子育てに自信が持てないと悩んでいる保護者は少なくないはずです。
その思いはとてもつらいことだと思いますが、こう考えてください。
内閣府も「家庭の子育て力は、以前より低下している」と述べています(※)。
いかがでしょうか「自分だけではない」と思えると、気持ちが軽くなりませんか。
気持ちを軽くしてから、自分の子育て力を高めていきましょう。
そして子育てで重要なことは「正解を探し続けること」です。
※参考:https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2004/html_h/html/g1223310.html
第1章:なぜ「気持ちを軽くする」必要があるのか
この記事は次の3章で構成されています。
第1章:なぜ「気持ちを軽くする」必要があるのか
第2章:なぜ保護者の子育て力は落ちたのか
第3章:子育て力をどう高めるか
子育ての自信を失っている保護者は「第3章:子育て力をどう高めるか」を最初に知りたいと思いますが、この記事では最後に置きました。
なぜなら、子育て力を高めるには、保護者の「心構え」が重要だからです。
子育て力もスキルのひとつです。
野球のスキルを高めるには、練習をする前に野球を好きになる必要がありますし、英語の力を高めるには、「英語を使って外国人とコミュニケーションを取りたい」という想いが重要になってきます。
「心構え」や「気持ち」や「想い」があると、スキルアップのための練習や学習の効率が高まります。
メンタルの準備をしっかり整えてから「第3章:子育て力をどう高めるか」を読めば、知識を次から次へと吸収できるでしょう。
それでは「なぜ『気持ちを軽くする』必要があるのか」について考えていきます。
「重い子育て」と「軽い子育て」どちらが好きですか
子育てに自信が持てない保護者は、まずは気持ちを軽く持ちましょう。
子育ては本来、さまざまな人間関係のなかで、最も楽しいものだからです。
軽い気持ちで臨んだほうが、子育てはうまくいきます。
会社での人間関係は、つらさのほうが多いと思います。
近所づきあいも、ときに面倒臭さが先行してしまうことがあります。
友達との人間関係は楽しいのですが、子供を持つ年齢になると、お互い疎遠になってしまいます。
その点、子供との人間関係は、保護者にとって楽しいことしかありません。
子育ては、すればするほど返ってくるものが大きいからです。
子供にご飯を食べさせて、身長が5ミリ伸びただけでも、保護者は嬉しいはずです。
だから保護者は、リラックスして、気持ちを軽くして、子育てにあたったほうがよいでしょう。
また、自分が子供だったころを思い出してみてください。
保護者のなかには、自分の親から「重い子育て」を受けた人も、「軽い子育て」を受けた人もいるでしょう。
自分の親から「重い子育て」を受けた人は、感謝はすると思いますが、同時に「しんどかった」という記憶もあるはずです。
一方で、自分の親から「軽い子育て」を受けた人は、感謝と同時に、親に対して強い親近感を持っているのではないでしょうか。
保護者自身も「軽い子育て」を快適に思ったはずです。
子育ては、その方法が正しければ、重いより軽いほうがよい効果を生むはずです。
ここで注意したいのは、「軽さ」は、「不真面目さ」や「いい加減さ」「苦労のなさ」とは関係ないということです。
不真面目な子育て、いい加減な子育て、苦労しない子育ては、軽い子育てではありません。
軽い子育てとは、例えるなら、羽毛のような子育てです。
羽毛は軽いけど、しっかり温めてくれます。
子供が「子育てされている」と意識しないのに、しっかり子育てされている――この軽さが、子育ての理想形です。
重い気持ちでは成功しない
重い気持ちでは、何事にも成功しないでしょう。
気持ちが重くなると、体が強張ります。
余裕もなくなります。
気持ちが重いと、小さな失敗をしただけで「もう無理だ」と思ってしまいます。
スポーツの試合では、負けている選手に「リラックス、リラックス!」と声をかけます。
これは、重い気持ちを解いて、リラックスして気持ちを軽くすると、本来の力を発揮することができるからです。
気持ちが重くなればなるほど、失敗するリスクが高くなります。
そして失敗すると気持ちが萎縮して、気持ちがより重くなります。
この負のスパイラルに巻き込まれないように、子育て中の保護者は、常に気持ちを軽くするようにしましょう。
「悩みはみんな一緒」であることを知ろう
気持ちを軽くする方法は、「悩みはみんな一緒」であることを知ることです。
冒頭で紹介したとおり、内閣府は、現代の保護者はおしなべて子育て力が低下しているとみています。
しかし、だからといって、内閣府は「保護者が悪い」とは言っていません。
では、保護者の子育て力が落ちているのは、何が悪いのでしょうか。
それは、子育て環境です。
内閣府は、子育て力が落ちた原因には次のようなものがあると指摘しています。
・3世代以上の同居世帯が少ない
・子供自身の兄弟姉妹が少ない
・地域社会での子供の数が少ない
・隣近所に誰が住んでいるのかよくわからない
これらはすべて、子育て支援が受けられない環境をつくっています。
そして、昔はこうではありませんでした。
昔の保護者のほうが今の保護者より子育てが上手だったのは、子育て環境が整っていたから、ともいえます。
昔は「子供は勝手に育つ」とまで言われていました。
しかし当然ですが、幼い子供が自分で育つことはできません。
昔は、祖父母や曽祖父母や、兄弟姉妹や、地域の子供や、地域の人たちが、子供を育ててくれていたのです。
子育てがうまくいかないのは、「自分が悪いわけではない」と思えてきましたか。
その、軽くなった気持ちで、次の「なぜ保護者の子育て力は落ちたのか」を読み進めてみてください。
第2章:なぜ保護者の子育て力は落ちたのか
これから、少し重い話をします。
しかし、この話を読んでも、今の軽い気持ちを維持してください。
気持ちが重くなったら、また「なぜ『気持ちを軽くする』必要があるのか」を読み返してください。
この章では、なぜ保護者の子育て力は落ちたのか、という重いテーマを扱います。
子育て力が落ちたのが周囲の環境のせいだとしても、保護者には「環境のせいで、きちんとした子育てができなかった」という言い訳は許されないでしょう。
子育てに適さない環境のなかでも、しっかり子育てできている人はいます。
専業主婦のほうが働く女性より子育てを負担に感じている
専業主婦と働く女性では、どちらのほうが子育てに向いていると思いますか。
専業主婦のほうが子育てに集中できるので、子育てには有利になる、と感じませんか。
しかし、財団法人こども未来財団の調査によると、「子育ての負担」は、専業主婦のほうが、働く女性より大きく感じています。
結果は以下のとおりです。
・「子育ての負担感が大きい」と答えた専業主婦:45.3%
・「子育ての負担感が大きい」と答えた働く女性:29.1%
例えば、専業主婦Aさんと働く女性Bさんに、それぞれ子供が1人いた場合、Bさんは子供のことと仕事のことを気にかけなければならないので、子育ての負担感が相対的に大きくなりそうです。
しかし実際はそうはなっていません。
このような逆転現象が起きることについて内閣府は、次のように分析しています。
「乳幼児を抱えた若い夫婦が、周囲から適切な支援を受けられない場合には、特に母親が育児に対して孤立感や疲労感をいだき、場合によっては育児ノイローゼや児童虐待等の望ましくない結果を引き起こすこともある」
つまり、現代の専業主婦が子供を持つと、子供のことだけに集中しすぎてしまうようです。
保護者にとって、子育て中の子供は、話し相手にも相談相手にもなりません。
また、母親が、子育ての悩みを自分の子供に打ち明けることもできません。
専業主婦は社会的に孤立しやすいため、そして、子供ができると子育てに追われてさらに社会と縁遠くなるため、疲労を感じやすくなり、メンタルが傷つくようになってしまうわけです。
そうなると、子育てしながら働いている母親のほうが、社会とつながっていて孤立感を持たない分、専業主婦より有利になります。
ここから、母親の子育て力が落ちた原因がわかります。
子育ての知識や経験がないまま、そして周囲の支援が十分得られないまま、子育てに以外のことをせず、子育てだけに没頭するから、子育て力が落ちてしまうのです。
「子育ての負担」の正体とは
保護者の、特に専業主婦の子育て力を落としている「子育ての負担」の正体は、何でしょうか。
厚生労働省の「21世紀出生児縦断調査」という調査によると、保護者が感じている子育ての負担の上位3つは次のとおりです。
・自分の自由な時間が持てない:63.7%
・子育てによる身体の疲れ:39.3%
・目が離せないので気が休まらない:34.1%
この負担の内容も、現代の子育て環境の特徴といえるでしょう。
子供を、祖父母や地域の人や兄弟姉妹がみてくれないから、保護者は自分の自由な時間をつくれないのです。
また、祖父母や地域の人や兄弟姉妹たちの「目」がないから、保護者が始終、子供を見張っていなければならないので、気持ちが休まりません。
自由な時間がなく、気持ちが休まらないから、身体的な疲れがいつまでも癒されません。
ここからも、保護者の子育て力が落ちた原因がわかります。
現代の子育ては、保護者に過度な負担を強いるようになっています。
つまり、子育てが難しくなっているから、子育て力が落ちたように見えるわけです。
第3章:子育て力をどう高めるか
それではいよいよ、子育て力を高める方法を考えていきましょう。
子育て力を落とす原因を排除しよう
前の章までに、子育て力を落とす原因を見つけることができました。
それは次のとおりです。
- 祖父母、子供の兄弟姉妹、地域の子供、地域の人の支援がない
- 働く女性より専業主婦のほうが、子育てを負担に感じている
- 社会的な孤立
- 疲労感
- メンタルが傷つく
- 自由な時間がない
- 気持ちが休まらない
子育て力を高める前に、これら「子育て力を落とす原因」を排除しましょう。
子育てに自信が持てない保護者は、次のことをしてください。
- 祖父母を頼ろう
- 地域を頼ろう
- 働いてみよう
- 積極的に社会参加してみよう
- 疲れを取る工夫をしよう
- メンタルを維持するためにストレス解消をしよう
- 自由な時間を持とう
- 気持ちを休めよう
これらの取り組みは、単独では成立しにくいので注意してください。
例えば、祖父母が遠方にいれば、簡単には祖父母に助けてもらえません。
その場合、地域の子育て支援を有効活用する必要があります。
支援探しは、多方面にあたりましょう。
また、専業主婦が急に働き始めれば、それが大きなストレスになります。
働くことは、祖父母や地域の支援とセットにしたほうがよいでしょう。
疲れを取る工夫には、温泉やマッサージやエステといったリラクゼーションがありますが、これを実行するには自由な時間が必要です。
ストレスの解消は、気持ちを休める取り組みと同時並行で進めたほうがよいでしょう。
気持ちが休まらないのにストレス解消に取り組んでも効果が期待できません。
そして、子育てのイライラを休めるには、支援や自由な時間、労働、社会参加が有効になります。
「子育て力を落とす原因」の排除とは、生活全体をよい方向に持っていくことに他なりません。
ゆっくりじっくり取り組んでいってください。
子供に見せる
「子育て」と聞くと、保護者の能動的なアプローチをイメージすると思います。
つまり、保護者が積極的に子供に働きかけることこそ、子育てのような感じがします。
しかし、保護者が想定したとおりに育つ子供は、多くはありません。
そして最も失敗するのは、子供に「押しつけすぎる」子育てです。
子供に勉強しろといくら強くいっても、子供は反発するだけです。
「押しつけ」タイプの子育てを全面否定するわけではありませんが、時には「引く」タイプの子育ても必要になります。
引く子育てとは、子供に見せることです。
保護者が、学校のPTAや町内会の役員などのボランティアを多くすれば、子供は「大人は無償の労働をするものだ」と自然に理解します。
保護者が、自分がボランティアをしているところを子供に見せることは、立派な子育てです。
子供が中学生以上になっていれば、災害ボランティアに一緒に参加してみてはいかがでしょうか。
もし、最初に災害ボランティアに誘ったとき、子供が拒否したら、保護者だけで行ってみてください。
そして帰宅したら、被災地の様子を子供に伝えてあげてください。
きっと、次の災害ボランティアは、ついてきてくれるはずです。
逆に、保護者が子供の前で、冗談でも「学校のPTAなんてやっても、1円にもならないから馬鹿馬鹿しい」と言えば、子供は自然と「1円にもならないことに汗水流すことは馬鹿者がすることだ」と学んでしまうでしょう。
大人の「汚い世界」を子供に見せないことも、「見せる」子育てのひとつといえます。
とりあえず「何でも」肯定してみよう
「子育て」と「教えること」は似て非なるものです。
子育てのほうが大きな概念であり、教えるだけが子育てではありません。
ところが、「子育て=教えること」と思ってしまう保護者は少なくありません。
保護者が「子育てとは教えることである」といった凝り固まった考えを持ってしまうと、思わぬ弊害が生じてしまうでしょう。
それは「教える」ことに「否定」の要素が多く含まれているからです。
保護者が子供に教えるとき、どうしても「そうではなく、こうやりなさい」という形態になってしまいます。
まず否定してから、正しい方法を教えようとします。
これを続けていると、保護者も子供も「重い気持ち」になります。
なぜなら、否定するほうも、否定されるほうも、つまらなくなるからです。
もちろん、子供が間違った言動をしたら、否定しなければなりませんが、すべてを否定するのはやめましょう。
保護者が許容できることは、積極的に、かつ意図的に肯定していきましょう。
「まあいいかな」と思ってみましょう。
すでに「否定癖」がついている保護者は、ある1週間、完全に肯定してみてもよいでしょう。
保護者が子供のアイデアや言動を肯定すると、次のような効果が期待できます。
- 子供が喜びの感情を持つようになる
- 自立心が養われる
- 失敗体験ができる
- 責任感が生まれる
- 失敗を修正する知恵を身につけることができる
- 失敗から立ち直る経験ができる
- 言動が慎重になったり思慮深くなったりする
これまでずっと、何を提案しても否定されてきた子供が、突如肯定されたら「認められた」と感じるでしょう。
それは単純な喜びになり、子供は快感を得ます。
自分のアイデアに賛同してもらった子供は、早速それを試すでしょう。
「考えて、行動に移す」という一連の動きは、自立心を養います。
そして、子供のアイデアは大抵が「浅はか」なので、高い確率で失敗します。
失敗は、恥ずかしさと悔しさを伴います。
いずれもつらい体験なので、子供は「もう失敗したくない」と思います。
子供は、自分で決定して失敗したので、その結果に責任を持つようになります。
さらに、失敗を修正して挽回しよう、という気持ちになるでしょう。
失敗した落ち込みから立ち直ったとき、子供は「一人で乗り越えることができた」と自信を持ちます。
次に大きな行動を起こすとき、今度は、じっくり考えたり、保護者や教師にアドバイスを求めたりするはずです。
保護者が「否定して、正しい方法を教える」方法しか取らないと、子供は失敗することができません。
そして、子供が保護者の教えに逆らって自分流を貫き、その結果失敗したら、「親に邪魔されたから失敗した」と思います。
これでは、せっかく失敗したのに、失敗から学ぶことができません。
学びのない失敗は、単なるダメージしかもたらしません。
保護者が「肯定する子育て」を採用するとき、より深く子供を観察する必要があります。
それは、子供独自のアイデアは失敗しやすく、子供一人では立ち直ることができないことがあるからです。
子供が失敗のダメージに打ちひしがれていたら、助けてあげられるようにしておきましょう。
肯定する子育ては、「何でも好き勝手にやらせる」わけではありません。
肯定する子育てが効果を生むのは、保護者がしっかりコントロールしているときです。
まとめ~子育ての成否は子供が決める
子育ては、保護者が子供に施す行為ですが、子育てが成功したか失敗したかは、子供が決めます。
子供が成人して社会人になり、結婚式を挙げたとき、涙を流して親に感謝の言葉を述べたら、保護者はようやく「自分の子育ては間違っていなかった」と思うことができます。
しかし、子供が大人になったとき、「自分の人生はろくでもない」と吐き捨てたら、保護者は「子育てに失敗したかもしれない」と反省するべきかもしれません。
子育てが難しいのは、少なくとも20年は経過しないと、結果が出ないことです。
取り組んですぐに結果が出れば修正できますが、子育てではそれができません。
結果がわからないので、そのまま進んでよいのか、変えたほうがよいのか、なかなか判断できません。
しかも、相手は子供です。
保護者が子供に「私がしている、あなたへの子育ては、正しいですか」と聞くことはできません。
さらに子育てには、周囲が猛反対してでも貫いたほうがよいものもあります。
ただ、子育てには、くっきりと、成功と失敗があります。
保護者は、「何が正解かわからない」と悩みながらも、正解を出す努力は続けなければなりません。
自分で答えを出せないときは、遠慮なく、地域の力や学校の力や専門家の力を借りましょう。
確かに昔よりは、子育てサポーターは減っていますが、しかし探し求めれば、必ず子育てを助けてくれる人や機関などが見つかるはずです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。