今回は、特に大学在学中に取っておくと、就活や就職後、広くその後の人生において役に立つ資格や検定をみていきます。
本当に有効なものを3つ、厳選して紹介します。
過去にも、北海道の就職に役立つ資格・検定について紹介していますので、こちらも併せてご覧ください。
行政書士資格
大学在学中に取りたい資格№1は、行政書士です。
行政書士とは?
法学部以外の人は、行政書士と聞いてもピンと来ないかもしれません。
行政書士は、法律系三大資格の一つに数えられています。
法律系三大資格とは、冒頭の行政書士の他、司法書士、弁護士があります。
弁護士は知らない人はいないですが、行政書士、司法書士の違いについて、一般の方で詳しい人は少ないです。
法律系三大資格の違い
これらの法律系3資格は、いずれも国家資格です。
管轄が異なり、行政書士は総務省が、司法書士と弁護士は法務省です。
■業務範囲が異なる
・行政書士
業務範囲が異なることが重要です。
行政書士は、主に許認可業務や、法的書類の作成代行を行います。
たとえば、飲食店を始めたいと思ったら、役所から営業許可を取らなければなりません。
それには、達成すべき条件や、揃えなければならない書類が多数あります。
一般の方がこれらの条件を把握したり、必要な書類を全て滞りなく揃えるのは手間と労力がかかります。
さらに不備なく揃えたと思っても、役所がなかなかOKしてくれない、という事態もよくあります。
そこで労力や時間的コストの観点から、行政書士に依頼することになります。
許可以外にも、たとえば離婚の際の慰謝料公正証書の作成であったり、相続の際の遺言書の作成であったりと、行政書士は市民生活に密接に関わる仕事をしています。
そのため、ひと昔前によく言われていた「代書屋」からは一線を画す「町の法律家」として、弁護士よりも気軽に相談できる存在として認知され始めています。
・司法書士
一方で司法書士は、登記業務を担当しています。
登記というのは、法律的に権利を証明するものです。
たとえば、土地を買ったら、土地の登記をします。
その土地が自分のものですよ、と一般に公示する役割を果たします。
住宅ローンを設定した場合には、抵当権というものを家に設定します。
もしローンが払えなくなったら、その家を差し押さえて競売にかけ、債権回収にあてるための権利です。
いわゆる担保権の一種です。
この抵当権を設定する、ようは住宅ローンを組む際にも登記をします。
誰が抵当権者であるかをはっきりさせるためです。
このように、司法書士もまた、市民生活と多くの関わりを持ちます。
ただ、大抵は司法書士と直接やりとりすることはありません。
普通は家を買ったら、当該不動産会社と契約している司法書士が勝手に登記をしてくれますし、抵当権の際も同様です。
自ら司法書士を探してその人に土地や抵当権の登記をしてもらう、という人はあまりいません。
・弁護士
弁護士は、もう言わずもがなです。
多くの人が知っているように、裁判業務を担当したり、交通事故の際の示談交渉に当たったりします。
実は弁護士は、行政書士業務も司法書士業務も行えます。
法律関係の業務について、なんら制限がないのが弁護士の特徴です。
ただし、だからといって行政書士よりも高度な、司法書士よりも質の高い仕事ができるかというと、そうではありません。
やはり許認可はそれを専門にしている行政書士のほうが、登記はそれを生業としている司法書士のほうが、業界に詳しくスムーズに依頼が進むことが多いです。
このように、行政書士・司法書士・弁護士は、それぞれ業務範囲が異なります。
この違いによって名称が異なると考えて間違いありません。
行政書士資格がおすすめな理由
このうち、大学在学中に取るとしたら、行政書士が難易度的に考えて最もおすすめです。
行政書士試験の難易度
行政書士の合格率は10%前後となっています(※)。
特にここ数年は、10%を超えることが多く狙い目です。
行政書士試験は、相対評価ではありません。
※参考:一般財団法人行政書士試験研究センター 最近10年間における行政書士試験結果の推移
試験の6割以上を取れば必ず受かる試験です。
ある程度決まった枠を争わなくて良いので、司法書士試験や弁護士になるための司法試験よりも難易度が低いです。
平成30年度は、50,926人が受けて4,968人が合格しています。
合格率は12.7%です。
こう見ると、かなりの数が落ちているな、と感じるかもしれません。
■実質的な合格率は高い
しかし、行政書士は年齢、属性問わず誰しもが受けられる試験です。
試験料も7,000円と比較的に手ごろです。
そのため、正直言ってたいして勉強していない、受かるはずのない人も大勢受けに来ています。
試験会場に行ってみれば分かります。
行政書士試験は途中退出できるのですが、かなり早い時間に退出する人がいて、明らかに試験を諦めた雰囲気が漂っています。
そういう人もまた多いです。
なので、合格率の低さは気にしなくて良いです。
司法書士試験の難易度
一方で、司法書士試験の合格率をみてみます。
こちらは概ね3%です。
平成30年度は、 14,387人が受けて621人が合格しています(※)。
合格率は3.5%です。
合格者の平均年齢は38歳です。
行政書士試験に比べて格段に難易度が上がっていることが分かります。
弁護士(予備試験・司法試験)の難易度
現在、弁護士になるには2つのルートがあります。
予備試験に合格してから司法試験を受けて合格する、法科大学院を出てから司法試験を受けて合格する、の2つです。
大学生が在学中に果たすとしたら、前者の予備試験に合格してから司法試験に合格する方法です。
予備試験に受かりさえすれば、予備試験合格者の司法試験合格率は81.82%(令和元年度)(※)なので、司法試験にもほぼ受かります。
しかし、予備試験が非常に難しいです。
司法書士試験よりも難しいといえます。
まさに国家資格最難関の受験資格を得るに相応しい難易度です。
平成30年度の場合、13,746人が受けて433人が最終合格を果たしています(※)。
このように、司法書士試験を上回る難易度となっています。
合格者の平均年齢は27歳です。
確かに予備試験は、大学在学中に受かる人もいます。
東京大学法学部では、真に勉強熱心な人は予備試験に受かって司法試験を受けるので、法科大学院のなかでも一番である東京大学法科大学院には進学しません。
特に今は国家公務員総合職(キャリア組)においても、法務区分の採用枠があります(※)。
これは、司法試験合格者を対象としたものです。
つまり、司法試験に受かったら弁護士になるばかりではなく、官僚としてその研鑽を発揮できる道もあります。
以上3資格のなかで、在学中に目指すとしたら行政書士が最も現実的です。
行政書士は合格率の観点から受かりやすいからです。
行政書士試験は試験科目が少ない
行政書士は試験科目も、民法、商法、憲法、行政法、基礎法学、一般知識と少ないです。
予備試験は、民法、民事訴訟法、商法、憲法、行政法、刑法、刑事訴訟法、民事実務、刑事実務、一般知識と勉強しなければなりません。
確かに、就職で最も有利になるのは司法試験合格です。
弁護士になれる人物であれば、大抵の企業は非常に高く評価します。
しかも在学中に予備試験に合格しているのは快挙です。
東大法学部に入るより遥かに難しいといえます。
評価は高いですが、それだけたくさんの時間と根性が必要です。
就職に持ってたら便利だよね、ぐらいの気持ちでは難しいです。
司法書士も同様です。
試験の難易度から、行政書士よりも司法書士のほうが、持っていれば就職に有利になるのは間違いありません。
ただこちらも行政書士の科目に加えて不動産登記法、商業登記法、供託法、司法書士法、民事訴訟法などを学習しなくてはなりません。
こちらも本気で司法書士になりたいという思いがないと難しいです。
行政書士試験の勉強は人生に役立つ
一方で、行政書士試験は法律資格の登竜門と呼ばれています。
行政書士資格を取っておいて、そこから司法書士や予備試験を目指す人も多いです。
行政書士は、企業を相手にすることが多い職業です。
そのため、就活においても大いに役立ちます。
たとえ行政書士試験に受からなくても、行政書士試験のために勉強したことは、その後の生活に役立ちます。
民法や商法、行政法にまつわる問題は身近に溢れているからです。
たとえば、身近な問題は全て契約で成り立っています。
服を買うとき、こちらから買いたいという申込と、店員の承諾によって契約が成立するという仕組みです。
■法的知識が生活に役立つ例
ネガティブなたとえですが、離婚の際には慰謝料を配偶者(結婚相手のこと)と相談します。
相手が浮気をして別れるような場合、裁判例では多くても300万というのが相場です。
しかし、芸能人が浮気をして別れたり、示談金として浮気相手、その家族に払ったりするとき、数千万の大金を払うことがあります。
これは、契約自由の原則という民法の基本から来ています。
ただし、一度契約書を取り交わしても、配偶者がやっぱり払いたくないと争ってきた場合はどうでしょうか。
相手の職業にもよりますが、法律の世界では相場より遥かに高い金額である場合、契約そのものが無効となる可能性が高いです。
これは民法93条ただし書という有名な条文によるものです。
そんな大金払えるわけがないと知っていたでしょう、ということで無効になるわけです。
知っていたかどうかは、客観的に判断されるのが重要です。
これを回避するために、契約をしたら単に契約書にまとめるのではなく、公正証書にする必要があります。
公正証書にしておけば、後から相手が金額を争うことは事実上不可能です。
そしてこの公正証書を作るときに活躍できるのが、他ならぬ行政書士です。
上記のような知識は、行政書士になるのに役立つだけではなく、今後の人生においても有益なものとなりえます。
税理士資格
行政書士と同じ理由から、税理士試験もおすすめです。
有名な公認会計士は、やはり弁護士と同じように、取るには難易度が高いです。
税理士試験は科目合格制
しかし税理士は、大学在学中に充分合格が狙えます。
税理士試験の最も良い点が、科目合格制ということです。
税理士試験は会計や税法に関する計5科目を受ける必要がありますが、一度受かった科目は翌年度に受けなくても良いです。
そのため、1年で1科目、ないし2科目だけ勉強して、翌年度に残りを、という戦略が取れます。
大学4年間で取るということを考えれば、非常に現実的です。
平成30年度の合格率は、20.1%です。
41,242人が受けて、6,634人が合格しています(※)。
科目合格も就活でアピールポイントになる
万が一、5科目全て合格できなくても、それまで合格した科目については履歴書に記載することが可能です。
そうすれば、就職に有利に働きます。
試験勉強の知識が生活に役立つ
特に行政書士と同じように、税理士の知識は市民生活に大きく関わっています。
会社は多くの税金を納めていますから、これに対する知識があるのは一社員としても大きなアドバンテージになります。
たとえば、学生のうちにブログなどで収益を上げていた場合、税金を納めている人はどれくらいいるでしょうか。
バイト先からもらう給与が源泉徴収されていない場合、確定申告している人はどれくらいいるでしょうか。
前者では、年に38万以上の所得があると所得税が発生します。
親の扶養から抜けて住民税も発生します。
後者では年間103万が壁になります。
103万円を超えた場合、確定申告をして所得税を納めなければなりません。
これを怠れば、脱税となってしまいます。
このような知識は、たとえ税理士資格を取れなくても、その後の生活で役に立ちます。
TOEIC
TOEICは良いスコアを持っているに越したことはありません。
今ではどの企業、また公務員でも英語のスキルは求められます。
アジア圏を筆頭に、今後多くの外国人が日本に定住することが予想され、政府はまたそれを目標としています(※)。
※参考:未来投資戦略 2018
それに付随して採用側も英語スキルは非常に重視しますから、最も通用するTOEICスコアを持っていると有利です。
少なくても600点は超えたいです。
一般的には730点以上から明確に有利に働くといわれています。
たとえば長野県の職員採用では、TOEIC600点以上で30点加算、TOEIC730点以上で60点加算と明記されています(※)。
※参考:長野県職員採用試験(大学卒業程度)【2020 年4月採用】試験区分:行政B 受験案内
在学中に取りたい資格についてまとめ
今回は、大学生が在学中に取っておきたい資格として、特に就職で有利に、その後の人生で明確に糧となるものを厳選して3つ紹介しました。
行政書士や税理士は、難易度的に考えて最も努力が報われやすいです。
行政書士は試験科目が法律系資格のなかでは少なく、問われる内容も基本的です。
税理士試験はなんといっても科目合格制なので、一気に5科目勉強しなくて良いのが魅力です。
TOEICはTOEFLなどに比べて受験英語のスキルが通用しやすく、大学受験をした方であれば、充分にハイスコアを取れる検定です。
まずは600点以上を取ることが最低限の目標となります。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。