すべてのゲームが「単なる遊び」であり「勉強の邪魔になるもの」と考える人は、さすがに減ってきたと思われますが、それでもこれから紹介するゲームほど、楽しさと教育的要素の両方をしっかり兼ね備えているゲームはないでしょう。
それは「マイクラ」こと「マインクラフト(Minecraft)」です。
マイクラは、子供たちの想像力と創造力を養う学習ゲームと評価されています。
学習ゲームと聞くと「つまらない」「説教臭い」と思うかもしれませんが、マイクラは超絶楽しく、全世界で1億人以上がプレイしています。
子供だけでなく、多くの大人もはまっています。
楽しいから子供がやりたがり、健全な成長に必要な素養も獲得できるから保護者も安心して子供にやらせることができます。
児童たちにマイクラを推奨する小学校もあります。
マイクラの魅力と遊び方を解説したうえで、プレイヤーたちの熱中ぶりや教育的効果について紹介します。
知らない人のための基礎知識
マイクラをまったく知らない保護者のために、このゲームの基礎知識を紹介します。
マイクラの遊び方、魅力、概要は、後段で詳しく解説しますので、まずはこの章を読んで、マイクラの世界に足を1歩踏み入れてみてください。
一言で語れない
マイクラは、一言では語れないゲームです。
「街をつくるゲーム」ともいえますし、「モンスターを倒すゲーム」ともいえますし、「友達と一緒にものづくりをするゲーム」ともいえます。
では、複雑なゲームなのかというと、そうではありません。
ルールは「立方体のブロックをくっつけたり壊したりする」だけです。
マイクラには、ゲームに詳しくない人でも始められる親しみやすさと、一度はまったらなかなか抜け出せない奥深さがあります。
「ブロックをくっつける」とは
マイクラを知らない人は「立方体のブロックをくっつけたり壊したりする」ことがイメージできないと思います。
マイクラの舞台は、地球です。
木も土も、鉱物も動物も、道具も材料なども存在します。
そして、木、土、鉱物、動物、道具、材料などが、ブロックで構成されています。
例えば、家を建てるとき、柱や壁をつくります。
柱の素材を選び、その素材のブロックを縦に積んでいくと柱ができます。
次に柱と柱の間を、壁の素材のブロックで埋めると、壁になります。
また、地下の鉱物を採掘する場合、地面を掘っていくことになります。
地面も土のブロックになっているので、土のブロックを壊すことで穴を掘ることができます。
ベッドをつくるときも、木材のブロックと羊毛のブロックを組み合わせてつくります。
城もコンビニもつくることができる
マイクラの楽しさのひとつに、建物づくりがあります。
建物は、住宅やビルだけでなく、城やコンビニもつくることができます。
リアルの世界の本物の建物づくりでは、コンクリートや木や鉄、プラスチック、石、樹脂などが使われていますが、マイクラにもそういった素材が用意されています。
頑丈で機能的なビルをつくるのであれば、コンクリートや鉄を多用します。
しかし、室内を温かい雰囲気にしたいのであれば、内装材に木や紙などを使うことができます。
動かせる
マイクラのゲーム内ものづくりで楽しいのは、動くものをつくれることです。
エレベーターをつくれば、高い建物内を短時間で移動できます。
トロッコをつくれば、長い距離を簡単に移動できます。
動くものをつくることで、マイクラの世界がさらに広がります。
結局、何が面白いのか
マイクラは結局、何が面白いのでしょうか。
マイクラのプロプレイヤーは、このゲームの魅力として、
- 自由度の高さ
- RPGではないところ
の2点を挙げています。
自由度の高さについて
マイクラを初めてプレイする人は、しばらくは、何をしたらよいのかわからず、茫然とするかもしれません。
画面のなかのプレイヤーは、海辺に放り出されるだけでゲーム側からなんの指示もありません。
そのためプレイヤーは、解説書やインターネット上の情報を読み込んで、遊び方をひとつずつ覚えていかなければなりません。
しかし、ブロックの操作方法と素材の選び方を理解できた瞬間に、「なんでもつくれる」ことがわかります。
マイクラの開発者は、遊ぶ素材を用意しているだけで、ルールはほとんど設定していません。
その素材をどう使うかは、100%プレイヤー次第です。
RPGとの違いについて
RPGには、旅に出る目的や、行く手を阻む障害物が用意されています。
プレイヤーは目的に向かって、障害物をクリアしていくことになります。
RPGは「課題解決型」ゲームといえます。
一方のマイクラは「想像・創造型」ゲームといえます。
マイクラでは、プレイヤーが自分で理想の街を想像し、ブロックや素材を使って街を創造していきます。
ただ、マイクラにも、モンスターが登場する機能が搭載されているので、そのときは、モンスターを倒すことが目的になります。
街づくりに専念したければ、モンスターを登場させないこともできます。
マイクラの遊び方と魅力
より具体的に、マイクラの遊び方を紹介します。
マイクラの遊び方は、プレイヤーごとに異なるので、「こう遊びましょう」と説明することはできません。
そこで「このように遊んでいるプレイヤーがいます」という視点で、遊び方を解説します。
4年かけてヨーロッパの街をつくった人
マイクラのプレイヤーのAさんは、4年をかけてヨーロッパふうの街をつくりました。
その街は、城や教会や学校などの都市機能を備えた「中心部」、小麦畑や牧場がある「農業区」、貿易や商業の機能が集中する「港区」、プレイヤーの仮想自宅がある「郊外」、炭坑や製油所などがある「炭坑区」の5つのエリアで構成されています。
マイクラでは、プレイヤーの自宅をつくることができます。
「中心部」にある学校は、レンガ製の大きな門があり、校舎は「コ」の字型に配置され、校舎と門で囲まれた中心部は花壇や外灯やベンチが配置され、学生や教員らの憩いの場になっています。
イギリスのケンブリッジ大学やオックスフォード大学を彷彿とさせます。
教室もしっかりつくり込まれていて、黒板、教壇、机と椅子が配置されています。
事務棟、学生食堂もあります。
また運動場と体育館がないので、それらは今後、建設していくそうです。
学校を出ると、水路があり、水路の脇には歩道が整備されていて、街の人たちの散歩コースになります。
街中には馬車が走ります。
Aさんの欧風な街はユーチューブで見ることができ、こちらのURLからアクセスしてください。
セブンイレブンをつくった人
マイクラ・プレイヤーのBさんは、セブンイレブンの店舗をつくりました。
Bさんはまず土地を用意して、「ジャングルの木材」という素材(ブロック)で、17ブロック×39ブロックの大きさの建物の基礎をつくりました。
続いて「固焼き粘土」で、高さ7ブロックの柱を複数本立て、柱と柱を梁(はり)でつなげます。
壁材で壁をつくり、天井を取りつけます。
窓ガラスと自動ドアを設置すると、建物の外観が完成します。
その他、ごみ箱やセブンイレブンの看板も、素材からつくることができます。
店内の商品棚などの什器類もつくって店内に搬送しています。
Bさんはセブンイレブンの他に郵便局などもつくります。
ブロックおもちゃの「レゴ」感覚で、次々となじみのある建物を建てていきます。
マイクラがレゴと決定的に異なるのは、バーチャル(仮想的なもの)であるところと、いくらでも増産できることです。
マイクラなら街をいくらでも拡大させることができます。
そして、すべての実際の建造物を再現できます。
東京スカイツリーとスペインのサグラダファミリア聖堂と縄文時代の竪穴式住居を、同じ地域内につくることができます。
Bさんのセブンイレブンづくりの様子は、以下のURLで見ることができます。
マイクラがなぜ想像力も創造力も伸ばすのか
子供がマイクラをプレイすると、なぜ、想像力と創造力の両方を伸ばすことができるのでしょうか。
マイクラは画面上でブロックを積み重ねて建物や街をつくりますが、プラモデルを使ったジオラマなら、リアルの世界で街をつくることができます。
レゴでも想像・創造力を養うことができます。
そうであれば、わざわざマイクラをするメリットがあるのでしょうか。
また、建物づくりや街づくりをすると、子供のどのような素質を伸ばすことができるのでしょうか。
仮想空間の圧倒的なスケール感が想像力を駆り立てる
マイクラの最大の潜在能力は、仮想空間です。ゲームのなかの世界は現実を模していますが、現実からかけ離れた仮想です。
仮想空間では、ユーザーの想像力次第で、いくらでも世界を広げることができます。
レゴやジオラマには、所有しているブロックの個数や確保できるスペースといった物理的な制限があります。
リアルな世界には実体験ができるメリットがありますが、世界の広さが限定されるデメリットがあります。
世界が限定されると、想像力の広がりも制限されます。
そのため、仮想空間をつくり、想像力を解放したわけです。
マイクラのなかの仮想空間であれば、1人の小学生が、ひとつの街をつくることができます。
リアルの世界で街をつくろうとすれば、大人になって、市長選に出馬して、市長になって、政策をつくって、市議会と市役所を動かして、市民を説得して、税金を投入して建築工事や土木工事をしていかなければなりません。
マイクラは、そのような面倒と無縁です。
マイクラでは、想像すれば創造できるのです。
マイクラのなかの仮想空間内での小学生の想像力は、リアルの世界の市長に匹敵する力があるわけです。
建設的だから創造できる
マイクラは建設的なゲームです。
建設的とは「対象物のよさを積極的に評価したうえで、さらによくしていくこと」という意味です。
例えば、プレイヤーが「どうすれば人々が住みやすい街にすることができるだろうか」と想像しながら建築や土木をして、街が完成したとします。
しかし、プレイヤーがその街のなかを歩き回ると、「こうすべきではなかった」と感じたり「こうしたい」と思ったりするでしょう。
マイクラでは、気になるところを、次々に改善していくことができます。
例えば、オシャレな街にしようと運河を造設したものの、交通の妨げになっていることがわかったとします。
マイクラなら簡単に運河のコースを変更できますし、埋め立ててしまうこともできます。
街なかが平坦でインパクトがなければ、駐車場を潰して、高い時計塔を建てることもできます。
建設的であることは、創造的でもあります。
「建設的」の反対の言葉は「破壊的」です。
多くのゲームは「相手を倒す」や「的に当てる」「ミスをするとペナルティを受ける」といった要素があり、破壊的です。
そのため、建設的な色合いが強いマイクラは貴重な存在といえます。
リアリティの追求
マイクラは、リアルからかけ離れた仮想空間を構築していますが、その仮想の世界のなかではリアリティを追求しています。
矛盾しているように感じるかもしれませんが、そうではありません。
むしろ、ゲーム業界では、非現実的な世界観をつくるときこそ、リアリティにこだわります。
マイクラでは魔法で家をつくることはできません。
プレイヤーは素材になるブロックをひとつずつ積んでいかなければなりません。
鉱物を掘削するには、地面のブロックをひとつずつ壊して穴を掘っていかなければなりません。
マイクラでは、リアルの世界での作業を、仮想空間で疑似体験できます。
そのリアルさが、ファンの心をつかんでいるのです。
マイクラの教育的要素
マイクラには、「マインクラフト 教育エディション」(以下、教育版マイクラ)があります。
マイクラにはそもそも教育的要素がありますが、教育版マイクラは、学校の教師が教材として使えるように改良を加えています。
子供たちによるマイクラ全国大会をマイクロソフトなどが主催
2019年に日本マイクロソフトなどが、この教育版マイクラを使って「マインクラフト・カップ2019年全国大会」を開催しました。
出場できるのは、15歳以下の男女で構成される3~30人のチーム。
全国から133チームがエントリーして、1次審査に通過した8チームが、日本マイクロソフトの東京本社に集結して、自分たちのマイクラをプレゼンしました。
制作テーマは「スポーツ施設のある僕・私の街~ワクワクする『まち』をデザインしよう」でした。
マイクラで、スポーツ施設がたくさんあり、人々が活発に運動できる街をつくるわけです。
審査基準は次の3点です。
- 多様な人々が充実して暮らせるか
- チームメンバーが協業して作業したか
- プログラミングを使ったか
スポーツ施設をたくさんつくっただけでは、評価は高くなりません。
「多様な人々」がスポーツを楽しめなければならず、さらに「暮らせる」必要があります。
また、この大会はチーム戦なので、メンバーの総合力が問われました。
マイクラでは、複数のプレイヤーが共同してひとつの街をつくることができます。
そしてマイクラ操作の応用編として、プログラミングがあります。
マイクラの基礎操作は、素材を選んで素材ブロックを積んだり壊したりすることですが、プログラムをすることで、高層ビルの建設を自動化したり、エレベーターを動かしたりすることができます。
プログラミングはより高度なスキルが必要なので、参加者の大きなハードルになりました。
優勝は静岡の小6の17人のチーム
大賞(優勝)したのは、静岡県の私立小学校の6年生17人のチームでした。
彼らは街に、富士山を眺めながら対戦できる相撲競技場や、日本最大の前方後円墳で世界遺産になった仁徳天皇陵を模したスポーツ広場、飛び込み台、テコンドー場、フェンシング場など、26のスポーツ施設を建設しました。
障害者がスポーツを楽しめる施設もあります。
前方後円墳スポーツ広場は、水堀はカヌー場、外堀はマラソンコース、中央部にゴルフ場をつくるという、凝ったつくりになっています。
ハード(建物)面だけでなく、ソフト(サービス)面にも気を配り、英語が話せるロボットを街のなかに配置したり、車いす用エレベーターをつくったりしています。
また、街らしく、住宅エリア、ホテル、コンビニ、カフェも建てました。
プログラミングをして、ジェットコースター、自動ドア、エレベーターといった「動くもの」をつくったことも、高く評価されました。
例えば、大手不動産会社が東京の街を大規模再開発するとき、完成予想図をCG(コンピュータグラフィックス)で作成することがありますが、大賞作品はそれを彷彿とさせます。
マイクラの街は、完成予想図CGより優れている点があり、それは視聴者がコントローラーを握れば、自由に街のなかを散策できるところです。
街全体を俯瞰(ふかん)することも、飛び込み台から数十メートル下のプールに飛び込むこともできます。
大賞作品は以下のURLで見ることができます。
※参考:https://www.watch.impress.co.jp/kodomo_it/news/1226105.html
大賞を受賞した小学校の狙い
大賞を受賞した小学6年生チーム17人のうち、10人がマイクラ初心者でした。
そのため、チームは最初、簡単な家を建てることから始めて、徐々にスキルアップしていくことにしました。
子供たちのコーチ役になった同校の教諭は、同校でITを教えています。
教育版マイクラに興味を持っていて、大会が開催されると知り、2チームを編成しました。
教諭は、子供たちに決めさせることを重視しました。
メンバーのなかには、マイクラに詳しい子供がいて、最初はその子たちがリーダー役になってチームを引っ張っていきました。
メンバーはそれぞれ自分がつくりたい街や建物を考え、リーダーがそれらをまとめて、作業を振り分けていきました。
子供たちは次第に、計画的に作業をするようになったといいます。
また、マイクラの操作スキルが上達しないメンバーでも、デザインが上手な子や、動画のナレーションが流暢な子がいて、それぞれ自分の得意分野を持ちより、スポーツの街を築き上げていきました。
マイクラの概要
最後に、マイクラの概要について紹介します。
マイクラことMinecraft(マインクラフト)は、スウェーデンのゲームクリエイターであるマルクス・ペルソン氏たちが開発し、2011年に販売されました。
マイクロソフトが販売元になっていますが、同社のXboxだけでなく、プレイステーションやパソコン、スマホでもプレイできます。
マイクラは、サンドボックス型のゲームと呼ばれることがあります。
サンドボックスとは砂場のことです。
砂場には、砂という素材しか存在しませんが、子供たちはそこで夢中になって遊びます。
それは、砂場では無限に遊び方を考えることができるからです。
出発点がシンプルなのに、想像を働かせるとなんでも創造できてしまうのは、マイクラと同じです。
まとめ~「したい」と「させたい」が一致した稀なケース
マイクラは、楽しいゲームをしたいという子供の欲求と、ためになるゲームをさせたいという保護者の要望を、どちらも高次元で実現させる、極めて稀(まれ)な遊び道具といえるでしょう。
大人がマイクラの内容を知れば、建物づくりや街づくりに、子供をこれだけ虜(とりこ)にする要素が含まれていることを知って、驚くでしょう。
ゲームは今や一大産業にまで成長しましたが、マイクラのポテンシャルの高さを理解できると、それももっともなことだと感じるはずです。
マイクラには、大人にとっても貴重な気づきになる魅力が潜んでいます。
多くの生徒さんを志望校の合格に導いてきた “経験豊富なプロ講師” と、受験対策を得意とする“北大医学部講師” による、効率的なチーム個別指導によって成績アップと志望校の合格を全力サポートいたします!
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この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。