音楽を聴きながら勉強をするのは、「ながら勉」と呼んで望ましくないと考えている人がいます。
一方で、音楽を聴くことでより集中できるという方が存在します。
そこで今回は、音楽を聴きながら勉強することのメリットや、おすすめの音楽などについて解説していきます。
音楽のマスキング効果
音楽は、周囲の雑音を消す働きを持っています。
静か過ぎる環境だと、周りの鉛筆の音や空調の音、隣の部屋のテレビの音などが気になってしまうことがあります。
このとき、音楽をかけることで、他の不快な音を抑えることが可能です。
これをマスキング効果と専門的には呼んでいます。
マスキング効果というのは、似たような周波数帯の音を聞こえにくくするものです。
飲食店では適度な音量でBGMを流すことで、キッチンの店員同士の会話が聞こえないようにしていることがあります。
音楽がα波を発生させる
さらに音楽のなかには、α波を発生させるものがあります。
α波は、脳をリラックスさせる働きを持っています。
勉強おいては、落ち着いた精神状態において、集中力や記憶力を発揮しやすくなります。
これが、音楽をかけることによってより集中できると感じる人が多い理由です。
病院の手術でも音楽を導入
特に病院では、長時間にわたる手術のときに、リラックスできる音楽をかける例が存在します。
音楽があることで、それこそ平静な気持ちにおいて、集中して手術に取り組めるからです。
外科医のなかには、よりテンションを上げて集中するために、ロックをかけたり、「サザンをかけて」と特定のアーティストを指定したり、ということもあります(※)。
これを聞いて、「ながら手術」だと批判する人は少ないのではないでしょうか。
医療ドラマから受ける印象と違って、実際の現場では音楽を取り入れる病院が極めて多いです。
以上のように、音楽をかけることは、人間の集中力をアップさせる側面があります。
そのため、勉強中の音楽は決して一律にいけないものではありません。
歌詞ありは「ながら勉」になるリスク
一方で、音楽がマイナスに働くこともあります。
それこそ、冒頭で述べた「ながら勉強」の状態です。
具体的には、覚えるべき英単語よりも、聴いている楽曲の歌詞のほうに意識が飛んでいる、というケースです。
視覚と聴覚から別々の言語情報が同時に入ってきては、混乱をきたすのは客観的にみて当然だと思えます。
実際に歌詞ありとなしに分けて行われた実験においても、歌詞ありのほうが作業効率が悪くなるという結果が出ています(※)。
※参考:人間工学 一般社団法人 日本人間工学会 音楽に含まれる言語情報が文章課題の遂行に及ぼす影響
英単語の意味や関連語、例文の理解に集中すべきなのに、どうにも歌詞が耳に入ってきて集中できないということがあります。
あるいは、その集中力の低い状態が楽だからそれでいい、と勉強を継続して、結果的にほとんど頭に知識が定着せず、極めて生産性の低い時間になってしまうケースも存在します。
以上のような場合、音楽が勉強に悪影響を与えているのは明白です。
歌詞のないものが良い
勉強中の音楽を選ぶポイントとしては、歌詞のないものが良いです。
それこそインストルメンタル(歌をなくして曲だけのもの)であったり、クラシックやジャズ、環境音といった類です。
前述のように、歌詞があるとそちらに意識が集中してしまいやすいです。
歌詞があっても別に大丈夫、という人は良いですが、ついつい意識が流れてしまう、というタイプの人は、歌詞なしのものがおすすめです。
音楽とベータアンドルフィン(脳の快楽物質)
α波が出ると、ベータアンドルフィンと呼ばれる脳の快楽物質が分泌されます。
この物質は、特にストレスの軽減に役立つことが知られています。
脳を活性化させて、病気の予防にもつながります。
身体がリラックスして血行が良くなり、集中力・記憶力のアップを促進します。
マラソンをしていて、苦しいのを通り越すと、走っていることに幸福感や高揚感を覚えることがあります。
これはランナーズハイと呼ばれる状況ですが、このとき分泌されているのが、他ならぬベータエンドルフィンです(※)。
※参考:厚生労働省 β-エンドルフィン | e-ヘルスネット
勉強をしていても同じで、苦しいときもあれば、ノッってきてどんどんと知識が吸収される感覚に入ることがあります。
スタディーハイになるために欠かせないのが、ベータエンドルフィンといえます。
音楽と幸せ・快楽ホルモン
とりわけα波を出す音楽は、勉強に効果の高いホルモンを分泌させます。
それこそ、幸せホルモンとして有名なセロトニンや、快楽ホルモンとして知られるドーパミンなどです。
おすすめ音楽3選
以下では、「クラシック・オルゴール・自然音」の3選から、具体的にα波を出してくれる音楽を紹介します。
クラシック
クラシックは優雅な旋律で癒し効果が高く、α波が出やすいです。
モーツァルト
クラシックのなかでもモーツァルトの曲は特に優雅で、脳に対する音楽的影響が高いです。
これをモーツァルト効果と呼んでいて、原曲の耳馴染みのある特性がα波を分泌させ、快適性をもたらします。
九州大学大学院人間環境学府の学術論文によれば、α波を助長するだけではなく、思考のマスキング効果もあると指摘しています(※)。
モーツァルトは特徴的な旋律を持っています。
その周知の音楽が他の思考をマスキングして、集中したい事柄を浮き彫りにさせることにつながります。
新しく刺激的な音だと、そちらに意識が持っていかれがちです。
しかし、モーツァルトのような癒し効果があり、かつ耳に馴染みやすいものだと、思考の底でストレスなくBGMとしての機能を発揮します。
それにより、雑多な思考を薄くさせて、真に集中したい事項にスポットライトを当てられます。
・集中力・記憶力に圧倒的効果のあるモーツァルトα波クラシック曲 勉強用・作業用BGM
バッハ
バッハもα波が出やすい曲を出していることで有名です。
特に「G線上のアリア」は有名で、聴いてみれば必ずこの曲知ってる、となるはずです。
知っている曲のほうが、音刺激に神経がいかず、思考のマスキング効果を期待できるのは前述したとおりです。
・バッハ「G線上のアリア」 Bach “Air on G String”
オルゴール
オルゴールの音色も、α波を引き出します。
オルゴールの旋律はいかにも癒しや心の落ち着きにつながりそうです。
赤ちゃんのベッドの横にオルゴールを置いておく家庭もあります。
大泣きしていた赤ちゃんが、オルゴールの音色でα波が促進されて、段々と大人しくなり、気づいたら眠ってしまった、というのはよくある光景です。
・すやすや赤ちゃん ~α波 ぐっすりおやすみ~ ディズニー,ジブリ,クラシックver 【オルゴール】
バッハの「G線上のアリア」も、オルゴールバージョンがあります。
自然音
自然の環境音も、α波を促進します。
環境音には、1/fのゆらぎが含まれていて、これがα波や各種有益なホルモンの発生につながります。
雨や波の音、風の音、小鳥のさえずりなど、環境音は数多くのものがあります。
人によって、好みが分かれるところです。
水系の音が人気
勉強中に聴くので人気が高いのは、雨や波、川の音といった水系の音です。
バイノーラル録音でより深い集中の底へ
こういった環境音は、バイノーラル録音のものを聴くと、実際にその場にいるような臨場感を味わえます。
バイノーラル録音というのは、人間の耳の構造を再現した録音機を使うものです。
それにより、音が立体的になります。
すぐ頭の後ろから聞こえたり、右斜めから左下へ音が流れていったり、非常に再現性が高いです。
東京ジョイポリスなどのアミューズメントパークにある3Dサウンドシアター系のアトラクションでは、このバイノーラル録音が取り入れられています。
実際に体験したことがある人も多いはずです。
バイノーラル録音は、臨場感が桁違いのために、より勉強に埋没できる可能性を秘めています。
注意点としては、当然にイヤホンが必須だということです。
スピーカーではバイノーラルの魅力を味わえません。
・雨・傘(夜)のバイノーラル録音、作業用・勉強用・睡眠用・集中力UP
勉強中の音楽についてまとめ
勉強の際に音楽を聴くのは、「ながら勉」だからやめなさい、と注意をする親御さんがいます。
しかし、楽しみにしていた好きなアーティストの新曲を聴くのなら格別、本文で紹介したような勉強に集中するためのBGMとして聴くのであれば、メリットが存在します。
特にクラシックやオルゴール、環境音はα波を促進し、幸せホルモンなどを分泌させる働きを持っています。
これらは勉強に有利に働くものですから、利用していくのも選択肢としてはアリだといえます。
また、勉強中に食べるおすすめの【お菓子】は以下の記事で紹介しています。
是非、あわせて読んでみてください♪
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。