学校に通う子供たちや、その保護者たちにとって、学校以外で勉強を教えてくれる塾講師と予備校講師と家庭教師は、頼りになる存在のはずです。
しかし塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事の実態は、実はあまり知られていません。
また、どのような人がこれらの仕事に就いているのかも、知っている人は多くないでしょう。
塾講師・予備校講師・家庭教師は「先生」と呼ばれますが、学校の先生とは何が違って、何が同じなのでしょうか。
資格は不要、「教えられるなら」できる
塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事は、アルバイトとして行なう場合と、社会人が本職として行なう場合があります。
アルバイトもお金をもらっている以上「プロ」なのですが、この記事では、本職のことを「プロ」と呼び、アルバイトと区別して解説します。
塾講師・予備校講師・家庭教師の違いや、アルバイトとプロの違いを解説する前に、「すべての塾講師・予備校講師・家庭教師に共通すること」を紹介します。
高学歴は必要
「学校の教師」と「塾講師・予備校講師・家庭教師」の最大の違いは、資格が必要か否か、です。
学校の教師は教員免許を必ず保有していますが、塾講師・予備校講師・家庭教師には必要ありません。
しかも塾講師・予備校講師・家庭教師は「教えることができる」のであれば、誰でもすることができます。
例えば、教室になる場所を借りて、「数学を教えます」というチラシを配布して、受講生を集めて勉強を教えて授業料を徴収すれば、塾講師・予備校講師・家庭教師を名乗ることができます。
ただこれは法律上の話であり、実際の話ではありません。
実際は、塾講師・予備校講師・家庭教師になるには、高学歴が必要です。
例えば、自分が「学校以外で数学を教わりたい中学生」だったとします。
このとき「北大生の塾講師」「道内私大生の塾講師」「高卒の塾講師」の3人がいた場合、誰に教わりたいでしょうか。
もちろん「北大生の塾講師」だと思います。
なぜなら、道内で最も偏差値が高い大学である北大に入学している人なら「頭がよい」と推測できるからです。
誰もが、勉強は、頭がよい人から習いたいと考えます。
塾講師・予備校講師・家庭教師はほとんど大卒、または大学生です。
そしてその多くは高偏差値大学の卒業者か学生です。
塾講師・予備校講師・家庭教師は母体が違うだけ
塾講師・予備校講師・家庭教師の違いは、所属している場所が違うだけです。
塾に所属して勉強を教えていれば塾講師になります。
予備校講師は予備校に所属し、家庭教師は家庭教師会社に所属しているかフリーです。
もちろん、塾、予備校、家庭教師では、教え方や教える形態や受講者数がかなり異なりますが、しかし法律的社会的にはこの3者は等しく「学校以外で有料で勉強を教える人」となります。
年収は数十万円~1,000万円以上
塾講師・予備校講師・家庭教師の年収はまちまちです。
なぜ年収に大きな差が生まれるのかというと、塾講師・予備校講師・家庭教師は原則、「勉強を教えることだけ」しかしないからです。
もちろん、塾生や受講生との触れ合いのなかで、人生観や価値観などを教えることもあるでしょう。
しかし、それらはあくまでサブの仕事です。
子供や保護者は、塾講師・予備校講師・家庭教師に「確実に学力アップできる授業」を期待し、塾講師・予備校講師・家庭教師は子供たちの「学力アップ」に全力を尽くします。
この点は、学校の教師とまったく異なります。
学校の教師も、勉強を教えて子供たちの学力アップを目指しますが、それと同じくらい、子供を立派な大人に成長させることも重要です。
生活指導や進路指導、就職支援、部活動も学校の教師の重要な仕事です。
そのため、「学校の授業は詰まらない」と感じていた子供が、塾講師・予備校講師・家庭教師に教わって勉強の楽しさを知ることがあります。
塾講師・予備校講師・家庭教師は勉強を教えることに特化した職業なので、彼らの授業が楽しくて面白くてわかりやすいのは、ある意味当然のことです。
塾講師・予備校講師・家庭教師の年収の目安は次のとおりです。
- アルバイトの年収:数十万~100万円程度
- プロの年収:数百万~1,000万円以上
塾講師・予備校講師・家庭教師のアルバイトは、他のアルバイトより効率よくお金を得ることができるでしょう。
大学生がアルバイトで年100万円稼ぐことは簡単なことではありませんが、塾講師アルバイトなら不可能ではありません。
ただ、プロの塾講師・予備校講師・家庭教師になると、他の職業に比べて、かなりシビアになります。
それは、プロの塾講師・予備校講師・家庭教師の年収は、100%実力で決まるからです。
社会人で年収数百万円は「少ないほう」といえます。
いわゆる「楽な生活」や「豪華な遊び」はできません。
それでも年収数百万円に甘んじているプロの塾講師・予備校講師・家庭教師は少なくありません。
一方で、人気講師になったり、自分で塾や家庭教師の会社を始めたりすれば、年収1,000万円を超えることは難しくありません。
「子供に教えることが好きだが、安定した生活を送りたい」と考える人は、学校の教師のほうが向いているかもしれません。
アルバイトとしての塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事
それでは、次にアルバイトとしての塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事の特徴をみていきましょう。
ここでは大学生のアルバイトを念頭において解説します。
アルバイト塾講師の仕事
大学生にとって、塾講師は人気のアルバイトです。
それは時給が高い割に、体力的にきつくない仕事だからです。
例えば、居酒屋のアルバイトは勤務中ずっと立ちっぱなしですし、引っ越しのアルバイトは重い荷物を運ばなければなりません。
しかし塾講師は、授業が終われば座って休むことができます。
しかも仕事場は教室なので、清潔であり、クーラーまたは暖房がきいています。
大学生なら、自分の受験勉強の経験を活かすことができます。
もちろん、教えるスキルは身につける必要がありますが、教える内容はすでに学んだものです。
ちなみに、当コラムを掲載している札幌の学習塾【大成会】でも大学生講師を起用していますが、中でも受験対策を得意とする北大医学部生の講師を多数採用しています。
詳しくは大成会の講師一覧 をご覧ください。
その他の仕事内容については、プロ塾講師と同じなので、後段で解説します。
アルバイト予備校講師の仕事
予備校は大学生をアルバイト講師として雇わないでしょう。
ただ予備校講師には、正社員ではない非常勤の人もいます。
非常勤講師は、雇用形態としてはアルバイトとほぼ同じです。
ただ予備校の場合、講師の仕事の内容は非常勤でも常勤でも正社員でも同じなので、仕事の内容については後段の「プロ予備校講師の仕事」のところで解説します。
アルバイト家庭教師の仕事
家庭教師のアルバイトは、塾講師に次いで大学生に人気の仕事です。
一度に十数人を教える塾講師に対し、家庭教師の生徒は1人です。
そのため「お客様」が多い塾講師のほうが時給は高いかもしれません。
しかし、家庭教師の時給も、他のアルバイトと比べると高いほうでしょう。
アルバイト家庭教師はときに、プロ家庭教師より人気がある場合があります。
それは、アルバイト家庭教師の年齢が若いからです。
家庭教師は、子供の家庭に出向き、子供の部屋で教えることになるので、子供自身も保護者も、子供が親近感を抱ける「お兄さん、お姉さん」を求めます。
プロ家庭教師は社会人になって年月が経っているので、どうしても小さな子供にとっては「おじさん、おばさん」になってしまいます。
ただ、仕事としてのアルバイト家庭教師には、大きな欠点があります。
それは、移動時間が必要なことです。
例えば、1日2軒、1軒2時間、計4時間働くことになったとします。
このとき、アルバイト家庭教師は1軒目の家庭から2軒目の家庭に移動しなければなりません。
移動時間には時給が発生しないので、効率よく稼ぐことはできません。
塾であれば、1日4時間教えれば、4時間分の時給を得ることができます。
プロとしての塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事
次に、プロの(本職の)塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事をみていきましょう。
プロ塾講師の仕事
プロの塾講師の使命は、塾生たちの学力を上げることです。
アルバイト塾講師も同じ使命を持っていますが、責任の重さは段違いです。
子供を塾に通わせる保護者は、子供の学力・成績・偏差値が上がるから授業料を支払います。
つまり、子供の学力が上がらなかったら、保護者は塾を変えるでしょう。
それが続いたら、塾に生徒がいなくなり、その塾は倒産してしまいます。
したがってプロの塾講師は、頭がよいだけ、高偏差値大学を卒業しているだけ、上手に教えられるだけでは務まりません。
学校の定期試験や入試で、確実に得点アップできる方法を教えなければなりません。
プロ塾講師は、試験テクニックや入試テクニックを教えることができなければなりません。
プロ塾講師のなかには、「○○中学の△年生の英語の試験の傾向」や「北大合格に最低限必要なこと」といった特異な知識を持っている人が多くいます。
そのようなプロ塾講師は塾生の信頼が厚くなるので人気講師になり、高年収も期待できます。
プロ塾講師に向いている人は、小学~中学ぐらいまで成績が悪かったものの、猛勉強して偏差値を急上昇させて高偏差値大学に入って卒業した人です。
そのような人は、成績が悪い子供の気持ちがわかるからです。
成績が悪い子供がどこにつまずき、どうすれば突破口を見つけられるかを知っているからです。
教科書を1回読んだだけで応用問題まで解いてしまうような、いわゆる天才肌の人はプロ塾講師には向いていないかもしれません。
またプロ塾講師は、アルバイト塾講師のスキルアップをサポートしなければなりません。
塾は、講師たちのチームワークで子供たちの成績を上げるからです。
塾は学校の授業対策と受験勉強対策の両方を行ないます。
その分、塾講師と子供たちとの関係性は濃密になります。
プロ塾講師がアルバイト受講講師をフォローすることで、子供の総合的な学力が上がっていくわけです。
プロ予備校講師の仕事
受講生たちの学力・成績・偏差値を上げる責務の重さは、プロ予備校講師も、プロ塾講師も変わりません。
両者の決定的な違いは、プロ予備校講師が、入試により重きを置いているところです。
また、塾の場合、高校入試も大学入試と同じくらい重視しますが、予備校は大学入試をより重視します。
そのためプロ予備校講師には、大学入試で高得点をあげる学習テクニックを教えるスキルが必要になります。
高偏差値大学は特にそうなのですが、大学入試の問題は、学校で教える内容を著しく超えています。
そのためプロ予備校講師は、入試問題については、入試問題をつくっている大学教授と同レベルの知識を持っていなければなりません。
実際、プロ予備校講師のなかには、大学の入試を作成している人もいるくらいです。
プロ家庭教師の仕事
プロ家庭教師ももちろん、子供の学力・成績・偏差値の向上に責任を持ちますが、プロ塾講師やプロ予備校講師ほどではありません。
それは、プロ家庭教師が教える子供は、かなり勉強ができないことが多いからです。
塾や予備校での集団学習についていくことが難しい子供の保護者が、プロ家庭教師を頼りにします。
プロ家庭教師の使命は、とても低い学力を普通の学力に引き上げることです。
これはとても根気の居る仕事ですが、それだけに、教えた子供が学校の授業についていけるようになったり、学校を無事卒業できたりしたときの喜びはひとしおでしょう。
それほど多くはないのですが、東大や京大などの超難関大学に挑戦する受験生向けのプロ家庭教師もいます。
このタイプのプロ家庭教師は、高い収入が得られる代わりに「ほぼ絶対」、子供を超難関大学に入れなければなりません。
そのプレッシャーは相当なものでしょう。
まとめ~「教えるプロ」以上に「点数を上げるプロ」
塾講師・予備校講師・家庭教師は、勉強を教えるプロであるだけでは足りないでしょう。
テストの点数を上げることを約束できる人でなければなりません。
日本は学歴社会なので、学校の定期試験や高校入試や大学入試で高い点数を取った人のほうが、そうでない人より優遇されます。
そのため保護者は、子供のテストの点数を上げてくれる塾、予備校、家庭教師にお金を支払うのです。
塾講師・予備校講師・家庭教師の仕事を一言でまとめるなら「テストで子供に高得点を取らせること」となります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。