国公立大学では前期試験と後期試験があります。
2回に分けて募集しているので幅広い大学を受験する事が可能です。
以前にも道内の国公立大における「後期試験を使う戦略」についてコラムで解説しましたが…
前期試験で進学する大学を決めてしまう場合も多いので後期試験に関しては馴染みがなかったり情報が無かったりする場合も多いかと思います。
本記事では国公立大学の後期試験に関して大まかな知識をつける事が出来ます。情報がなく悩んだ時は参考にして下さい。
後期試験は一般的に倍率も難易度も高い
国公立大学ではセンター試験と大学独自の試験で合否が決定されます。
独自の試験は前期日程と後期日程に分けられており、たいていの受験生の皆さんは前期試験で受験生生活を終えることになります。
後期試験では残った少ない席を後期受験生で奪い合うことになるので基本的には倍率が高くなります。
後期試験はお目当ての学部が出願できない可能性も
2016年に東京大学が、2017年には大阪大学が後期日程の実施を完全に取りやめることになりました。
その他の大学でも後期日程を廃止もしくは縮小する動きになっており、受験することの出来る学部・学校は現在ではかなり絞られています。
年々後期日程の試験を受ける志願率は低下の一途をたどっており実施の意義が無くなってきている事がその理由です。
加えて前期日程で確保する学生の割合が全体の80%と高く、後期日程で取る学生の人数が少なくなってしまう事も理由として挙げることが出来るでしょう。
少子化の影響を受け一部の難関大学や人気大学を除き志願者数は減少傾向にあります。
そのため昔ほど競争倍率が高くなることはなく、また学習塾や予備校などが充実してきたため受験生の学力自体が向上している事がその背景です。
第一志望の大学に不合格であった場合、後期日程の入試を受けることが出来るのは大変ありがたく助かる措置ではありますが、それでも後期日程の試験では受験できる学校や学部は大幅に絞られることを覚えておいたほうが良いでしょう。
2019年度のデータにはなりますが北海道の国公立大学で後期日程を設定している大学は北海道大学の医学部と総合文系・総合理系以外の学部、名寄市立大学の保健福祉学部、札幌市立大学のデザイン学部、帯広畜産大学の畜産学部、旭川医科大学、北海道教育大学の6校です。
よく難関大学とされる旧帝大の中で後期日程を設定している大学は上記の北海道大学に加えて東北大学の経済学部と理学部、京都大学の法学部(特色入試形式のみ)、九州大学の数学科以外の学部となっています。
もし皆さんの志望校のうち、上記に当てはまる大学がある場合は後期試験を受けることが可能です。
大学によって後期試験の難易度は異なる
受験する大学で後期試験の内容が異なってきます。
よくあるパターンとして、後期日程の難易度を上げる事で大学自体の偏差値を底上げしようと図る大学があります。
そのため見かけの偏差値よりも入学が容易なパターンもよく見かけられ、一方で後期試験の難易度が非常に高いという事が見受けられます。
後期試験を残している大学の中には上記のような方策を取る大学も存在しますので、後期試験は前期日程と比べてより勉強しなければなりません。
前期試験が終わってから直ぐに後期日程が始まるという事も覚えておかなければいけません。
出願の手間などを考えると実際に準備に使える時間は1ヶ月もありません。
非常にタイトなスケジュールになることだけは覚悟しておきましょう。
とは言え学校によってその実態は様々ですので、不安が残る場合は予備校や学習塾の講師・学校の教員とよく相談の上で判断していただけたら宜しいでしょう。
倍率は高くなる
後期試験は募集人数が少ないこともあり、競争倍率は前期試験よりも高くなる傾向にあります。
ただし既に第一志望に合格した人による記念受験や悪あがき受験の学生も出てくるので見かけよりは競争倍率が低くなる場合もあります。
どちらにせよ後期日程の試験は比較的難易度が高いため前期日程以上の対策を行っておかないと合格を勝ち取ることは不可能です。
前期日程と比べて後期日程は倍率が安定しないことも特徴として挙げられます。
その年に行われた前期試験の結果によって後期試験の倍率にも多少影響が及びます。
前期試験に失敗してしまった受験生の方は後期日程出願か浪人かの選択を迫られる事になります。
後期日程に出願したいと考える学生の数が増えれば増えるほど競争倍率が上昇するという事は想像に容易いことでしょう。
基本的には倍率は高い数値で推移しがちな後期日程ですが、年度によって不安定であることも同時に覚えておくと対策しやすいという側面もあります。
後期試験は受けるべき?
それでは後期試験を受験すべきかについて議論を進める事にしましょう。
受験生の皆さんにとっては非常に悩む決断ですが、潔く滑り止めの大学に進学するのか、夢を諦めず浪人するのか以下の情報を基に一度考えてみて下さい。
浪人したくないなら受けるべき
皆さんの意思で浪人をしたくないと考える人や家庭の事情から浪人することが出来ないという人であれば後期試験に一縷の望みを掛けてみるのも手です。
そもそも後期試験に出願する人の殆どがこのように考えて出願する人ばかりです。
そのため試験の上位層では熾烈な戦いが予想されます。
その荒波に打ち勝つと決意が固い人であれば挑戦してみる事も十分に価値があるでしょう。
難関大学であれば1年程度の浪人であれば就職活動に困ることはありません。
そのため東京大学や大阪大学で不合格になった際は可能であれば浪人という選択肢を取るのですが、上記のように浪人という選択肢を選ぶことが出来ない受験生の皆さんは二次試験を受験する事になります。
要約すると前期試験で受けた大学が「浪人してまで入学する価値がある」のであれば後期日程を受験せずに浪人を選択。
「一浪してまで入学する価値はないな」と考えるのであれば後期日程の受験を考えたり滑り止めの私大に入学したりすると良いでしょう。
そのような場合は仮面浪人や3年次編入を視野に入れるとスムーズです。
どうしても入学したい大学があるのであれば受験するべき
上記の項目と少し被りますが、どうしても入学したい大学が後期日程で募集をかけている場合は積極的に受験をするべきです。
当たり前かもしれませんが浪人を考えたり滑り止めの大学に素直に入学したりするのであれば後期日程の受験を考えると良いでしょう。
ただしお目当ての学部で後期試験が行われているかについては確認が必要です。
後期日程を設定している大学は受験生に可能な限り多く合格のチャンスを与えていると考えると受験勉強にも身が入りやすいでしょう。
ともかく第一志望校の第一志望学部で後期受験生募集が行われているのであれば、出願しない理由が見つかりません。
記念受験で受ける事はやめておく
中には受験が終わってやることがない人もいるでしょう。
国公立大学に進学する気がないのに記念受験をしよう、冷やかし受験をしようと考えているのであれば辞めるべきです。
後期試験に出願している受験生の皆さんは上記のようにその学校に入学したくて必死の努力をしている方たちです。
記念受験で受けたつもりが合格してしまっても、辞退するのであれば
大学も外の受験生も困ってしまいます。
大学にとっては入学人数が少なくなってしまいますし、受験生にとっても無駄な一席を奪われた気分になってしまいます。
他の受験生の迷惑になるので冷やかし目的の受験やお祭りムードでの受験は行わないようにしましょう。
後期試験で気をつけたい点
ここからは後期試験に出願する際に気をつけたいポイントをまとめています。
後期試験は一般的な受験方法ではないため気をつけるポイントが沢山あります。
その多くは学校の教員や塾講師、予備校の先生などに教わることになるでしょうが、念の為本記事でも取り上げることにします。
出願したい大学や学部があるか?
徐々に縮小化している国公立大学2次試験の後期日程ですが、縮小しているが故に出願したい大学や学部が募集しているかについて確認する必要があります。
後期日程の実施校は年々少なくなってきています。
そのため前期日程で「まあ後期日程でもう一回受験したらいいか」など余裕を見せていると後期日程の募集要項を見て絶望してしまいます。
前期試験で合格する気の受験生の皆さんも後期日程が実施されているかどうかを確認しておき、不測の事態に備えるようにしておきましょう。
前期入試のとき以上に勉強する
後期日程の入試は前期日程と比較すると難易度も倍率も上昇傾向という事は既にお伝えしています。
そのため前期日程で発揮したパフォーマンス以上の学力が求められます。
前期日程の合格発表から後期日程の試験当日までは多くの時間が残されている訳ではありませんが、ラストスパートだと思い必死に勉強するようにして下さい。
もし不合格で浪人生活に突入したとしても身につけた学力は裏切りません。
もし後期日程まで走り続ける自信がないという場合は潔く滑り止めの私大に入学するか、浪人を覚悟し予備校を申し込むと気持ちの切り替えがスムーズに進みます。
ともかく夢を諦めないでも良いように必死に勉強するように努めましょう。
加えて前期日程と後期日程の間は2週間ほどと非常にタイトスケジュールです。
ただ闇雲に勉強をするのではなく、短い時間で効率よく知識を身につけることが出来るような方策を考えましょう。
知識や運は人それぞれでしょうが、皆さんに平等に与えられているものが一つだけあります。
それが時間です。
寝て過ごそうが必死に勉強しようが一日は24時間です。
2人の受験生が同じ時間を勉強に費やしたとき、差がつくポイントは効率のみです。
効率よく物事を進める事が卑しいと思うかもしれませんが、受験は誰も待ってはくれません。
できるだけ差を広げられるように努めると良いでしょう。
合格した際はお金関係の期日に注意
最後まで諦めずに努力した結果、晴れて合格通知を受け取った場合の注意点です。
入学金や春学期の授業料を遅れずに納めるように気をつけましょう。
入学金等の納入漏れでせっかく合格した大学に入学できず浪人してしまうというケースを毎年どこからか聞くことがあります。
本人にとっても大学にとっても非常に勿体ない失敗パターンになりますので、忘れないようにしましょう。
前期日程と比較すると後期日程はスケジュールが非常にタイトです。
合格通知を受け取ったその日のうちに銀行なりコンビニで入学金関連の用事を済ませておくという気持ちで臨むと失敗は減るのではないかと思います。
とは言っても本当に毎年発生するケースですので、本記事をご覧の方は合格後も気持ちを抜かずにしっかりと払うようにしましょう。
小論文・面接はどう攻略する?
二次試験は小論文や面接が課されている場合が多く対策が必要です。
これらの対策は学校や学習塾で設定してくれる場合も多いのですが、その前段階として小論文や面接の基礎知識をここで覚えてから臨みましょう。
どちらにも共通する事は結論ファースト
小論文を作成する際にも面接に臨む際にもまずは結論を話してから話を展開しましょう。
言いたいことが見えずダラダラと話を進めると面接官としても非常に疲れますし、文章を読む採点者にも自分の考えは伝わりません。
結論を最初に話しておくことで、その結論に肉付けを行うという形になります。
そのため話を飲み込みやすくなります。
面接に小論文も多くの学生を相手にしますので分かりやすくスムーズに伝わる発信方法は大切にしなければなりません。
もしダラダラと話をしてしまう癖があるのであれば面接練習で改善することが出来るように意識しましょう。
この知識は皆さんが数年後に就活を行う際にも非常に役に立ちます。
面接を対応する人事の方は多くの学生を相手にしなければなりません。
まれに突飛なことを発言して印象に残してもらおうと考える人がいますが、筋が通っていないウケ狙いの発言は論外です。
簡潔にかつ的確に皆さんの考えを伝えられるようにしておけば他の学生よりも有利に就活を進めることが可能です。
もちろんこの知識も後期日程の面接対策に用いることが出来ます。
コミュニケーションの基礎はどのケースでも共通のものですので覚えておくと良いでしょう。
小論文はOREOを意識して
小論文では4つのパートに分けると上手に文章を組み立てることが可能です。
具体的にはOREO(オレオ)を意識すると楽に小論文対策を進めることが出来るでしょう。
それぞれの意味を解説すると O=Opinion, R=Reason, E=Example, O=Opinion again の4種類です。
最初に意見を述べ、その理由を続けます。
その具体例を示し、最後にもう一度自分の意見を述べて締めくくります。
これが文章として最も自然な流れです。
日常会話にも流用できますので普段からOREOを意識しておくと小論文も負担を感じることなく攻略する事が出来るでしょう。
また小論文の論点は1つに絞りましょう。
多くのことを伝えたいからと言って論点を複数設定してしまうと結局何を伝えたいのかという一貫性が見えなくなってしまいます。
そのため小論文の作成は一題一論を心がけるようにしましょう。
シンプルに話題を構成できる能力こそが対人試験を突破するための唯一の秘訣です。
面接官は味方である
面接はとても緊張しますが面接官は皆さんの味方であることを覚えておきましょう。
そもそもなぜ面接をするのかと言えば皆さんを合格させたいからです。
学生が不要でしたら面接の機会を設けることはありませんよね。
そのため面接官は味方であると意識するだけで面接の負担が随分と楽になります。
面接で緊張してしまうのであれば面接官を「仲の良い先輩」と捉えると緊張が多少和らぎます。
面接とは言っても人と人のコミュニケーションですので完璧な敬語は必要ありません。
敬語を正しく伝える事が出来るに越したことはありませんが、それよりも自分の考えをしっかりと述べることのできるように練習を重ねましょう。
遠隔地にある大学に後期日程で合格したら
後期日程の合格発表は多くの場合3月の中旬に差し掛かってからの場合が多いです。
そのため遠隔地にある第一志望校に後期日程で合格した際は下宿先を確保する事が非常に難しくなってきます。
そこで後期日程で合格を勝ち取った皆さんに向けて少しアドバイスを残そうと思います。
良い条件の下宿先は埋まっている場合が多い
合格者の大多数を前期日程で取ってしまう国公立大学では既に条件の良い物件は埋まっているというケースが殆どです。
前期日程で合格した受験生が次々と不動産屋に押しかけるので希望する条件の物件は中々見つけることが難しい状況にあります。
それを逆手に取って入学式ギリギリまでじっくりと物件を見極める方法もあります。
契約期間の定められていない物件であれば空き家がポツポツと出始める秋に引っ越すことが可能ですし来年の春に改めて物件探しを行うことも可能です。
半年から1年は条件の悪い物件での生活となりますが、与えられた条件を工夫して納得の出来る部屋探しを行うようにしましょう。
大学付近の不動産屋では部屋の取り置きを行っている事も
先日ニュースで話題になっており初めて知りましたが、現在は1月頃から新入生向けに物件の取り置きを行っている不動産屋も多いようです。
私が見た時は京都の大学でしたが、全国で徐々に取り組みが始まっているようです。
絶対に第一志望の大学に入学すると決意を固めているのであれば強気に物件を仮押さえしておくという事も良いでしょう。
ちなみに京都の例ですが、仮に落ちてしまった場合もキャンセル料はかからないようです。
受験勉強に余裕のあるうちにこういった先回りをしておくことも現在では可能です。
学生館も選択肢としてアリ
学生向けマンションであれば空きがある場合もあるようです。
と言いますのも下宿をする大学生の中には華やかなひとり暮らしを求めるリッチ層も増えており、学生マンションや学生館には見向きもしないという場合も多いようです。
特に地方から都会へ進学してきた受験生の方は綺麗な物件に住みたい・制限の緩い物件に住みたいと考えているらしく、学生館や学生向けマンションに若干の空きがある場合も多いです。
学生向けの物件では防犯が充実していたり食事が出る物件があったりと意外にも便利な生活を送ることが出来ます。
来客が制限されている場合が多く規則が厳しい一面もありますが、四年間を安心して暮らしたいのであれば学生向け物件を積極的に探し回ると良いでしょう。
さいごに:後期試験は厳しいけど
情報が少ない国公立大学の後期日程について解説しました。
国公立大学の二次試験では学生の大半、およそ80%を前期日程で取ってしまう事から一般的な受験方法とは言えません。
そのため得ることの出来る情報が制限されているのですが、狭き門であるからこそ合格した際の嬉しさは格別です。
地方から引っ越してくる場合や入学金関連の手続きが前期日程と比較すると厳しい一面はありますが、どうしても入学したい学校がある方や浪人したくない、滑り止めの大学に進学したくないと考える皆さんは受験を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。