浪人が決まった方に、少し酷な質問をします。
Q:あなたはなぜ、浪人することになったのでしょうか
まだ悔しさが鮮明に残っている人は「そんなこと考えたくもない」と思うかもしれませんが、結果が出た以上、それを受け止めて前進すべきです。
そのためには、この質問に真摯に取り組む必要があります。
この質問の答えのなかに、もし「スケジュールを立てなかったから」「スケジューリングに失敗したから」が入っていない人がいたら、危機感を持ってこの記事を読んでください。
なぜなら、受験においてスケジュールを立てること(スケジューリングすること)はとても重要だからです。
そして多くの浪人生は、スケジューリングに失敗しているか、そもそもスケジュールをつくっていません。
浪人生が勉強スケジュールをつくる意義を紹介したうえで、北海道の浪人生に参考にしてもらいたい「1年」のすごし方を解説します。
スケジュールがなぜ重要か
「1年」と表記しましたが、厳密には浪人生に残されている時間は、11カ月半しかありません。
浪人することが決まるのは、最も遅い人で2月下旬です。
そして翌年の1月20日ごろにはセンター試験(2021年からは大学入学共通テスト)がスタートします。
したがって、3月~翌1月半ばまでが、浪人期間と考えてください。
入試は2月下旬までありますが、2月は新しいことを覚えたり学力を上げたりする期間ではなく、覚えたことを忘れないように確認する期間です。
スケジュールは、この11カ月半をいかに効率よくすごすかを決める重要な指針になります。
いつスケジュールを立てるのか
スケジュールは浪人が決まった翌日に立てても構いません。
早ければ早いほどよいでしょう。
ただスケジュールは、じっくり時間をかけて、しっかりしたものをつくってください。
2~3日かけても構いません。
そして、本格的な勉強は、スケジュールを立てた後に開始してください。
浪人生活は「スケジュールありき」で進みましょう。
今、浪人している人へ
この記事では、浪人が決定した翌日から、翌年の入試前日までのスケジュールのつくり方を解説します。
したがって、今浪人している人は、今から入試前日までのスケジュールをつくることになります。
それでも十分「スケジュール効果」を獲得できるので、安心してスケジュールづくりに取り組んでください。
道内浪人生の大まかな11カ月半の流れ
北海浪の浪人生の11カ月半を詳しくみる前に、全体の大まかな流れを押さえておきましょう。
ビリでも合格すればよい
大学受験という競争には、
- 結果は合格か不合格しかない
- トップ合格者とビリ合格者の価値は同じ
というユニークな性質があります。
その他の競争には、勝ちがなかったり、負けがなかったり、順位が重要だったりしますが、大学受験はそうはなっていません。
したがって浪人生は「ビリで合格すること」を目指してはいかがでしょうか。
つまり「トップ合格」は目指さない、ということです。
トップ合格を目指すには、苦手科目も得意科目も超得意科目にしなければなりません。
しかしビリ合格を目指すなら、苦手科目を普通科目にして、得意科目だけを超得意科目にすればいいのです。
序盤、中盤、終盤で力配分を変える
苦手科目を普通科目にして、得意科目だけを超得意科目にするために、浪人期間を序盤、中盤、終盤の3つの期間にわけ、勉強の力の入れ方を次のように配分してみてください。
序盤:3~5月 | 苦手科目9割 | 得意科目1割 | ||
中盤:6~10月 | 普通科目(元の苦手科目)5割 | 得意科目5割 | ||
終盤:11月~入試 | 普通科目2割 | 超得意科目(元の得意科目)8割 |
序盤の考え方
浪人生活をスタートさせたばかりの頃は、苦手科目に9割の時間と力を注ぎこんでください。
「苦手」という意識は、常に頭にこびりついてしまいます。
そのネガティブな気持ちは勉強効率を下げてしまいます。
そこで序盤は徹底的に苦手科目に集中して、普通科目にしてしまうのです。
苦手科目がなくなれば晴れやかに勉強を進めることができます。
しかし苦手科目ばかりやっていると勉強が楽しくないので、序盤でも1割くらいは得意科目に取り組みます。
苦手科目の勉強が「苦しみ」になり、得意科目の勉強が「楽しみ」になれば、勉強に飽きることがなくなります。
中盤の考え方
そして浪人生活が中盤に入ったら、普通科目(元の苦手科目)と得意科目に割く時間を半々にします。
普通科目は、二度と苦手科目に落とさないように、逃げないようにしてください。
そして得意科目はこの期間に超得意科目に昇華させます。
応用問題や難問に果敢に挑み、同じ入試を受ける受験生のなかでトップを取るくらいの気持ちで勉強に臨んでください。
終盤の考え方
浪人生活が終盤に入ったら、普通科目2割、超得意科目(元の得意科目)8割で進行します。
普通科目の勉強時間を2割にまで減らすのは、得意科目にすることを目指さないからです。
普通科目を得意科目にするためには、膨大な労力が必要で、それを実施してしまうと超得意科目対策がおろそかになってしまいます。
「普通科目→得意科目」に必要な労力と「超得意科目→さらに伸ばす」に必要な労力は、それほど変わらず、両方とも大変な作業です。
しかし、「超得意科目→さらに伸ばす」には、学ぶ楽しさがあります。
したがって効率よく勉強することができます。
普通科目は元々苦手科目だったので、「普通科目→得意科目」の勉強は楽しくなく、非効率です。
浪人生活のラストスパートは、入試本番での超得意科目の満点と、普通科目での取りこぼし防止を目指します。
それでは次に、北海道内の浪人生が、入試本番までの各月に注意すべきことを解説します。
3月に注意すべきこと
浪人が決まったら、こう考えてください。
浪人が決まった翌日と、翌年の入試の前日は同じである
この考えが身についていないと、無駄な浪人生活になってしまうでしょう。
浪人生は「縛り」が一切ありません。
それだけに「自分ルール」がとても重要になります。
浪人が決まった日はさすがに何もしないでよいでしょう。
しかしその翌日には「翌年の入試のための何か」はしましょう。
例えば、予備校の情報をネットで調べてもいいでしょう。
浪人を経て合格した人たちのブログを読んでもいいでしょう。
同時に浪人することが決まった友人と会い、お互いに励まし合って勉強していこうと誓ってもいいでしょう。
浪人が決まった翌日の24時間でできることの量と、入試前日の24時間でできることの量はまったく同じです。
そして3月は、入試のときに浪人生のライバルになる高3生がまだ2年生の時期です。
彼らの多くは「よし、4月になってからギアを上げるぞ」と思っています。
浪人生は現役生よりアドバンテージがありますが、そのアドバンテージをさらに広げることができるのが3月なのです。
そして浪人生のなかには、3月に車の運転免許を取りに行く人もいますが、おすすめできません。
貴重な3月に自動車の運転を学ぶのももったいないですし、免許を取ったら運転したくなってしまうでしょう。
そのロスも大きなものになりかねません。
免許証は大学合格のご褒美にとっておきましょう。
4月に注意すべきこと
4月はまだ「苦手科目9割、得意科目1割」で進行する時期です。
予備校が始まったり世間で新年度が強調されたりする時期なので、つい新しいことに挑戦したくなると思いますが、浪人生はここを地味に乗り切りましょう。
例えば、日本史が苦手な人は、中学校の教科書を総ざらいしてもいいでしょう。
この地味な点検作業をするだけで、自分が日本史を嫌いになった理由がみえてきます。
それで苦手克服ポイントになるので、集中して勉強することができます。
5月に注意すべきこと
5月にはゴールデンウイークがあります。
この期間を遊ばずにすごすことができたら、夏休みを乗り切る忍耐力が身につきます。
家族や友人から「いくら浪人中でもゴールデンウイークくらい息を抜いたらいいのに」といわれても、それに抗(あらが)ってみましょう。
自信がつくはずです。
6月に注意すべきこと
6月に入ったら「普通科目(元の苦手科目)5割、得意科目5割」で進行します。
思い切り得意科目の問題を解いていってください。
しかし恐らく「学力が足りない」と感じるでしょう。
それは当然です、5月末まで得意科目は1割しか力を入れていなかったのですから。
ところが得意科目なので、あせればあせるほど、勉強が進みます。
自分が「みるみる賢くなる」感覚を味わえるでしょう。
北海道の浪人生にとって、6月は書き入れどきといえます。
本州以南は梅雨のため、気持ちがのりません。
しかし北海道には梅雨がないので快適なコンディションで勉強できます。
7、8月に注意すべきこと
7、8月も本州以南勢は暑さに苦しめられる一方で、北海道の浪人生は快適に勉強できます。
夏休みは「天王山」なので、モリモリ勉強していきましょう。
この時期になると、夏期講習が始まったり、模試の結果が出たりと現役生(高3生)たちも活気づきます。
浪人生は現役生に追われる立場にあるので、引き離す気持ちを持ちましょう。
9月に注意すべきこと
もし9月になっても、苦手科目が普通科目になってなく、得意科目が超得意科目になっていなければ、あせりましょう。
ここで「なぜ自分は浪人することになったのか」を思い出してください。
不合格を知ったときの屈辱感を思い出してください。
そして自分に「このままでは同じことの繰り返しだぞ」と言い聞かせてください。
そして受験勉強が想定以上に順調に進んでいる人は、志望大学を1~2ランク上げることを検討してみてください。
道内私大の受験を考えていた人は、小樽商大、室蘭工大、北見工大、帯広畜産大、道教大に挑戦できないか検討してみてください。
そして小樽商大や室蘭工大などの受験を考えていた人は、北大挑戦を考えてみてください。
北大を考えている人は、東大を視野に入れてもいいかもしれません。
浪人生で偏差値が急上昇する人は、9月ぐらいで結果が出ます。
そしてその勢いは終盤まで続くので「上」の大学に切り替えるなら、このときです。
10、11月に注意すべきこと
10月は「普通科目5割、得意科目5割」の最終月であり、11月は「普通科目2割、超得意科目(元の得意科目)8割」の初月です。
この切り替えができないとライバルを引き離すことができません。
自動車で例えると、これまで乗っていたスポーツカーからレーシングカーに乗り換えるイメージです。
北海道の山で例えるなら、札幌・藻岩山(標高531メートル)でのトレーニングを終わらせて、大雪・旭岳(標高2,291メートル)にロープウェイなしで登るイメージです。
12月に注意すべきこと
北海道の12月はとても寒いので、道内浪人生は勉強に支障が出ます。
ここで風邪を引いたり、インフルエンザにかかったりしないようにしてください。
うがい、手洗い、予防接種はマスト項目(必ずすべきこと)です。
この時期の勉強は「1点集中」です。
例えば現国なら、漢字を1問間違えただけで落ちるかもしれない、という危機感を持ってください。
1点に集中する勉強とは、基礎的な問題を落とさず、応用問題を究める勉強です。
過去問を解いているなかで、正答を知っていたのに問題の読み違えで誤答することがあれば、「これが命取りになる」と思ってください。
そして超得意問題は、応用問題と難問だけに挑戦してください。
数学であれば1問に2時間かけても構いません。
英語の長文読解であれば、1文に5時間かけても構いません。
1点上げることは超難しいことですが、1点を失うことは超簡単です。
センター試験では同じ点数に5,000人がいることがあります。
つまり、1点取ると5,000人をごぼう抜きできますし、1点失うと5,000人に一気に抜かれるということです。
大晦日は、休んでもいいでしょう。
その理由は次の章で紹介します。
翌年1月に注意すべきこと
大晦日に休んでもいいのは、1月1日に勉強してほしいからです。
元日は、初詣に行く以外は、普段とおり勉強してください。
「神様には頼らない。自分の力だけを信じる」という人は、他の受験生が初詣に行っている時間も勉強しましょう。
入試本番では、気力勝負の部分も出てきます。
問題を解いているうちに「やばい、全然わからない」と思うことも出てきます。
そのとき「自分は元日も勉強したんだぞ。ここで落ちるわけにはいかない」という踏ん張りが出てきます。
すると、「この問題は捨てよう。その代わり、次の問題は絶対に解いてやる」と冷静に考えることができます。
1月はセンター試験(2021年から大学入学共通テスト)があります。
したがって1月で落ち着いて勉強できるのは10日ぐらいまでと思っておきましょう。
1月は「とにかくあせらないこと」「体調を崩さないこと」に集中しましょう。
2月に注意すべきこと
2月は平常心で迎えたいものです。
新しいことを覚えようとしないでよいでしょう。
赤本だけをひたすら何回も解いていってください。
まとめ~スケジューリングすれば「できる」と思える
スケジュールをつくると、「これならできそうだ」と思えるはずです。
浪人生がやることは、苦手科目を克服して、得意科目を伸ばすことしかありません。
スケジュールを仕上げると、その2つが可視化できます。
可視化とは「目に見える状態になる」という意味です。
目に見える山は登れそうな気になってきます。
しかし頂上が雲で隠れている山は、登れるかどうか不安になってきます。
浪人生活を可視化すると失った自信を取り戻すことができます。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。