「受験うつ」を軽くみないで、誤解しないで

軽くみないで受験うつ

受験うつ」という病気があります。

うつ病は、最悪、自殺を誘発する恐い病気ですが、受験うつは軽くみられている傾向があります。

また、受験うつについては、誤解も多いようです。

「自分は受験うつかもしれない」と感じている生徒は、SOSを出してください。

「うちの子は受験うつかもしれない」と感じた保護者は、子供のクリニックに連れていってください。

受験うつの実態と受験うつの対策を紹介します。

この記事は、精神科の医師や製薬メーカーの情報をベースに執筆しています。

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うつ病は「恐い病気」かつ「心の風邪」

受験うつを知る前に、うつ病について理解しておいてください。

うつ病を知らない人は、気持ちが塞がっていても「これは単なる気分の落ち込みだ」と考えてしまいます。

「うつな気分」と「うつ病」は似た症状が現れますが、明確に異なるものです。

嫌なことがあったり、悲しいことが起きたりすると、気持ちが塞ぎます。
これは「うつな気分」です。

一方で、医学的に病気と認定されるうつ病には次のような特徴があります。

  • 言葉では表現しようがないほど、つらい沈んだ気分である
  • 興味や喜びが失われている
  • 上記の2つの症状が「1日中続く」「毎日続く」「2週間以上続く」
  • 日常生活や勉強や仕事に支障が起きる

これら4つがすべて当てはまると、精神科医はうつ病を疑います。

そしてうつ病には「恐い病気」という性質と「心の風邪」という性質があります。

「最悪自殺も」「うつ病は治る」

札幌医科大学の河西千秋教授(精神科医)によると、自殺者のうち85%以上の人が、うつ病を含む何らかの精神疾患(疾患とは病気のこと)を抱えていました。

気分が落ち込み、それが長期化すると「死にたい」と思うようになってしまうのです。

だから、うつ病は「恐い病気」なのです。

うつ病を知らない人は、うつ状態にあっても「気持ちを切り替えればなんとかなる」と思ってしまいます。

しかしそれは間違った認識です。
風邪を引いたり、腹痛を起こしたりしたときに「気持ちを切り替えればなんとかなる」とは考えないのと同じです。

医師うつ病は、風邪や腹痛と同じように病気の一種です。
そのため、「気持ちを切り替える」くらいで治るものではありません。
その代わり、医師の診察を受け、治療を受けることで治癒(ちゆ)が期待できます。

うつ病は恐い病気であり、そして医師による治療で治ることが期待できる病気なので、早期に発見して早期に治療に取りかかったほうがよいのです。

これは、受験うつでも同じです。

なぜ軽くみられたり誤解されたりするのか

寝転ぶ男性それでは、なぜ、うつ病は軽くみられたり誤解されたりするのでしょうか。
それは、うつ病の症状が、怠けているように見えてしまうからです。

風邪を引くと熱が出て、咳をして、鼻水が出て、声がかれるので、一目で異常がわかります。
それで、自身も周囲の人も「病院に行かなければならない」と思うことができます。

しかし、うつ病に苦しんでいる人の症状は、一目見て異常とは思えません。

多くの人は、頻繁にサボってしまいます。
やらなければならないことがあっても、「面倒だから明日にしよう」と考えることは、誰もが経験したことがあるはずです。

うつ病の人が勉強をしなかったり、仕事をしなかったりしていても、それは外見上はサボっているようにも見えてしまいます。

それで、うつ病で苦しんでいる人に、「サボるな、勉強をしろ、仕事をしろ」と言ってしまう人がいるのです。

また、うつ病を発症している本人ですら、うつ病に関する知識がないと「最近、サボりがちだな、なんとかしなければ」と焦ってしまうことがあります。

どれだけ強く「勉強をしろ、仕事をしろ」と言われても、焦っても、うつ病の症状は改善しません。

「子供はうつにならない」と思わないで

受験うつには、大人のうつ病とは異なる恐さがあります。
それは、多くの大人が、「子供がうつ病になるはずがない」と考えていることです。

うつ病の原因は過剰な悪いストレスとされています。

大人は仕事や生活面で悪いストレスを受けることが多いので、うつ病を発症しやすいと考えられています。

しかし、多くの大人は「子供の生活は気楽なものだ」と考えています。
受験勉強についても、「勉強するだけでいいのだから、乗り越えられるはず」と思っています。

しかし精神科医は「受験うつで悩む子供は増えている」と警鐘を鳴らしています。

1524歳でうつ病を発症している人の割合は、うつ病患者全体の3.3%にもなります。

うつ病を発症する子供は意外に多いことがわかります。
つまり、子供たちも悪いストレスに囲まれているわけです。

受験のプレッシャーは、悪いストレスになり得ます。

受験うつの原因

受験うつの原因を紹介します。

よいストレスと悪いストレス

先ほどから「うつ病の原因は悪いストレスである」と紹介していますが、ストレスには良質のものと悪質のものがあります。

ストレスとは、心の負担なのですが、よいタイプもあります。
例えば、親や教師たちから「偏差値が高い大学を目指せ」という圧力をかけられ、その圧力によって勉強がグングン進む場合、そのストレスは良質といえます。

よいストレスは、受験うつの原因になりません。

引きこもり一方で、親や教師たちから「偏差値が高い大学を目指せ」という圧力をかけられ、「自分はもうこれ以上頑張ることができない」と思ったり「親の期待に応えられない自分は駄目人間だ」と思ったりしてしまうと、その圧力は悪いストレスとなり、受験うつの原因になり得ます。

このように、同じタイプのストレスでも、人のとらえかたによって、良質になったり悪質になったりします。

ストレスは「強さ」や「異常さ」も重要ですが、「受け手の状況」はさらに重要です。

3つの原因

受験うつの原因には、おおまかに3つのタイプがあります。

1つ目は、親や教師などの大きすぎる期待です。
期待の大きさと自分の実力に差があると、子供は不機嫌になったり、敵意を持ったり、欲求不満になったり、怒りを覚えたりします。

2つ目の原因は、モチベーションの喪失です。
特別な理由があるわけではないのに、勉強する気がなくなったり、入試に合格する自信を失ったりします。

理由がある場合もあります。
受験勉強がうまく進まなかったり、勉強しているという意識が強いのに成績が上がらなかったりすることで、モチベーションが落ちることもあります。

3つ目の原因は、比較と競争です。
ライバルの受験生より成績が落ちると劣等感を持つようになり、受験から逃げたくなったり、自己否定したくなったります。

これらの3つの原因が発生したときに、子供自身がうまく対処できないと、受験うつに進んでしまう可能性があります。

受験以外にも原因がある

受験うつは、受験や勉強以外のことが原因で発症することがあります。

10代後半は、「精神的な自立」や「異性への意識」「自分らしく生きたいという強い欲求」「自分は顔が悪い、容姿が悪いといったコンプレックス」などによって、心が揺れ動きやすい年代です。

また、親離れしたいという気持ちが強くなる年代ですが、親の支援なしでは何もできないことがしばしばです。
つまり、自立しようと思えば思うほど、挫折や傷つくことが増えます。

そして失恋も恋愛成就も、心に強いストレスを与えます。

こうした受験以外のストレスによって精神が痛めつけられている受験生は、そこに勉強ストレスが加わることで受験うつにつながりやすくなってしまいます。

受験うつ対策

受験うつには、次のような対策(※)があります。

  • 悪いストレスを探す
  • 見つけた悪いストレスを除去する
  • 受験勉強の先のことをイメージする
  • ストレスをコントロールする方法を身につける
  • 家族や友人に相談する
  • 精神科や心療内科のクリニックにかかる

これらは、軽症のうちは受験生自身が取り組んでもよいですが、症状が重くなると保護者や医療の力が必要になります。

ひとつずつみていきましょう。

※参考:https://www.shinjuku-stress.com/stresscare/examination-stress/

悪いストレスを探す

うつ症状を引き起こしている原因を特定しましょう。

なぜ「勉強したくない」と思ってしまうのでしょうか。
何に対してイライラするのでしょうか。

受験うつには、多くの場合、原因があります。
その原因は、必ず悪いストレスです。

実際の医療現場でも、うつ病の治療は悪いストレスを探すところから始めますので、受験生もまずはここから始めましょう。

見つけた悪いストレスを除去する

悪いストレスを発見できたら、それを除去しましょう。

例えば、親のプレッシャーが強すぎることが原因であれば、親は過度な期待を中断しなければなりません。
それでも親がプレッシャーをやめなければ、受験生は自らの身を守るために、その期待を無視しましょう。
自分の学力に合った大学や高校などを選べばいいのです。
うつ病を発症させてまで入学しなければならない学校はありません。

また、ライバルの存在がストレスになっていれば、模試を受けるのをやめたり、他人の成績を聞かないようにしたりしてはいかがでしょうか。
比較されることがなくなれば、ライバル・ストレスは除去できます。 

受験勉強の先のことをイメージする

女子高生気力が失せる場合、受験勉強の先のことをイメージしてみてください。

「大学に入ったら、自分は何をしたいのか」と自問してみてください。

または「大学に入ったら、絶対これをするんだ」というものを想像してみてください。

受験うつは、受験勉強という行為と入試合格という目標によって生まれます。
しかし受験生であれば、受験勉強も入試合格という目標も外すわけにはいきません。

そこで、受験の先のことをイメージすることで、今している勉強は「将来活躍するための準備である」と認識できます。

そうすれば、受験勉強や入試合格というプレッシャーが相対的に弱まります。

ストレスをコントロールする方法を身につける

ストレスには、「小さいうちに細かく解消すると溜まらない」という特徴と、「溜めすぎて一定量を超えると解消できなくなる」という特徴があります。

心は風船に例えられることがあります。

10の力を加えると割れるが、1の力なら何回加えられても割れない風船があったとします。

1の力が加わったらそれを除去し、また1の力が加わったらそれを除去し、これを繰り返せば、風船は割れません。
つまり心は壊れません。

しかし1の力が加わっても無視していると、次に1の力が加わると2の力になってしまいます。
するといつか10の力が一気に加わることになり、風船が割れます。
つまり心が壊れてうつ病が発症します。

小さなストレスを感じたら、放置せず、小まめに解消しましょう。

これが、ストレスのコントロール法です。

家族や友人に相談する

受験生は、「どうもいつもの自分と違う」「体調は悪くないのに調子が上がらない」と感じたら、家族や友人に相談しましょう。

「相談」という正式な形を取らなくてもよいでしょう。

家族や友人に「勉強の毎日でイライラしているから、ただただ自分の愚痴を聞いてくれないだろうか」とお願いしてみましょう。

これもストレス・コントロールのひとつになります。

精神科や心療内科のクリニックにかかる

「しんどい」「眠れない」「ベッドから出られない」「死にたい」という気持ちが2週間以上続いたら、医者にかかることを検討しましょう。

医者にかかって、「受験うつではない、別に原因があるはず」と言われれば、うつ病以外の対策を取ることができます。

医者に「受験うつの疑いがある」と言われれば、そのまま治療を受けることができます。

しかし、医者の診断がなければ、受験うつの対策もしなければなりませんし、受験うつ以外の対策もしなければなりません。
それでは症状を悪化させてしまうでしょう。 

保護者は早期に発見してあげて

受験うつの予防と対策には、早期発見が重要です。

受験生の保護者は、子供に次のような症状(※)をみかけたら、「受験うつかもしれない」と疑ってみてください。

  • 勉強が手につかない
  • 常にイライラしている
  • 悲しみや絶望を感じている
  • 「死にたい」と言う
  • スマホに過度に依存している
  • うまく眠れていない
  • 食欲がわかない
  • 食べ過ぎている
  • 休んでいるのに疲れた取れない
  • 体に異変が起きている

※参考:https://www.shinjuku-stress.com/stresscare/examination-stress/

保護者が我が子に、こうした症状を「1日中」「毎日」「2週間以上」観察できたら、医者に相談したほうがよいでしょう。

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まとめ~恐がらず油断せず

受験うつは、受験生なら誰にでも起きる可能性があります。

それは、一般的なうつ病が、誰にでも発症する可能性があるのと同じです。

「受験うつである」と断定されることを、恐いと感じる必要はありません。
風邪と同じです。
入試直前に風邪を引いて動けなくなれば、1年間の勉強が水の泡になります。
風邪対策を取るように、受験うつ対策を講じましょう。

そして、気分の落ち込みに油断しないでください。
模試で悪い結果が出て3日間落ち込むのは問題ありません。
ただなんとなく2週間にわたって勉強が手につかなかったら「まずいタイプの気分の落ち込みだ」と自覚してください。

そして、この記事で紹介した対策に乗り出してください。

この記事を監修した人

チーム個別指導塾
「大成会」代表:池端 祐次

2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。


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公開日:2019年12月20日  
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