「うちの子、実は社会科が苦手…」という方はいませんか?
近年は英語教育やプログラミング教育、理数系の教育が流行しており、多くの親御さんや子どもたちが躍起になっています。
ただ、何かに夢中になると、別の何かがおろそかになるもの。
その一方で「社会科」がおざなりになっていませんか?
「社会を学ぶ」だけに、子どもと接点が一番少ない教科が社会科です。
そう捉えると、社会科を好きになってもらうための対処法もみえてきます。
ここでは、自ら学習したくなる社会科の魅力を解説します。
「社会科」を嫌いになる理由
小学校では”好きな科目”がいつも話題になります。
本を読むのが好きな子は「国語」、計算が好きな子は「算数」、生き物が好きな子が「理科」を好きになるのは定番ですね。
「社会科」を好きになる子は相対的に少ないかもしれません。
学習面でも国語や算数が優先されがちで、さらに最近では英語も始まりました。
そのぶん、どうしても後回し気味になってしまうようです。
どうして社会科を嫌いになってしまうのでしょうか?
小学校低学年の頃を思い出してみましょう。
低学年で習うのは、地図記号やお店、警察・消防など身近に役立つものであり、多くのお子さんが生き生きと学習をしていると思います。
「知らないことを知る」のは本質的に楽しいことであるはずです。
学ぶことが嫌いになる理由はどんなところにあるのでしょうか?
理由①覚えることが多い、暗記が苦手
社会科といえば、中学・高校ではいわゆる”暗記科目”の代表です。
難しい単語のオンパレードで、「苦痛」「修行」と感じた方は少なくないのではないでしょうか?
小学校でも学年が上がるにつれ、都道府県や県庁所在地、歴史の出来事など、暗記の色合いが強くなります。
決められた学習内容を消化するために詰め込みになるからです。
また、具体的な言葉がだんだん少なくなり、抽象的な語彙が多くなってきます。
そうなると、歴史・地理・政治・経済のどのジャンルであれ、何だかよくわからない言葉をひたすら覚える時間に感じるものです。
最近では教科書や資料も工夫が凝らされ、カラフルになってはいますが、根本的な部分は変わっていないのです。
理由②時代と乖離している
教科書の内容が時代に合っていないのも問題です。
現代社会、とりわけ都市部の暮らしは「社会科」とかけ離れてきています。
なので、一定数のお子さんにとって授業がつまらないと感じるのも無理はありません。
たとえば、地図記号を覚えても使う機会は少なくなっています。
スマートフォンの地図アプリで済んでしまうからです。
今はデジタル社会でありながら、デジタル教育が始まったのもつい最近のことです。
授業の内容が時代遅れで現実社会とあまり合致していないことは、親御さんだけでなく、お子さんも感づいているわけです。
理由③想像力の低下
加えて、さまざまな要因でお子さんの「社会に触れる経験や機会」が減っていることも大きな理由です。
社会科で習う用語の意味を想像し理解するためには、そうした体験は欠かせないからです。
たとえば、「政治」という抽象概念を考えてみましょう。
意味を理解するにはふだんから新聞やテレビのニュースに触れるだけでなく、親御さんと一緒に投票所に行ったり、子どもたちだけで多数決を採ったり、地域の活動に参加していることなどが前提になります。
可能であれば、自治体の議員や首長に会ったり、国会議事堂を訪れるという体験がベストです。
そうした身体的経験の積み重ねによって、「政治」の概念や必要性を具体的にイメージできるようになります。
ところが、現代の子どもたちは忙しく、つねに時間に追われています。
過熱する受験競争に加え、英語やプログラミングなどやることも増え、塾や習い事も掛け持ちしています。
そうなると、放課後や休日も勉強をするか、スポーツをするか、はたまたスマホやゲームで遊ぶだけになりがちで、広い意味での「社会的経験」が欠落しているのです。
これは由々しき問題ですが、外出制限のあるコロナ禍もさらに拍車をかけました。
こうして社会経験を得る機会が大きく失われていることは、社会科が苦手になる背景にあると思われます。
理由④教え方が楽しくない
日本の学校の授業にエンターテインメントの要素が欠けているのは、昔からの問題です。
社会科のように現実に即した内容を学ぶ教科では、教え方が一辺倒で堅すぎると特に面白くないものです。
だからこそ経験豊富で話術に長けた先生は生徒の注目の的になり、教え方が上手でわかりやすい塾や予備校は人気を集めます。
また、高学年になるとテストの成績で人と比べられる機会も増えます。
勉強の目的が”点取り”のみに向かうと、学びは途端につまらなくなるものです。
これらはひとえに”教える側”の問題ですが、もともと社会科に興味があったお子さんも次第に好奇心が薄れる要因になります。
理由⑤レベルが揃っていない
高学年ともなると、お子さんによって学習到達度や意欲が大きく違ってきます。
にもかかわらず、学校では均一な教育を行うのは問題です。
得意な子にとっては授業の内容が簡単すぎてもっと高度な内容を学びたいと思う一方、苦手な子にとっては授業の内容が難しく、もっと初歩的なところを丁寧に解説して欲しいと思っています。
どちらにとっても不満が残り、モチベーション低下の原因になります。
算数・英語のように習熟度別の授業をすべきですが、社会科の場合、多くはそうなっていないという現状があります。
「社会科」を好き・得意になってもらうには?
社会科が嫌いになってしまう理由はおよそ分かりました。
では、社会科を好き・得意になってもらうにはどうしたらよいでしょうか?
最も効果があると思われるのは「体験の種類と量を増やすこと」です。
机上の勉強を直ちにストップし(もしくは減らし)、外でさまざまな体験をさせましょう。
体験を通じた学びは頭での学びと違い、忘れにくいものです。
各種体験によって楽しみながら暗記を回避し、正しい時代感覚と想像力を養うのが狙いです。
いずれ本や資料を読ませるにしても、生の体験がなければそもそも何の興味も疑問も湧き上がってきません。
勉強は本来「何かを解決する」ためにするものですが、「体験」はその目的を与えます。
「何がどのように」問題になっているか、目的もわからず勉強することほど苦痛なことはありません。
山や海などの自然から、美術や工芸の体験、工場や研究所の見学など、何でも体験させましょう。国内・海外は問いません。
外出が憚られる場合、オンライン体験でも構いません。
身近にできる社会体験
遠出しなくても、身近にできることはたくさんあります。
たとえば、ふだんの買い物はどうでしょうか?
教科書の中には「親子が商店街で買い物をしている」場面がありますが、そうした時間を取っていますか?ネットショッピングで済ませていませんか?
「最適化」「コストパフォーマンス」が合言葉の時代、効率化を追い求めれば自然とそんなライフスタイルになりがちです。
親御さんにとっては手軽で快適ですが、子どもの学びにとってはよくありません。
こと「社会科」ではなおさらです。
そうではなく、スーパーに行って一緒に買い物をし、現金で支払う。
できれば、商店街でお店をまわり、買い物をする。
車に乗らず歩いていけば、道すがら周辺の環境も目に入り、繁盛している店やそうでない店も分かります。
大人からすると面倒なことほど、子どもにとっては生きた学びになります。
また、ご家庭でも体験は可能です。
家事を便利家電ばかりに頼らず、たまには手を動かしてみます。
不便さをあえて経験することは過去の暮らしを知り、時代が進んで便利になったことに気づくきっかけを与えます。
そうした実体験が社会科を学ぶ出発点になるのです。
体験は一石三鳥!?
さまざまな体験を積むことは、他の教科の学習にも良い影響をもたらします。
技術と社会は密接に結びついているため、たとえば3Dプリンタやロケットの仕組みを体験することは、そのまま理科や算数の学びにもつながります。
むしろ、世の中の体験や現象を無理やり縦割りにしたものが「教科」であり、本来は一体のものなのです。
では、社会科に興味をもつようになる「体験」を以下に列挙します。
社会科見学
社会科の花形といえば、どこの学校でも行われる社会科見学です。
お店や工場、役所や水処理場など、町のさまざまな場所を訪れて社会の仕組みを学ぶ大切な授業ですが、コロナ禍で中止・規模縮小された学校も多いようです。
可能な限り、ご家庭で社会科見学の代わりになるような地域のスポットへ連れて行ってあげましょう。
家族旅行に行く
旅行で観光地を周遊することも大事な学びになります。
風光明媚な景色や地方の祭りや行事に親しみながら、各都道府県の特産品や伝統文化などの特色を知ることができます。
ボランティア活動、政治活動
地域のゴミ清掃活動などへの参加は社会貢献の意義を知る良い体験です。
また、健全な政治活動に参加すると、国や地域社会への理解が深まるでしょう。
フリーマーケットへの参加
子どもたちだけで行うフリーマーケットの催しに自分で企画したお店を出店すると、商売のイロハを学ぶことができます。
職業体験
エンターテイメント性のある職業体験施設を訪れることもおすすめです。
様々な職業体験を通して、社会の仕組みを楽しみながら学べます。
メディアを利用する
良質な各種メディアの利用も社会科の学びに有効です。
広い意味での「体験」であり、興味の取っかかりになります。
小学生向けの新聞を読む
”新聞離れ”が叫ばれて久しいですが、子どもにとって「新聞を読む」ことは新鮮なものです。
字が大きく、フリガナがある小学生向けの新聞は第一歩にうってつけです。
国内外の最新情勢など大人顔負けの知識を身につけられることでしょう。
新聞や動画を作る
「読む」ことと同じくらい大事なのは「作る」ことです。
新聞づくりには取材・トピックの選定・文章の執筆・レイアウトなど、さまざまな知識や技術が求められます。
イチから自分で作り上げることで、制作側の視点を培うことができます。
ニュース動画の制作も良いでしょう。
家庭や学校、クラブ、地域、さらに国内や海外まで気になる旬のニュースを取り上げてみましょう。
世界に対する観察眼を養い、溢れる情報を峻別する良い経験になります。
小説・マンガに親しむ
小説やマンガも社会科に興味を湧かせるものとして侮れません。
司馬遼太郎や吉川英治の歴史小説や、出版各社が発行する歴史マンガのシリーズはロングセラーになっています。
通史を扱うものだけでなく、『あさきゆめみし』『日出処の天子』『三国志』『蒼天航路』など有名な作品も数多いです。
ゲームに親しむ
場合によっては、実体験以上にリアルな体験をできるのがゲームです。
その高い学習効果から、最近では「ゲーミフィケーション」という用語まであります。
双六のような「ボードゲーム」と「コンピュータゲーム」の2種類がありますが、いずれも自分が実際にその世界のプレイヤーとなることで実用的な知識が身がつき、理解を深めることに繋がります。
シミュレーションゲームと呼ばれるとおり、体験によって当事者の気持ちが分かるようになるのが利点です。
社会科と親和性が高い例では、『桃太郎電鉄』が日本全国の名所や文化を覚えられる地理のゲームとして有名です。
他にも街づくりや戦国武将もの、法律や不動産などさまざまな分野のゲームがあります。
ただ、視力や睡眠への影響など副作用もあるので、時間を決めるなどの注意が必要になるでしょう。
動画を観る
視覚的に分かりやすい動画は、社会科の知識をコンパクトに得る手助けになります。
①歴史もののドラマや映画
歴史は本当にあった人間ドラマです。
年号や出来事を単に暗記するのではなく、歴史的人物の身になって「どうしてこの政策を行ったのか」など、関連人物の動機を考えることが大事です。
裏付けや理由がわかると因果関係が頭に入り、忘れにくくなります。
その点、歴史ドラマや歴史映画は取っかかりに最適で、お気に入りの俳優やタレントの出演も視聴のきっかけになります。
NHKの大河ドラマは1年間同じ物語を扱うので当たり外れはありますが、社会科の授業より事細かに詳細を学べます。
当時の時代背景がどのようなものだったか、登場人物がどんな気持ちだったか、史実の舞台裏を知ればその時代が身近に感じられ、歴史の学習が一気に面白くなることでしょう。
②海外のニュース番組
テレビのニュース番組は一定の学びにはなりますが、国内で良質なものは限られます。
特にコロナ禍や昨今のウクライナ情勢など、海外の重要なトピックの動向を知りたい場合、情報の質・量ともに乏しいものです。
海外のニュース番組はジャーナリズムのレベルが一様に高く、情報やトピックも偏りなくバラエティに富んでいます。
客観的な視点に基づいた本来の報道に触れることができるでしょう。
③TED
高学年のお子さんであれば、現代の社会問題が広く扱われ、10分程度の短いプレゼンテーション動画「TED」を観るのもおすすめです。
もともとは英語ですが、日本語で聞くことができます。
スライドがあるので理解しやすく、さまざまなトピックのエッセンスを効率よく学べます。
押さえておきたい近年のトピック
他には、近年世界的に話題のトピックを押さえておくことも重要です。
SDGs
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。
2015年の国連サミットで採択され、環境・貧困・格差・男女平等など17の世界的目標が含まれています。
環境問題
SDGsのうち、特に世間の関心が高いのは環境・エネルギー問題です。
温室効果ガス排出による地球温暖化を受け、2050年のカーボンニュートラルへの動きが加速しています。
化石燃料反対の立場から、ヨットで移動するスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんの国連スピーチも話題になりました。
エネルギー革命やプラスチック問題、EV(電気自動車)シフトなどが主要なテーマになっています。
これらのトピックについては、地域清掃・ディスカッション・オンライン授業など、さまざまなイベントや活動が行われているので、機会があれば積極的に参加しましょう。
社会科を好きになるためのおすすめ本
社会科に登場する用語は、得てしてお子さんには難しいものです。
理科や算数は「理系科目」であり、土台になるのは計算力や数学的思考力ですが、社会科はれっきとした「文系科目」であり、その土台は国語力です。
といっても、国語の教科書の音読をしたり、ドリルの問題を解いたり、やみくもに辞書をひいたり…ということが重要なのではありません。
肝心なのは、大枠をつかむための読解力と幅広い語彙の習得です。
この意味では「読書好きになること」、とりわけ「良書に触れること」は社会科が得意になる近道となります。
最初のうちは有名な本でなくても構いませんが、特に高学年になるほど「名作」と呼ばれる本を読んでいることが大事になってきます。
どうして良質な読書体験が関係あるのでしょうか?
社会を構成しているのは、結局ひとりひとりの人間です。
人間に対する洞察を深めれば深めるほど、社会の成り立ちや動きもみえてきます。
古今東西の優れた小説や本は人間や人間社会に対する洞察が深く、見通しが良いのです。
以下におすすめ本を何点かご紹介しましょう。
『君たちはどう生きるか』吉野源三郎
戦時中の日本に生きる主人公の少年が自分らしく生きることの大切さを学ぶストーリーになっています。
『ガリバー旅行記』ジョナサン・スウィフト
優れたファンタジー作品は現実をモデルに作られています。
ある種、”偽物”の国家や社会と比べることで、現実の社会がどのようなポリシーや制度で形作られているかがみえてきます。
『モモ』ミヒャエル・エンデ
「時間」をテーマに描かれたファンタジー小説です。
あくせくした現代人の生き方や資本主義社会の在り方に疑問を投げかけています。
こうした本を題材に、夏休みなどに読書感想文を書いてみるのはおすすめです。
社会科の理解において不可欠な多面的な視点を養えることでしょう。
まとめ
「社会科」の比重が相対的に下がっている時代。
実体験の少ない今どきのお子さんにとって、社会科に興味をもってもらうためには親御さんによる能動的な働きかけが必要です。
どのような方法であれ、ポイントは「実社会との接点を増やす」ことです。
観光地や施設に出かけるだけでなく、地域のボランティア活動に参加したり、普段の生活スタイルを改善したり、身近に出来ることもたくさんあります。
最近ではオンラインイベントなどもあるので、あらゆるメディアを活用して体験をさせましょう。
また、良質なフィクション体験も実社会への理解を深めます。
お子さんの興味は千差万別なので、面倒を厭わず、思い立ったら色々とやってみましょう。
社会科の力をつけることは時間的・空間的な視野を広げ、複合的な考え方を養います。
「どういう経緯で、どうしてその学習をしなければならないのか」という本質的な思考を身につけることは、ひいては他の科目にもプラスに作用し、総合的な学力を高めることに繋がります。
社会科に対する苦手意識を克服し、大幅な実力アップを図りましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。