お子さんが長年通い続けた幼稚園・保育園や小学校を無事卒園・卒業すると、感慨深いものがあります。
感傷に浸っているのも束の間、小学校・中学校の入学前は親御さんもワクワクする気持ちが尽きないと同時に、一抹の不安もあるかと思います。
そんな不安を解消すべく、小学校・中学校の「入学前」に準備しておきたい物や心構え、習慣について解説します。
「入学」は親も本人も一大イベント
幼稚園や保育園を卒園するとピカピカの小学校1年生。
ウキウキ気分の本人をよそに、親御さんは「もう1年生か~」と期待と不安が大きくなる頃です。
また、中学校入学となると心身ともに大きくなり、小学校とは別世界という気分が高まります。
学校が遠方の場合は自転車通学や電車通学も始まり、親元を離れる第一歩となります。
心配の種が増える一方、当の本人も入学の日が近づくにつれ、不安な気持ちが高まってくるのではないでしょうか。
そんな節目のタイミングこそ、万全の準備をしておくと心強いものです。
必要な物や心構えなど準備をしっかりしたうえで入学式を迎えられれば、幸先の良いスタートを切り、6年間あるいは3年間をバッチリ過ごせることでしょう。
小学校入学前は「物品」、中学校入学前は「学習習慣」にそれぞれ重点をおきつつ、以下に解説します。
<小学校「入学前」>
準備しておきたい物品
【必須なもの】
ランドセル
日本の小学生の必須アイテム・ランドセルは、未だに多くの小学校で使われています。
ひと昔まえは黒と赤の2色が定番でしたが、最近では水色やピンクなど多色化し、廉価なものから高級志向まで多様なラインアップがあります。
こだわりのものにする場合、前年の秋頃から予約受付を開始するため、早めに検討する必要があります。
価格は公立の場合、20,000円~50,000円が目安です。
ランドセルカバー
防水仕様のランドセルカバーは、梅雨など雨が多い時期の対策になります。
学校指定でなくとも、通学時間の長いお子さんなど、必要と思われる場合は検討しておきましょう。
学習机
小学1年生にとって大きな買い物といえば、やはり学習机を置いて他にありません。
(最近では「リビング学習派」も多く、ご家庭の教育方針・間取り・兄弟構成によっては必須ではありませんが、重要性は高いため【必須なもの】としています)
小学校6年間どころか、多くの場合は中学校・高校を含めた12年間、さらにご家庭によっては一生ものの机として使う場合もあります。
シンプルなものから高級品までさまざまな種類があり、昔ながらの和風木目や北欧風など、デザインの選択肢も幅広いです。
今後長く使用する場合、高級品でも決して無駄な出費にならないといえます。
ECショップでも購入できる現在ですが、できるだけ家具店舗を訪れ、気に入った机を選ぶことをお勧めします。
色・形・デザインのみならず、部屋の雰囲気に合うかどうか、実際の使用感やサイズ、お子さんの反応などを確認すればミスマッチを防げます。
学習机に限りませんが、良質なものや本人が気に入ったものだと愛着が高まるものです。
愛用して学習時間が長くなれば成績も向上し、好循環につながるでしょう。
価格は20,000円~70,000円程度です。
デスクライト
学習机に付属していない場合、快適な学習や読書を助ける適切な照明は必須です。
照明がないと、視力低下や姿勢悪化につながりかねません。
最近は省電力のLEDが主流ですが、蛍光灯も根強い人気があります。
手提げ
持参物を入れるために補助的に必要です。
雨具
地域によって、傘や折り畳み傘、雨合羽など適切なものを用意しましょう。
置き傘も必要です。
校帽
交通安全のため、多くの小学校では着用が定められています。
筆箱
ひと昔まえは機能的な筆箱や缶ペンなど、クラスメートと比べあって楽しむアイテムのひとつだったかもしれません。
今や時代が変わり、「児童同士でなるべく差をつけない」方針のもと、統一基準が定められている学校もあるようです。
キャラクター用品が禁じられている場合もあり、シンプルで使いやすいデザインのものを用意するのが無難でしょう。
筆記用具
鉛筆、消しゴム、赤鉛筆は今でも定番です。
低学年ではHBやBより、2B~4Bなどの濃い鉛筆が推奨される場合もあります。
「ちょっと多いかな…」と思っても、あっという間に消耗するため、大量に購入しておきましょう。
ノート
筆記用具と同じく、あっという間になくなるのがノートです。
縦書きや横書き、方眼など、教科に合った種類のものを購入しましょう。
余っても計算用紙などに使えるため、多めに買っておいても大丈夫です。
定規
学校指定の場合もあります。
何かと使うため、簡単なものを用意しておくとよいでしょう。
上履き、靴
それぞれ学校指定の場合があります。
靴は新品を用意しておくと、気分新たに登校できるでしょう。
印鑑
何かと必要になるため、簡易用の印鑑があると便利です。
サニタリーグッズ
ハンカチ、ティッシュ、ティッシュホルダー、マスクなどの準備が必要です。
【あると便利なもの】
水筒
昨今のコロナ禍によって蛇口の使用が控えられている場合には必要です。
軽く、保温性の高いものを用意しましょう。
デスクマット
学習机の表面を傷つけたくない方は保護のために必要です。
無地透明のものから、知育、図鑑、宇宙、キャラクターなど、いろいろなデザインがあります。
本人にとって、机に向かうのが楽しくなるようなものを与えてあげましょう。
ランドセルラック
ランドセルを置ける台であれば何でも構いませんが、あると毎日の準備がスムーズになります。
引き出しや本棚が付属するものが多いです。
ランチョンマット
学校によっては必要になるかもしれません。
ラベルライター
多くの学校では紛失防止のため、各自の持ち物全てに氏名の記入が要求されます。
物品数やお子さんの人数が多い場合、この作業は意外に手間がかかります。
手書きでなく、印刷シールを貼り付けて済ませたいときにはラベルライター(いわゆるテプラ)があると便利です。
タブレット端末
デジタル化教育によって小学校でもプログラミングが必修になったため、タブレット端末を1年生から使用する場合があります。
少なくとも「教育的でないゲーム」よりは良く、知育アプリやタイピングに親しませたい場合や、親御さんが忙しい場合などには便利です。
時間やルールを決めたうえで、使用させましょう。
【費用の目安】
以上、諸々で50,000円~150,000円程度が公立の入学費用と見込まれます。
尚、私立の場合は公立の1.5倍くらいが目安になります。
心構え
入学前のイメージとして、「小学校は毎日皆と遊べる幼稚園や保育園とは違うところ」と漠然とした不安を抱いているお子さんも少なくないでしょう。
学校は何より、楽しく毎日通ってもらうことが大事です。
親御さんご自身の無意識の感情に左右されやすいものですが、「勉強しなきゃいけないところ」と最初からネガティブな先入観で捉えさせないようにしましょう。
「知らなかったことが学べる楽しいところ」「たくさん友だちができるところ」とポジティブに意識づけることが大切です。
身につけておきたい習慣
小学校の最大の目標は、基本的な生活習慣や礼儀を身につけることです。
早寝早起き、良質な睡眠、偏食のない食事、お手伝い、忘れ物をしない…
どれも当たり前のことですが、就学前の幼児にはまだまだ身についていないものです。
そのうえで挨拶、返事、話を聞く…など、礼儀やマナーがひととおり身についていればベターです。
入学前にこれらを底上げするだけでも、かなりの労力を伴うでしょう。
また、小学校では「長時間机に座る」という経験したことのない試練が待っています。
悲鳴をあげないためには日頃から姿勢を良くする習慣が重要です。
座る姿勢が正しければ体に無理な負荷がかからず、長時間注意して話を聞けるようになるでしょう。
学習面では、ひらがな・カタカナ、10までの数字に触れて親しんでおくと、小学校の授業にスムーズに入れます。
余裕があれば、簡単な漢字やアルファベットも知っておくとよいでしょう。
ただし、「読み」のみで構いません。
子どもの手指は案外不器用なので、入学前にこれらの字がうまく書けなくてもそれほど気にすることはありません。
書道文化からも分かるように日本の小学校は「筆記」にかなり力を入れているため、心配しなくても1年後には見違えるほど上達していることでしょう。
<中学校「入学前」>
準備しておきたい物品
制服・体操服一式(夏用・冬用)
制服は学校指定がほとんどですが、自分の好きな制服を着ていく学校もあります。
お子さんと一緒に試着・採寸に行きましょう。
価格の相場は30,000円~100,000円程度です。
通学バッグ
ランドセルに慣れていたため、見落としがちなのがバッグです。
部活が始まると必要な物も増えるため、学校指定がない場合にもしっかりしたバッグを選びましょう。
上履き、体育館シューズ、靴
それぞれ学校で指定される場合があります。
自転車、ヘルメット、自転車カバー
自転車通学の場合は必要になります。
定期、定期入れ
電車通学の場合は必要になります。
【費用の目安】
逐一世話を焼く必要のある小学生と比べると、親が付き添いで準備する品数は少なくなりますが、費用は意外とかかることに注意しましょう。
公立で50,000円~150,000円程度(私立は約1.5倍)と見込まれます。
心構え
小学6年生にもなると色々なことが分かってくるため、お子さんも漠然とした中学校のイメージをもっています。
「小学校より勉強がきつくなる」ことをかなりハッキリ理解していることでしょう。
決して間違いではありませんが、理解が少しズレているのもこの年頃の特徴です。
学習面では「覚えることが単に多くなるところ」ではなく、「覚えた知識がつながって実際に役立つ知識に変わっていくところ」と諭してあげることが大切です。
生活面の心構えとしては、「小学校よりも人とのつながりが増えて楽しいところ」「興味や関心が広がるところ」「部活や校外体験など、今まで出来なかった経験ができるところ」などと捉えさせましょう。
また、遠方通学などの場合、交通ルールや不審者への対応、災害時の対処など、安全確保の手段も伝えておきましょう。
身につけておきたい習慣
基本的な生活習慣をより高いレベルで身につけることが大事です。
中学校では多くの生徒が勉強と部活のタイトな両立を求められ、通学時間も長くなるなど、要求レベルが一気に上がります。
生活習慣がしっかり身についていないと、すぐに集中力や体力がもたなくなります。
学習面では、小学校高学年くらいから徐々に自宅学習の習慣をつけましょう。
なかには、”学年+1時間”を意識し、中学1年生で「1日2時間」を目標とする学校もあります。
個人差・学校差はありますが、中学校の宿題の難易度と量にショックを受けないためには、1日15~30分でも机に向かう習慣が免疫になるでしょう。
中学校に入ると学習内容が本格化し、量も大幅に増加することはご存知の通りです。
質と量の大きな変化のために、小学校卒業までは順調にみえても、授業についていけなくなるお子さんがみられ始めるのもこの時期です。
時代を経てその傾向は変わらないどころか、学習内容の高度化に伴い、事態はさらに深刻化しています。
余裕がある場合は中学校の予習でもよいですが、まずは小学校の復習が先決です。
中学校の学習内容はいずれの教科も基本的には小学校の学習内容の上乗せなので、入学前には”土台固め”が大切になるからです。
なかでも、ポイントとなる算数・英語について解説します。
算数の復習は「割り算」がポイント
昔も今もネックとなる「算数」。
算数→数学と呼び名も変わるように、まるで別物になります。
カギとなるのは四則演算のなかでも「割り算」です。
掛け算までは順調に進んでも、つまづく要素が多い割り算で理解がストップしてしまうお子さんは後を絶ちません。
余りのある割り算、筆算、分数、小数、分数・小数の四則演算、割合、比率、パーセント。
どれも割り算の関連項目ですが、考え方がそれぞれ異なるため、具体例を思いつきにくい子どもにとっては試練になります。
「割り算」に対する概ねの理解度を計るには、「濃度」や「速度」の文章題がもってこいです。
文の読み取り、掛け算・割り算、単位の変換など、小学校算数の総合的な力が試されます。
中学校で難易度が上がる前にぜひチェックしておきたいところです。
算数の定着のコツは、やはり実体験のなかで具体的にイメージするのが一番です。
「濃度」であれば、料理のお手伝いがてら、食塩水や砂糖水を一緒に作ってみるとよいでしょう。
「速度」であれば、電車やドライブでお出かけの際に到着時間を一緒に予測するとよいでしょう。
また、方程式に入る前に「文字と式」も確認しておきましょう。
激変した英語のカリキュラム
算数以上に親御さんから悲痛の叫びが聞こえるのが「英語」です。
英語は中学生から始まるのが通例でしたが、小学5年生に前倒しになり、2020年度の教育改革で小学3年生から、簡単な会話の授業は小学1年生からになりました。
また、2020年度までは小学校でbe動詞や一般動詞など、文章構造を理解するための英文法を教わらなかったため、中学英語とのギャップに苦しむ子が急増したのです。
実質的な壁は中学校卒業までに覚えるべき”語彙数”です。
語学は単語の意味がわからないと、話になりません。
1980-2000年代は「900-1000語」、2010年代は「1200語」だった語彙数は、2020年代に一気に「1600-1800語」 に増えました。
小学校卒業時の「600-700語」を合わせるとなんと「2200-2500語」になります。
語彙数は昔の高校生なみに…
これは30年前の約2.5倍の水準で、英語学習を始めたばかりの生徒にとって相当高いハードルです。
1980-2000年代の高校生が「2300-2900語」だったため、当時の高校生並みのレベルにあたり、英検3級以上に相当します(小学校は英検4級に相当)。
社会が変わったからと言って、日本人が急に進化するわけでもないため、先生や生徒が苦労する姿が目に浮かびます。
現場を顧みない英語のハイレベル化といえますが、もちろん英語教育の高水準化それ自体は悪いことではありません。
高いハードルを乗り越えた先には相応の実力が伴い、国際社会に通用する真の英語力を養う第一歩になります。
進学のうえでも英語が得意になれば、新しい学習指導要領に基づいた大学入学共通テストで重視される「リスニング」にも対応でき、民間試験も活用できるため選択肢が広がることでしょう。
いずれにしても、中学校では従来よりはるかに高い英語力の習熟が求められるため、多くの生徒が内容を十分に咀嚼できないような速いペースでカリキュラムが進みます。
結果として、「できる子」と入学後まもなくつまづいた「できない子」の二極化が進んでいるのが現状です。
<小・中学校共通>学習の要となる辞書・辞典
このように、ご家庭でも英語学習を補う必要性が高まっているため、つまずかないためには入学前の復習・予習が肝心です。
英語対策に限りませんが、小学校・中学校を問わず、入学時に買っておくと重宝するのは「辞書・辞典」です。
ひと昔まえは、英語辞書を買い与えるタイミングは中学校入学時が多数派でした。
また、小学校入学時に国語辞典や漢和辞典も買い与えるのも教育熱心なご家庭に限られていました。
英語教育が大幅に前倒しされた今では辞書の重要性は増し、親御さんが何かと忙しいこともあって、お子さんの自発的な学びの助けにもなります。
こうした時代の変化に伴い、今や辞書・辞典の選択肢はよりどりみどりです。
堅苦しいデザインや細かい文字の羅列、というかつての印象は消え、キャラクターものやカラフルで親しみやすいデザインの辞書が主流となっています。
電子辞書の活用がオススメ
また、なんといっても画期的な変化は電子辞書の登場です。
「かさばらない」という圧倒的な優位性によって高い支持を受けています。
ビジネス用が多く、高価でモノクロだった昔の電子辞書に比べると今では価格もリーズナブルになり、カラフルで親しみやすい多機能のものが主流です。
国語・漢和・英和などよく使う辞典のほか、百科事典や類語辞典(シソーラス)、英英辞典、カタカナ語辞典、草木の図鑑など、数十に及ぶ役立つ辞典が充実しています。
ちなみに、「スマホでも意味は調べられる」と安易に考えるのは禁物です。
スマホには、学習を阻害しかねない余計なアプリやSNSなどがあるからです。
学習用に特化した電子辞書はその点も大きな強みです。
キーボード入力の観点から、小学校低学年のうちは紙の辞書に軍配が上がりますが、成長するに従って電子辞書を併用するとよいでしょう。
まとめ
物品から心構え、学習習慣までさまざまな準備が必要になる入学前。
必需品は万遍なく揃えると同時に、学習にプラスとなる机や辞書などポイントを押さえた準備が大切です。
「始めよければ終わりよし」「千里の道も一歩から」。
入学すると3年間なら約1000日、6年間なら約2000日にわたる長い日々がお子さんを待ち受けています。
かけがえのない学校生活を満足に送ってもらうために準備万端で入学に臨み、最高のスタートを切らせてあげましょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。