理科の受験勉強をどのようにしたら良いか分からないという人がよくいます。
理科は、単元によって有効な勉強方法が異なります。
単元の特徴を理解して、それに見合った勉強をしてこそ、初めて効果が見込めます。
そこで今回は、理科の各単元や入試問題のタイプ、そして具体的な勉強方法について解説していきます。
過去にも同様の記事を記載していますのでこちらも合わせて御覧ください。
理科には暗記型とアウトプット型の問題がある
理科で大切なことは、暗記すれば解ける問題と、暗記したうえでアウトプットの練習が必要なものに分かれます。
どの問題もアウトプットの工程は当然に存在します。
ただ、その工程に複雑や工夫が必要なものがあるわけです。
アウトプットの工程に重点が置かれている問題について、苦手意識を持つ子が多いです。
これは、やはり問題演習が足りないといわざるを得ません。
数学の問題と同じように、最初は難しく感じても、基本的な問題パターンは決まっています。
つまり、同じ方法で覚えている知識を公式に当てはめてアウトプットすれば良いわけです。
そのため、繰り返せば繰り返すほど、よりスピーディーに解答でき、さらにミスが少なくなります。
アウトプットの比重が小さく、知っていさえすれば解ける単元についても、苦手だと感じる人が多いです。
これは、小難しい言葉だったり、そもそも興味のない分野だったりするために、覚えるのも苦痛に感じるからです。
抽象論だけだと伝わりづらいので、実際の問題(2019年北海道中3学力テストC)を参考に、暗記重視の問題、アウトプット型の問題、それぞれについて以下にみていきます。
暗記型の問題
大問1 問1
①磁石に固体Aを近づけると、引きつけられた。個体Aの体積を量ると4cm³であった。
問1 固体Aは何ですか。ア~オから選びなさい。また、固体Aの質量は何gですか、求めなさい。
ア ポリプロピレン イ 氷 ウ ポリスチレン エ アルミニウム オ 鉄
中1の化学、身の回りの物質からの出題です。
この点、知識として磁石に引きつけられる物質を知らなければなりません。
誰でもぱっと思いつくのは鉄です。
そのため、鉄で即答できます。
ただ、他にも磁石に引きつけられる物質があります。
この問題は平易でしたが、もう少し難度が上がると、鉄ではなく、他の物質が含まれる可能性が存在します。
答えは、ニッケルとコバルトです。
仮に選択肢のオがコバルトだったとして、当該知識がなかった場合、どれが正答なのかが分かりません。
なんかアルミニウムってくっつきそうじゃない?と選んでしまえば失点です。
次に質量を求めます。
問題では右表に鉄の密度(7.87g/cm³)が与えられています。
これで情報は出揃いました。
しかし、質量の出し方を知らなければ、この先どうしたら良いかが分かりません。
逆に知っていれば、すぐに答えが出ます。
質量は、体積×密度です。
なので、単純に先の体積4cm³と密度7.87g/cm³を掛けて、31.8gが正答です。
以上のように、暗記重視型の問題は、ほとんどアウトプットの工程で思考の余地はありません。
ただ知っているかどうかだけで、後は単純な選択や計算で片がつきます。
アウトプット型の問題
大問5 問1
斜面上のA点から、高さ30cmの斜面上のB点まで、質量1.0kgの台車を手で押し上げた。……ただし、100gの物体に働く重力の大きさを1Nとし、……
問1 台車をA点からB点まで手で押し上げたとき、手が台車にした仕事は何Jですか、求めなさい。
中3の物理、物質とエネルギーからの出題です。
まず、仕事(J)は、加えた力(N)×移動距離(m)です。
暗記型の問題では、加えた力と移動距離の双方が問題文に与えられていて、先の質量の問題のように、後は当てはめて単純な計算をするだけでOKです。
しかし、この問題のようなアウトプット型の問題では、加えた力も移動距離も問題文から読み取れません。
そこで、単純な当てはめによるアウトプットでは対処できないことが分かります。
与えられた情報のなかで、解答を導かなければなりません。
とすると、高さや質量が与えられているので、仕事の原理を使うことが分かります。
台車の重力による斜面方向への分力×A地点からB地点の長さ=台車にかかる重力×A地点からB地点の高さ(m)です。
台車の質量は1.0kgとされていますから、1N×10で10Nが重力です。
高さは0.3mと分かっています。
これらを掛け合わせて3Jというのが正解です。
このように、運動とエネルギーのようなアウトプット型の単元では、暗記が必要なのも確かですが、それだけでは正答まで辿り着くことができません。
たとえば本問のように、仕事の原理を理解して、与えられた情報が使えるように式を直して、そこに当てはめていく必要があります。
この力は、問題演習を通して育まれます。
初見では難しく見えるかもしれませんが、前述のようにパターンが決まっています。
そのため、やればやるほど、「あ、見たことある」という問題が増えて、アウトプットの負担を少なくすることが可能です。
理科の4分野と特徴
理科には、4つの分野があります。
生物、地学、化学、物理の4つです。
前者の2つ、生物と地学は、前出の暗記重視型に相当します。
後者の2つ、化学や物理は、憶えた知識をいかにアウトプットするかという点に比重が置かれます。
それぞれの分野について、具体的な問題とともに勉強法をみていきます。
生物分野
生物は、中1の植物、中2の動物、中3の細胞分裂、遺伝に分かれます。
では、実際にどのような問題が出されるのか、2019年の北海道公立高校入試(※)を取り上げて解説します。
※参考:平成31年度 高等学校入学者選抜学力検査問題 第4部 理科
大問2
実験1 鉢植えのホウセンカを1つ用意し、次の実験を行った。
〔1〕大きさがほぼ同じ葉を2枚選び、葉Ⅰ、Ⅱとした。それぞれの葉について、図1のように、光が直接当たるように何もおおわない部分と、両面を紙またはアルミニウムはくでおおった部分に分けた。
〔2〕このホウセンカを鉢ごと暗室に1日置いた後、葉Ⅰを切り取った。次に、葉Ⅱに光が直接当たるように鉢を明るい所に置き、2時間後、葉Ⅱを切り取った。切り取った葉Ⅰ、Ⅱについては、それぞれ切り取ってすぐに、あたためたエタノールに入れた後、ヨウ素液にひたして色の変化を調べた。
表は、そのときの結果をまとめたものである。
何もおおわない部分
紙でおおった部分
アルミニウムはくでおおった部分
葉Ⅰ
変化しなかった
変化しなかった
変化しなかった
葉Ⅱ
青紫色に変化した
薄い青紫色に変化した
変化しなかった
問1 下線部について、次の(1)、(2)に答えなさい。
(1)下線部の目的を、ア~エから選びなさい。
ア 染色 イ 脱色 ウ 中和 エ 消毒
(2)次の文は、エタノールをあたたえるときに注意をしなければならないことについて述べたものである。□に当てはまる語句を書きなさい。
エタノールは、引火することがあるので、火で□。
問2 実験Ⅰについて、次の文の①~③の〔 〕に当てはまるものを、それぞれア、イから選びなさい。
この実験を行う場合,葉はどの部分でも同じように光合成を行うことができることを確認したいときは,次の実験を行うとよい。
実験1[1]において,もう一枚,葉Ⅰ,Ⅱとほぼ同じ大きさの葉を選び,その葉の両面を,①〔ア すべてアルミニウムはくでおおって イ そのまま何もおおわないで〕おく。次に,実験1[2]において,葉Ⅱと同じ操作を行い,葉の②〔ア 全体 イ 一部〕が③〔ア 青紫色に変化する イ 変化しない〕ことを確かめる。
中1の植物からの出題です。
植物といえば、種子植物の分類や各器官の名称と働きなど、憶えなければならないことがたくさんあります。
なかでも大事なのは、光合成や呼吸の実験です。
高校入試では出題される可能性が極めて高いです。
例に出した大問2では、問1、2、4が光合成について、問3が呼吸について扱われています。
光合成、呼吸の基本的な働きと、実験の仕方、操作の目的や注意点を合わせて理解、記憶しておくことが求められます。
たとえば、光合成の実験において、下線部のあたためたエタノールに入れるのはなぜか、というのは、操作の目的を理解しなければなりません。
そして操作の目的を理解するには、実験そのものの目的や趣旨を理解している必要があります。
光合成の実験ですから、既に知識がある人は、ヨウ素液の文字を見ただけでデンプンの有無を確かめるために行われていることが分かります。
光合成の基本的な働きとして、葉は光のエネルギーを利用してデンプンを作ります。
そして、デンプンはヨウ素液に反応すると青紫色になります。
問1(1)に回答するためには、ここまでの前提知識がいります。
さらに、操作の目的を理解していることが必要です。
核心部分として、なぜあたためたエタノールに入れるのか、ということです。
これは、デンプンが青紫色に変わる反応に関連しています。
つまり、葉はご存知の通りもともと緑色で、そのままヨウ素液に浸しても、青紫色に変わったかどうかが顕著に分かりません。
そこで、あたためたエタノールに浸してあらかじめ脱色しておくことで、青紫色の変化を分かりやすくするわけです。
これが操作の目的です。
本問の場合、操作の目的は実験自体の目的を理解しておけば容易に導けます。
青紫色に変わるかどうかが知るのが目的なのですから、そのための下準備だと推測できます。
選択式なので選び取るのは簡単です。
染色ではむしろ妨げになりますし、中和は趣旨が分かりません。
消毒も必要があるのか疑問です。
以上から、脱色が最も下準備として適当だと分かります。
暗記したものを吐き出して正答へ
ただ、ことエタノールを用いる操作については、以上のような思考過程をなくして、つまり暗記した知識を吐き出す形で正答して欲しいです。
特に公立高校入試のレベルでは、操作の手段は限られています。
そうなると、操作の目的や、後述の注意点もパターン化されています。
エタノールの他には、試験管の操作が頻出です。
たとえば、炭酸ナトリウムの分解の実験などで、試験管の底を少し持ち上げて加熱するのはなぜですか。という問題があります。
これは、加熱により発生した水滴が底に溜まって割れるのを防ぐためです。
同実験で、ガラス管についてもよく出ます。
ガラス管を水から出してから火を消すのはなぜですか、という問題です。
これは、熱くなった試験管に水が流れて割れるのを防ぐためです。
エタノールや試験管の操作については、上記が頻出ですから憶えておきます。
後はこのインプットを吐き出すだけでOKです。
ただし、例外的に難関私立の問題で、知らない操作の目的や注意点が問われることがあります。
そのときは、上記で示した実験そのものの目的から類推すれば、必ず答えを導けます。
こういった問題の場合は、生物でありながら暗記重視ではなく、アウトプット型、すなわち現場思考力をみる趣旨だと考えられます。
問1(2)は、操作の注意点です。
こちらも憶えている知識を吐き出すだけです。
エタノールは引火のおそれがあるので、直接加熱してはいけません。
知らなくてもエタノールはアルコールの一種なので答えは簡単に分かります。
ただ、実際の試験では緊張感の中で解くので、やはりこのようなパターン化された知識はあらかじめ憶えておいてほうが安心です。
問2は、実験自体の目的が分かっていれば簡単です。
光合成によりデンプンができ、それをヨウ素液と反応させて青紫色に変わるのを確かめます。
アルミニウムはくで覆ってしまえば光合成できませんから、当然に、そのままの状態で光に当てる必要があります。
葉のどの部分でも光合成が同じように行えるかを確かめる実験という留保が、多少の現場思考を要求しています。
とはいえ、その思考レベルは化学や物理に比べれば微々たるものです。
光合成の働きや実験の目的を理解していれば余裕の平易な問題といえます。
生物は暗記重視の勉強
以上のように、中学生の生物は憶えているかどうかが鍵になる暗記重視型の分野です。
アウトプットの練習も必要ですが、その前提としての正確な知識の定着こそ大切です。
あれ、デンプンはヨウ素液に浸すと何色に変わるんだったっけ?と、試験当日にならないことが重要です。
植物や動物については器官の名称や働き、細胞分裂の流れや遺伝の規則、各実験の目的や、操作の目的、注意点の記憶も要ります。
■教科書が基本
細かい知識をいかに丁寧に憶えられるかが、生物の肝です。
憶え方としては、教科書を何度も読むのが基本です。
教科書に書いていないことが、入試で問われることはないからです。
それ以上でも以下でもなく、教科書の知識をインプットできればそれで良いです。
なので、教科書を読むだけで記憶できる子は、後は多少問題演習をして慣れればクリアです。
■教科書ガイド
教科書を読むだけでは記憶も理解もできない子は、教科書ガイドを使います。
こちらは、大事なポイントがまとめられていたり、より理解しやすく設計されていたり、教科書だけでは無理な子に適しています。
■自作ノート
自分でノートを作ると記憶がはかどるタイプの子がいます。
そういった子は、教科書を読んで自作のノートを作り、それを今度は自分専用のテキストとして繰り返せば効率が良いです。
・向き不向きがある
塾によってはこのノート作りを推奨して、これを全ての子にさせることがあります。
しかし、ノートに書いて記憶するのは、全ての子に合っているわけではありません。
特に記憶力の良い子は、前述のように教科書を読んでいるだけで憶えることができ、視覚的に脳内で教科書をめくれるようになります。
このタイプの子だと、ノートを作る工程が時間の無駄になることが多いです。
その時間を単に脳内で教科書を再生するのに費やしたほうが、より記憶が鮮明になり、必要な情報をスピーディーに出すのにはかどります。
一方で、読んでいるだけではどれが大事な知識なのかが分からなかったり、なかなか記憶できかったり、眠くなったりしてしまう子がいます。
こういった子は、手を動かして頭を覚醒しつつ、表などを駆使して自分に分かりやすいノートを作ったほうが良い可能性があります。
・自分に合った方法を選ぶ
教科書か、教科書ガイドか、ノートを作るか、という選択肢が王道です。
自分に合った方法を選ぶのが良いです。
塾に通っている子は、教科書の代用、あるいは補完として塾のテキストを使うのもアリです。
いずれにしろ、自分が憶えやすいと思う方法で取り組むのがベストです。
どうしても自分に合った方法が分からないときには、自分のことをよく知っている人、たとえば学校の教師や塾の先生に相談してみるのがおすすめです。
地学分野
地学も生物と同じく、暗記重視型です。
中1で地質、中2で気象、中3で天体を学びます。
それでは、実際の問題※をみてみます。
※参考:平成31年度 高等学校入学者選抜学力検査問題 第4部 理科
大問3
道路沿いに2つの露頭Ⅰ,Ⅱが見られる図1のような地域の地層を調べるため,次の観察を行った。
観察1 露頭Ⅰ,Ⅱを観察したところ,いずれの露頭にも平行に重なった泥,砂, 火山灰の層が見られ,各露頭の火山灰の層のさまざまなところから火山灰を採集した。また,露頭Ⅰでは, 石灰岩の層が見られ,その層からサンゴの化石が見つかった。
問1
下線部は,どの火山のいつごろの噴火によるものかがわかれば,地層ができた時代を知る手がかりになる。このような目印となる,特徴的な層を何というか,書きなさい。
問2
下線部がたい積した当時の環境について推定できることとして,最も適当なものを,ア~エから選びなさい。
ア 冷たくて浅い海 イ 冷たくて深い海
ウ あたたかくて浅い海 エ あたたかくて深い海
問1はまさに憶えているかどうかで決まります。
このような目印となる層をかぎ層といいます。
えてして凝灰岩の層がかぎ層になり、字のごとく火山灰でできています。
問2は示相化石の問題です。
示相化石の代表たるサンゴが取り上げられています。
サンゴ=暖かくて浅い海、という等式を知らなければなりません。
知っていれば至極簡単です。
まさに暗記重視型の問題としても代表といえます。
示相化石については、他にアサリ、ハマグリ、カキのグループと、シジミを押さえておけば良いです。
また、憶えておくとケアレスミスがなく一番ですが、類推することも可能です。
つまり、今のイメージから連想します。
たとえば、サンゴは普通に暖かくて浅いところに存在するというイメージがあります。
サンゴ礁が冷たくて深いところにあるわけがありません。
よって、ウしかあり得ません。
さらにアサリだったら、潮干狩りのイメージがあります。
つまり、浅い海です。
シジミだったら、湖や河口のイメージです。
このように、示相化石はイメージからも解けます。
ただ、やはり生物のところで述べたように、憶えておくのが一番確実で速いです。
地学も暗記が勝負
地学もいかに憶えているかが勝負になります。
憶え方は、生物と変わりありません。
教科書が最もベーシックで、この内容を記憶しておけば全て解けます。
ただ、示相化石や示準化石のように、ある程度まとまっていたほうが憶えやすいものもあります。
たとえば示準化石なら、サンヨウチュウ=古生代、アンモナイト=中生代、ナウマンゾウ=新生代、といった感じです。
教科書が文章だけで憶えにくいと感じたら、適宜マーカーを引いたり、もともとまとまっている教科書ガイドや塾のテキストを使ったり、自作のノートを作ったりと対応していきます。
化学分野
化学は暗記だけではなく、アウトプットの練習が求められる科目です。
中1で身の回りの物質、中2で原子や分子、中3で化学変化とイオンを学びます。
それでは、実際の公立高校入試(※)を参考に、どのような勉強をしたら良いのかを解説します。
※参考:平成31年度 高等学校入学者選抜学力検査問題 第4部 理科
大問4
炭酸水素ナトリウムを加熱したときの変化について調べるため,次の実験を行った。
実験[1] 炭酸水素ナトリウムの粉末2gを,図1のようにステンレス皿に取り2分間加熱した。十分に冷えてから,ステンレス皿ごと質量をはかり,あらかじめ測定しておいたステンレス皿の質量を差し引いて,加熱後の粉末の質量を求めた。ただし,ステンレス皿の質量は加熱しても変化しないものとする。
実験[2] 次に,加熱後の粉末をステンレス皿の中でよくかき混ぜた後,その粉末から1gを取ってかわいた試験管に入れた。この試験管を図2のように加熱し,しばらくの間,試験管の内側と水酸化バリウム水溶液のようすを観察した。さらに,炭酸水素ナトリウムの粉末2gを,4g,6gの粉末にかえ,それぞれ同じように実験[1],[2]を行った。
表は,それぞれの実験結果をまとめたものである。
炭酸水素ナトリウム
粉末2gのとき
粉末4gのとき
粉末6gのとき
実験[1]
加熱後の粉末の質量
1.26g
2.52g
4.20g
実験[2]
試験管の内側のようす
変化はなかった
変化はなかった
試験管の口付近に液体がついた
水酸化バリウム水溶液のようす
変化はなかった
変化はなかった
白くにごった
問1 次の文の ① , ② に当てはまる語句を,それぞれ書きなさい。
実験[1]において,炭酸水素ナトリウムは,加熱によって,炭酸ナトリウムなど複数の物質に分かれた。このような化学変化(化学反応)を①という。また,炭酸水素ナトリウムに含まれ,炭酸ナトリウムに含まれない原子は,原子の記号で書くと②である。
問2 炭酸水素ナトリウムの粉末6gのときの実験[2]について,次の(1),(2)に答えなさい。
(1)試験管の口付近についた液体に塩化コバルト紙をつけたところ,塩化コバルト紙が青色から赤色(桃色)に変化した。この液体の物質名を書きなさい。
(2)次の文は,水酸化バリウム水溶液が白くにごったことについて説明したものである。①, ② に当てはまる語句を,それぞれ書きなさい。また,③,④の{ }に当てはまるものを,それぞれア,イから選びなさい。
発生した気体によって石灰水が白くにごるとき,その気体は①であることがわかる。石灰水に含まれている②と水酸化バリウム水溶液に含まれているバリウムは,原子を原子番号の順に並べた周期表において③{ア 縦 イ 横}に並んでいることから,④{ア 組成 イ 性質}がよく似ている。そのため,水酸化バリウム水溶液は,石灰水と同様に, ①の発生によって白くにごったと考えられる。
問3 図3は,表の実験[1]の結果をグラフに表したものである。なお,このグラフでは,1つの直線で表すことができた炭酸水素ナトリウムの粉末0gから4gまでを実線で表し,同一直線上にない4gから6gの間は点線で表している。次の(1),(2)に答えなさい。
(1)図3において,炭酸水素ナトリウムの粉末の質量をx〔g〕,加熱後の粉末の質量をy〔g〕とすると,xが0から4のとき,yをxの式で表すと,y=ax となる。aの値を求めなさい。次の文の ①, ② に当てはまる数値を,それぞれ書きなさい。
(2)実験[1]において,炭酸水素ナトリウムの粉末の一部が,化学変化せずにステンレス皿に残っていたと考えられるのは,炭酸水素ナトリウムの粉末2g,4g,6gのうち, ①gのときである。また,このときの実験[2]において,試験管に入れた粉末のすべてが,炭酸ナトリウムになったとすると,試験管の中の炭酸ナトリウムの質量は全部で ② gであると考えられる。
問1は覚えているかどうかの問題です。
アウトプットが重視される分野においても、当然に暗記が基本にあります。
①の答えは熱分解です。
これは、知っていれば即答ですし、知らなければ答えられません。
炭酸水素ナトリウムに含まれ、炭酸ナトリウムに含まれない原子は、化学式を知っていれば容易ですが、文字面からも一目瞭然です。
水素が抜け落ちていますから、これだろうと一発で分かります。
答えはHです。
問2の(1)も知識問題です。
塩化コバルト紙が青から赤に変わるのは、すぐに水だと分からなければなりません。
今回は水の確認でしたが、他の物質の確認方法も憶えておく必要があります。
たとえば炭酸水素ナトリウムは熱分解すると、炭酸ナトリウム、水、二酸化炭素になります。
炭酸ナトリウムは、フェノールフタレイン溶液につけると、水によく溶けるために濃い赤色になります。
二酸化炭素は石灰水のなかで白く濁ります。
(2)では、早速、他の物質の確認方法の知識が生きてきます。
すなわち、二酸化炭素です。
二酸化炭素が石灰水に入ると、白く濁ると説明しました。
もう少し厳密にいうと、二酸化炭素が石灰水に入ると中和が起こり、炭酸カルシウムが発生します。
石灰水が白く濁るのはこの炭酸カルシウムが原因です。
そして、水酸化バリウム水溶液に二酸化炭素が入ると、同じように中和が起こり、炭酸バリウムが生まれます。
この炭酸バリウムが、やはり水溶液を白く濁らせます。
石灰水のカルシウムと、水酸化バリウムのバリウムは、周期表において縦に並んでおり、そのため性質が似通っています。
本問を解くには、以上の知識が必要になります。
問3は、これまでと違って現場思考、すなわちアウトプット重視型の問題といえます。
簡単な計算も必要になり、知識があるだけでは正解を導き出せません。
(1)は至極簡単です。
初歩的な数学の知識があればすぐに分かります。
aの値というのは、数学でいうところの傾きです。
xの増加量が2のとき、yの増加量は1.26です。
後はこれを単純に半分にすれば、傾きが分かります。
つまり、xが1のときyは0.63で、これが傾き=aであり答えです。
表から値を当てはめて計算しなければならず、上記までの憶えてさえいれば、の問題とは異なることが分かります。
とはいえ、数学の問題に比べればとても簡単なので、基本を理解して落ち着いて取り組めば容易です。
(2)は、(1)に比べるともう少し踏み込んで現場思考をする必要があります。
実験〔2〕の様子を見てみると、粉末6gのときだけ、水滴がついたり、白く濁る反応が出たりしています。
炭酸水素ナトリウムは、前述のように熱分解により、炭酸ナトリウム、水、二酸化炭素になります。
6gのときに残った粉末では、以上の反応が見られたことから、①は炭酸水素ナトリウムだと考えられます。
②を求める問題は、最もアウトプット重視、つまり現場思考の比重が非常に大きいです。
数学的、かつ論理的に答えを出す必要があります。
まずは、6gの炭酸水素ナトリウムを加熱してできた4.20gの粉末について考えていきます。
後で4.2で割って1gの値に直すほうが考えやすいです。
実験〔2〕の結果から、2gと4gのときには全て熱分解しています。
2gのときには、加熱後の粉末が1.26gですから、水と二酸化炭素が0.74g発生したと考えられ、4gのときには、同様にその倍の1.48gが発生したと分かります。
そのため、本来であれば6gを加熱したときには、2.22gの水と二酸化炭素が発生しなければなりません。
しかし、6gのときには加熱後の粉末が、4.2gですから、1.8gしか熱分解していません。
つまり、あと0.42g分、熱分解の余地があるわけです。
そして加熱後の粉末4.2gから1g採取するので、0.42を4.2で割ります。
するとあと0.1g熱分解できることが分かります。
そして、答えが0.9gだと分かります。
化学は問題演習(アウトプット)を重視した勉強
このように、化学は持っている知識や、与えられた情報を元に、的確に現場思考をして、なるべくスピーディーに解答を導かねばなりません。
これは、暗記重視型の勉強では足りず、それを前提にたくさん問題演習をする必要があります。
問題は、過去問が基本です。
他に市販の問題集を利用したり、塾に通っている場合には、そのオリジナル問題集を利用したりも良いです。
問題集は、たくさんやればやるほど良いものではありません。
一通り終えたら次の問題集にいくのではなく、何周かして定着させてからにするべきです。
化学にしろ物理にしろ、理科は問題がある程度パターン化されているので、まずはこのパターンに慣れることが必要です。
物理分野
物理分野は、4分野のなかでも特にアウトプット重視の問題になります。
現場思考の比重が大きく、しっかりとした知識があっても、当日の調子が悪いと点が伸びません。
以下で具体的な問題(※)を見て、どの程度の現場思考が必要かを知っておきましょう。
※参考:平成31年度 高等学校入学者選抜学力検査問題 第4部 理科
大問5
斜面上の台車の運動を調べるため,次の実験を行った。
実験1
[1]図1のように,斜面上のS点に台車の先端をあわせ,手でささえ,台車に記録タイマーを通した紙テープをつけた。
[2]台車から手をはなすと,台車は斜面を下った。このときの斜面上の台車の運動を,1秒間に50回打点する記録タイマーを用いて紙テープに記録した。
[3]図2のように,打点が重なり合わず,はっきり区別できる最初の打点を0打点目とし,その打点から5打点ごとに印をつけた。印は35打点目までつけて,0打点目からの距離をそれぞれ調べた。表は,そのときの30打点目までの結果をまとめたものである。
問1 実験1について,次の(1)~(3)に答えなさい。
(1)0打点目から5打点目までの間の,台車の平均の速さとして,最も適当なものを,ア~エから選びなさい。
ア 0.07㎝/秒 イ 0.35㎝/秒 ウ 3.5㎝/秒 エ 35㎝/秒
(2)0打点目から35打点目までの距離は何㎝と考えられるか,最も適当なものを,ア~エから選びなさい。
ア 65.0㎝ イ 75.8㎝ ウ 78.5㎝ エ 81.2㎝
(3)S点から斜面上を9.7㎝下った地点に台車の先端をあわせ,同様の実験を行ったところ,紙テープに記録された各打点は図2と同じであった。0打点目を図2と同様に決めるとき,0打点目から30.2㎝の距離にある打点は,0打点目から何打点目のものと考えられるか,最も適当なものを,ア~エから選びなさい。
ア 10打点目 イ 20打点目 ウ 25打点目 エ 30打点
(1)は、理科的な知識は何もいりません。
単純に数学の公式に当てはめて終わりです。
速さは、距離÷時間です。
表を見ると、5打点目までの距離は3.5cmです。
1秒間に50打点するわけですから、5打点は10分の1で0.1秒です。
3.5cm÷0.1秒で、速さは毎秒35cmと分かります。
(2)は、この基本として、この運動が等加速度運動であると知らなければなりません。
知らなくても表を見ればすぐに気づけますが、やはり知っておいたほうが安心です。
もしすると、名称を答えさせる問題が出る可能性もありまます。
等加速度運動は、時間に比例して同じ割合で0打点目からの距離の増加量が伸びます。
本問でいうと、5打点目(0.1秒)から10打点目(0.2秒)について、3.5cmから9.7cmとなっています。
距離の増加量は6.2cmです。
次に10打点目(0.2秒)から15打点目(0.3秒)も同様で、9.7cmから18.6cmになっていますから、距離の増加量は8.9cmです。
先ほどから2.7cm分だけ速くなりました。
15打点目(0.3秒)から20打点目(0.4秒)目の距離の増加量は11.6cmです。
やはり2.7cmだけ速くなっています。
0.1秒につき2.7cmだけ距離が増加することが分かりました。
この法則に気づけば、後は簡単です。
25打点目から30打点目までの距離の増加量に、2.7cmを足したものを加えれば、移動距離が分かります。
距離の増加量は17ですから、これに2.7cmを加えたものを、30打点目までの移動距離に加えます。
61.5cm+19.7cmとなり、答えは81.2cmです。
このように、必要なのは法則の読み取りと計算です。
実際、等加速度運動について何ひとつ知らない人でも法則を読み取って計算すれば解けます。
知識よりも現場思考(アウトプット)こそ大事な問題の典型です。
物理は特にアウトプット重視の勉強
物理分野では、以上のような問題が溢れています。
憶えている知識をそのまま吐き出せば良いのではなく、そこから現場思考をする必要があります。
理科のなかで最もアウトプット段階に比重が置かれているのが、物理です。
現場思考というと、不安に感じるかもしれません。
■問題演習でパターンを知る
試験のときの調子が悪ければ、大きく点数が下がってしまう気がします。
しかし、物理も数学と同じように、解法にはパターンがあります。
公式や法則を使う問題には、一定の使い方、すなわちパターンがあります。
初見では難しく感じるかもしれません。
しかし、パターンが決まっているので、問題集をこなしているうちに、同じ考え方で解けるということが分かってきます。
つまり、物理は単に法則や公式を記憶するだけでは足りず、それを使うパターンをも憶えることが必要です。
これをなすには、やはり問題集を解くのが一番です。
■一問一問を丁寧に
一つひとつの問題が、パターン化されたものです。
つまり、分からない問題をおろそかにするのではなく、解説を読んでしっかり理解して、今度同じ問題が出たときに解けるようにしておきます。
手を変え品を変え、一見、違った内容の問題に出くわすかもしれません。
その実、読んでみれば前に解いた問題と同じ考え方でいけることに気づきます。
問題集は、自分にとって解説が分かりやすいものが良いです。
もし解説を読んでも分からないときは、学校の先生や塾の講師に質問をして、分からないままにしないことが大事です。
一度分かって記憶してしまえば、同じパターンの問題が出たときに対処できます。
しかし、分からないままにしおくと、同じパターンのものに出くわしたときに、また失点してしまいます。
■応用問題も経験値で対応できる
難関私立となると、独自に高度な応用問題が出ることがあります。
この場合も、今までのパターン化された問題についての思考法が役立ちます。
法則や公式を駆使して、これまで培った思考を柔軟に応用していけば、必ず解答に辿りつけます。
このような応用力もまた、日々の基本的な問題演習の繰り返しによる経験で培われます。
物理の良いところは、一度実力をつけてしまえば、持っている知識を駆使してどんな問題にも対応できることです。
上述のように、一見して今までのパターンが通用しない未知の問題に思えても、必ず現場思考で正解に辿り着けるようにつくられています。
一方で、生物や地学は異なります。
暗記系の分野ですから、知らなければ終わりです。
現場思考で問題文から類推して……などと正解を導き出すことはできません。
この点で、同じ理科でも随分性質が違うことが分かります。
理科の勉強法についてまとめ
理科は分野によって、重視すべき勉強ポイントが異なります。
生物や地学については暗記重視、化学や物理については正確な知識の記憶と、それ以上に問題演習をして思考力や応用力、すなわちアウトプット力を養う必要があります。
暗記については、教科書や塾のテキストを基本に読み込みます。
憶えづらいときは教科書ガイドを使ったり、まとめノートを作ったりします。
問題演習は、数を重視するのではなく、一問一問を大事に、解説をしっかり読んで理解することが大切です。
一冊を反復して、充分に記憶することを大切にすべきです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。