中学校を卒業して働き始めた人や、高校に入ったものの中退した人は、大学入試を受けることができません。
高校を卒業しないと原則、大学に入ることができないからです。
ただ、文部科学省が実施している高等学校卒業程度認定試験(以下、高卒認定試験)に合格すれば、高校を卒業していなくても大学入試を受けて合格すれば大学に入ることができます。
高卒認定試験がどのような仕組みになっているのかを解説したうえで、受験方法や試験内容、難易度、攻略方法などについて紹介します。
かつての大検が高卒認定試験に変わった
高卒認定試験は、さまざまな理由で高校を卒業できなかった人の学習成果を評価して、高校を卒業した人と同等以上の学力があることを認定するための試験です。
対象となるのは中卒者や高校を中退した人などで、高卒認定試験に合格すると、大学、短大、専門学校の入試を受けることができます。
これは以前は大検(大学入学資格検定)と呼ばれていた制度で、2005年に高卒認定試験に名称が変わりました。
ただ高卒認定試験に合格しても大学入学資格が得られるだけなので、大学の入試に合格しないと大学に入ることはできません。
「高校卒業」とはならない
高卒認定試験に合格しても、学歴が「高校卒業」になるわけではありません。
就職するときに企業などに提出する履歴書の学歴欄には「高等学校卒業程度認定試験 合格」と記載することになります。
しかし高卒認定試験合格の意義は大きく、高卒者と同等の扱いをする企業もあります。
就職を有利にする効果も期待できます。
受験資格、試験科目と試験範囲
高卒認定試験の受験資格などを紹介します。
16歳以上で受験できる
高卒認定試験は、大学入学資格を持っていない人で、年度の終わりに満16歳以上になる人が受験できます。
一度高校を卒業した人は受けることはできません。
そして16歳以上の人は受験できます。
15歳の人は、2019年の高卒認定試験を受けるのであれば、2020年3月31日までに16歳以上になるのであれば受験できます。
14歳以下の人は受験できません。
ただ大学は18歳にならないと受験できないので、高卒認定試験の合格の効力は、満18歳の誕生日の翌日から生まれます。
高校不登校の生徒も受験できる
高校に在籍していても高卒認定試験を受けることができます。
これは不登校の生徒などを想定しているからです。
何らかの事情で高校に行けなくなってしまっても、すぐに中退するのではなく、在籍したまま高卒認定試験に挑戦し、合格したら高校を辞めて大学受験に備えることができます。
6教科8~10科目を受験する
高卒認定試験は、6教科から8~10科目が出題されます。
その内訳は以下のとおりです。
・国語:1科目
・数学:1科目
・英語:1科目
・地理歴史:世界史A、世界史Bのいずれか1科目
・地理歴史:日本史A、日本史B、地理A、地理Bから1科目
★公民:次のイまたはロのいずれかを選択
イ:現代社会1科目
ロ:「倫理」と「政治・経済」の2科目
★理科:次のハまたはニのいずれかを選択
ハ:「科学と人間生活」の1科目と、物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から1科目の計2科目
ニ:物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から3科目
★印について説明を加えます。
公民では現代社会を選択すれば、それ1科目を受ければ済みます。
しかし「倫理」を選択するのであれば「政治・経済」も受けなければなりません。
理科は、「科学と人間生活」を選択すれば、あとは物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から1科目選べば済みます。
しかし「科学と人間生活」を選択しない場合、物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎から3科目選ばなければなりません。
そのため★の選択の仕方で、8科目受ければよい人と、9科目受ける人と、10科目受ける人にわかれます。
単位を取得済みの科目は受験しなくてよい
高校を中退した人で、特定の科目の単位を取得している人は、高卒認定試験のその科目を受ける必要はありません。
その科目は合格しているものとみなされます。
試験範囲は高校の教科書、問題は素直
高卒認定試験の試験範囲は、高校入学者が使っている教科書となります。
したがって高校1年生が持っている教科書から出題されます。
高卒認定試験は「合格させる」試験なので、基準点をクリアした受験生は全員合格します。
定員が決まっていて上位何人しか合格できないとする大学入試とは異なります。
高卒認定試験の問題は、どの教科も素直な内容になっています。
教科書で太字になっている部分から出るイメージです。
受験生の裏をかくような問題はほとんどないので、教科書の内容を押さえておけば十分合格点を取ることができます。
高卒認定試験の攻略法についてはあとで詳しく解説します。
何度でも受験可能、合格した科目は再受験不要
高卒認定試験は毎年2回開催されます。
2019年は8月6、7日と11月9、10日となっています。
8月と10月に、それぞれ2日の日程で実施
例えば8月6、7日の時間割は以下のようになっています。
9:30~10:20:物理基礎
10:50~11:40:現代社会または政治・経済
11:40~12:40:昼休み
12:40~13:30:国語
14:00~14:50:英語
15:20~16:10:数学
16:40~17:30:科学と人間生活
9:30~10:20:倫理
10:50~11:40:日本史A・B、地理A・B
11:40~12:40:昼休み
12:40~13:30:世界史A・B
14:00~14:50:生物基礎
15:20~16:10:地学基礎
16:40~17:30:科学基礎
11月9日は8月6日と同じ時間割で、11月10日は8月7日と同じです。
北海道は札幌市中央区で受ける
47都道府県で受験でき、北海道の受験生は「札幌市中央区北4条西5丁目アスティ45」で受けることになります。
全科目で合格しないと合格できない
高卒認定試験は何回でも受けることができます。
そしてすべての科目で合格点を取らなければなりません。
例えば数学で満点を取っても、国語が不合格であれば、「高卒認定試験合格」とはなりません。
次回以降、不合格になった科目を受けなければなりません。
一度合格した科目は、もう受ける必要がありません。
「合格の権利」は生涯有効です。
1回の試験で3教科ずつ受験する、といった挑戦の仕方も可能です。
受験料は最大8,000円
高卒認定試験の受験料は受ける科目数によって異なります。
- 7科目以上:8,500円
- 4~6科目:6,500円
- 3科目以下:4,500円
尚、日本には就学するための資金を支援する様々な制度があります。
それぞれに「条件」が異なりますので、適合する場合には上手く活用すると良いでしょう。
高卒認定試験をどう攻略するか、勉強法は
高卒認定試験は次の3項目に注意すれば、確実に合格に近付きます。
- 教科書、参考書、問題集の3点セットで学ぶ
- 「広く浅く」を心がける
- 塾のサポートを受ける
どれも重要なので、勉強法と合わせて解説します。
教科書、参考書、問題集の3点セットで学ぶ
高卒認定試験では、教科書に書かれてあることがそのまま出題されることが珍しくありません。
受験勉強は教科書を読み進めることで合格に必要な学力を身につけることはできるでしょう。
高校1年生が購入する教科書を手に入れることから受験勉強はスタートします。
地域の大きな書店に行けば一式そろえることができます。
ただ、教科書を「読み進める」ことは簡単ではありません。
教科書は説明がそれほど充実しているわけではないからです。
教科書は、膨大な学習範囲を一冊に収めなければならず、それには説明文を簡素化しなければなりません。
教科書は、学校の教師が口頭で説明しながら使うようにつくられています。
そのため、初めて学ぶ人が教科書だけで学習するのは難航するはずです。
独学で高卒認定試験に挑戦している人は、参考書と問題集を購入しています。
参考書は、教科書の不足している説明を解説しています。
そして問題集は、学んだことが記憶に定着しているかをチェックするために使います。
教科書と参考書と問題集の「3点セット」で学習していきましょう。
「広く浅く」を心がける
高卒認定試験は少なくても8科目、選択の仕方によっては10科目で合格点を取らなければなりません。
1科目でも合格できないと「高卒認定試験合格」とはなりません。
そのため高卒認定試験では苦手科目をつくるわけにはいきません。
好きな科目に集中することは重要ですが、そのために苦手科目の勉強がおろそかにならないようにしてください。
特に社会(地理歴史、公民)と理科は複数科目を選択しなければならないので、勉強に苦労するでしょう。
そこで高卒認定試験の受験勉強では広く浅くを心がけてください。
1つの教科や科目を掘り下げるのではなく、苦手科目をなくしていく戦略を取っていってください。
塾のサポートを受ける
効率よく学習し、短期間での合格を目指すのであれば、塾の支援を受けたほうがいいでしょう。
苦手科目だけを受講することで、授業料の負担を減らすことができます。
高卒認定試験の過去問は文部科学省のサイトで閲覧することができます。
答えも載っていてURLは以下のとおりです。
※参考:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shiken/1421021.htm
過去問を解いてみて得意科目と苦手科目を確認してください。
6割以上正答できた科目は、得意科目とみなしていいでしょう。
油断することはできませんが「3点セット」で対応できるでしょう。
しかし4~5割は得意科目とはいえませんが、それでも時間をかけて「3点セット」に取り組めば合格点に到達できるかもしれません。
3割以下しか正答できないと、説明文が多い参考書を読んでいても理解できない可能性があります。
その場合、塾で学んだほうがいいでしょう。
まとめ~大学に入れば挽回できる
さまざまな事情で高校に行けなかった方や、高校を中退した方でも、大学進学をあきらめる必要はありません。
高卒認定試験に合格すれば、「高卒」でなくても大学入試にチャレンジできます。
勉強をする意志さえあれば、道は拓けます。
「挽回」は十分可能です。
また、以下の記事では高校を中退した人の大学受験について詳しく解説しています。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。