試験のたびに「こんなに勉強しているのに、なぜ高得点が取れないのか」と、悔しい思いをしている人がいます。
その一方で、あまり勉強していないのに、試験で簡単に高得点をマークする人もいます。
「勉強していない」と言いながら勉強している人もいますが、本当に勉強していないのに成績がよい人は実在します。
この差は、「勉強はインプット」で「試験はアウトプット」であることを、知っているかどうかで生まれます。
インプットがいくら得意でも、アウトプットが下手な人は、試験で結果を残すことができません。
そしてアウトプットのスキルは、訓練すれば身につけることができます。
過去には、脳が記憶する仕組みについても解説しています。
こちらも併せてご覧いただくとより理解が深まるかと思います。
インプットは入力、アウトプットは出力
インプットは「入力」と訳されます。
アウトプットは「出力」という意味です。
インプットとアウトプットという用語は、勉強だけでなく、さまざまな分野で使われています。
例えば、コンピュータに何か仕事をさせるとします。
コンピュータを動かすには、コンピュータにデータを与えなければなりません。
コンピュータに雨、風、雲、気温、位置などの気象データを入力すると、コンピュータは翌日の天気を予測します。
コンピュータに商品情報、客の情報、天気情報、日時情報、知事情報、イベント情報を与えると、商品の売れ行きを予測します。
コンピュータにデータや情報などを入力することをインプットといいます。
コンピュータが出した予測のことを、アウトプットといいます。
「+α」しなければならない
インプットとアウトプットは、イコールではありません。
インプットした内容をそのまま外に出しても、アウトプットにはなりません。
「インプット+α」がアウトプットになります。
例えば、天気の予測というアウトプットは、気象データというインプットにコンピュータによる分析という「+α」が加わって完成します。
勉強と試験も同じです。
勉強というインプットに、考えるという「+α」を加えることで、試験での正答というアウトプットが生まれます。
ここまでの説明を表にすると、次のようになります。
「インプット」に該当するもの | 「+α」に該当するもの | 「アウトプット」に該当するもの |
気象情報 | コンピュータの分析 | 天気の予測 |
勉強 | 考える | 試験での正答 |
インプットよりアウトプットを重視しよう
日本の教育では、インプットのほうが重視され、アウトプットは軽視されがちです。
例えば、先生も保護者も口を酸っぱくして、子供に「勉強しなさい」と言いますが、これは「しっかりインプットしなさい」と言っているわけです。
しかし、先生も保護者も、子供にあまり「勉強したことを考えて、正解を導きなさい」とは言いません。
「しっかりアウトプットしなさい」とはあまり言わないのです。
なぜ日本人はインプット重視、アウトプット軽視なのか
なぜインプットを重視して、アウトプットを軽視するのでしょうか。
それは「大量にインプットすれば、まるで、あふれた水がこぼれるように、知識や情報が自然とアウトプットされる」と考えている人が多いからです。
日本人がインプットを重視して、アウトプットを軽視するのは、自慢や知ったかぶりを極度に嫌うからです。
大人はよく「知らないなら黙っていなさい」「何も知らないのだから口を挟まないで」と言います。
このような言い方をするのは、インプットが少ないのに、アウトプットに長けている人の態度が、多くの人に不快感を与えるからです。
そして日本人は、多くの知識や情報を有しているのに、それをひけらかさず、重要な場面で静かな口調で重要なことを一言発する人を、「渋い」とか「格好いい」と評して、リスペクトします。
大量インプット、少量アウトプットのスタイルを美徳とする風潮が日本にはあります。
しかし、次のことははっきり言うことができます。
なぜでしょうか。
アウトプットしないと「ゼロ」
インプットは重要です。
そのため、インプットを重視することは間違っているわけではありません。
しかし、アウトプットを軽視することは間違っています。
アウトプットをしないと「ゼロ」だからです。
正しいことを知っていても(つまり、インプットしても)、正しいことを言ったり、正しいことをしたりしなければ(つまり、アウトプットしなければ)、正しさは広がりません。
また、大量にインプットできるまでアウトプットを我慢するのも、よいこととはいえません。
インプットが少なくても、積極的にアウトプットしていきましょう。
そうすることで「チェック機能」が働きます。
臆せずアウトプットしてトライ・アンド・エラーをしよう
少ししかインプットできていなくても、臆さずどんどんアウトプットしていきましょう。
アウトプットすることで、周囲の人にいろいろ指摘してもらえます。
「そこはこうしたほうがよい」
「それは新しい考え方だから、もっと深掘りしたほうがよい」
「間違った方向に進んでいるから、修正したほうがよい」
このような指摘をもらうことで、よりよい状態に最短距離で近づけるようになります。
最短距離でよりよい状態に近づくには、トライ・アンド・エラーが必要です。
トライ・アンド・エラーとは、挑戦して、失敗して、修正する方法です。
成功するには、失敗を回避しなければなりません。
トライ・アンド・エラーをすれば、短時間ですべての失敗を洗い出すことができるので、簡単に除去できるようになります。
大量にインプットできるまでアウトプットしないと、周囲にトライしていることもエラーしていることも気づかれません。
だから、どんどんアウトプットしていきましょう。
勉強すれば自然に正答できるわけではない
勉強すれば、自然に試験問題の正解が思い浮かぶわけではありません。
どんどんアウトプットすることで、アウトプットのスキルを獲得することができ、そのことによってインプットに「+α」を加えることができるようになります。
「インプット+α」がアウトプットの正体です。
勉強したことが「そのまま」試験問題に出ることは、ほとんどありません。
出題者は、教科書や参考書に書かれてあることを「アレンジして」試験問題をつくります。
そのため、生徒たちが試験で正答を導き出すには、勉強したことをアレンジする必要があります。
正しくアレンジするには、訓練が必要です。
その訓練こそ、アウトプットの練習になります。
いつも「試験にどのように出るか」と考える
「勉強して得た知識は、どのように試験に出るだろうか」と考えることは、アウトプットの重要な練習のひとつです。
参考書を読んで理解したつもりでも、問題集を解いたらまったく正答できなかったという経験をしたことがあると思います。
これは、参考書を漫然と読んでいるからです。
参考書に書いていることを理解しただけだからです。
試験の得点につなげるには、「参考書に書いてあること」と「問題集の出題形式」の違いをチェックしなければなりません。
簡単な例を紹介します。
英文法の参考書に「can:~できる」と書かれてあったとします。
しかし、それを覚えただけでは、次の問題を解くことはできません。
問い:次の日本語を英文にしなさい
ジャックは、フランス語を話すことができます。
正解は「Jack can speak French.」になるのですが、「can:~できる」という知識だけでは、そこまでたどり着くことはできません。
この問題を解くには、次のことを知っていなければなりません。
- Jack、speak、Frenchのつづり
- 「主語+助動詞+動詞の原形+目的語」の順番に並ぶ、という知識
- 助動詞があると、Jackが主語でもspeakにsがつかない
正確にアウトプットするには、インプットした知識を次のようにアレンジしなければならないことがわかります。
このように、アウトプットの重要性を理解できるようになると、勉強の仕方や、勉強の範囲がわかってきます。
アウトプットの練習方法
アウトプットは、練習することで鍛えることができます。
「教える」ことです。
「勉強友達」をつくってください。
勉強友達をつくると、勉強に関する情報を交換できますし、互いに励ましあって勉強モチベーションを維持できます。
競争心もわきます。
そして自分がインプットしたことを、友達に教えてみてください。
例えば、関数について学んだら、友達に関数を説明します。
友達には事前に「関数を知らないものとして、説明を聞いてほしい。きちんと説明できていないところがあったら、指摘してほしい」と依頼しておきます。
恐らく最初のころは、説明が行き詰まるはずです。
そして友達からは、「説明がわからない」と言われるでしょう。
この体験が重要です。
説明できないのは、本当には理解していないからです。
理解していないことを知ることは、アウトプット練習の第1歩です。
インプットしたことを友達に教えると、アウトプットの難しさを実感できます。
そして、友達に納得してもらえる説明方法を考えることが、アウトプット練習の第2歩目になります。
もし、友達に教える時間がなければ、自分に教えても効果があります。
自分の部屋のなかで、たった今、参考書で学んだことを、独り言で自分に説明します。
参考書を見ずに「独り言説明」がスラスラできるようになったとき、本当に理解したことになります。
まとめ~早く気がついて
インプットとアウトプットの違いと、アウトプットをするには特別な訓練が必要なことは、早く気がついてください。
この2点に気がつくと、勉強時間と試験結果が、面白いように連動するようになります。
勉強した分だけで試験の得点がアップするようになるのです。
- 授業を聴いていて、わからないと感じたことがない
- しっかり予習も復習もしている
- なのに試験の点数が低い
- 試験の見直しをすると、間違った理由がすぐにわかる(なぜ間違ったのか理解できない)
このような現象が起きていたらインプットはできているので、高得点まであと一歩です。
そうです、あとは、アウトプットの練習をするだけです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。