数年前にイクメンという言葉が世に出てから男性の子育てにも関心が集まっています。
イクメンとはご存知の方も多いかと思われますが、子育てをするパパの事を指します。
令和は男性も子育てに参画する時代になるのでしょうか。
今回はイクメンの現状について迫ってみたいと思います。
事例:小泉進次郎環境相の勇気ある行動
2020年が始まって早速ですが国の政治家が育児休暇を取得するというニュースが舞い込んできました。
従来男性の育児休暇に関しては中々理解を得ることが難しかった問題ですが、閣僚が率先して取得したお陰で世の中の流れが変わるのではないかと期待されています。
国の政治家が育休取得
2020年はイクメン元年であると断言しても良いほど衝撃的なニュースが世間を騒がせました。
官僚が初の育児休暇取得を試みたという内容の記事です。
小泉進次郎環境相は17日までに、第1子誕生に当たり育児休暇を取得する意向を明らかにした。日本では父親が育児休暇を取るのはまれ。
現役閣僚で育児休暇を取得するのは小泉氏が初めてとなる。同氏は15日、生まれた子どもを一人で世話することが妻の負担になることを考慮し、出産後3カ月の間に2週間分の育児休暇を取ると決めたと語った。
日本は父親に対し世界でも最長級の育児休暇期間を認めているが、小泉氏が取るのはわずか2週間。だが、今回の決断はこの国で極めて重要な意味を持つ。
これまで男性の育児休暇に関して寛容的でなかった日本社会が政治家のアクションで変わろうとしています。
このニュースには賛否両論ありましたが、引用先の記事によると小泉進次郎氏は「制度にとどまらず、空気を変えていかなければならない」としています。
パフォーマンスでも良い
世間では「パフォーマンスだ」と批判を浴びることも少なくありませんでしたが、たとえパフォーマンスでも小泉進次郎氏の率先して社会の流れを変えてゆこうとする姿勢は評価されるべきでしょう。
影響力のある人物が行動する事により、企業としても育児休暇の取得に対して前向きに取り組むことが出来るようになりますし、そうなると子どもを育てやすい社会へ一歩進むことになります。
別記事で小泉進次郎氏は「全然休みなんかじゃないですね」とも語っています。
男性が育児の大変さに触れることで新たな価値観を得ることが出来たということです。
これまで男性には理解し得なかった苦労ですが遂に共感することの出来る時代へもう一歩という段階です。
※参考:朝日新聞デジタル『育休中の小泉進次郎氏「ぜんぜん休みじゃないですね」』
ライフワークバランスが重視される令和のイクメン事情
また小泉進次郎氏は育児休暇を取得する直前、内閣府から育児休暇を1ヶ月取得するようにと打診を受けていたことも報道されています。
日本は育児休暇を取ることの出来る日数が世界一(出産後子どもが1歳に到達するまで)ですが育休取得率は男性で5%程度と低く制度の形骸化が懸念されていました。
小泉慎一郎氏は最終的に2週間の育休を取得しましたが、当時は「半育休」についても触れられており注目を集めました。
半育休は育児・介護休業法の条文に明記されているもので、基本的には話し合いによって決定するものとしています。
半育休を取り入れる場合は毎月80時間まで仕事をすることが可能で、業務内容も災害時や突発的に増えたものに限定されるなど制約も設けられています。
半育休の制度を上手に活用することができれば男性も育児休暇取得のハードルが下がり、効果があるのではないかと言われていますが目立った実例はまだ確認されていません。
とは言え男性の育休参入は法整備がなされ、国からも推奨され始めている働き方です。
2020年からは仕事と生活の両立、つまりはライフワークバランスがより強調された働き方が推進されるでしょう。
※参考:BUISINESS INSIDER『政府内から小泉氏は「育休1カ月に」との声も、“半育休”って会社員も取れるの?』
これからイクメンは益々加速するだろう
小泉進次郎氏にならって2020年は数々の企業がイクメン改革がなされると予測されます。
これからのスタンダードは育児が出来るお父さんという事になりそうです。
これまで育児への男性の理解は得ることが難しいと考えられていましたが、男性が少しずつでも育児に参画する事でお母さんの負担減に繋がるのではと期待されています。
厚生労働省が主導している「育MENプロジェクト」のホームページでは男性の育児参加についての情報がまとめられています。
中でも面白いページが「イクメン企業宣言」というページです。
これは企業が男性の子育て支援を積極的に行う姿勢である、イクメンに取り組む男性社員を応援すると言った宣言を行うためのページで、2020年2月現在6社がイクメン企業宣言をしています。
またイクメン企業宣言の役員版とも言える「イクボス宣言」では取締役社長などの男性の育児休暇取得を応援する宣言を見ることが可能です。
その他にも育MENプロジェクトのホームページでは男性の育児休暇取得に関する情報や活動実績などを掲載しているので、興味を持たれましたら以下の参考URLよりご覧頂ければと思います。
女性は働きたい?令和の結婚観
事例を見ていただきましたが、次は女性の価値観にフォーカスして考えてみたいと思います。
一時期はイクメンが格好いいと騒がれていましたが現在ではどのような認識でいるのでしょうか。
大学生女子は「働きたい」傾向へ
2019年マイナビ大学生のライフスタイル調査によると、結婚後の仕事に関してどのように考えているかという質問に対して共働きを理想とする回答が多く寄せられています。
女性の回答を抽出してみると実に70%弱もの女子大生が「結婚後は共働きをしたい」と考えているようです。
2018年の調査では約66%という結果であることを踏まえると4ポイントほどの上昇が見られます。
一方男性では共働きを希望する学生の割合はおよそ49%、自身の収入のみで生活したいと回答した学生の割合は41%ほどと二極化する結果となっています。
男性では昨年度の調査と比較すると微量の減少傾向が見られましたが昨年度の結果はおおよそ50%と誤差の範囲内であるとの見方が宜しいかと思われます。
専業主婦を希望する割合は21%と低い数値で、昨年度の25%から4ポイント減少しています。
上記のデータから考えると夫婦共働き志向が増えていると考えることが出来ます。
また家事や育児の分担に関しての考え方が伺い知れるデータがありますのでご紹介したいと思います。
社会人の働き方における「残業」「育児」「上司や顧客との関係構築」に関して6つの働き方をモデルケースに調査したデータがあります。
6つの働き方それぞれに「すごくかっこいい」「まあまあかっこいい」「どちらとも言えない」「あまりかっこよくない」「かっこわるい」のいずれか1つの評価をつけてもらう方法で行われたアンケートです。
対象の働き方は以下のとおり。
- 毎晩遅くまで残業し、トップの成績を上げている
- 指示された通り残業し、上司の信頼を得る
- 時間内に仕事を終え、一切残業しない
- 時間内に仕事を終え、積極的に子育てする
- 子育てに専念するため育児休業を取得する
- 酒の席の付き合いで上司や顧客の信頼を得る
このうち「すごくかっこいい」と答えた学生の割合が高かった選択肢が「時間内に仕事を終え、積極的に子育てをする」で女性から見た男性像では70%でした。
この数値に関しては例年横ばいが続いている事からも近年の理想がイクメンであることが分かります。
また「男性が子育てに専念するため育児休暇を取得する」項目に「すごくかっこいい」と回答した女性の割合は53.4%でした。
この項目にすごくかっこいいと回答する割合は年々上昇を続け、2019年の調査でようやく半数を超えたとのことでした。
若者を中心に男性の育児休暇取得に対する理解が深まっている事が知れる貴重なデータです。
※参考:マイナビ「2019年卒 マイナビ大学生のライフスタイル調査」
令和の理想の働き方
上記の調査から分かる近年の大学生の動向は「共働きが理想、女性の半分は男性の育児休暇を歓迎している」という意識が強まってきている事です。
マイナビの調査には育児休暇を希望する割合を男女別に集計しているものもあります。
「子育てについて、あなたの考えに近いもの」という質問に対して「育児休暇を取って積極的に子育てをしたい」と考えている男性の割合は39%弱と2016年卒へのアンケートから着実に割合を増やしています。
2016年卒のアンケートでは32.6%であったため3年でおよそ3ポイントの上昇です。
またその理由に関して最も多かったものが「子どもが小さいうちはできるだけそばにいてあげたいから」が最多で30%の男子大学生が選択しています。
家事分担はもはや一般常識となりましたが、次は育児に関しても分担が求められるようになりました。
令和の新社会人は性別の垣根を超えてフェアに夫婦生活を送りたいと考えているようです。
主夫はダメ「働いている事が前提」
ただしイクメンに関しては厳しい意見もあります。
日経電子版に投稿された女性向けコラムによると、イクメンは定職に就いている事が前提条件とされています。
筆者の池田心豪氏によると(女子大生に向かって)「あなたに十分な収入がある状況で、大好きだけど無職の彼氏からプロポーズされたら受けるか」という質問に対しては圧倒的に “No!!” と答える学生の数が多かったと記しています。
またアルバイト収入の男子でも駄目だと答える様子が目立ったことから、共働きかつ夫婦が正社員であることが前提となっている事が伺いしれます。
結びに筆者は「イクメンはあくまでも一家の大黒柱として働いていることが前提のようだ」と綴っています。
マイナビ調査の結果を踏まえて総合的に考えてみると、世帯収入を極力増やしつつも子育て、家事を効率よく分担することの出来る生活スタイルが理想であると言えるでしょう。
男性が育児休暇を取得する前提となっている部分です。
※参考:WOMAN SMARTキャリア『「無職のイクメン」はアリ? 女子大生「妻が大黒柱はナシ」』
カネカの炎上に見る男女の意識変化
2019年6月、カネカに務めていた男性が育休復帰後に不当な扱いを受けたと妻が告発しネット上で炎上する騒ぎがありました。
事の発端は2019年1月のこと、めでたく誕生した長女の育児のために男性は3月25日から4月19日までの休暇を取得しました。
マイホームも購入し4月中旬には引っ越し。
職場復帰を果たした2日後に関西への転勤を上司から言い渡されました。
カネカは違法性が無いことを主張しましたが、世間はこの一連の騒動に対し「見せしめではないか」などと懐疑的な意見を寄せました。
この炎上を受けてカネカの株価は暴落し2020年2月現在も低迷している状態です。
この事件の真相は当事者以外には分かりませんが、世間は育児休暇を取得した男性社員への見せしめであると解釈しているようです。
カネカの対応が正しかったのかという議論はさておき、上記の騒動を見て、働き方の価値観としては育児や家事に挑戦する男性を押しているという印象を感じずにはいられませんでした。
それに答えるかの如く、世論でもイクメンを支持する動きがある事は、マイナビ実施のアンケート調査を見ても明らかでしょう。
これからの企業としてはプライベート関連の事案については慎重に対処する必要がありそうです。
イクメンのワンオペ家事について
続いてワンオペ家事について触れてみたいと思います。
ワンオペという言葉の意味がわからないという方の為に説明しておくと、ワンオペとは飲食店でよく使用されていた言葉で、一人ですべての業務を行うことを指します。
ワンマンオペレーションの略語です。
ワンオペ育児という言葉は流行語大賞にノミネートされた実績を持っており、新語として世間に浸透しています。
今回はワンオペイクメンにフォーカスを当てて話します。
大変に感じるイクメン
保守的な考えをお持ちの方や、古風な家庭で育った方は特に育児に対して苦手意識を抱きます。
育児をする男性が世間のスタンダードになろうが関係ないでしょう。
しかし令和時代の価値観と照らし合わせると、男性も積極的に育児に参加し、大変な気持ちをお母さんと共有する必要がありそうです。
それを象徴するかのように小泉進次郎氏が育休中の様子を語った記事の中に、以下のような発言がなされていました。
「お風呂、おむつ替え、ミルクづくりといったことも私は担当している」
『「休む」という言葉が入っていますが、ぜんぜん休みなんかじゃないですね。子どもを育てる大仕事をやっている理解をさらに広げていきたい』
この発言を見る限り育児の全てを行っているかについては断定できませんが、育児の一部を担当していたと考えるとワンオペ育児は相当な苦労を強いられることが安易に予測できます。
数年前までのお母さんはほとんどの家庭で育児の全てを担ってきたと考えると相当な労力を使っていたことになります。
ワンオペ家事についてですが、育児休暇を取得して育児に専念することだけがワンオペ家事ではありません。
例えば休日はお父さんが育児の全てを担当するなど局所的に育児に参画するという手段も考えられます。
イクメン時代特有のフレキシブルな考え方ですが、夫婦の負担をできる限り分散させるためにもこのような取り組みは必須と言えるでしょう。
ワンオペ家事が夫婦の仲を良くする?
ワンオペ家事を経験したイクメンは育児への理解が深まり、夫婦仲が良くなるのではないかと予想されています。
男性の育児に積極的な夫婦に限りますが、人間は共感を得ることで親近感を覚える生き物です。
最初からワンオペ家事という訳にもいきませんから、お母さんにアドバイスを求めたり、オムツ替えの方法を教えてもらったりする事になるでしょう。
そういった活動を通す中で有用感や自信がつき、夫婦円満に繋がるのではないでしょうか。
加えてお父さんが育児の過酷さを経験することで、お母さんを不意に傷つけてしまう事も減らせますし男性は一度で良いのでワンオペ家事を経験するべきだと考えられます。
実際にワンオペ家事を経験した佐藤竜也氏は1ヶ月もの間、仕事と育児を両立した生活を実践したそうです。
その結果、不測の事態に陥っても落ち着いて対処できるようになったと語っている他、時間の使い方も変わったりお母さんの苦労を知ることが出来たと話しています。
また佐藤氏はほかの男性にもワンオペ家事を勧めたくなったと話し「もう一度ワンオペ家事をやってみたい」と完全にイクメンとも呼べる変化をしたそうです。
記事内で佐藤氏は「ママ、ママとお母さんに駆け寄っていた子どもが、パパ、パパと自分のもとへ来るようになった。子どもの可愛さを独り占め出来ることが嬉しかった」と話しています。
我が子の可愛さを独占できるとは素敵なお父さんですが、少し羨ましくも感じられます。
ただし土日に疲れを引きずっている感覚があったり育児に休みはないと気づいたりと決してラクなわけでも無いと話している事も覚えておかなければなりません。
また参考URLの体験談はあくまでもモデルケースであり、皆さんの働き方や家庭事情に左右されるという事も念頭に置いて考えるようにして下さい。
※参考:BUISINESS INSIDER「イクメンは死語になる?ワンオペ家事育児をやってみた男性たちに起きた、7つの変化」
さいごに:育児は大変だけど
男性の育児に対する見解をまとめました。
大学生を対象にした意識調査ではいわゆるイクメンは歓迎されています。
特に正社員として働きながらフェアな家事分担を求めている女性が多いという結果になっています。
またワンオペ育児を経験することによってお父さんとしての経験値が上がるという事も体験談コラムより明らかになっています。
令和の子育て事情は以上のような内容となっています。
まだまだ幕開けの段階ではありますが、いずれイクメンという言葉も時代遅れと捉えられるほど男性の育児は常識となるでしょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。