アフターコロナ、Withコロナといった論調が、教育界でもよく聞かれます。アフターコロナのほうがメジャーですが、今の状況を見ると、コロナが完全に収束する(むこう2週間の感染者が0人)のはかなり先の話になりそうです。
となると、アフターコロナの言説には多分にWithコロナの要素が含まれています。
今後の感染者の推移によって、さらにそれに伴う政府の対応によって異なりますが、アフターコロナの教育事情はやはりコロナ禍前の状況とは明確に変わってくる可能性が高いです。
今回は、特に子どもや保護者の視点から、アフターコロナの教育、勉強についてみていきます。尚、今回の記事では可能性としての見解を記載している点も多々ありますことを予めご了承ください。
オンライン教育(ICT化)
まず挙げられるのが、教育のICT化です。特にオンライン教育は、大なり小なり小学校から大学にいたるまで繰り広げられ続けると考えられます。
大学でみると、多くが今年の春学期は原則としてオンライン授業としています。たとえば、早稲田大学は春学期は全面的にオンライン授業、明治大学は原則オンラインで7月1日より一部科目のみ対面、としています※。
※参考:早稲田大学のトピック /明治大学のトピック
オンライン教育環境はいまだ充分ではない
教育のICT化(※1)は、コロナの前から政府の指針として小学校から進められていました。
しかし、いまだ完全なICT化は進んでおらず、高校以下の教育機関でスムーズなオンライン教育は難しいです。
※1:ICTとは「Information and Communication Technology」の略で、ネットワーク通信技術を用いたコミュニケーションのことです。
オンライン教育を徹底するためには、小学生のうちから自分で使える自分用のパソコンが必要です。もちろん、ネット環境も整える必要があります。
これを受けて、文部科学省ではかねてよりあった一人一台の施策を前倒しすることとしています。
年度内なので今すぐというわけにはいきませんが、当初は2023年までに、ということでしたからだいぶ早くなります。
もちろん、ネット環境が整っていない家庭には、モバイルルーターが貸し出されます。
このように、小学生の段階よりICT化は急速に進展しています。アフターコロナの世界観で、この施策は非常に重要視されています。
ともあれ、一部の私立学校などを除いて今の段階ではまだ充分とは言い難いです。
大学になるとだいぶリテラシーの問題が、提供側、学生側ともに改善されてきます。ただそれでもなお、オンライン教育にはメリットとデメリットが存在します。
オンライン教育のメリット
もはや言わずもがなですがコロナのようなパンデミックにおいて、遠隔で授業を受けられるというのはリスクの回避につながります。
また、ライブ形式でその時間しか見られないというのでなければ、いつでも好きなときに受講をして勉強ができる、というのもメリットです。
オンライン教育のデメリット
デメリットとしては、簡単にサボれてしまう、ということです。それこそ、オンラインの授業を垂れ流しながらスマホを横に置いてYoutubeを観ていても分かりません。
Zoomを使った双方向の授業でも、やはりリアルの対面に比べると生徒の動静の把握を教師側はしづらいです。
これと関連して、アメリカでは既にオンライン教育による学位授与の問題が上がっています。特に日本と異なり、アメリカは入学が比較的に容易で卒業が難しい構図になっています。
有名大学の学位をオンライン教育でサボりながら簡単に取れてしまうことは文化が許しません。アメリカほどではないにしろ、日本でも同様の問題は起こり得ます。
実際、テストで及第点を取れなければ留年をする生徒がどこの大学にもいます。高校での留年はよほどのことがない限りありませんが、大学では事情が異なります。
コロナの影響でオンライン教育が一般化された結果、本来なら留年に値する生徒がなんとなく卒業できてしまっては、これはこれで社会的な問題だといえます。
9月入学
アフターコロナの論調のなかで、特に注目を浴びた話題に「9月入学」があります。4月から入学、あるいは新学期に入るはずだった学生たちは、休みを余儀なくされました。
授業時間を確保できず、それならという転換で主張されたのが入学時期を9月にするというものです。この9月入学は、実は政府においてはかつてより議論の的になっていました。
というのも、アメリカなど先進国おいては、既に9月入学の制度が導入されているためです。ピンチをチャンスに変えよう、という意識もまた、9月入学を推進する原動力になりました。
さらに2020年よりの本格的な教育改革というアプローチからも、9月入学に踏み切るには絶好のタイミングとも考えられます。
結局「9月入学」は先延ばしに
一時はかなり現実味を帯びた制度改革でしたが、現在は慎重論が大勢を占めるようになりました。
これは、やはり9月入学にすることによるデメリットが、現場や家庭から多く噴出されたことが大きな原因です。
たとえば、9月入学にする移行期には、一学年の人数が1.4倍になるといわれています。となると、受験の競争が苛烈になり、厳しい戦いを強いられるのではないか、という不安が出てきます。
さらに、たとえば今度小学一年生になる子どもを持つ家庭は、9月まで子どもをどうしたら良いのか、保育園に通わせなければならないのか、など現実的な不安材料を有しています。
こういったデメリットが強く主張され、Withコロナという認識のもと、従来通りの4月入学でいくのが現実的なところとなっています。
教育の遅れ
コロナによる勉強の遅れを問題視する声もあります。
ただ、これは経済活動とパラレルに考えることが可能です。確かに4月から通常授業で進むはずだった勉強が遅れていることは確かです。
経済もそうで、コロナにより沈み込みがあります。
政府は感染より経済と教育を重視する
しかし、今後、緊急事態宣言が再び出されることはかなりシビアになります。2020年7月1日現在、東京都内の感染者は連日50人を超え、第二波の襲来が予想されます。
特に緊急事態宣言が解除された頃と比べると、何倍もの感染者数です。
本来なら、ここで2回目の緊急事態宣言や休業要請などが出てもおかしくありませんが、政府は今後さらに感染者数が増えてもそう簡単には2回目の緊急事態宣言は出さないと考えられています。
これは、休業、休校による経済の沈み込みや教育の遅れをこそ、深刻なものだと考えているからです。経済や教育が決定的に破綻しても、当然に国は立ち行かなくなります。
ウイルスによって日常生活が送れなくなる前に、自らの自粛で潰されてしまう危険があるわけです。
そのため、アフターコロナとWithコロナはほぼ同義で、感染者数がたとえ増えたとしても、経済や教育はとどまらず、最低限の措置のなかで進行していく公算が高いです。
教育の遅れの心配より大事なこと
となれば、教育の遅れは心配するところではなく、これまでの休校を補完、改善していくだけの教育がなされていきます。
受験においても、当然に平等になるように、試験範囲などが考慮されます。学校など教育者のほうは、様々な施策を考え、実行する大変さがあります。
しかし子どもや保護者の側からすれば、教育の遅れを特段心配する必要はありません。それよりも、後述する自宅での勉強を確立して、アフターコロナの生活のなかで上手く学力を養っていく視点のほうがよほど大切です。
アフターコロナの勉強
アフターコロナの勉強事情について、休校期間をどう過ごしてきたかが大きく関係します。つまり、休校を勉強しなくて良いと定義して連日ゲーム三昧の日々を送ってきた子と、一日に勉強する時間を決めてひたむきに努力をしてきた子では、休校明けの学力に雲泥の差が生まれます。
ここで特に残念なのが、学校があればそれほど学力が低下せず、むしろ優秀な子であった場合です。コロナのために上手く勉強習慣を作れず、数か月のうちに学力が減退、本来ならライバル関係だった子に大きく溝を開けられてしまう事態です。
自宅学習の重要性が増大
コロナによる休校状態、あるいは学校が再開されても短縮授業だったり、毎日は通学できなかったり、といったときには、家での学習の重要性が極めて高くなります。
なかには、放っておいても勝手に自分で勉強をする子がいます。こういったタイプの子は、非常に賢く、大人になってからどのような組織、環境でも結果が出せます。
すなわち、コロナによる自粛期間こそチャンスだと判断する賢さを持っているからです。ここで勉強をしておけば、怠惰に過ごしているライバルと大きく差をつけられる、高校受験ないし大学受験にもコロナ自粛がむしろアドバンテージになる、という察知能力です。
ただ、上記のように瞬時に置かれた状況を判断して行動できる子は極めて稀です。
学校に行かなくて良い=単純にラッキーだと考えて、ゲームや漫画、アニメなど自分のしたいことに没頭します。親も家にこもって勉強ばかりだと気が滅入るから、などと理由をつけて友だちを家に呼ぶことを許可し、ゲームで盛り上がることを了承します。
コロナは子どもにストレスを与えていない実態
よくコロナによる子どもの心身への影響、などとそれらしいタイトルをつけてストレスの溜まることの弊害をうたう記事がみられます。
しかし、本当に子どもは学校がなくなることで、得体のしれない大きなストレスを抱えるでしょうか。答えは否です。
実際、お子さんのいる家庭ならそれを重々承知しています。子どもはコロナによる休校をむしろ歓迎している、ずっと学校がなかったら良いのに、とさえ思っていることを皆知っています。
なぜなら、好きな時間に起きれて、好きなゲームをしたいときにできて、友だちを家に呼ぶことも特段禁止されておらず、また昼間なら公園で遊ぶこともできます。
確かに家にいるときは窓を開けなきゃいけなかったり、友だちとゲームをするときはマスクをしたり、距離を置いたりしなければなりません。
子どもはコロナ自粛をラッキーと思っている
しかし、これがなんのストレスになるのでしょうか。面倒ではあっても、ストレスまでは発展しません。
むしろ学校があって、やりたくもない宿題を課せられたり、やらなければ先生に怒られたり、好きでもないクラスメイトと顔を合わせたりするほうが、よほどストレスがかかります。
家にいながら、好きなことをして好きな友だちとだけ会える毎日のほうが、楽に決まっています。
実際、本当の気持ちを子どもたちに聞いて回ったら真実はすぐに見えてきます。子どもの本音は、ずっとコロナで学校がなかったらいいのに、です。
自宅学習の責任は親にある
この責任は、実は親のほうにあります。
子どもはまだ自制心が少なく状況を判断する能力も乏しいです。
これも既に述べた通り、なかには何も言われなくても自ら自分を律して、置かれた状況も把握してベストな選択ができる子がいます。
しかしそれはあまりにレアなケースです。そこで、多くの子に対しては、親がサポートをして、同じレベルに持っていく必要があります。
親が子どもをコントロールする
すなわち、今は休校期間だけど、遊んで過ごしていいわけではない、ということをまず分からせます。ゲームをする時間を制限して、勉強をする時間を定めます。
基本的には、習慣化をしやすくするために、毎日同じスケジューリングをするのが望ましいです。
子どもは自分で自分を律するのが難しいです。そこで、親が上手くコントロールすることが必要です。
「勉強を1時間頑張ったらゲームをしてもいいよ」といったように、勉強後に子どもがやりたいことをさせてあげるのが良いです。
得意科目から勉強させる
また、親の立場からすると、コロナで学校が完全に復活する前に、なんとか苦手科目を克服させたいと考えます。ただ、苦手科目に取り組むのは、それだけでストレスがかかります。
特に試験があるわけでもなければ、苦手な科目に自主的に取り組むのは難しいです。
そこで、まずは得意科目から勉強を始めるように促します。得意な科目から入ることで、スムーズに勉強モードに移行できます。
そしてのってきたところで、苦手科目をすれば、ストレスを最小限に抑えて、それまでの勢いのままクリアすることができます。
いきなり苦手科目からすると、やってられない、と投げてしまいやすいです。特に自宅での学習だと、誘惑が多いです。ストレスから逃げやすい環境ですから、なるべくストレスを少なくする工夫が必要です。
勉強は親の目の届く範囲かノルマを課す
小学生も3年生を過ぎたあたりから、自分の部屋を持つ子が増えてきます。自分の部屋での勉強だと、やはり親の目が届かないですから、勉強をしているフリだけをして、実は隠れてスマホでゲームをしていた、なんてことも容易いです。
特にアフターコロナ、Withコロナの流れでは、何かと自宅での勉強シーンが多く、ここを上手い具合に子どもが勉強せずに親を騙していくと、後々そのダメージで自身が苦しみます。
自宅での勉強時間が伸びる分、さぼったダメージも大きくなるわけです。
そこで、勉強は親の目が届くところでさせる、あるいは可視化できるノルマを与える、という工夫が求められます。
たとえば勉強はリビングでさせる、というふうにすれば、親自身が勉強しているかどうかが一目瞭然なので安心です。
ただ、共働きでどうしても子どもが勉強している時間にいれない、専業主婦の方でも子どもが勉強しているからテレビを視れずストレスになる、という声があります。
前者は帰宅後の時間に勉強をさせるようにする、後者は子どもが勉強している時間は自分も何かの勉強をする、などが対策として考えられます。
ノルマを可視化する方法は、確実に勉強していなければ達成できないノルマを設定しなければなりません。具体的にいうと、たとえば単純に問題集のここからここまでやって、というのは弱いです。
問題集は答えをコピペするのを10分くらいで終わらせて、後の長い時間を遊びに費やす可能性があります。
たとえば同じく問題集をノルマにするとしても、その後に実際に理解しているかどうかのチェックを親が口頭で行うのが有効です。
同じ範囲の別問題を解かせたり、教科書から出題をしても良いです。大事なのは、勉強をしたフリができる課題を与えても、本末転倒になるということです。
学習塾に通わせる
どうしても自宅学習ではコントロールしきれない、さぼり癖がついてしまってそれが抜けない、といったときには、自宅ではなく塾で勉強させるのが有利に働きます。
札幌の学習塾「大成会」では、自習室が用意されていて、自宅にいると勉強できない子も札幌の学習塾「大成会」ならできるというケースがあります。
理由は、周りも皆勉強しているから、教えてくれる講師がいるから、など個人によって違いがあります。どうしても自宅での勉強を上手にさせることができない、という状態なら、一度塾の講師に相談してみるのがおすすめです。
アフターコロナの教育・勉強についてまとめ
アフターコロナといっても、当面はWithコロナの状況が続きます。その状況下では、特に自宅学習の時間が増えて、その重要性が増します。
子どもの自律性だけでは、なかなか思うような成果を出せません。そこで親がしっかりとサポートをして、自宅で過ごす時間をコントロールすることが大切です。
アフターコロナにおいては、勉強ができる子とできない子の差がより顕著になります。コロナの影響で自宅にいれることを単純に休みとしてラッキーとするのではなく、ちゃんと勉強時間を確保して有意義に過ごす必要があります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。