一口に「大学入試」と言っても、入試方法には様々な形態があるのを知っているでしょうか。
一番わかりやすいのは、「大学入学共通テスト」などの学力試験を使った選抜方法を利用する「一般選抜」です。
それ以外には、「総合型選抜(旧AO入試)」や「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」といったいわゆる「推薦型選抜」があります。
近年の傾向としては、推薦型選抜を経て大学へ入学する人の割合が増えてきており、特に私立大学では入学者のうちの半数以上が何らかの推薦制度を使って入学しているとも言われています。
ここでは、一般の入学試験「一般選抜」を受けずに大学へ入学する方法、推薦型選抜の中でも「学校推薦型選抜(旧推薦入試)」について、さらに「指定校推薦(指定校制)」と「公募推薦(公募制)」について紹介したいと思います。
一般選抜と推薦型選抜でなにが違う?
まず押さえておきたいのは、大学入試を突破する方法としては次の3つの方法があるということです。
- 一般選抜
- 総合型選抜(旧AO入試)
- 学校推薦型選抜(旧推薦入試)
この3つの違いですが、主に学力検査(入学試験)の結果で合否が決定される一般選抜は、一番イメージがしやすいのではないでしょうか。
一般選抜では、出願条件としては「高校を卒業した者」「高校卒業見込みの者」または「高校卒業と同等の学力と認められる者」などを挙げている大学が多く、他の選抜方法に比べて出願条件が緩やかに設定されています。
入学試験の時期は1月~3月頃に設定・実施されています。
総合型選抜は、書類審査と詳細な面接などを組み合わせて入学志願者の能力や大学で学ぶ適性について、総合的に判定する入試方法のことをいいます。
特徴は、高校からの推薦がなくても入学志願者が自ら出願できる公募推薦ということです。
また、総合型選抜の実施時期は、各大学によって8月~12月と幅広い期間が設定されており、選抜される期間も学校推薦型選抜に比べて長期間にわたることが多いようです。
では、学校推薦型選抜とはどのようなものでしょうか。
学校推薦型選抜の場合、出願条件として高校時代の一定の学業成績が決められているのが特徴です。
そのため、規定の学業成績の評定平均が基準を上回らないと出願できないことになっています。
出願条件が厳しい代わりに入試の時期は11月~12月頃と、一般選抜よりも早い時期に実施されることが多いです。
学校推薦型選抜(旧推薦入試)の特徴は?「公募推薦」と「指定校推薦」とは
学校推薦型選抜には、「公募推薦(公募制)」と「指定校推薦(指定校推薦)」の2種類のしくみがあります。
この2つの方法の違いは何かというと、公募推薦では出願できる高校に制限はありませんが、指定校推薦は、志望大学から自分が通っている高校が推薦校として指定されていなければ出願できません。
いずれの場合でも、学校内でそれぞれの大学の出願条件を満たしており、高校の校長の推薦があることが出願の条件となっています。
では、次に「公募推薦(公募制)」と「指定校推薦(指定校制)」、それぞれの特徴を詳しく紹介しましょう。
公募推薦(公募制)とは?
評定平均など、大学が定める出願条件を満たしており、高校の校長からの推薦があれば誰でも受験できる推薦入試です。
この場合は、通っている高校が大学から指定された「指定校」でなくても、出願でき、全国どこの高校でも大丈夫です。
公募推薦には、「公募制一般選抜」と「公募制特別推薦選抜」の二種類があります。
「公募制一般選抜」は、学校の成績が一定の基準を超えている人が出願できる制度です。
高校の定期テストなどで、まんべんなく高い得点とっていて、評定成績が高い人が有利といえます。
また、「公募制特別推薦選抜」ではスポーツの実績や文化活動、取得資格などで活躍したことをアピールできる人が出願できる制度です。
出願条件に、大会やコンテストの成績、資格・検定であれば級やスコアなどの条件が定められていることが多いようです。
一方で高校での学業成績を審査対象にしない場合もあります。
公募推薦は、私立大学だけでなく、国公立大学でも実施されています。
また、出願できる人の対象が広いため、人気のある大学や学部では倍率も高くなるようです。
そのため指定校推薦と異なり高確率で合格できる保証はありません。
指定校推薦(指定校制)とは?
大学が指定した高校である「指定校」の生徒にのみ出願資格がある推薦制度です。
指定校推薦では、大学が指定した高校の校長から推薦してもらう必要があり、指定校から推薦できる人数には制限があります。
希望者が多い場合は校内選考で選抜されるため、人気のある進学先の推薦枠を得るためには学内の選抜を通過する必要があります。
学内選考には、高校1年生から3年生の1学期までの成績の平均である評定平均や、課外活動実績、生活態度などが総合的に見られ選考の基準になります。
注意したいのが、指定校推薦は、大学と高校の信頼関係のうえに成り立つものなので、仮に合格したら、必ずそこの大学へ進学しなければなりません。
そのため必然的に出願は1校のみの専願になります。
学校推薦型選抜や総合型選抜を掛け持ちして出願することはできません。
指定校推薦の募集時期と受験日程については、詳細は大学によって異なりますが、6月から8月ごろに各大学から願書が配布されるので、高校では10月頃までに校内選考の結果が発表されます。
校内選考が終了してから受験生は11月頃には志望大学へ出願します。
大学での選考は小論文や面接などが一般的で、12月以降一般選抜の10日前までには合否が分かるスケジュールとなっています。
一般受験と比べて合否発表のスケジュールが早く、選考方法も面接や小論文などがメインで学力試験を伴わないため、指定校推薦は非常に人気があります。
では、高校の学内選考の基準や条件はどのようになっているのでしょうか?
学校推薦型選抜では、一定以上の評定平均が必要です。それも高校1年から高校3年1学期までの評定が対象となるため、高校でのほとんどの期間の成績が出願条件の対象となることが多いようです。
大学により条件は異なりますが、評定平均の下限は多くの学校が4.0以上と高成績の評定を求めています。
人気のある大学や学部の場合では、志望者が校内で複数いるということもあり得ることです。
多くの生徒たちの中から校内選考で選抜されることになりますので、評定平均は高ければ高いほど、有利といえます。
学内選考で評定平均が同じぐらいの生徒がいた場合は、授業態度や出席日数、部活、課外活動などが参考にされることがあります。
このことから、学業や課外活動など全ての面において意欲的に取り組む姿勢が評価されることになります。
大学によって推薦方法は異なる?私立大学と国公立大学の違い
私立大学の学校推薦型選抜は、出身高校の推薦書が必要だということが一番の特徴です。
高校在学中の活動を総合的に見て推薦基準を満たしている生徒を高校の学校長が推薦する入試方式になります。
評定平均などの推薦基準を満たしていないと高校からの推薦書を得ることができないので、出願することができません。
推薦の基準は、高校時代の学業成績の評定平均で判断されるケースが多いものの、それ以外も課外活動の実績や取得資格などが求められることもあります。
希望の進学先が決まっている場合は、早めに推薦基準を確認しておくと良いでしょう。
また、選抜の審査方法についても大学の募集要項に詳しく掲載されているのでチェックしておきましょう。
試験では大学教育を受けるために必要な知識・技能、思考力・判断力・表現力があるかどうかを判断基準に審査されます。
調査書・推薦書などといった出願書類だけでなく、学力検査や小論文、口頭試問、資格・検定試験の成績、大学入学共通テストなどのうち少なくともひとつを活用するように大学入学者選抜実施要項にて定められています。
一方、国公立大学の学校推薦型選抜については、公募推薦のみとなっています。
また、私立大学に比べて募集人員が少なく、成績基準が厳しい傾向にあるのが特徴です。
推薦入試とはいえ、学力試験を実施する大学も多く、なかでも大学入試共通テストを活用する大学の割合が高くなっています。
指定校推薦(指定校制)を狙うために必要なことは?
学校推薦型選抜のうち、指定校推薦をしてもらいたいと思ったとき、まず最初に考えなければならないのは、評定平均を上げることです。
指定校推薦で求められる評定平均は、特に人気の大学では4.0以上とする学校も多く、非常に条件が厳しいといえます。
そのため、高校1年生の時からどの教科でも満遍なく高得点を狙い、万が一ミスをして評価が下がってしまったようなことがあったとしても、主要教科以外の教科や課外活動なども力を抜くことなく全体でカバーできる状態にしておくことが大切です。
なかでも気をつけたいことが、高校3年生の定期テストについてです。
高校の定期テストは、通常であれば1年間のうちに5回あります。
高校1、2年生の間は合わせて10回、高校3年生の1学期までが2回とすると、評定に関わるテストは全部で12回あります。
高校1~2年生のうちであれば、1回のテストの成績が下がってしまったとしても、その年の別の4回のテストでリカバーが効きます。
けれども、高校3年生だけは1学期の2回の定期テストの成績だけが主な判断材料として使われ、評定がつくようになっています。
そのため、高校3年生の成績は、注意しておかないと失敗したときにダメージが大きくなる可能性があるということを覚えておくと良いでしょう。
では、学校推薦型選抜、特に指定校推薦を利用しようと思ったときに重要な指標となる「評定平均」はどのようにして計算するのでしょうか?
評定平均とは、5段階でつけられた全科目の成績を足し合わせ、科目数で割った数値のことを指します。
この平均とは、高校1年から高校3年の1学期までの成績を対象として算出するのが一般的です。
評定平均を算出する際に、小数点以下第2位を四捨五入するため、3.8や4.2というような数で表されます。(10段階評価やA・B・C・D・E5段階のように評価する大学や短大もあります。)
出願基準は各大学によっても異なりますので、必要な評定平均が全教科の評定平均なのか、教科ごとの評定平均の提出も必要になるのか、事前に確認しておきましょう。
また、2020年からは学習指導要領が改定され、授業での3観点といわれる「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の育成を目標とすることになりました。
そのため、評定もこの3観点が習得されているかどうかが、判断材料になると考えられます。
そのため、ペーパーテストで測る内容も、これまでとは変わる可能性もありますし、「学びに向かう力、人間性など」といったテストでは測れない力も評価対象になる可能性があり、純粋なテストの点数だけで評定がつけられるものではない可能性もあります。
特に指定校推薦を利用したいと思ったら、希望する大学の推薦の願書が配布される時期をあらかじめ確認して、なるべく早く、少なくとも校内選考が始まる前までには担任の先生に指定校推薦を利用したいという旨を伝えなければいけません。
校内選考は、その高校からの推薦枠に対して指定校推薦利用希望の応募人数が多い場合、希望者のなかから推薦する生徒を決めるための選考のことです。
指定校推薦では、1つの高校につき1人、多くても数人程度と、限られた人数の募集枠しかありません。
そのため、もしも募集人数よりも指定校推薦を希望する生徒の数が多い場合は、評定平均などの出願条件を満たしたうえで、さらに同じ学校の希望者のなかから推薦枠を勝ち取らなければならないのです。
校内選考の基準は高校によって異なり、審査過程や基準は明らかにはされていません。
けれども一般的には最も重要とされるのは評定平均と言われています。
そのうえで、課外活動や部活動、出席日数なども検討の材料になります。
各高校によって校内選考が始まる時期は異なりますが、多くは10月頃までには推薦する生徒を決定しています。
校内選考で推薦枠を獲得した生徒は、次は11月頃に大学の選考を受けます。
学校推薦型選抜は一般選抜よりも早く選考が始まるため、書類の準備や大学での選抜対策なども早くから始める必要があります。
指定校推薦に関わらず、学校推薦型選抜では、大学によっては評定以外の外部テストのスコアを求める場合もあります。
この場合、多くは付け焼き刃では対応できないので、早いうちからの地道な努力が必要となります。
「実用英語技能検定(英検®️)、TOEIC(R) LISTENING AND READING TEST、TOEFL iBT(R)テスト、GTEC、IELTS(アイエルツ)などの外部の語学検定のスコアを出願条件としている大学もありますが、大学によってはこれら資格試験を利用した出願条件は意外とハードルが高い場合が多いので高校1年生の頃から意識しておかなくてはいけません。
出願直前に一気に級やスコアを上げるのは難しいので、基準となる級やスコアを調べておき、早めに準備を始める必要があります。
例を挙げるならば、実用英語技能検定(英検®️)の場合であれば高校2年生の終わりまでに2級はとっておきたいところです。
CBT(オンライン試験)で受験できる検定は結果が出るのが早いので、満足のいくスコアが出るまで何度も受験することをおすすめします。
また、理由のない欠席や遅刻が多い場合も、学校推薦型選抜では不利になります。
高校側からすると、仮に遅刻や欠席の多い不真面目な生徒を推薦してしまえば、将来的に指定校枠の取り消しという可能性にもなりかねないので、そうした生徒は敬遠される可能性が高いといえます。
病気など何らかの事情が説明される場合は考慮されますが、説明できないような理由で欠席や遅刻が多い場合は不利になるといえるでしょう。
このように学校推薦型選抜での大学入試方法を選ぶ場合は、一般選抜とは異なる条件やスケジュールで動くことを早い段階から意識しておくことが重要になります。
指定校推薦で不合格になってしまうこともある?
一般的に、指定校推薦では、高校の推薦枠を獲得することができれば、合格率は非常に高いと言われています。
にもかかわらず不合格になってしまうのは、どのようなケースがあるのでしょうか?
最も心配されるのが、大学名だけで志望校を選んでしまい、そこでどのような勉強がしたいのかという視点に欠けてしまうケースです。
大学を選ぶ時には、本来学びたい内容を先に考え、その内容が学べる学部をさまざまな大学の選択肢の中から選ぶものですが、指定校推薦で大学に入れることを前提で学部や学科を選んでしまうという人がいます。
もちろん、それも結果的には悪くないかもしれませんが、指定校推薦枠のある大学の学部学科が、本当にそれが自分のやりたいことに合致するのかとじっくり考えてみることは必要でしょう。
あまりにも考えが浅い場合には、そうした考えが小論文や志望動機にも現れてしまいます。
学校名だけを見て、その学部や学科に対して理解が不足したままに受験をすると、そこで学問をする資質がないと面接官に判断されて、不合格になってしまうこともあります。
募集学部や学科に対する理解を深め、そこが自分のやりたいこと、学びたいことと合っているかどうかをしっかりと考えて出願校を決めましょう。
そのためにも、1年生のうちからオープンキャンパスに参加するなどして、志望校への理解を深めておくと良いでしょう。
指定校推薦(指定校制)のメリットとデメリット
指定校推薦のメリットは、なんといっても高い確率で合格を手にすることができるということです。
普段からの学校での頑張りが評価対象となる選抜制度なので、評定が高く指定校の推薦枠を獲得できれば、一般選抜よりも早い時期には合否が決まるため、高校生活の最後を落ち着いて過ごせるという点もメリットと言えます。
そのために高校1年生のうちから常に緊張感を保ち続けなければならない点は、一般選抜を考えている人よりも場合によっては大変だと言えるかもしれません。
また指定校推薦だけで受験スケジュールを考えてしまうと、校内選考に通らなかった場合や、万が一大学の選抜で落ちてしまった場合、一般受験へ切り替えることが難しい点がデメリットともいえます。
もしも学校推薦型選抜を考えている人がいたら、この記事を参考に、少しでも早く準備をしておくと良いでしょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。