学習塾とひとえにいっても、それには色々な種類があります。
指導方式や規模、教える内容などで、分類が可能です。
学習塾の種類を知っておかないと、通い始めたところが自分のニーズと異なっていた、ということになりかねません。
あらかじめ学習塾の種類を知り、検討中の塾がどこに属するのか、それを把握しておく必要があります。
以下では、学習塾の種類について、それぞれの特長や違いを解説していきます。
膨大な数の学習塾
経済産業省のデータによると、全国の学習塾の数は約5万(4万9319)に及びます(※)。
※参考:経済産業省 平成26年 特定サービス産業実態調査報告書 学習塾編
さらに北海道の学習塾の数は、経済産業省の別データによると、1,413です(※)。
※参考:経済産業省 学習塾総合1
これだけの数の学習塾のなかから、自分のニーズに合ったところを選ぶには、冒頭で指摘したように、どの種類に属するのかを正確に判断する必要があります。
内容による分類
まずは、学習塾の内容・目的によって分類します。
これは、論理問題におけるベン図のように、相互に重なり合う側面があります。
明確に区別された分類ではないことが前提になります。
総合塾
大手や中堅の比較的に規模の大きい学習塾でみられる形態です。
高校生だけではなくて、中学生や小学生も対象にし、バラエティに富んだ授業が行われます。
全国的によく聞く名前の塾、たとえば河合塾や駿台、東進などはこれに当てはまります。
河合塾などは大学受験がメインのイメージですが、中学生や小学生向けの講座も開いています。
大学や高校受験に特化したコースもあれば、学校の授業の補習をメインにしたものもあります。
自分の希望に応じて、色々な選択肢があるのが魅力です。
塾内でニーズの変化に対応できる
塾に入ったばかりの頃と、通っているうちに希望が変わることがあります。
たとえば、最初は早稲田の指定校を取るために定期テスト対策をメインにしていたけれど、後から東大を受験したくなった、といった場合です。
総合塾であれば、もちろん、内部のコース変更で上記ニーズの変化に対応できます。
後述する補習に特化した塾、ないし受験対策専門の塾だと、ニーズの変化に応じて塾そのものを変える必要があります。
しかし、総合塾であれば同じ塾に通い続けながらコース変更の手続きのみで問題が解決します。
このような広範なキャパシティーが総合塾の最大の魅力です。
北海道の総合塾
■練成会グループ
北海道の総合塾というと、東進衛星予備校と提携している練成会グループが有名です(※)。
札幌を中心に帯広、旭川、函館、釧路など多くの塾を持っています。
※参考:練成会グループ
もちろん小学生~高校生を対象としていて、地域密着型や個別指導など、多彩なコースが用意されています。
■秀英予備校
札幌や旭川にある秀英予備校もまた有名です(※)。
小学生~高校生まで、集団、個別、映像と多彩なサービスが提供されています。
※参考:秀英予備校
同じ小学生でも、附属校の生徒向け、私立や国立の中学受験対策を重視したコースなど様々です。
専門塾
総合塾に対して、専門塾があります。
たとえば、総合塾のように集団と個別を選べるのではなく個別指導を専門にした塾、高校受験のみを扱う塾、英語や数学だけを教える塾、受験対策は行わず定期テスト対策のみを行う塾、などです。
北海道の専門塾
以下に北海道の専門塾の例を紹介します。
- 個別数学系専門塾 インフィニティ(札幌市西区)
- 『中高一貫校の英検対策に強い』英語専門塾 英検アカデミー 札幌駅前教室
- 数学専門塾 パスカル(札幌市内6箇所)
- 受験指導専門塾「S・Sゼミナール」(旭川市春光台)
- 個別指導専門塾 スタディープロジェクト(小樽市稲穂)
進学塾
こちらは、その名の通り進学、つまり受験対策をメインに扱う学習塾です。
先の専門塾のうち、受験指導を専門にした塾は、まさにこの進学塾にあたります。
ただ、後掲の学校の補習のみを扱う塾でなければ、進学塾と判断できます。
つまり、総合塾のように受験対策を行ったり、学校の定期テスト対策を行ったりするところは、おしなべて進学塾です。
もちろん、受験対策をメインにやっている学習塾が当てはまりますから、規模の大きいところである必要はありません。
それこそ、上記の練成会や秀英予備校以外に、旭川や小樽に1つしかないS・Sゼミナールやスタディープロジェクトもまた進学塾です。
合格実績が死活問題
進学塾の特徴として、前年の合格実績をHPや塾の入り口に掲げていることがあります。
先に挙げた個別指導型進学塾のスタディープロジェクトをみてみます。
このHPでは、2019年度の大学合格実績が大きく載せられています。
東京大学14名、京都大学36名(過去最高)、北海道大学23名(過去最高)、早慶上理275名、GMARCH589名となっています。
この合格実績が、進学塾では大きな広告材料です。
やはり自分が入りたい大学の合格人数が多いところに通いたいと思う人が多いからです。
■高校の合格実績も大事
もちろん、合格実績の広告で集客が見込めるのは、大学に限ったことではありません。
たとえば、札幌を中心に道内各地に多くの学習塾を展開しているニスコグループをみてみます。
2019年度の高校合格実績として、札幌南46名、札幌北45名、札幌東44名、札幌西50名と掲示しています(※)。
※参考:ニスコグループ 合格実績
他にも札幌手稲や旭川東、北広島、大麻、帯広柏葉など地元では有名な高い偏差値を持つ高校の名前が並んでいます。
これを見て、自分も札幌南にいけるかもしれない、と通いだす生徒が少なからず存在します。
■いきたい高校の合格実績が良い塾が選ばれる
逆に、自分がいきたい高校の合格者が少ない塾だったらどうでしょうか。
ニスコは札幌南が46名でしたが、ある塾は2人しかいなかったとします。
もちろん、母数が大事です。
ニスコの場合は998名中46名ですが、2人しかいない塾に3名しか通っていなかったら、その塾に入るほうが札幌南にいける確率が高いと考えられます。
ただ、仮に母数が同じだとして、1000人中50人受かる進学塾と2人しか受からないところでは、やはり前者を選ぶのが普通です。
このことから、進学塾はいかに高い合格実績を出すかというのが、例年の課題です。
塾の経営の死活問題ともいえます。
推して図ることができるように、塾そのものもの存続がかかっているわけですから、講師の教え方にも熱が入ります。
後述する補習塾や、大学生がバイトでやってくれる家庭教師とは違います。
入塾テストがある
先に示した母数との関係性から、入塾テストを実施する進学塾もあります。
上位校に合格見込みのない人は、無駄に母数を増やさないためにハナから入塾をお断りするということです。
塾に入れても、学力別にクラスが分けられるケースもあります。
それこそ、難関私立を目指すコース、難関公立を目指すコース、地域の上位校を目指す、という感じです。
これは、塾内でのテストの成績によって分けられます。
進学塾ではえてして、このように塾内での競争も激しい仕組みが採用されています。
■秀英予備校の例
たとえば秀英予備校では入塾前にテストを実施しています(※)。
小学生と中学生が対象です。
小学生は国語と算数、中学生は英語と数学のテストが行われます。
※参考:秀英予備校 入学までの流れ
テスト結果によって、正社員専任教師が今後の勉強方法をアドバイスし、コースの決定をします。
■練成会の例
練成会では、中学生を対象に入会基準が設けられています(※)。
主要5科目の評点が計15以上であることが必要です。
※参考:練成会 入会の手引き
つまり主要5科目がオール3以上の評点でなければなりません。
■河合塾の例
河合塾で入塾テストがあるのは全国的に有名です(※)。
もちろん、北海道の場合も例外ではありません。
どのコースを希望するのかによって、受けるべき科目が異なります。
※参考:河合塾 認定テストによる認定
たとえば、「トップレベル東大分類プレミアムサポート」を希望する場合、国・数・英の3科目を受けなければなりません。
「ハイレベル私立大文系」であれば、国語or数学、英語の2科目でOKです。
当然、テストの結果次第で希望のコースに入れない場合もあります。
■大規模塾以外の例
大規模な進学塾だけが入塾者の選抜を実施しているわけではありません。
たとえば、札幌に一箇所しかない中高受験専門の札幌アルファクラブも中学生は定員がある関係上、入塾テストを実施しています(※)。
補習塾
進学塾に対して補習塾というものがあります。
補習塾は、進学塾が高校ないし大学合格を目指すのに対して、現在の学校の成績を良くするのが目的です。
学校の授業が良く理解できなかったり、苦手科目があったりする場合に、その克服を支援してくれます。
総合塾のような大規模な学習塾では補習塾も兼ねていることがあります。
苦手科目克服に向けたコースが設置されている例がみられます。
地域密着型の小規模塾が一般的
ただ、補習塾というと、地域に密着した個人経営型の小規模な学習塾が一般的なイメージです。
そのため、総合塾や進学塾のように、大学の合格実績は重視されません。
それよりも、講師の人柄であったり、実際にあそこに通ったら学校のテストの点が上がった、内申が良くなった、といった口コミであったりが、重要なポイントとなってきます。
そのため、補習塾では高校や大学の入試対策はほとんど行いません。
あくまで日々の学業の補完をするのがその役割です。
入塾テストはない
このような特長があることから、進学塾のように入塾テストを行うことは稀です。
行うとしても、それは入塾を審査するためのものではなく、今の学習状況を的確に判断して、ベストな指導ができるようにするためのものです。
内申が不安な中1~2生に特に有効
特に中学生の場合、高校入試において内申が大事です。
とりわけ北海道の場合、1~3年の全てが評価対象になります。
1年生や2年生の段階で、入試対策はいらないけれど内申について不安を抱いている場合、当面は評判の良い補習塾に通う、という判断もアリです。
北海道の補習塾
北海道の補習塾としても、やはり個別指導型のものが多いです。
地域に密着した学習塾で、定期テスト対策や日々の授業の補完を丁寧に行ってくれます。
■学習指導会
学習指導会は、岩見沢に2つ、夕張郡に1つの教室を持っています。
定期テスト2週間前から、「定期テスト対策」が共通して始まります。
それぞれが通う学校の範囲に合わせて、対策しておくべき単元を総復習します。
テスト直前期には無料で補習を実施します。
それぞれの学校の出題傾向に合わせた模擬問題を行い、さらなる得点力をアップを目指します。
テスト後には、しっかりと分析を行います。
つまり、なぜ間違えたのかを浮き彫りにして、その後の指導に役立てます。
・地域密着型の補習塾の強み
上記のような綿密な定期テスト対策、その後のフォローは、やはり地域に根ざした個別指導だからこそ、といえます。
それぞれの中学の、さらに担任の出題傾向まで把握しているからこそ、より的確な補習が可能になります。
■秀英PAS
大規模な総合塾だと、個別指導型のサービスも用意していて、これであれば補習塾としての機能を果たします。
たとえば、北海道では秀英予備校が例として挙げられます。
個別指導である秀英PASでは、一人ひとりに合わせた指導プランを策定します(※)。
※参考:秀英予備校 個別指導:秀英PAS
そのために、授業の復習、定期テスト対策が可能です。
もちろん集団指導による受験対策に力を入れている秀英予備校ですから、補習塾として活用しながら受験の準備をすることも容易です。
指導方法による分類
集団指導と個別指導
個別指導に対して集団指導があります。
経済産業省によると、生徒4人以上の場合は集団指導、生徒3名以下の場合は個別指導としています。
個別指導というと、マンツーマンで受けられる、と考える人がよくいます。
しかし実際には、一人の先生がそれこそ3名の生徒を同時に教えても、個別指導ということになります。
完全にマンツーマンが良いということであれば、個別指導型の塾に相談してみるか、家庭教師を頼むことになります。
集団指導のほうが個別指導より多い
経済産業省のデータによると、全国の集団指導の学習塾(中学生を対象)数は28,297、個別指導が22,825です(※)。
北海道でみると、集団指導が824、個別指導が668です。
※参考:経済産業省 学習塾総合1
全国的な比率と、北海道のそれはほとんど変わりません。
集団指導型の学習塾のほうが8:6くらいの割合で多いです。
塾数と集団・個別の関係
たくさんの塾数を持っている大規模な学習塾は、集団指導を基本としています。
個人経営型で1つしかなかったり、あっても2、3個のみという塾は、個別指導であることが多いです。
ただ、個別指導を標榜して全国的に展開している大手の学習塾(ex. 明光義塾)は、北海道にある場合、塾数が多く当然に個別指導型です。
北海道の集団指導塾
北海道の個別指導塾
映像授業
最近では、通学以外に映像授業を実施する学習塾が増えています。
映像指導の強みは、なんといっても自宅や図書館、カフェなど場所を選ばずiPadやノートパソコンさえあれば講義を受けられることです。
北海道の映像指導を行う学習塾
■秀英予備校
北海道で映像授業を取り入れている学習塾には、秀英予備校があります(※)。
高校生向けに映像指導を展開しています。
・秀英の映像指導の特長
マイページにログインしてから、好きな授業を選んで受けます。
それこそ、日々の授業の復習に役立てたり、定期テスト対策に使ったり、もちろん志望校の受験対策に利用したり、用途は様々です。
補習塾としても進学塾としても機能させられるのが、映像指導の良いところです。
秀英では受講履歴が残るように設定されています。
そのため、どの講義をどこまで受けたのか一目瞭然なので、自分の進捗状況を簡単に把握できます。
授業を受けたら、Web上でチェックテストを受けることが可能です。
自分が本当に授業の内容を理解しているかの確認をします。
映像指導であっても、疑問点はすぐに質問できる仕組みがあります。
秀英では質問専門のチューターがいて、よく分からなかったところや学習上の悩みなど、色々な相談に対応してくれます。
特に部活であったり、行事であったりと、学生は何かと忙しいです。
塾に通うがために私生活を犠牲にしたくなく、自分を律して怠けない人は、この映像指導が合っています。
■札幌練成会NEXUS
映像授業は、秀英のように規模の大きい学習塾で採用している例が多いです。
たとえば、札幌練成会でもネクサスという個別学習システムを採用していて、ここで映像授業を行っています(※)。
■河合塾マナビス
河合塾マナビスは、映像授業型で全国に展開しています。
本来、人気の講師の授業を受けたい場合は、その講師がいる校舎へ行かなくてはなりません。
しかし、マナビスであれば映像なので、全国どこの拠点からでも好きな授業を受けられます。
北海道の場合、旭川にマナビスが置かれています(※)。
※参考:河合塾マナビス 北海道の校舎一覧
学習塾の種類についてまとめ
今回は、たくさんある学習塾のなかから自分に合ったところを選ぶ前提としての、種類の把握について説明してきました。
大規模な総合塾は、その名の通りあらゆるニーズに対応してくれます。
受験対策から補習といった目的別コース、集団指導型から個別指導、映像指導にいたるまで様々な指導方法も網羅しています。
ただ、地域に特化した小規模な学習塾のほうが、地元高校への進学や、定期テストのノウハウがかなり詳しく蓄積されているケースが多いです。
自分のニーズや嗜好に照らしてベストな種類を把握し、それを包含しうる学習塾を選ぶことが必要です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。