2020年度より従来の大学入試センター試験が大学入学共通テストに変わります。
これにより、特に英語の試験方法が顕著に変化します。
過去に大学入試センター試験廃止、大学入学共通テストについてのコラムも記載していますので、それぞれ併せてご覧ください
英語は、従来の読む、聞く、といった2要素から、読む、聞く、書く、話すといった4技能の判定へと進化します。
これに伴って、民間の外部試験が英語では採用されます。
特に利用できる外部試験7種のなかでも注目を集めているのがGTECです。
今回はこのGTECについて、利用を許可する大学の現状や、テストの特徴を解説していきます。
GTECの種類
GTECは上記4技能についてスコア判定されます。
GTECはさらに世代別に3つ用意されています。
小学生~中学1年生向けのGTEC Junior、中学生~高校生向けのGTEC、大学生・社会人向けのGTECです。
中学生~高校生向けのGTECは、レベル別に4つの種類が設けられています。
Core、Basic、Advanced、CBTです。
CBTがこの4つのなかでは最もレベルが高く、高2後半~高3生を対象としています。
大学入試で使えるCBT
CBTは年に3回実施されています。
2019年は(第1回)7月21日(日)、(第2回)11月10日(日)、(第3回)3月22日(日)でした。
このうち、大学入試に利用できるのは第1回と第2回です。
2019年は消費税変更があったため、第1回と第2回は9,720円、第3回は9,900円でした。
CBTは他のレベルと比べて試験時間が175分と長く、パソコンを使う点でも異なっています(他のレベルは紙とタブレット)。
スコア上限は1400点です。
GTECを利用できる大学
2020年より大学入学共通テストで使えるようになるGTECですが、2019年現在でも多くの大学が独自に採用しています。
その数は7月の時点で616校です。
早稲田大学
たとえば、早稲田大学の文化構想学部・文学部では2019年度の入試より、GTECが加わっています(※)。
※参考:早稲田大学 ニュース 【一般入試(英語4技能テスト利用型)】2019年度よりケンブリッジ英検とGTEC CBTを採用します
明治大学
また明治大学でも、2020年度の国際日本学部の入試において、「英語4技能試験活用方式」が加わっています(※)。
GTEC (CBT)のスコアが1190点以上であることが条件です。
※参考:明治大学 2020 年度国際日本学部一般選抜入学試験における「英語4技能試験活用方式」の導入について
この「英語4技能試験活用方式」では、外部試験のスコア提出で「外国語」の科目が免除されます。
そのため、「国語」と「地理歴史、公民」の2科目の総合点により合否が決定されます。
学習院大学
学習院大学国際社会科学部でも、GTECの利用が可能です。
他の外部試験との互換性を実現するために、点数換算の方法が採用されています。
たとえばGTECが1370点以上で150点、1260点以上で140点、1220点以上で130点、といった換算表が公開されています(※)。
志望校がGTECを利用できるか調べておく
早稲田や明治のように英語4技能試験を入試に活用する大学は多いです。
そしてその多くは、もちろんGTECだけではなく、TEAPやTOEFL、ケンブリッジ英語検定、IELTSといった大学入学共通テストとそれこそ共通の外部試験を利用できるように設計されています。
そのため、自分の志望校が、「英語4技能試験活用方式」を導入しているかどうか、調べておくことが必要です。
今はまさに変革の時期ですから、前年度は実施していなくても、明治のように自分が受ける今年から始まる、ということもありえます。
特に同じ大学でも、早稲田や明治のごとく学部によって「英語4技能試験活用方式」を入れていたり、そうでなかったりするケースが大半です。
自分の行きたい大学・学部と双方の条件で、英語の外部試験を利用できるかどうかを判断することが大切です。
GTECを利用しないほうが良い人もいる
ただし、外部試験が利用できるからといって、必ずしも利用するのがメリットになるかというと、そうでないのは当然の話です。
それこそこれまでのように、受験生の多くが外部試験を受けてこなかった時代とは変わるからです。
これからの時代は、逆にほとんどの学生が、なんらかの4技能を測る英語試験を受けています。
特に自分のスコアに自信があって、利用が有利だと判断されるときのみ使うべきです。
あるいは明治のように具体的なスコア基準が示されている場合にはそれを超えていなければなりません。
一般方式の英語のほうが得意な場合
また、英語が得意で、かつGTECのスコアが基準を満たしていたとしても、必ずしも「英語4技能試験活用方式」を「一般方式」より優先したほうが良いか、というとそうは言い切れません。
というのも、英語4技能試験はその名の通り、読むと聞くの他に書くと話すが加わっています。
それよりも、通常の大学独自の一般入試問題のほうがより高得点を狙える、という方がいます。
もちろん他の受験生との相対評価が大事ですが、それを考慮してなおGTECのスコアを利用するより一般方式でいったほうが上位合格を狙える、というケースが存在します。
一概にGTEC利用の有利・不利はいえない
ただし、これはかなり英語が得意な人の場合です。
明治大学がHPで、一般に有利・不利を論じることはできない、と述べています(※)。
※参考:明治大学 英語が得意な場合,一般選抜3科目方式と英語4技能試験活用方式のどちらの方が有利ですか?
すなわち以上のように個人の属性によるということです。
ただ、やはり上述のように外部試験を利用できること自体が現在は英語力が高いことの証左であるケースが多く、であれば一般方式だろうと外部試験利用であろうと、どちらにしても英語においては余裕を持った合格点が担保されているといえます。
GTECを利用できない大学
このように、GTECを始めとした英語の外部試験をその独自入試についても利用する大学が増えている一方で、全く認めていない大学も存在します。
有名どころでは、慶應義塾大学がその1つです(※)。
慶應では、全学部について外部試験の利用を認めておらず、さらに大学入学共通テストの利用もまた認めていません。
そのため、慶應が第一志望の場合、滑り止めの大学によってはGTECなど外部試験を全く受ける必要がないケースも存在します。
大騒ぎされている2020年度からの入試制度変革もどこ吹く風で過ごせるというわけです。
GTECの特徴
まず、GTECが175分と長い試験なのは既に述べた通りです。
そのなかで、スピーキング、ライティング、リスニング、リーディングの順で問題が出されます。
全てパソコンで解答
ここで気をつけたいのが、全てパソコンでの解答になることです。
リスニングとリーディングは選択肢から解答をマウスでクリックするだけなので簡単です。
スピーキングはマイクで話すだけです。
ライティングではタイピングが必要
問題はライティングで、125~175ワードぐらいの文章をタイピングしなければなりません。
英語の文章を考えるだけでも大変なのに、さらにタイピングが遅いと時間ばかりが経ってしまってスコアを伸ばせません。
普段からブラインドタッチができるようにしておく、英語の入力にも慣れておく、などパソコン操作の練習をしておくことが求められます。
GTECの問題例
スピーキング
GTEC(CBT)のスピーキングは以下のような問題が出題されます。
You are taking an English class. The professor is giving a lecture on the role of English in the 21st century.
Your professor asks you to present an argument on the following topic:
Some people believe that the learners of English should work hard on their pronunciation. Other people believe that correct pronunciation is not crucial for successful communication. Which position do you support?
Argue one of these positions.
Provide at least two pieces of supporting evidence.
Use your personal knowledge and experience to provide support for your answer.
You will have three minutes to prepare your answer.
このように、実際の授業の場面が想定されて、日常的に英語を話すシーンが描写されます。
英語の音声が1回だけ流れます。
特に難解な単語が使われることもなく、平易な語彙と表現で成り立っています。
特に与えられた条件を把握して、それを踏まえて文を構成し、話すことが大切です。
この問題の例でいうと、第4段落に示されています。
pronunciation(発音)を大事とするのかそうでないのか、どちらかの立場に立つこと。最低限2つの論拠を述べること。その主張に自らの知識や体験を取り入れること。
といった条件です。
これを押さえずに、たとえばどの立場での主張なのか明確でなかったり、1つしか根拠が述べられていなかったり、客観的な意見しかなかったりすると、英語自体が正しくても減点になります。
ライティング
ライティングでは、以下のような問題が出題されます。
You are taking an environmental science class. The professor is giving a lecture about waste and recycling habits.
For homework, your professor asks you to look at a graph in the textbook, then write about what the graph shows and compare it to your own experience.
Write a short essay about the graph.
Describe the main points of the graph. Compare the information on the graph to your own experience.
You should write 125 to 175 words.
こちらも授業を取っている生徒の立場が割り当てられます。
グラフについては、参考サイトを参照ください。
スピーキングの場合と同じで、こちらも与えられた条件に即してライティングすることが必要です。
条件は、やはり第4段落に示されています。
グラフの主要なポイントを指摘すること、そのグラフ情報と自身の経験とを比較検討すること、の2点です。
リスニング
リスニングでは以下のような問題が出題されます。
放送英文:
I am going to talk about what we did and then Ahmed will tell you about our conclusions. So, we wanted to know about when Americans, that is native speakers of English, use polite language and when they do not. And we decided that getting students to write invitations for different situations would be the best way to find out.
So first we had to decide exactly what we mean by polite language, to be specific, in invitations. For example, using words like “please ” is polite language. Another sign of polite language is using statements like “I hope ” and “I wish ” which is from the text book, page 68 as you will remember.
(中 略)
Now I will describe our method for collecting data. We asked students, only native speakers though, in the dining hall if we could email them our questions and 58 students said yes. So we wanted to have two different situations, one where we thought students would use polite language and one where we thought they would not. So we sent students two emails, one on Monday and then one on Friday so they would not know the purpose of our research. And the first email… it said, “Imagine you want to invite a professor to come to an event. What would you write? ”And then the students sent us their letters that they would send to a professor. Then the second email was the same except we asked them how they would invite a friend to lunch. We collected their responses, their emails.
(中 略)
設問:
You are in an English language class. Two students are giving a presentation on their research.
In class, the professor asks you several questions about the presentation.
Q: What was the purpose of the project?
[A] To practice writing to native speakers.
[B] To invite university students to a party.
[C] To learn new useful phrases.
[D] To study use of polite language.
Q: Why did the presenters decide to contact students in separate emails?
[A] To hide the purpose of the research.
[B] To get better answers from the students.
[C] To give the students time to plan events.
[D] To show the professor the first emails.
長めの英文が1度だけ流れます。
そのうえで、上記のような質問がなされます。
英文自体は長いですが、内容は簡単ですし、さらに設問も大意が分かっていれば答えられるものです。
特別に癖のあるリスニング問題ではありませんから、他のリスニング対策がそのまま生かせます。
リーディング
リーディングでは、以下のような問題が出題されます。
英文:
Intermediate French, Spring Term
Professor Amelie Girard
Final Project Instructions
The end of the term is quickly approaching and you will need to complete a final project. Please follow the instructions below:
1) On Friday, April 11, meet with me to talk about your story idea.
2) Once I approve your idea, write a 500-word story about your family.
The story must be in French.
3) Put your finished story in my box by Monday, April 21.
My box is located just outside of my office.
4) On Monday, April 28, I will return your graded papers to you.
5) On Wednesday, April 30, all students will read their stories to the class and we will have a class discussion about families.
Make sure you read the revised version of the story, taking my comments into account.
Attention!
If you finish your assignment late, you will lose 20 points. Be sure to pay attention to grammar, and as always, have fun!
設問:
Q: When do you need to give your professor your story?
[A] April 11.
[B] April 21.
[C] April 28.
[D] April 30.
Q: What should you do before you begin to write?
[A] Write a list of questions about your family.
[B] Talk to your professor about your idea.
[C] Discuss your story with the class.
[D] Review the chapter on French grammar.
この問題は、スピーキングやライティングの問題と似ています。
与えられた条件を理解するスキルが求められます。
リーディングは英文が流れないため、スピードに差が出やすいです。
問題演習を繰り返していると、重要な部分とそうでないところが見極められるようになってきます。
問題の核心でないところはさらっと、聞かれそうなところは丁寧に読むような緩急が大切です。
GTECの特徴と利用できる大学についてまとめ
GTEC(CBT)は全てパソコンで解答するのが特徴です。
特にライティングではタイピングに不慣れだと英語力以外の部分で遅れを取ってしまうリスクがあります。
スマホばかりな人は、普段からパソコンで英文をタイプする練習をしておくと安心です。
特に問題演習を繰り返して、出題形式、条件などの着眼点に慣れておくことも大事です。
GTECを志望校の入試で利用できるのか、利用できたとしても自分にとって利用が本当に有利なのか、こういった思考もこれからの入試では必要になってきます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。