大学受験の社会は、得意にする人と、苦手にする人がいます。
この差はどこから生まれるのでしょうか。
社会を苦手にする人は「社会はつかみどころがない」と感じています。
この2人の違いは、勉強法の数です。
社会を苦手にする人は、勉強法が1個か2個くらいしかありません。
それでは社会は克服できないでしょう。
社会を得意にする人は、科目ごとに勉強法を変えています。
また、同じ科目のなかでも、単元ごとに勉強法を変える人もいます。
勉強方法をコロコロ変えることで、つかみどころがなかった社会を「がっちり捕らえる」ことができます。
もう「社会」とも「地歴公民」とも呼ばない
センター試験(2021年からは大学入学共通テスト)対策に乗り出している人は、さすがにもう社会のことを「社会」とは呼んでいないでしょう。
では、社会のことは「地理歴史」または「公民」とも呼べばいいのでしょうか。
実はそれでも大雑把すぎます。
これからは「科目」で呼ぶようにしてください。
「勉強が異なる=全然違う学問」と考える
大学受験で社会を克服したい人は「世界史」「日本史」「地理」「現代社会」「倫理」「政治」「経済」と、「科目」ごとに呼ぶようにしましょう。
なぜなら社会は科目ごとに勉強法が異なるからです。
勉強法が異なるということは、まったく別の「学問」と考えてもいいくらいなのです。
英語と数学の勉強法を変えるように、社会は科目ごとに勉強法を変えましょう。
もちろんそれぞれの学問を究めると、「世界史」「日本史」「地理」「現代社会」「倫理」「政治」「経済」はつながります。
しかし受験勉強のテクニックとしては、別物と考えましょう。
ここで教科と科目についておさらいしておきます。
教科と科目はこれほど違います。
中学or高校 | 教科 | 科目 |
中学の社会 | 社会 | 地理、歴史、公民 |
高校の社会 | 地理歴史 | 日本史、世界史、地理 |
公民 | 現代社会、倫理、政治、経済 | |
例) | 国語 | 現代文、古典、漢文 |
例えば国語では、「国語が教科」で「現代文、古文、漢文が科目」になります。
社会は、中学では「社会が教科」で「地理、歴史、公民が科目」でしたが、高校になると「地理歴史と公民が教科」で「日本史、世界史、地理、現代社会、倫理、政治、経済が科目」になります。
なぜ地理、歴史、公民が科目から教科に格上げになったのかというと、それぞれの内容が多岐にわたり深くなったので、「社会」ではくくれなくなってしまったからです。
そして大学受験では、「地理歴史」と「公民」でも概念が広すぎるので、「地理歴史」と「公民」でくくってしまうと、入試対策としては大雑把すぎてしまいます。
それは、センター試験の問題の種類の多さをみれば一目瞭然です。
センター試験の社会の問題は10種類もある
センター試験の問題は、科目をさらに細分化し、10種類も用意されています。
上記の表の「高校の社会」にセンター試験の問題を合わせてみるとこうなります。
| 教科 | 科目 | センター試験の問題 |
高校の社会 | 地理歴史 | 日本史、世界史、地理 | 1)日本史A、2)日本史B 3)世界史A、4)世界史B 5)地理A、6)地理B |
公民 | 現代社会、倫理、政治、経済 | 7)現代社会 8)倫理 9)政治・経済 10)倫理、政治・経済 |
日本史、世界史、地理も内容が増えすぎたので、センター試験ではAとBにわける必要がありました。
Aのほうが範囲が狭く、Bのほうが範囲が広くなります。
公民のセンター試験の問題では「倫理」単独と「政治・経済」単独があるうえに、「倫理、政治・経済」の合体パターンもあります。
センター試験に「倫理、政治・経済」があるのは、薄くてもいいので広い知識を持っている学生を入学させたい大学があるからです。
「高校の社会の構造」を押さえることができたら、次は勉強法をたくさん持って、科目ごとに変幻自在にコロコロ変えていきましょう。
このようにコロコロ変えよう
科目ごとの勉強法のひと口アドバイスをまとめてみました。
科目 | 勉強法のひと口アドバイス |
日本史 | 先に「流れ」、「暗記」は後回し |
世界史 | 世紀と地理でわかる |
地理 | 地図と自然を押さえる |
現代社会 | 問題意識を持てるかどうか |
倫理 | 「わかったつもり」が危険 |
政治・経済 | 「世界のなかの日本」の視点を持つ |
暗記を後回しにするアドバイスは日本史のなかにしか入れていませんが、その他のすべての科目についていえます。
社会のそれぞれの科目の勉強法に共通点があるとすれば、それは、流れを押さえないで暗記を先行させても学力が身につかない、ということです。
「社会は暗記が重要」といわれ、それはそのとおりです。
暗記していないと、社会では得点できません。
しかし流れを押さえていないと、入試の設問と暗記した単語や事象を頭のなかでリンクさせることができません。
したがって社会の勉強は、徹底的に流れを追うことから始めましょう。
まずは流れをつくってしまい、2巡目の勉強で、その流れに必要な単語や事象を置いていく、というイメージです。
それでは科目ごとの勉強法のアドバイスをさらに詳しく解説していきます。
日本史は先に「流れ」、「暗記」は後回し
日本史では「いい国(1192年)つくろう鎌倉幕府」という有名なフレーズが存在しているために、年代と単語や事象をセットで暗記する勉強法が正しいと思われてきました。
しかし日本史で重要なのは流れです。
日本史では、徳川家康が天下を獲って徳川幕府を築いたことが重要なのではなく、家康が自分の「先輩」である豊臣秀吉に勝ち、秀吉が自分の「師匠」である織田信長に勝ったことが重要なのです。
信長(1534~1582)と秀吉(1537~1598)と家康(1543~1616)の3人は、元々は年の離れた仲間でした。
家康が徳川幕府という、日本の歴史のなかで特筆すべき政治機構と行政機構をつくり上げることができたのは、先輩の欠点と、先輩の師匠の欠点を間近でみてきたから、ともいえます。
この流れを押さえておけば、明治政府が誕生した理由もわかります。
徳川幕府の源流は信長になるので、さすがに古くなってしまったのです。
世界に追いつくために政治機構と行政機構をフルモデルチェンジしたのが明治政府です。
センター試験の日本史の問題では地図、写真、絵図、グラフ、統計を読み取らせる問題が出るようになりました。
「日本史の勉強法は言葉の暗記」と考えている人は、教科書や参考書に掲載されている地図や写真などを読み飛ばしてしまいがちです。
それでは読み取らせ問題は解けません。
地図や写真などの意味をじっくり理解してください。
流れの把握が終わったら、後は暗記に集中して日本史を仕上げてください。
世界史は世紀と地理でわかる
世界史でつまずく人は、カタカナの名称に参ってしまうことが多いようです。
そして多くの受験生は、日本史の流れは追うことができても、世界史の流れを追うことが苦手です。
それは世界史が、日本人の受験生にとって身近な出来事ではないからです。
世界史の勉強は、まずは世紀と地理を押さえましょう。
1世紀は1年から100年で終わります。
19世紀は1801年1月1日から1900年12月31日までです。
世界史は、まずは1世紀を前半と後半にわけて、出来事を押さえていきましょう。
19世紀の世界史を勉強するときは、1801年からの50年と、1900年までの50年をまとめるとよいでしょう。
そして世紀を押さえる前に、現代の世界地図を頭に入れておいてください。
世界史では国境がコロコロ変わります。
国名も地名も変わります。
したがって現代の世界地図がしっかり頭のなかに入っていないと、ある事象や事件が「なぜそこで起きたのか」が理解できません。
地理は地図と自然を押さえる
地理は、地図と自然を押さえておけば、その後の暗記がスムーズに進みます。
地図を頭のなかに入れるには、常に地図帳をみる必要があります。
また、自分で手描きでノートに地図を描いていきましょう。
センター試験の地理Bは、次のような構成になっています。
- 「世界の自然環境と自然災害」
- 「資源と産業」
- 「都市と村落、生活文化」
- 「世界の地理その1」
- 「世界の地理その2」
- 「日本の詳細な地理」
したがって、地図をしっかり覚えたうえで、その上に自然、産業、生活を落としていけばいいのです。
現代社会は問題意識を持てるかどうか
2019年のセンター試験・現代社会は次のような構成でした。
- 「経済のグローバル化」
- 「個人の尊厳と法制度」
- 「『ありがとう』から見る人の社会性」
- 「高齢社会と日本の法制度」
- 「地方創生と経済」
- 「欧州議会と民主政治」
現代社会の設問は、英語や国語や数学や理科とはまったく異なる特徴を持っています。
それは現代社会では「今のリアルな世界の問題」を直接問われることです。
したがって現代社会の勉強をするには、問題意識を持つ必要があります。
例えば、受験生でも持っている人がいると思いますが、スマホのiPhoneは、アメリカの企業が日本や台湾などの部品を使って、中国でつくっています。
そして利益の大半はアメリカ企業のアップル社が獲得します。
しかしiPhoneが生み出す利益の一部であっても、それが日本企業に流入することは、日本経済にとって大きなインパクトを持ちます。
これが経済のグローバル化です。
スマホを持っている人は、日頃からニュース・サイトをチェックすると、現代社会の力を養うことができます。
例えば以下のような記事を読んでみてください。
・実は幻想、iPhoneの「日本製部品頼み」裏読み「アップル経済圏」(日本経済新聞)
・アップルがiPhone製造を中国外に移設へ、米中の対立激化に備え(Forbes)
また、病院に行くと、高齢者であふれかえっている光景を目にすることができます。
自分の祖父母が介護施設に入っている、という受験生もいるでしょう。
医療費や介護費が高騰するため、多額の社会保障費が必要になり、国の財政が揺らいでいます。
これが高齢社会のリアルです。
倫理は「わかったつもり」が危険
倫理は、受験のすべての教科・科目のなかで最も難解な学問です。
したがって倫理の勉強をするときは、「なんとなくわかった」で終わらせないようにしてください。
倫理では、過去問や問題集を解いたら、なぜ自分は正答を出せたのか、あるいは、なぜ自分は誤答したのかをしっかり検証してください。
正解・不正解より理解が大切です。
倫理の試験では、心理学説や思想史の設問も出ます。
それを解くには単語の暗記が必要ですが、しかしその前に心理それ自体や思想それ自体を理解しないことには、高得点につながらないでしょう。
政治・経済は「世界のなかの日本」の視点を持つ
経済のグローバル化というテーマは、政治・経済でも現代社会でも扱われます。
その他のテーマも、この2つの科目ではダブることがよくあります。
したがって、政治・経済を勉強するときも、現代社会の学習のコツである「問題意識を持てるかどうか」が重要になります。
そして政治・経済ではさらに、世界のなかの日本が問われます。
教科書や参考書で世界の政治・経済を扱っていたら「同じ問題が日本でも起きないのだろうか」と考えるようにしてください。
そして教科書や参考書に日本の政治・経済が出てきたら「なぜ日本でこのようになったのだろうか。世界からの影響はあったのだろうか」と考えてください。
政治と経済は本来は別の学問で、大学でも政治は法学部で扱い、経済は経済学部で教えます。
しかし、実際のリアルの世界では、政治と経済は密接不可分の関係にあります。
例えば日本では、政治のトップは内閣総理大臣で、経済のトップは日本銀行総裁や日本経済団体連合会会長だったりしますが、財務大臣も経済に大きく関わっています。
財務大臣は政治家ですし、財務省は行政機関ですので、政治と経済は切り離せないのです。
まとめ~適切な食器で食べる
社会の勉強が(全科目の総称としての社会の勉強が)、つかみどころがないのは当然のことです。
社会を構成している日本史、世界史、地理、現代社会、倫理、政治・経済は、それぞれが違った特徴を持っています。
これらを同じ勉強法で克服することは無理があります。
カレーライスを箸(はし)で食べ、そばをスプーンで食べるようなものです。
例えば北大法学部を受験するには、センター試験で「世界史B、日本史B、地理Bから1科目」と「倫理、政治・経済」の計2科目を選択しなければなりません。
例えば「世界史B」と「倫理、政治・経済」の2科目を選択するなら、世界史の勉強法と倫理の勉強法と政治・経済の勉強法の3つの勉強法を獲得しなければなりません。
それは面倒な作業のように思えますが、それが最短距離を進む道です。
勉強する時に役立つ「おすすめ文房具」も、以下の記事でご紹介していますので合わせて読んでみてください。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。