「総合型選抜」は、大学入試の選抜方法の一つで、以前はAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていました。
2021年度入試から名称が変わり、それと同時に内容も少し変更されました。
その同じ時期に以前の一般入試は一般選抜に、推薦入試は学校推薦型選抜のように大学入試選抜方法の名称が変更されました。
以前のAO入試については一般的に「学力が問われない試験」「推薦入試と同じ入試なのでは?」というイメージがあるかもしれません。
ここでは、総合型選抜はどんな選抜方法で従来のAO入試とはなにが変わったのでしょうか。
また、学校推薦型選抜や一般選抜とはなにが違うのか解説します。
総合型選抜で重視される大学の「アドミッションポリシー」とは?
旧AO入試は、8割に近い私立大学、国立大学でも7割以上で実施されている代表的な入試方法。
総合型選抜に名称が変更された今後もこの傾向は続くと見られています。
文部科学省が発表する「国公私立大学入学者選抜実施状況」では、2020年度に大学に入学した人の中で旧AO入試を利用した人の割合は、全体の10.4%を占めています。
総合型選抜(旧:AO入試)とは、大学や短大、もしくは学部が定めている「求める学生像」に合った人物を採用する方式です。
この「求める学生像」を定めたものを「アドミッションポリシー」といいます。
アドミッションポリシーには、学生に身につけておいてほしい能力などが挙げられおり、その中身には大学の個性が表れているといえます。
例えば、「課題を発見して解決する力」「自律的に行動する力」などの能力について示されていることもあれば、「地元の発展に貢献したい」「グローバル社会で活躍することを目標とする」のように、その人の将来の目標について書かれていることもあり、内容は大学によってさまざまです。
それと関連して、大学・学部の学問分野への興味・関心の高さや、志望分野に関連する特定のスキル・取得資格・語学検定の級やスコアなどを重要視される場合もあります。
総合型選抜(旧:AO入試)受験で大切なことは、志望大学・学部・学科のアドミッションポリシーを読み込み、しっかりと理解することです。
大学のなかには、高校生が読んでも正確な理解が難しい抽象的表現で書かれたアドミッションポリシーもあります。
その場合は、ぜひ大学が開催しているオープンキャンパスに参加するようにしましょう。
オープンキャンパスに参加した時に入試に必要な具体的な能力のことや、実際のレベル感など、わからないと思ったことをオープンキャンパスのスタッフにしっかりと質問して、疑問点をクリアにしておくといいでしょう。
また、手っ取り早く高校の先生に相談してみるのもいいかもしれませんね。
もしも大学入試で総合型選抜に挑戦しようと思ったら、まずはしっかりとアドミッションポリシーの中身を理解することが大切です。
自分が条件を満たしているかどうか、満たすためには実際の受験までに何をすれば良いかを確認しておきましょう。
それが総合型選抜にチャレンジするためのはじめの一歩です。
入学者比率は他の入試方法より低いものの、早いうちに頭に入れておき、ぜひとも押さえておきたい入試方法です。
後から触れますが、選抜方法が多岐にわたるだけでなく選考期間も長いため、もしも総合型選抜での受験を検討する場合は、できるだけ早めに情報収集をすることをおすすめします。
総合型選抜の選考方法は?一般選抜との違いについて
一般選抜では学力試験が中心であるため、大学側が求めている学生像と受験者が合致するかどうかまではわかりませんし、また、学校推薦型選抜はあくまで高校が推薦する学生を受け入れる入試制度です。
総合型選抜と、学校推薦型選抜や一般選抜とでは、入試のねらいや選考のポイントが明確に異なります。
では、総合型選抜の選考方法はどのようなものなのでしょうか。
総合型選抜の出願条件としては、学習成績の状況などの成績基準や、現役・既卒、専願・併願などの制限が定められています。
どの大学でも調査書などを使って書類審査を行いますが、学校推薦型選抜に比べれば、課される評価基準は緩やかな傾向にあります。
大学への入学意欲も大事な選考基準のため、専願受験がほとんどですが、一部の大学では併願や既卒生(浪人生)の出願も認められています。
総合型選抜の選考方法は、志望理由書・調査書といった書類選考と、面接や小論文によって行われるのが基本とされています。
ただし、大学によっては、学力試験が課されたり、面接の時に志望分野に関連する知識を問われることもあります。
場合によっては、各大学でプレゼンテーションやグループディスカッション、セミナー、模擬講義など、バラエティ豊かな選考や課題を独自に組み合わせて実施しています。
旧AO入試と実際は入試内容がそれほど変更されていないという大学もなかにはあるようです。
けれども、文部科学省は、AO入試から総合型選抜へ変更する2020年度から次のことを改善するように各大学に求めています。
・調査書などの出願書類だけでなく、小論文・プレゼンテーション・口頭試問・実技・各教科・科目に係るテスト・資格・検定試験の成績などといった、大学ごとに実施する評価方法などや、大学入学共通テストのうち少なくともいずれか1つの活用を必須とすること。
・志願者本人が記載する資料(例:活動報告書、入学希望理由書、学修計画書等)を積極的に活用すること。
このことからも、何らかのかたちで学力によって志願者の学力を測ることが条件になったということがわかります。
今や「AO入試では学力が問われない」なんてことはなくなったのです。
もしも入試要項に学力試験による選考という記載がなかったとしても、小論文や口頭試問で知識がしっかりと問われるケースは目立ちます。
つまり、形式上の選抜方法は旧AO入試と同じでも、学力が問われないということはありません。
これは総合型選抜になったことによる大きな変化の一つといえます。
また、国立大学の総合型選抜は約7割の大学で実施されています。
成績基準は学校推薦型選抜より緩やかな場合が多いですが、一般選抜受験者と同じように大学入学共通テストを課して基礎学力をはかる大学も多く、一般選抜より多くの対策が必要になります。
また、コンテスト上位入賞者や、特定の資格取得者を条件にしている大学もあり、決して楽な入試制度とはいえません。
このように、「総合型選抜」と一口にいっても、選考方法は大学によって様々で違いがあることに注意しましょう。
総合型選抜に出願条件はある?
学校推薦型選抜な場合は、「全体の評定平均4.0以上」といったように、高校1年から高校3年1学期までの評定平均を出願条件として大学側が指定していることが多いですが、総合型選抜は、あまり厳密に出願条件を定めていないケースが多いようです。
むしろより多くの受験生に門戸を開いている大学が目立つのが特徴です。
とはいえ、大学によっては出願条件に評定平均や、高校での履修科目、語学検定の級・スコアを出願条件として指定していることもあるので、しっかりと出願条件を確認しておく必要があります。
また、総合型選抜でよく目にする「エントリー」という言葉があります。
「出願」との違いについて混同してしまわないようにしっかりと理解しておきましょう。
「エントリー」は、総合型選抜の出願の前段階に行う手続きのことを指します。
大学が指定する手続き「エントリー」を行った受験生に「出願」の資格が与えられます。
「エントリー」の内容は様々で、単にWebなどから登録をする場合もあれば、なかには大学と受験生のミスマッチを防ぐためにオープンキャンパスなどの参加を必須化し、そこでの説明会や講座の参加、面談などを経てエントリーシートの提出を課したりする場合もあります。
ただし、大学によっては「エントリー」と「出願」と同じ意味の場合がありますので、不明な点がある場合は個別に問い合わせましょう。
総合型選抜のスケジュールについて
私立大学の総合型選抜は、学校推薦型選抜よりも出願や選考時期が早い傾向にあります。
総合型選抜の願書受付は9月以降と文部科学省で定められていますが、学校推薦型選抜や一般選抜ほど入試日程が特定の時期に集中していないので、日程は大学によってさまざまです。
大学によっては、9月から年明けの2月ころまで、複数回の入試日程を設けていることもあります。
総合型選抜での受験を考えたときには、まず志望校が求めるアドミッション・ポリシーを確認し、そこの大学で自分の強みが生かせるかを検討することが大切です。
次に気をつけておきたいのが、出願前に「エントリー」が必要な大学が多いこと。
エントリーとは、総合型選抜を受験する手続きのようなもので、出願に先駆け、早ければ6月ころからスタートします。
このころから大学のホームページなどで入試情報が公開され始めます。
選考基準や出願条件が大学や学部によって大きく異なるため、ここはしっかり確認しておきたいところです。
よくあるのが、はじめに志望理由などを記入したエントリーシートを提出し、それに基づいて選考準備が開始されます。
出願前に面談を行ったり、エントリーシート提出とともに課題の提出をしなければならない大学もあります。
このエントリーの時期を含めると、総合型選抜は、学校推薦型選抜や一般選抜と比べて動き出すのが早いのが特徴です。
特にオープンキャンパスへの参加が出願条件となっている大学もあるので、夏休み前には志望校を検討して動き出す必要があります。
各大学ではオープンキャンパスや学校見学会で入試説明会を行っていますので、一度大学を訪れて大学の特徴をつかんでおくのがおすすめです。
オープンキャンパスに参加することで、自分の中で大学に対する志望理由を明確にしておき面接などでうまくアピール出来るようなれば良いですね。
それと同時に、選考方法についても早めの情報収集をするようにしましょう。
小論文や面接だけではないケースもあります。
オープンキャンパスや学校見学などで志望校が課す試験内容を確認し、対策を立てましょう。
さて、総合型選抜で併願ができるのかといえば、学校推薦型選抜などと同じく専願が基本となります。
ですので、仮に総合型選抜で不合格だった場合、一般選抜で再挑戦することができます。
ただし、私立大学の中には条件つきで他の大学との併願を認めているところもありますので募集要項をよく確認しておきましょう。
専願での受験とはいえ、学校推薦型選抜よりも合格率は高くはないので、総合型選抜で惜しくも残念な結果になってしまった場合を見据えて万が一の準備をしておくことも必要です。
一般選抜での再チャレンジをすることもできますが、現実的には、私立大学の総合型選抜志望者は、学力試験対策をしていないことも多いようです。
その場合、不合格となった秋以降から準備を始めても間に合わないケースも出てきます。
その時点で出願が間に合う他大学の総合型選抜を目指すことになり選択肢が狭まってしまいかねません。
そんなことがないよう、総合型選抜が第一志望であっても、一般選抜対策はしておくことは大切です。
一般受験に切り替えられるからだけでなく、そもそも総合型選抜でも学力が問われる傾向が強くなっていることや、入学後に学力不足で授業についていけないといった事態を避ける意味でも、学力の向上は常に意識しておきましょう。
検定合格や資格取得は早めの対策がおすすめ
実用英語技能検定、TOEIC(R)テスト、TOEFL(R)テスト、GTECなどの語学検定をはじめ、その学部や学科での学びに関係する資格や検定を、評価の対象としている大学も増えています。
特に語学検定を評価の対象とする大学は増加しています。
中国語など、英語以外の検定を評価の対象としていることもあります。
その場合は級やスコアがそれほど高くなくても有利に働くこともあるようなので要チェックです。
語学検定などは出願直前の短期間で級・スコアを一気に上げるといった対策をすることが難しいので、高校1、2年生のうちから意識しておかなければなりません。
いずれにしても募集要項を早めに確認しておくようにしましょう。
総合型選抜の注意点
総合型選抜は、一時期は縮小傾向でしたが、近年は徐々に復活しつつあります。
また毎年各大学では入試内容を改訂しています。
廃止、もしくは新設、学校推薦型選抜への移行などといった変更が行われることも多いため、最新情報を常に確認しましょう。
また、選考が長期間にわたるため、総合型選抜受験をする人は万が一不合格だった場合に備えて一般選抜など他の入試の準備もしておきましょう。
念願かなって合格した人たちも、ホッとしている時間はあまりないかもしれません。
なぜなら総合型選抜受験では、12月までに大半の合格者が決定しているので、合格者に入学前教育を実施している大学が多いのです。
内容は様々ですが、例えば、専攻分野の資料が配布され課題を課されたり、課題図書の感想文を提出しなければならないなどといったことが求められることがあります。
総合型選抜はこんな人におすすめ
総合型選抜の選考方法は、書類審査・面接・小論文などがメインで、学校推薦型選抜とよく似ています。
けれども、一般的に学校推薦型選抜は、評定平均で条件があるなど高校時代の実績が重要なのに対し、総合型選抜では、志望分野に関わる学習に対する意欲など、入学後の学びに関連する部分が問われることが多くなっています。
「ここで学びたい!」という強い熱意と大学の理念や教育内容に対する理解度も重視されるので志望校研究をしっかりと行うことが大切です。
総合型選抜受験は次のような人におすすめといえます。
- 大学や学部を志望する強い動機とそこで学ぶ高い意欲がある人
- 大学入学後の具体的な目標やビジョンが既に定まっている人
- 高校時代、何かに打ち込んだ経験がある人
けれども一概にそのような人に総合型選抜入試が向いているかといえばそうでもありません。
大学や学部によって、求めている学生像が違うからです。
総合型選抜では、大学や学部で定めているアドミッション・ポリシーに合っているということをアピールできるかがポイントになっています。
それに自分がふさわしいかどうかを入試要項や募集要項をよく読み検討しましょう。
自分が何の分野を学びたいのか、なぜその大学や学部で学びたいと思ったのか、そのきっかけや、今までに自分が探究してきたこと、その過程で発見した課題、大学でその課題に対してどのように取り組んでいきたいかという「ストーリー」を、自分の言葉で語れるようにしておくことが大切です。
加えて、普段から社会に対して問題意識を持ち、多彩な経験をしておくことも大切になります。
つまり総合型選抜は、明確な学びたいテーマをしっかり持ち、自分なりにじっくり探究を続けてきたという場合におすすめの入試方式なのです。
したがって、しっかりと準備をするためには、高校2年の夏には志望校や学部・学科をある程度決定し、オープンキャンパスなどに参加しておくことが理想です。
そのときに志望大学での学びや、アドミッションポリシーへの理解を深めることができ、なおかつ自分が学びたいテーマについての輪郭が見えてくれば、受験までに探究できる時間は十分にあるでしょう。
ひょっとしたら、探究を深めていくほどに、社会的な課題解決の難しさを実感することがあるかもしれません。
けれども実は、こうなったらあなたの探求は大成功なのです。
なぜなら、こうした難しい課題について解決するための方法を探すために大学へ行き、学ぶのですから。
志望理由書の段階で安易に結論が出せてしまうのは、実はまだまだ探究が浅い証拠ともいえるので、実は危険です。
付け焼き刃でうまく志望理由書を作っても、探究が浅ければ、テクニックだけを磨いたところで、面接や小論文で語る内容そのものが、浅くつまらないものになってしまうからです。
小論文や面接のテクニックを習得するだけなら入試直前でも間に合いますが、本当にその分野に関心を深めていなければ、面接官には見抜かれてしまいます。
短期間で総合型選抜対策をするのは簡単ではないことがわかりますね。
まとめ〜自分がいちばん納得できる入試方法で大学受験に臨もう!
大学によっては、同じ学部でも、学校推薦型選抜(公募制)・総合型選抜どちらも実施しているということがあるかもしれません。
そんな時は、より合格しやすい入試制度を選択した方がもちろん良いでしょう。
それぞれの過去の倍率や出願条件、選考のポイントなどをしっかり比較検討してみましょう。
評定平均の指定があるのかどうか、出願できる条件が何なのかといった細かなことが決められていますので、自分に一番合った方法を見つけるようにしましょう。
例えば、高校の評定に自信があれば学校推薦型選抜、大学から指定された条件に合致していれば総合型選抜という選択ができます。
もちろん単純に倍率だけを比較して決めるのも危険です。
出願条件が厳しいから倍率が低いということもあるからです。
倍率が低いというだけで入試方法や学部学科を選ぶことはやめましょう。
さまざまな条件を総合的に判断し、自分にとって一番良い方法で受験するようにしたいものですね。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。