株式会社世界思想社教学社が出版している「赤本」をご存知でしょうか。
正式名称は「大学入試シリーズ ○○大学」といいます。
「○○」には大学名が入ります。
表紙が真っ赤なので、赤本と呼ばれるようになりました。
赤本には、各大学の入試の過去問が掲載されています。
受験生が志望大学の赤本を購入すれば、その大学の出題傾向をつかむことができるので、受験生の必須の書といえます。
赤本は普通の参考書や問題集とは異なるので、使い方を詳しく解説します。
さらに、道内大学の赤本の特徴も紹介します。
赤本の「基礎知識」に関しては以下の記事で紹介しています。
赤本の特徴
全国374の大学の赤本が出版されています。
受験生や学部が多い大学については2、3冊出ているので、赤本の種類は610にもなります。
例えば北大は3種類の赤本が出ていますし、青山学院大に至っては7種類にもなります。
赤本には、大学入試の過去問が3~5年ほど収載されています。
毎年最新の過去問を掲載するので、毎年編集し直しています。
最新の赤本は、4~11月にかけて順次出版されます。
610種類の赤本が一斉に同時期に出版されるわけではありません。
赤本には過去問の他に、解答、解説、傾向と対策などが掲載されています。
受験生が赤本を使えば、志望大学で実際に出題された問題を解くことができるだけでなく、答え合わせもでき、さらになぜその答えになるのかもわかります。
解答と解説は出題した大学が公表しているのではなく、赤本の編集者が専門家に依頼して、独自に解答と解説をつくっています。
センター試験や短大の赤本も出版されています。
道内の大学の赤本の特徴
道内の主な大学の赤本をみていきましょう。
ここで紹介していない道内大学の赤本も出版されています。
北大
北大の赤本は「北海道大学 文系-前期日程」「北海道大学 理系-前期日程」「北海道大学 後期日程」の3冊があります。
2019年は7月に発売されました。
毎年、最新版は7月ごろまで購入できません。
「文系」と「理系」は5年分の過去問が掲載されていて、価格は2,100円(税別、以下同)です。
「後期」は3年分で2,300円です。
「文系」は英語、日本史、世界史、地理、数学、国語の過去問が掲載されています。
「理系」は英語、数学、物理、化学、生物、地学が掲載されています。
「後期」は数学、物理、化学、生物、地学、総合問題(文学部)、総合問題(歯学部)、小論文(教育学部)、小論文(法学部)、小論文(経済学部)が掲載されています。
北大はセンター試験も課していますが、北大の赤本にはセンター試験は掲載されていません。
センター試験対策は、センター試験用の赤本を購入する必要があります。
これはその他の道内大学でも同じです。
小樽商大
小樽商大は1種類のみ出版されています。
4年分の過去問が掲載され、1,900円です。
2019年は9月に発売されました。
掲載されている科目は、英語、数学、国語です。
帯広畜産大
帯広畜産大も1種類のみの出版です。
6年分の過去問が掲載され、2,200円です。
2019年は9月に発売されました。
前期の総合問題と後期の小論文を掲載しています。
ただ小論文については解答が掲載されていません。
これは著作権の関係と思われます。
札幌医科大
札幌医科大の赤本は「医学部医学科」の1種類しか出ていません。
2019年8月に発売されました。
6年分の過去問が掲載され、3,200円です。
掲載科目は、英語、数学、物理、化学、生物です。
札幌医科大には「保健医療学部看護学科、理学療法学科、作業療法学科」もありますが、この分の赤本は出版されていません。
北海学園大
北海学園大の赤本は1種類で、2年分を掲載し2,400円です。
2019年6月に発売されました。
掲載科目は以下のとおりです。
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、物理、国語
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、物理、国語
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、理科、国語
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、国語
北星学園大
北大学園大の赤本には短期大学部の過去問も掲載されています。
2年分で2,200円です。
2019年6月に発売されました。
掲載科目は以下のとおりです。
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、国語
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、国語、小論文
英語、日本史、世界史、地理、政治・経済、数学、国語
赤本の買い方
高3生や浪人生は、赤本を買うタイミングに悩むかもしれません。
例えば、2020年2月の入試を受ける場合、2019年2月の過去問が掲載された最新の赤本が出るのは4~11月です。
北大は7月、小樽商大は9月になります。
つまり、最新版の出版を待っていては、その月まで過去問対策の勉強ができなくなってしまいます。
だからといって前年分の赤本を買ってしまうと、最新の過去問が掲載されていません。
そこで、前年分の赤本と最新版の赤本の2冊を買うことがベストとなりますが、最新の過去問と最も古い過去問以外は内容がダブってしまい無駄になります。
赤本は2千~3千円もするので費用がかさんでしまいます。
もし1冊にとどめておきたい場合は、最新の入試が掲載された最新版を選んだほうがいいでしょう。
最新の入試で出題傾向が大きく変わっていることもあり得るからです。
同じ大学を志望した先輩がいたら、前年分の赤本を譲ってもらってはいかがでしょうか。
センター試験の赤本をどう使うか
大学ごとの個別学力試験用や2次試験用の赤本対策を紹介する前に、センター試験用の赤本の使い方をみていきます。
センター試験赤本を先に使うからです。
センター試験だけで受験できる大学や、センター試験と2次の両方を課す大学を受験する人は、センター試験の赤本で対策することになります。
センター試験の赤本は、最新版が4月に発売され、しかも21年分が掲載されているので、早期に取り組むことができます。
センター試験の赤本は1科目1冊880円
センター試験の赤本は、英語、国語、「数学1・A・2・B」、日本史B、世界史B、地理B、現代社会、政治・経済、「倫理、政治・経済・倫理」、物理、化学、生物、地学の13冊が出版されています。
受験する科目すべてを買うことが望ましいのですが、1冊21年分が掲載されていて1冊880円と「割安」になっています。
21年分もあるので早めに挑戦しよう
センター試験の赤本は21年分も収載されているので、4月から少しずつ解いていきましょう。
ただ夏休み前の4、5、6月はまだ学力がついていないので、正答率を気にしないでください。
古い過去問から解いていき、難易度や問題の雰囲気をつかむことに集中してください。
「古い過去問は、現在の出題傾向と異なるのではないか」と心配する必要はありません。
出題傾向が異なっても、知識は十分吸収できます。
そして古い過去問を解いておかないと、長年にわたって出題される問題を把握できません。
古い過去問を解くことで「この知識は何度も問われる」という感覚を得ることができます。
大学ごとの赤本の使い方
大学ごとの個別学力試験用や2次試験用の赤本の使い方を紹介します。
浪人生は4月から、現役生は7月から
浪人生は4月から挑戦してもいいでしょう。
しかし高3生は4、5、6月では歯が立たないかもしれません。
それで自信を失うことは得策ではないので、夏休みごろから始めてはいかがでしょうか。
本番のように解く
赤本は本番の入試のように解いてください。
制限時間内に何も参考にしないで挑戦してください。
入試では、制限時間内に解き終えるスピードが重要です。
速く解くスキルは過去問を制限時間内で解くことで鍛えることができます。
喜びも悲観もしない
過去問の点数がよくても悪くても、喜びも悲観もしないようにしてください。
過去問は自分の都合のよいタイミングで挑戦するので、よい点数が取れて当たり前です。
また、悪い点数だった場合、「本番でなくてよかった」と前向きにとらえましょう。
過去問は、弱点を把握して知識を増やすために挑戦してください。
弱点を把握し、知識を増やす
過去問を解き、正誤を確認したら、すぐに弱点の把握と知識の獲得に取り掛かってください。
あてずっぽうで解答してたまたま正答した問題も誤答として扱ってください。
そのうえで、誤答したすべての問題を、ノートに書き出してください。
そのとき自分なりになぜ解けなかったのかを書き添えてみましょう。
それで自分の苦手な項目が明確になります。
次に、苦手項目を参考書で確認して問題集を解き、その日のうちに自分の知識にしてください。
また、英語の長文や現国の評論などは、過去問として解くときは流し読みをして時間短縮を狙いますが、解答後のチェックでは熟読してください。
英語長文は全文を和訳しましょう。
現国の評論は段落ごとに要約してみましょう。
英語長文や評論のなかには、設問で問われていること以上の知識が盛り込まれています。
それらもすべて掘り出していきましょう。
この作業は2、3時間では終わりません。
赤本に挑戦するときは丸1日費やしてもいいくらいです。
過去問分析をすることで、知識量が格段に増加することが理想です。
何度もやる
過去問は満点を取れるまで何度も繰り返し行ってください。
完全に覚えた設問には「×」をつけて飛ばして構いません。
何度も間違ってしまう項目は、その項目の前後の項目も学習しましょう。
英語の構文が苦手であれば、構文用の問題集を総ざらいしてください。
赤本は1冊2千~3千円もしますが、繰り返し解くことで「元」を取ることができます。
まとめ~ボロボロにしよう
赤本はボロボロになるまで使い込んでください。
過去問を何度も解くことで、その大学の出題者の癖がわかってきます。
参考書を読みながら「北大の出題者はここを突いてくる」と思えるようになれば赤本効果が出ている証拠です。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。