家庭教師は読んで字の如く、”家庭”の教師。
「自宅にお呼びして勉強を教えてもらうもの」という固定観念がありますが、なかには「自宅以外で家庭教師の指導を受けたい!」というご要望もあります。
実は必ずしも、自宅で指導を受ける必要はありません。家庭教師の紹介サービスによっては、自宅以外でも受けることが可能です。
この記事では、家庭教師を自宅以外で指導を受けられる場所や、それぞれの場所ごとのメリットなどをご紹介します。
家庭教師の指導を自宅以外で受ける理由は?
そもそも”家庭”教師という呼び名なのに、「自宅以外で指導を受けることは可能なのだろうか?」と疑問をもたれているかもしれません。
たしかに、家庭教師の大きなメリットは「自宅にいながらにして指導を受けられる」ことですが、昔から「自宅では集中できない」「自分の部屋では勉強できない」というお子さんは一定数います。
- まわりの騒音がうるさくて集中できない
- 静かすぎて勉強できない
- ついテレビをみたりゲームで遊んだりしてしまう
- 勉強部屋のはずが散らかっており、おもちゃやゲームで遊ぶための部屋と化している
- 小さいきょうだいがいて勉強に集中できない
- 家が商売をやっている
など、その理由もさまざまです。
せっかく家庭教師が訪ねても、勉強の気分が高まらなければ元も子もありません。
子ども部屋、勉強部屋は学習のための部屋であるはずなのに、どうしてこういう現象が起きるのでしょうか?
人間の脳はまわりの環境に大きく左右されます。
環境が整っていないと、勉強部屋を「リラックスしてくつろぐための場所」と脳が勘違いしてしまいます。
つまり、学校のように「学習するための場所」として認識していないと、頭を切り替えることがとても困難になるのです。
いわば環境が「リラックスするように!」と人間に指令を出しているようなものです。
勉強に取りかかる内発的なモチベーションを高めるには、まず外発的な動機づけが大事ですが、これではいけません。
勉強部屋が勉強部屋として最適化されておらず、言い換えれば、環境づくりが不十分だといえます。
家庭教師の指導を自宅以外で受けることのメリット
とはいうものの、現実には制約があり、致し方ないかもしれません。
自宅以外で指導を受けるとなると、学習塾と同じように、お子さんが直接現地に出向くことになります。
そうした際に好まれる場所は、カフェや図書館のような比較的静かで落ち着けるところです。
よく言われるとおり、完全な静かではなく、比較的静かなのは重要です。
音がないとかえって集中できないのが人の習性で、むしろ音楽を聴きながら作業をすると効率が上がるとさえ言われています。
カフェでは話し声が聞こえ、ほどよくリラクゼーションのための音楽が流れているので集中しやすく、人によっては作業効率が上がるのはたしかです。
まわりに人がいないと、ついリラックスしてしまいがち…というお子さんもいますが、常時他の人がいるため、緊張感も保たれます。
また、自宅外は親御さんがいないというメリットもあります。
中高生くらいになると親の目が気になり、思うように集中できないこともありますが、自宅外であれば、はかどることでしょう。
家庭教師の指導は通常、年間を通して行われます。
となると、体調管理や感染防止の観点から、夏の暑さ・冬の寒さ・乾燥対策などが案外大事です。
自宅の場合、指導を受けられるのはエアコンのある部屋に限られ、条件によっては空気清浄機や加湿器も必要です。
自宅外であればそのような心配もなく、集中した学習にもってこいの環境といえます。
家庭教師の指導を受けられる自宅以外の場所
家庭教師の指導を受けるのに適した場所は、カフェ以外にもさまざまあります。
以下にまとめてご紹介します。
カフェ
地域を問わず、たいていの住宅地近くにある定番のカフェは利用しやすさも抜群です。
昔ながらの喫茶店から、どこにでもある全国チェーン、雑誌で紹介されるようなお洒落なカフェまで、そのスタイルは千差万別です。
いずれにしても、リラックスして落ち着いた気分で学習を進められることは間違いありません。
ただ、注意しなければならないのは、その店が店内での学習指導を黙認しているかどうかです。
カフェのなかには、あくまで食事やコーヒーにこだわり、デスクワークなどの作業を暗に認めないスタンスのお店もあります。
店主や他のお客さんの迷惑になるので、そうした店舗はなるべく避けましょう。
ちなみにスターバックスコーヒーの場合、公式サイトには以下のように記されています。
Q.店内で勉強しても良いですか?
A.店舗によって異なりますので、詳しくは店舗のバリスタ(従業員)にお問い合わせください。
スターバックスコーヒー公式サイト
一方、都市部のメジャーなチェーン店であれば、中高生や大学生、社会人が勉強や仕事などのデスクワーク作業をしていることも多く、心配は比較的少ないでしょう。
ただ、そうはいっても家庭教師の指導となると、黙って勉強や読書をするのと違い、会話もあります。
周りのお客さんに「声がうるさい」と思われないような常識的な気遣いが求められます。
よって、「広々としている」「お客さんが少ない」「無音ではなく音楽がかかっている」環境であることが、指導を受けるのに適したカフェの具体的な条件です。
また、長時間居座るのに問題のない設備(テーブル、イス)かどうかも確認するとよいでしょう。
ファーストフード店
ハンバーガー、ドーナツなどのファーストフード店も利用できます。
地域や店舗の立地、客層にもよりますが、たとえばフードコートに入っているような広々とした店舗であればそれほど騒々しくなく、集中できるでしょう。
中高生や大学生、社会人が宿題やレポート、読書などに勤しんでいれば、周囲に溶け込めるでしょう。
指導前後に小腹が空いたら食事休憩をとりやすいのも利点です。
ただ、基本的には食事を摂るための場所なので、狭い店舗や、他のお客さんで混んでいる時間帯は避けましょう。
ファミレス
カフェやファーストフード店と同様のメリットをもつ、ファミレスも学習指導に向いています。
テーブルが広く、ソファもしっかりしているため、長時間のデスクワークなどの作業に適しています。
食事休憩のメニューも豊富で、ミーティングの用途にもよく用いられます。
難点としては、郊外に多い、店舗数が比較的少ない、食事代が高めであることが挙げられます。
図書館
地方の図書館の場合、閲覧室がとても広々としていて、なおかつ人がほとんどいなければ指導が可能かもしれません。
ですが、都市部の図書館でいつ行ってもひっきりなしに人がおり、それほど広くない場合は難しいかもしれません。
本を静かに読む場所なので、まわりに気を遣いながらヒソヒソ話をしなければならず、満足に指導を受けられないでしょう。
公共施設の休憩スペース
見落としがちですが、図書館などの公共施設の休憩スペースを利用することもできます。
また、学習専用の自習室が設置されている場合もあります。
場所によっては十分な広さがあり、人もさほど多くないでしょう。
飲食店ではないため、食事代がかさまないというメリットがある一方、静かで話しづらい、利用時間帯が限られる、というデメリットがあります。
マンションのラウンジ
マンションによっては、自習や読書に自由に使えるような十分な広さのラウンジ(共用スペース)があります。
自宅ではないものの、自宅から離れておらず、家庭教師に指導してもらう場所としては最適かもしれません。
お子さん本人が近所の知り合いにみられることが嫌でなければ、親御さんとしては逆に知人がみている場所なので安心感もあるでしょう。
ただし、他の住民の方が迷惑に感じる可能性もありますので、家庭教師の利用及び勉強場所として使用して良いか管理会社に確認しましょう。
家庭教師会社や学習塾の自習室
家庭教師会社によっては、自習室を併設している場合があります。
また、一部の家庭教師会社は塾と一体化しているため、塾の自習室が利用できることもあります。
そうした専用の学習スペースは環境が整っているため、指導を受けるのに申し分ありません。
家庭教師の自宅
家庭教師の多くは大学生や大学院生です。
ご家庭で自宅を用意できない場合、最も簡単な手段は家庭教師の自宅で指導を行ってもらうことです。
通いになるため、家庭教師の自宅までそれほど距離が離れていないことが前提になります。
家庭教師が実家住まいであれば気を遣うかもしれませんが、ひとり暮らしであれば問題ないでしょう。
屋外
ご家庭の地域や状況にもよりますが、小学生の理科や社会などは実体験を通して学びを深めるほうが望ましい場合もあります。
体験は記憶に残りやすく、机の上で教科書とにらめっこするより、結果として手っ取り早く知識を習得できるからです。
たとえば自然公園が近い場合、昆虫や動植物の自然観察をするのがおすすめです。
外で遊びたい盛りのお子さんにとっても良い気分転換になります。
家庭教師は本来、自由なスタイルで学びを深める存在でした。
往年の名画『サウンド・オブ・ミュージック』では、一家の家庭教師を務める主人公が市街地や湖などに子どもたちを連れ出す印象的なシーンがあります。
狭苦しい屋内環境にこだわらず、自然・社会・実学と勉学との結びつきをむしろ重視したのです。
”家庭教師=屋内”という先入観にとらわれず、「どうすれば効率よく学べるか?」を考え、最適な場所と方法を選びましょう。
自宅以外で家庭教師を受ける際の注意点
指導が受けられるかどうか確認する
カフェなどのお店で家庭教師を受ける際は、学習に使用してもいい場所であること、また、まわりに人が少ないことを事前にチェックしておきましょう。
曜日や時間帯によっても客層が異なるので、実際に指導を受ける曜日・時間帯でも問題はないか、確認が必要です。
指定場所を家庭教師に伝えて了解をもらう
自宅からほど近く、また家庭教師にとっても無理なく来れる場所を指定しましょう。
分かりづらい場所の場合は地図をつけて詳しい行き方を伝えましょう。
持ち物をチェックする
自宅と違い、授業に使う本やノートなどの勉強用具を持参する必要があります。
教科書・ノート・プリント・問題集・参考書・文房具など必携品を忘れていないか、十分チェックしましょう。
食事代を持参する
カフェ・ファミレス・ファーストフード店など飲食店で指導を受ける場合は、家庭教師の食事代を出す必要があるため、代金の持参を忘れないようにしましょう。
ただし、こちらは家庭教師サービス会社によって異なりますので予め確認しましょう。
自宅以外で「オンライン家庭教師」を受講するには
近年では昔ながらの家庭教師だけでなく、ビデオ会議システムを用いた「オンライン家庭教師」もあります。
場所にこだわる必要がなく、自分の部屋でも地球の裏側でも授業を受けることが可能です。
自宅を整える手間が省け、時間や場所の融通も効き、「非対面・非接触」の時代の要請もあって徐々に人気を集めています。
おすすめのオンライン家庭教師はコチラ!
名門・難関校への高い合格実績を誇る学習塾「大成会」が運営するオンライン家庭教師です。
ただし、「自宅以外でオンライン家庭教師を受ける」となると、話は少し変わってきます。
当然ながら、オンライン家庭教師はその場にいないため、会話というより「お子さんがひとりで延々とパソコンの画面やスマホに向かって質問したり、話しかけたりする」ことになります。
カフェなどで電話をかけたり、ビデオ会議で話したりしている人を見かけますが、それに近いイメージです。
短時間のコミュニケーションと違い、学習指導は通常1時間程度かかるため、そうした行動が黙認されている環境を選ぶ必要があります。
同時に、通信環境の確認も必須です。
電波が十分に入る場所であること、また、パソコンで指導を受ける場合はカフェ・ファミレス・ファーストフード店・図書館などでWi-Fiが使えるかどうかも重要なポイントです。
ストレスのないオンライン指導を受けるには、十分な通信速度のインターネット環境が不可欠です。
最近では、Wi-Fiの設置が都市部ではごく当たり前になりましたが、店舗や地域によってはそうでないところもあります。
また、図書館などの公共施設も所によりけりです。
いずれにしても、自宅外のオンライン家庭教師は、画像や音声の通信が途絶えがちになる環境を避けるようにしましょう。
集中を高めるカフェインは”諸刃の剣”
ところで、カフェといえばコーヒー、すなわち「カフェイン」を思い浮かべることでしょう。
疲労回復や眠気解消に役立つカフェインは、長時間の学習や作業の味方です。
勉強や部活に忙しい高校生のなかには、眠気覚ましにコーヒーや紅茶を飲むお子さんもいることでしょう。
作業の味方であるカフェの効能はそんなところにもあります。
ただ、カフェインは”諸刃の剣”でもあります。
とりすぎると逆に眠れなくなり、睡眠サイクルに異常をきたしかねないからです。
効率良い学習に良質な睡眠は欠かせません。
13 歳以上の青少年については、「1日あたり2.5mg/kg 体重以上のカフェインを摂取しない」という定めもあります。
したがって、食事休憩をとる機会の多いカフェで指導を受ける場合、カフェインの摂り過ぎには十分注意しましょう。
集中力の計測も重要
家庭教師を受ける場所、自学自習をする場所を考えるうえで、どの環境が自分に最も合っているかは人によって違います。
そのことを「なんとなく」ではなく、客観的に計測して「自分に合う環境はどこか」を自覚することが大切です。
集中力はどうやって計測できるのでしょうか?
読書を例にとると、「30分あるいは1時間あたり何ページ読めたか」でおよその集中力を計ることができます。
面白いもので、同じ類の本を読んでも、読んだ場所や時間によって違うものです。
同様に、ドリルや問題集を解いたときに「どれくらい答えが合っていたか」「時間あたり何ページ進んだか」といった指標を計るとよいでしょう。
また、いろんな場所で勉強を行うことは落ち着きや節操がなく、ネガティブに思われるかもしれませんが心配は無用です。
自宅以外のいろんな場所で学習することで、むしろ非日常の環境に慣れる訓練になるからです。
考えてみれば、大事な模擬試験や本番の入学試験は、お子さんがこれまで訪れたことのない初めての場所で行われるのが普通です。
経験したことのない緊張感に襲われた結果、もっている実力を出し切れないお子さんは少なくありません。
であれば、普段から自宅以外の場所に慣れておくことは、大切な試験本番での緊張を和らげる意味でもプラスにはたらくといえるでしょう。
どこで行うか?それが問題
どの場所で指導を受けるかは、お子さんのモチベーションや学習効率に著しくかかわるため、意外に重要なところです。
一般論で語ることが難しく、一概に言えないのは、お子さんの性格や年齢、学年、性別、学ぶ教科などによって最適な条件が大きく変わってくるからです。
- 自宅でのみ集中できる
- 自宅だと集中できない
- どこでも集中できる
の3つのタイプに分けたとき、「自宅だと集中できない」タイプは場所選びがパフォーマンスを左右します。
そのうえで、自宅外でも「1.人がいる場所なら集中できる」「2.人がいない場所なら集中できる」の2つのタイプにわかれます。
さらに、「カフェなどリラックスした場所」「図書館など静かな場所」「屋外など開放的な場所」などの好みが分かれます。
また、物語に没頭したい国語なら図書館、数学の問題は音楽の流れている場所、英語の会話はにぎやかで人がいる場所など、学ぶ教科によっても集中しやすい環境は変わってきます。
環境選びは大切に!
これらを勘案して必ずしも自宅にこだわらず、お子さんの場合はどの場所が最良か考えてみるとよいでしょう。
人は案外「何かにストレスを感じている」のではなく、「まわりの人や場所など”環境そのもの”にストレスを感じている」ものです。
ある意味では植物の栽培に似ているかもしれません。
同じ種類の苗や種を同じ時期に植えても、土・肥料・日照・水・空気・植木鉢・置き場所などさまざまな環境条件の違いに左右されて、生育状況はまるで変わってきます。
これと同じように、大事な問題は学習内容ではなく環境なのです。
たとえ難しい問題を目の前にしても、環境の力さえ整えば「こうすれば解けるかな?」とポジティブな気持ちになって良いアイディアが湧いてくるものです。
勉学にとって環境が非常に大切なことは古代より指摘されています。
中国の思想家・孟子の母が子ども(孟子)の教育に適した環境を選んで三度も引っ越しをしたという「孟母三遷の教え」の有名な故事があります。
「勉強を楽しくリラックスして行える」環境条件さえ見つかれば、その後の学習がスムーズにはかどることは間違いありません。
まとめ
学習の成果がなかなか上がらず、加えて何らかの理由で「自宅では勉強がはかどらない…」というお子さんの場合、学習の進め方に問題がなければ、むしろ環境の方に問題がある可能性があります。騒がしい、たびたび邪魔が入るなど思わしくない環境の場合は、家庭教師だからといって必ずしも家庭内にこだわらず、思い切って自宅外で学習指導を受けることがおすすめです。
リラックスした精神状態は人間の集中力を最大限に高めます。適度に音楽が流れ、他の人がいる環境では適度な緊張感が保たれるため、結果として集中力が上がり、学習に弾みがつくものです。そうした条件を満たすカフェ、ファミレス、ファーストフード店、図書館などに赴くことは面倒くさいようにみえて、それ自体がよい気分転換になります。
そうした場所で家庭教師の指導を受けながら勉強を行えば、気が紛れて相乗効果が生まれることでしょう。自宅近くでめぼしい場所を見つけることができたら、家庭教師の指導をぜひご検討ください。