沖縄の大学に次ぐのが、愛媛県松山市にある松山大学です。
松山大学の法学部、人文学部、経済学部、経営学部が一律で980,000円です。
ただ、実際の学費はもっとかかります。
というのも、松山大学には諸会費等委託徴収分が存在するからです。
額面は44,660円です(※)。
※参考:松山大学 2020年度一般入学試験・大学入試センター試験利用入学試験要項
さらに、法学部以外の学生で、大学の基準を満たすノートパソコンを保有していない場合、購入費用がかかります。
2019年度の松山大学推奨パソコンの本体価格は143,000円(税込み)です。
仮にノートパソコンは家のものを使える、という場合でも、先の諸会費等委託徴収分があるため、初年度納付金は100万円を超えてきます。
奈良の天理大学も学費が安い
天理大学もまた学費が安く、初年度費用が100万円を超えるものの、比較的に低額です。
天理大学は、奈良県天理市にあります。
人間学部、文学部、国際学部が安く、初年度の授業料+教育設備充実費が840,000円、これに諸会費88,000円と入学金150,000円が加わります。
合計で1,078,000円です。
学費の安い有名私立大学(文系)
有名な大学でも、学費を頑張っているところがあります。
以下では立地も良く知名度の高い大学を挙げていきます。
産近甲龍の一翼を担う龍谷大学
龍谷大学は、産近甲龍の一角をなします。
関西では、非常に知名度の高い大学です。
京都府京都市にあります。
龍谷大学のなかでも、特に文学部が安いです。
初年度の学費は、入学金+授業料で1,021,000円です(※)。
次いで安いのが政策学部です。
初年度費用は1,036,000円です。
文学部と異なり、政策学部では実習料の15,000円がかかる分だけ高くなっています。
※参考:龍谷大学 2020年度学費等
関西トップクラスの立命館大学
立命館大学は、有名大学のなかでは比較的に学費が安いといえます。
今まで紹介してきたような水準とはやはり異なり、年間110万円を超えてきます。
それでも、偏差値の高い全国的に有名な大学のなかでは、安いほうです。
立命館大学は、関西では、関関同立というトップ私立大学群の一校に数えられています。
焦点の学費について、法学部が最も安いです。
初年度納付金は、1,171,800円です(※)。
2年次以降は、971,800円と100万円を下回ります。
※参考:立命館大学 学費・諸会費
関東では中央大学法学部と明治大学商学部
関東の有名大学となると、初年度学費が130万円というのがボリュームゾーンです。
そのため、130万円を下回れば比較的に安い大学、学部だと評価できます。
関東の早慶上智に次ぐ難関大学群であるMARCHでいうと、中央大学の法学部が1,297,300円、明治大学の商学部が1,299,000円と、ギリギリですが130万円を下回り、比較的に安い学部だといえます。
MARCHについては、他の学部は全て130万円を超えてきます。
立教大学や青山学院大学はもちろん、法政大学もです。
意外と学費が安い早稲田大学
早稲田大学は、ブランドや知名度の割に学費が安く抑えられています。
法学部、文学部、政治経済学部、社会学部、商学部など多くの学部が初年度学費130万円を下回っています。
110万円台の学部が多く、コスパが良いといえます。
慶應大学はイメージ通りの学費
早稲田と双璧をなす慶應義塾大学は、そのイメージ通り学費が高く、全ての学部で130万円を超えています。
イメージより学費が安い上智大学
上智大学は、神学部・文学部(新聞学科除く)・総合人間科学部(心理・看護除く)・法学部・経済学部・外国語学部・総合グローバル学部など多くの学部で、初年度納付金が130万円未満です。
具体的には、1,272,650円です(※)。
※参考:上智大学 学部学費について
同じミッション系の大学である立教大学や青山学院大学の学費が高いイメージがあり、そのことからすれば意外と感じる人がいます。
しかし、実際にはMARCHのどの学部よりも安い学費が、上記学部では設定されています。
学費の安い私立大学(理系)
前掲の文部科学省のデータによると、理系私立大学の初年度納付金の平均は、1,540,896円です。
このことから、理系の場合、初年度学費が130万円台であれば、充分に安いといえます。
桁違いに学費が安い豊田工業大学
理系私立大学で最も安い大学は、豊田工業大学です。
これについて、異論を唱える人はいません。
桁外れにダントツで安いからです。
先に初年度費用が130万円台であれば充分に安いと述べました。
豊田工業大学の初年度の学費は、98万円です。
文系でも100万円を切るのは沖縄の大学くらいですから、理系にしてこれは極めて異色の学費です。
その理由は、大学の名に表れている通り、トヨタが出資しているからです。
財政的な支援を受けていて、授業料が年間60万円に抑えられています(※)。
これに入学金(28.2万円)や教育充実・環境整備費(10万円)がのっかって、年間で約98万円と安価になっているわけです。
豊田工業大学は、もちろんトヨタ自動車を始めとしたグループ会社への就職実績が高いです。
学費を抑えながらトップ企業へ就職できる確度も高いのが魅力です。
二番手は南山大学
南山大学も豊田工業大学と同じく、愛知県名古屋市にあります。
南山大学の理工学部は、全国的に見て学費が安いことで知られています。
理工学部の初年度学費は、授業料+施設設備費+後援会費=1,055,000円に入学金の300,000円を足して、1,355,000円です。
確かに豊田工業大学に比べると30万円以上高いですが、この項の冒頭で指摘したように、理系の私大初年度平均額は150万円を超えますから、130万円というのはかなり安いと評価できます。
豊田工業大学が特別なだけです。
授業料減免制度・奨学金で大学の学費が安くなる
大学によって、授業料減免制度を設けていることがあります。
これを利用することで、学費の負担を抑えられます。
沖縄大学の授業料減免制度の例
たとえば、私立大学文系で最も安い沖縄大学にも、授業料減免や奨学金の制度があります(※)。
これを利用すると、一層学費が安くなります。
※参考:沖縄大学 奨学金情報
沖縄大学の授業料減免制度は、大きく分けて2つあります。
沖縄大学推薦入試特別奨学生制度
1つは、沖縄大学推薦入試特別奨学生制度です。
これは、推薦入試で合格することで選ばれます。
願書提出時の申請が必要です。
利用者は120名です。
センター試験利用入試減免制度
もう1つは、センター試験利用入試減免制度です。
センター試験利用で合格することで選ばれます。
申請は必要ありません。
成績で選抜されます。
利用者は19名です。
上記2つの減免制度の内容は、授業料の半減です。
沖縄大学の1年間の授業料は72万円ですから、36万円カットになります。
具体的な学部でみると、経法商学部の初年度学費は963,300円です。
上記減免を受けた場合、ここから36万円が引かれますから、603,300円になります。
大学の1年間の学費で60万円台というのは、極めて安いです。
沖縄大学の奨学金の例
沖縄大学では、独自の奨学金制度も設けています。
こちらを利用すると、上手くいけば授業料全額が給付される可能性があります。
以下に代表的な沖縄大学の奨学金を紹介します。
沖縄大学学業奨学金[第1種]当該年度授業料全額
[第2種]当該年度授業料半額
[第3種]当該年度授業料25%相当額
[第4種]100,000円
このように、1種~4種まであります。
応募資格は、「学業成績及び人格ともに優れ、経済的理由により修学が困難な学生」となっています。
利用者は45名です。
沖縄大学スポーツ奨学金[第1種]当該年度授業料全額
[第2種]当該年度授業料半額
[第3種]当該年度授業料25%相当額
[第4種]100,000円
応募資格:学業成績及びスポーツ運動競技ともに優れ、経済的理由により修学が困難な学生
沖縄大学後援会支援文化活動奨学金[第1種]当該年度授業料全額
[第2種]当該年度授業料半額
[第3種]当該年度授業料25%相当額
[第4種]100,000円
応募資格:本学に1年以上在学し、学業及び文化活動ともに優れ、経済的理由により修学が困難な学生
以上のような独自の奨学金が多く用意されているのが、沖縄大学の特徴です。
国の授業料減免・奨学金制度を利用する
特に大学において、独自の減免制度や奨学金制度を設けていないことがあります。
そういった大学でも、国による高等教育の修学支援新制度を活用することで、減免と奨学金の両側面から学費の負担を減らせる可能性があります。
学費が高い青山学院大学の例
たとえば、学費が高いことで知られる都内の有名私立、青山学院大学を例に取ります。
青学は、震災に遭った人など特別の境遇にいる人に対する支援を行っている一方で、沖縄大学のような独自の数が多く手厚い減免や奨学金給付は行っていません。
そこで、国の修学支援を考える必要があります。
国による減免や奨学金の度合いは、世帯の収入や一人暮らしか実家かによって変わってきます。
上限額とした場合、減免額は、入学金200,000円、授業料700,000円になります。
奨学金の給付額は、909,600円です(※)。
青山学院大学文学部英米文学科の初年度学費は、授業料や施設設備料などに入学金20万円を加えて、1,392,200円です(※)。
上記国の修学支援であれば、十分にフォローできます。
ただ、既に述べたように、上記の額はあくまで上限額です。
世帯収入や一人暮らしかどうかなどの条件次第で、支援額は少なくなります。
学費の安い大学についてまとめ
学費の安い私立大学は、文系だと地方に多い傾向があります。
特に沖縄の大学である、沖縄大学、沖縄国際大学は安く、年間で100万円を下回ります。
都内の有名私立となってくると、文系でも初年度130万円を下回れば安いと評価できます。
早稲田の多くの学部や明治の商学部、中央の法学部は130万円未満です。
大学独自の授業料減免や奨学金制度が用意されていることがあります。
これを利用したり、独自のものがなくても国の修学支援制度を使ったりして、学費を安く抑えられます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。