北海道には国から認可を受けて、特定非営利法人(NPO法人)として活動する団体が数多くあります。
なかでも子どもの教育とリンクする、効果的な活動を行っているところが注目されています。
今回は、様々な角度から教育につながる、注目のNPO法人について紹介します。
北海道ブックシェアリング
読書を通した教育の機会を与えることを目標としているNPO法人に、北海道ブックシェアリングがあります(※)。
このブックシェアリングでは、特に地域格差のない読書環境を提供するための活動を実施しています。
読書環境の格差是正が目標
子どもたちが本に触れられる場所は、主に公共の図書館や学校図書室、書店が考えられます。
このうち、最も手を伸ばしやすいのが学校図書室だといえます。
しかし、文部科学省の調査(※)によると、学校図書館図書標準の達成状況が、全国でもワースト10に入っています。
図書標準とは、国が示した目標とすべき蔵書数です。
さらに、北海道は面積が広大ということもあり、まんべんなく公立図書館、民間の書店が分布していません。
この点は、都市部に住んでいる子と、そうでない子で格差があるのが現状です。
街の中心部に図書館や書店が位置していることから、遠方に住んでいる子は本を手にするにも一苦労です。
さらに冬の期間は積雪の影響で交通機関がスムーズに機能しなくなり、より不便度が増します。
読書は子どもの健全な人格形成に役立ち、知的にも精神的にも良い教育の場となります。
その理念のもとで、読みたいときに読める読書環境の整備に力を入れています。
※参考:文部科学省 平成28年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果について
読み終えた本を回収・再分配
個人や企業から集めた読み終わった本を、学校や保育園に提供する事業を行っています。
古本屋では、やはり商売ですから、いらなくなった本を買い取って、さらにそこに利益分を上乗せして販売します。
しかし、ブックシェアリングはあくまでNPO法人なので、提供の際は無償で行います。
ブックシェアリングが有名になっていくとともに、多くの本が寄贈されるようになりました。
本を受け取ると、まず会員が状態をチェックして、クリーニングを行います。
札幌に図書再活用ネットワークセンターがあり、ここで保管をします。
そして提供先が決まり次第、センターから発送します。
寄贈者が増える一方で、提供を希望する学校もまた増加しています。
様々な団体や個人のニーズに応えるために、2万冊以上の本をセンターに常備できるように、宣伝、広告活動を実施中です。
2018年度は、25の団体に合計2,425冊の本を提供しています。
東日本大震災のときには、7万冊の本がブックシェアリングに寄贈されて、5万冊を各団体に送りました。
ぶっくぱーとなー事業
読書の魅力を子どもたちに伝えるための「ぶっくぱーとなー事業」にも注力しています。
特に学校図書室から、子どもたちが読書に興味がなくて困っている、という相談を受けることがあります。
このときは、会員が当該学校に赴いて、子どもからの関心の低い本の回収や、より興味を引きやすい本棚の設置などを提案します。
公共図書館から、やはり利用者が少ないことで相談が来ることもあります。
後志地方の事例では、図書まつりを開催しました。
おはなし会や絵本の交換会を実施して、まずは図書館の存在と、本の楽しさを知ってもらうことを念頭に活動を行いました。
ぶっくらぼの発行
「ぶっくらぼ」という情報誌を発行しています。
子どもだけではなく、図書館職員や書店員など、本に携わる幅広い方たちの興味をそそる内容が掲載されています。
絵本カバーを使った手提げ袋の作り方や、プロのアナウンサーによる読み聞かせのポイントなど、様々な視点の記事が提供されているのが特徴です。
クラウドファンディングで資金調達
以上で紹介してきたような事業は、もちろん、コストがかかります。
非営利団体とはいえ、お金がなければ活動ができません。
そこで、寄付金を集めるためのPRを行っています。
たとえば、ネットでのクラウドファンディングです。
ブックシェアリングの理念や目標を掲載して、賛同する方たちからお金を集めます。
寄付してくれた方には、北海道特産の有機野菜や夕張メロン、ぶっくらぼの発送を行います。
2017年に行ったクラウドファンディングでは、目標額の80万円を超える約89万円の寄付が集まりました(※)。
※参考:Readyfor 読みたくても読めない!読書環境ワースト1位の北海道を変えたい
教育支援協会北海道
教育支援協会は、全国に22の支部を持つNPO法人です(※1)。
特に子どもへの教育改革を実施して、発展する社会で活躍できる人材の育成に寄与することが目的の組織です。
1999年に内閣府から認証を受けました。
教育関係の全国的団体としては、初めてNPO法人として認められました。
2008年から、より全国の支部が地域と有機的に関わるために、相互に独立した組織となっています。
地域NPOとしてそれぞれの支部が活動し、国から多様な事業が委託されています。
北海道にももちろん支部があり、それが教育支援協会北海道です(※2)。
全国の支部と連携しながらも、独立して北海道の地域的な教育課題に向き合う実践的な組織として注目を集めています。
拠点は帯広市にあり、札幌市にも事務局があります。
※参考1:教育支援協会
※参考2:教育支援協会北海道
地域子ども教室
教育支援協会北海道が行っている数ある事業のなかでも特徴的なのは、地域子ども教室です(※)。
「放課後イングリッシュ」や「放課後てらこや」、「放課後サイエンス」など様々な教室が開かれています。
地域子ども教室の良いところは、学校の授業よりも子どもの意欲を刺激するプログラムが実践されていることです。
より主体的かつ能動的に学べる場が提供されています。
違う学年や、違う学校に通う生徒との交流が生まれるのも魅力です。
学校はどうしても小さい箱庭のような世界のなかで毎日を過ごすために、慣れてしまうと毎日同じ先生、友だちばかりで刺激が少なくなっていくものです。
地域子ども教室があることで、他の学校の子とも友だちになれたり、先生以外の大人とも接したりする機会が増えるので、自然と世界が広がります。
子どもの視野を広げるのに役立つ環境があります。
放課後イングリッシュ
放課後イングリッシュは、特に英語教育が本格化される2020年からの教育改革との関係で、関心を持つ方が多いです。
■英語を楽しく学ぶ
「楽しむ」ということに、一番の主眼を置いた教育がなされます(※)。
やはり語学ですから、嫌々やるよりも、楽しいと思って学んだほうが、効率が上がります。
学校の授業だと勉強という意識が強く芽生えますが、放課後イングリッシュであれば、まず先に楽しいという感情を持ったうえで学べます。
その理念がコース名にも現れています。
小学校低学年向け、中学年向け、高学年向けの3つのコースが用意されていて、それぞれに「楽しい」の意味がある英単語で名がつけられています。
低学年向けは「Fun」、中学年向けは「Joy」、高学年向けは「Magic」です。
■全道に会場が存在
札幌市内や道央、伊達市、十勝、ニセコ町など、全道で60の会場が設けられています。
比較的に近くの会場を見つけやすいのもメリットです。
姉妹を通わせていたお母さんの口コミが寄せられています。
楽しく元気に英語と触れ合う貴重な時間を与えられました。姉妹で8年間通わせていましたが、妹は英語の歌を覚えて口ずさんでいます。中学生になった姉はリスニングが得意になりました。
英語を通して、学校では会わない大人や他の学校の生徒とコミュニケーションすることは、子どもにとってとても刺激的で、口コミにあるように授業とはまた違う貴重な体験になります。
もりねっと北海道
NPO法人 もりねっと北海道は、森と人をつなぐ様々な活動を実施しています(※)。
森林研究を長年行っている方や、林業に従事している方がメンバーとして名を連ねています。
旭川市を中心に活動中です。
※参考:もりねっと北海道
森と人をつなぐ事業
薪割りをして、それを販売しています。
タモやナラ、シラカンバといった木を発送します。
森薪塾2019という、山主や将来山主を目指す方を対象とした講座を実施しています。
森を活性化し、持続するにはどうしたら良いのか、実践的な技術や知識を学びます。
旭川市に位置する全国最大級のカタクリ群落地として有名な突哨山で、ボランティアを募って外来種から守る活動を行っています。
春の妖精として知られるカタクリを守るためにも、地域の方が協力して外来種の刈り取り、抜き取りを実行しています。
森っこプロジェクト
もりねっとではもちろん、子どもを対象にした教育事業も推進しています。
その代表が、森林環境教育「森っこプロジェクト」です(※)。
森っこプロジェクトは、森と子どもをつなぐことが目的です。
そのために必要なノウハウやスキルを、親や学校の先生に伝達します。
活動内容
具体的には、幼稚園や小学校にアンケート用紙を配って、野外学習の現状を精査します。
不足点を抽出できたら、幼稚園教諭や学校の先生を対象に、前出のノウハウや技術を身に付けるための研修会を行います。
森で遊ぶモデルプログラムを策定して、実施します。
■トランクキットが体験型授業を実現
森林環境教育を持続的に授業で行えるように、必要なキットを配布します。
なかでもトランクキットは好評で、手軽に自然に触れられる教材が入っています。
それこそ、動物や植物、昆虫の標本など、自然をじかに感じられるものです。
特にクマやシカの毛皮や頭骨は、迫力があって子どもたちに好評です。
授業で充分な知識を得て、関心を引いたうえで、野外学習へと移行できます。
■森の魅力が詰まったプログラム
モデルプログラムには、森歩きから始まり、フィールドビンゴなどのネイチャーゲーム、葉っぱコースターの作成、オガクズ染め、ツリー間伐などが盛り込まれています。
■森の魅力と危険の双方を教育
もりねっとはその活動を通して、子どもに森の楽しさ、自然の魅力を伝えます。
しかしそれだけではなくて、森の危険や、それへの対処方法も教育します。
たとえば、ハチが来たら声を上げて逃げるのではなくその場にじっとしていること、ツタウルシやイラクサ、ハマナスなど触ると危ない植物があると知ること、森に入るときは白っぽい長袖長ズボンで行くこと(ハチは黒いものに寄ってくる習性がある)などです。
標本を見たり、森に入ったりして実物と危険をリンクさせることで、体験的に学びが発生します。
このように、魅力や危険を中心に、森と子どもが豊かに、かつ、建設的に関わっていくために必要な教育が提供されています。
北海道の教育NPOについてまとめ
今回は、特に北海道で教育に携わっている注目のNPO法人について紹介してきました。
それぞれに、独自の理念を持って、精力的な活動を推進しているのが特徴です。
今回紹介したNPOだけではなく、北海道には他にも魅力的な事業を展開する教育系の団体が存在します。
教育支援協会北海道のように全道で会場を設けて活動しているところよりも、もりねっと北海道のように特定の市を中心に活動している団体のほうが多いです。
近くの良いNPO法人を知っておけば、その提供する各種イベントや教室に参加しやすく、その恩恵を存分に得られます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。