「お子さんに家庭教師をつける」といざ決めても、その選択は悩ましいもの。
大手の家庭教師や、あまり有名ではない中小の家庭教師、あるいは個人の家庭教師など、その規模は紹介サービスによってまちまちです。
どの紹介サービスを選んで、目的の家庭教師を探せばよいかは難しいところです。
大手と中小、それぞれの家庭教師紹介サービスは料金体系や講師などにどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、大手の家庭教師と中小の家庭教師の違いや、それぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。
大手の家庭教師 vs. 中小の家庭教師、どちらが良い!?
結論からいうと、大手・中小のどちらが好ましいかはご家庭の希望によってケースバイケースといえます。
以下では、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
大手の家庭教師のメリット
登録・在籍している講師の数が多い
大手の家庭教師の条件として挙げられるのは、「登録・在籍している講師の数が多い」ことです。
登録だけしている学生の家庭教師に加え、経験年数の長いベテランやプロフェッショナルの家庭教師も多く抱えているため、確率的には希望条件をたくさん増やしても、マッチする家庭教師がきっと見つかります。
あるいは「こんな家庭教師いるかな?」と心配になるようなマイナーな希望条件の場合でも、ぴったり当てはまる講師が見つかりやすいことでしょう。
また、登録数の多さは同時に質の担保にもなり、選択の幅が増えます。
万一、依頼した家庭教師がお子さんに合わず、仕方なく講師の交代を申し出たいときにも代わりとなる家庭教師が見つかりやすいのは大きなメリットです。
一定の信頼感と安心感がある
「100%信頼できるサービス」はこの世にありませんが、少なくとも信頼度の確率を上げることはできます。
大手だから信頼して良いとは断言できませんが、長く運営されて多くの実績があるサービスであれば、悪質な詐欺や明らかに悪いサービスに引っかかってしまうリスクは低いと考えてよいでしょう。
どんな分野であれ、もっている知識が乏しいと悪いサービスに引っかかるもの。
家庭教師についてあまり知識がない、自信がない、という親御さんもおられるでしょう。
特にそのような親御さんにとっては、「悪いサービスに引っかからない」という消極的理由のうえで、大手の家庭教師を選ぶことが好ましいといえます。
わざわざ調べなくてよい
調べるのが面倒くさい、家庭教師なら別にどこでもよいという親御さんにとって、誰でも名前を知っている大手の家庭教師はとても有難い存在です。
いうなれば、コンビニならセブンイレブン、ハンバーガーならマクドナルドという具合に、名前さえ有名なら特にこだわりがないのは、ある意味シンプルで良い考え方です。
インターネット検索の時代は何でも調べられるという点でメリットも多い一方、調べるのにやたら時間がかかるというデメリットも無視できません。
さんざん時間をかけて調べた結果、悪い先生に巡り合ってしまった場合は、かけた時間が無駄になるというもの。
大手の家庭教師なら、そのような徒労はないでしょう。
中小の家庭教師のメリット
指導が手厚い
大手の家庭教師と比べ、中小の家庭教師は制約が少ないことが特徴のひとつです。
単純に抱えている人数が多いと、トラブルが起きる確率が上がります。
よって大手は経営上の観点から、どうしても制約を多くする必要が生じます。
必ずとは言えませんが、何かとルールが課される大手の家庭教師と違い、中小の家庭教師は比較的自由が認められています。
家庭教師とお子さんとの距離が自然と近くなるため、フレンドリーになり、指導も手厚くなることでしょう。
理念が浸透している
大手は人数が多いぶん、組織の階層も多くなります。
下にいくほどトップの考えは希釈されていくため、理念が希薄で透明なものになりがちです。
一方、母体が小さいぶん、トップの理念や考えを共有しやすいのが中小の家庭教師の長所です。
たとえば「わからないところはトコトン付き合う」という指導理念があった場合、中小の家庭教師はそうした理念を強く共有しているため、親身にお子さんにあたってくれるでしょう。
講師が探しやすい
登録講師数が少ないことは必ずしもデメリットではありません。
意外に見落としがちなのは、「講師が探しやすい」というメリットです。
たくさん講師がいると、探すだけで膨大な時間がかかってしまいます。
より正確にいうと、仮に「良い講師の絶対数」がどこも一定だとすると、「登録講師数が多いほど同じ時間をかけても良い講師にめぐりあう確率が下がる」ことになります。
砂粒の中に埋もれている砂金を見つけるようなものです。
どうしても「良い講師」が必要で、かつ受験対策など時間が限られている場合、このことは大きな問題になります。
講師をうまく探し出すメソッドに自信がなければ、中小の家庭教師のほうがお眼鏡にかなう講師が見つかりやすいかもしれません。
大手の家庭教師のデメリット
料金が高い
大手の家庭教師が大手である所以ですが、いちばんのデメリットは「料金が高い」ことです。
人件費や広告費がかさむため、高額な入会金に加えて単位時間当たりの授業料は高く、教材費などの雑費も多いのが典型的です。
予算に限りがある多くのご家庭にとっては、悩みどころになります。
紹介された講師が本当にお子さんにとって良い講師か、期待している指導は受けられそうか、見合った成果が得られそうか、メリットと天秤にかけて熟考されるとよいでしょう。
探すのに時間がかかる
登録講師数が多いと、お目当ての講師を探すことがシンプルに難しくなります。
いくら時間をかけても、一向に思わしい講師が出てこない…ということになりがちです。
よって、条件検索のしやすいマッチングシステムを備えていることが必須条件になります。
質の低い講師も増える
登録講師数の多さは大手の最大の特徴ですが、そのぶん良くない講師も多くなります。
具体的には、「いちおう登録だけしたものの、指導能力が低く、やる気もない家庭教師」の割合が増えることです。
いくら希望条件をつけても、こうした講師を確実に除外することは難しいものです。
指導実績や経験年数、口コミなどの条件である程度除外することはできますが、必ずしも見合った方に巡り会えるとは限りません。
検索したり実際にマッチングしてみて、時間が無駄になると感じたなら、早めに中小の家庭教師に切り替えるとよいでしょう。
中小の家庭教師のデメリット
各講師に対するサポートがない
中小の家庭教師は、大手の家庭教師では当たり前のチームサポートがなかったり、薄くなります。
家庭教師への指導進捗の手厚いヒアリングやレポートが手薄だと、個々の教師は独力で指導を進めなければなりません。
しぜんと指導の成否は客観性のないまま、家庭教師個人の資質に完全に委ねられることになります。
ある意味、運任せになるともいえますが、「どのような資質を備えた家庭教師を選ぶか」というご家庭の判断軸がとりわけ重要になるでしょう。
指導実績のある講師が少なく、講師の交代が難しい
登録講師数の少なさは、必然的にベテランの講師の少なさにもつながります。
受験指導などの知識があり、経験豊富な講師が必要な場合、なかなか巡り合えないかもしれません。
ただ、地元密着型の中小の家庭教師はベテラン講師も多く在籍している場合もありますので、根気よく探してみるとよいでしょう。
また、指導能力に問題があったり、お子さんとの相性が悪い場合、やむなく家庭教師の交代を検討することになります。
そのようなケースでは、講師数の少ない中小の家庭教師だと選択肢がほぼなく、講師の交代が実質的に難しい場合もあります。
よって、中小の家庭教師では、最初から信頼できる講師を確保することがより重要になるでしょう。
全国対応していない
基本的に全国対応の大手の家庭教師サービスと違い、中小の家庭教師サービスは全国対応していない場合もあります。
都市部でなく、地方に在住の場合、目当ての家庭教師サービスがそもそも存在しないというデメリットがあります。
大手の家庭教師の具体的な活用例
大手の家庭教師の例として、トライと学研があります。
トライと学研いずれもプロコースがあり、経験豊富な講師に教えてもらうことができます。
(以下、料金は平均的な目安です)
家庭教師のトライ
20万人の講師在籍数(全国No.1)の家庭教師派遣サービスです。30年以上の歴史をもち、苦手克服から大学・高校・中学受験の対策まで、あらゆるご家庭の学習ニーズに応えてくれます。訪問型とオンライン型の2つのコースがあり、全学年・全教科に対応しており、教師の交代・追加は無料となっています。
オンライン型の場合、オリジナルの教材を使用しています。パソコン・タブレット・スマートフォンなどのデジタル端末を用いて受講し、授業外の質問対応についてはオンライン上で自宅学習をサポートする「オンライン自習スペース」のサービスもあります。他にも、映像授業・学習コーチング・AIタブレット学習など、さまざまな学習の選択肢が用意されています。
料金 | 授業料(+管理費)2~4万/月、入会金あり |
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学研の家庭教師
約40年の長きにわたる実績のある家庭教師サービスです。生徒ひとりひとりの目的・環境に合わせたコースが多数揃っています。たとえば、「1コマ60分のオンラインと対面120分」を組み合わせるなど、必要に応じて豊富な組み合わせの中からお子さんに合った学習プランを選べます。幼児コース・小学生コース・中学生コース・高校生コースなど通常のコースのほか、受験対策として小学受験、中学受験、高校受験、大学受験の全てに実績のあるプランが用意されています。
他にも、キャリア20~30年以上の経験豊富な講師から授業を受けられる「プロ家庭教師コース」があります。さらに、高卒認定コース・不登校コースなど、高卒認定試験合格や不登校のお子さんをサポートするコースや、兄弟・姉妹を同時に指導するコースなど、多様なニーズにきめ細かく対応しています。
また、教務センターが迅速に細部まで行き届いたフォローを行い、お子さんの目標達成をサポートします。
料金 | 授業料(+会費)1~3万/月、入会金あり |
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中小の家庭教師の具体的な活用例
中小の家庭教師の例としては、以下のような紹介サービスがあります。
家庭教師のノーバス
30年以上の実績をもとに最適な家庭教師・カリキュラムを選定し、また、指導経験や合格実績豊富な家庭教師を積極的に採用しています。徹底した指導研修・指導管理を行い、高い指導力に自信をもっています。小学生コース・中学生コース・高校生コースなど通常のコースのほか、受験対策として中学受験コース、中高一貫校・付属校コースなどがあります。
各コースはさらに細分化され、たとえば、小学生コースには基礎固めコース・苦手科目克服コース・勉強のやり方/習慣づけコース・ジュニア英語コースなどが含まれ、お子さんの目的に合わせた授業を展開します。また、中高一貫校・付属校コースには進級・赤点・定期テスト対策コース、プログレス・トレジャー対策コースといったユニークなコースが用意されています。
料金 | 授業料 2~3万/月、入会金あり |
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家庭教師のあすなろ
「安くて結果が出せる家庭教師」を謳っている実績30年以上の家庭教師サービスです。勉強が苦手、あるいは嫌いな子をターゲットにしており、不登校や発達障害・グレーゾーンなどに対する親身な指導も行っています。対面指導とオンライン指導の両方のスタイルに対応しており、講師の質も高いと評判です。また、料金が低価格に設定されており、追加料金がかからないことも特徴です。
料金 | 授業料 1~2.5万/月、入会金あり |
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家庭教師のデスクスタイル
指導人数4万人以上、20年以上の実績を誇る家庭教師サービスです。主にやる気がない・平均点以下のお子さんの指導を得意としています。成績アップに必要な要素である「正しい学習法」「適切な時間」「適切な勉強量」「勉強の習慣」「やる気」を身につけることができます。お子さんひとりひとりに合わせたコミュニケーションに焦点をおき、勉強に対して意欲的に取り組めるような指導を行っています。
講師の選考にあたっては、相性・性格・情熱・大学・経験の5つを重視しています。また、小中学生で一律の料金設定となっており、兄弟同時指導にも対応しています。
料金 | 授業料 1~3万/月、入会金あり |
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個人の家庭教師について
大手・中小とは別に、「個人の家庭教師」という昔ながらの選択肢もあります。
ここでは、個人の家庭教師のメリット・デメリットについて簡単にご紹介します。
デメリットは言わずもがな、「紹介を受けること時代のハードルがそもそも高い」ことです。
営業や広告のスタイルをもたない個人の家庭教師は、多くの場合、基本的に友人・知人などの伝手からの紹介になります。
主体的に探そうとする場合は、お近くの大学の学生課に尋ねてみるとよいかもしれません。
また、近所の掲示板や貼り紙で周知している場合もあります。
なんとか巡り会うことができれば、個人の家庭教師のメリットは多いです。
仲介業者をはさまないため、入会金などのマージンをとられることなく、料金は交渉次第でリーズナブルです。
教材費や追加料金の心配もなく、お子さんの目標に合わせた指導の希望もきめ細かく伝えることができます。
また、一般の紹介サービスと違ってルールなどは一切ないため、指導時間や指導場所など融通が効く点も大きなメリットです。
逆に、相性が悪いと感じた場合は当然ながら家庭教師の交代はできませんので、その点は前もって受け入れておきましょう。
大手と中小に優劣はない!?
ここまで、大手の家庭教師と中小の家庭教師の比較を行ってきました。
大手と中小のどちらがいいか、という問いへの答えは果たしてあるのでしょうか?
両者にはたしかにさまざまな違いがありますが、在籍する講師に大きな質の違いがあるか、というのは一概にはいえないところです。
学習指導をいざ始めてみて、講師との相性や授業の性質が微妙に合わなかったときに、別の講師やコースを選び直せるなど、たしかに大手のサービスは行き届いている感があります。
ですが、たとえ評判のいい大手であったとしても、現実には住んでいる地域や選択するコース、あるいは年度の当たり外れによって、講師の質はまちまちです。
家庭教師の質はそもそも属人的で、個人差が大きいものです。
入れ替わりや変動も激しいため、必ずしも紹介サービスによってのみ質が変わるわけではありません。
また、大手と中小で創業年数が大きく異なるわけでもありません。
実績年数の長い中小のサービスも多く、歴史や実績という点では大手も中小も似たようなものです。
料金体系も同様で、大手でも中小でもいずれも入会金がかかります。
月額料金は、広告費や人件費などのコストがかかる大手の方が若干高いものの、実はそれほど大きな差があるわけではありません。
むしろ、料金に関して影響を与える要素は「お子さんの学年」「目標とするレベル」「オンラインの有無」などであり、検討に値するのはこちらの方です。
家庭教師をつける目的を熟慮しましょう
大手と中小ではっきりとした違いとして挙げられるのは、指導の総合的な方向性や、それに対応する講師のレパートリーです。
大手の場合、良くも悪くも講師のタイプや質が平均的に揃っていて、幅広いタイプの生徒に応じたいろいろなコースが用意されています。
一方、中小はそれぞれ特色ある指導の方向性を打ち出しています。
全体の講師数は少なくても、「地元の○○中学・高校の受験対策」に確固たる実績や信頼があったり、「やる気のない子」「成績が芳しくない子」に特化するなど、細かなニーズに対応しているところが多いです。
端的に飲食店にたとえると、大手は全国チェーンのレストラン、中小は地元密着型のこだわりのお店といったところでしょうか。
良し悪しではなく、どちらが適しているかはお子さんやご家庭のお好み・目的次第ということです。
したがって、お子さんの目的やニーズに合わせて、大手の家庭教師サービスを選ぶか、中小の家庭教師サービスを選ぶかを決めるとよいでしょう。
まとめ
大手の家庭教師、中小の家庭教師には異なるメリット・デメリットがあり、どちらが好ましいかはお子さんの性格や目標、ご家庭の希望によってケースバイケースといえます。
ざっくりまとめると、どんな家庭教師が良いかについてあまり前提知識がない親御さんには、大手の家庭教師がよりおすすめです。逆にある程度、家庭教師について見当がつき、お子さんにとって良い講師を選ぶ自信がある場合は中小の家庭教師がおすすめです。
より現実的なアドバイスとしては、地元の学校を受験する場合には中小の地元密着型の家庭教師がよく、逆に都心の有名校の受験を目指す場合は大手の家庭教師がよいでしょう。また、違う観点では、お子さんが学習が苦手な場合は中小の家庭教師、お子さんの学習意欲が比較的高い場合は大手の家庭教師という選び方もあります。
以上のように、お子さんの特性を複数の観点から捉えたうえで、大手の家庭教師がいいか、中小の家庭教師がふさわしいかを決断されるとよいでしょう。