北の大地、北海道。
広大な土地に、新鮮な魚介類、雪まつり等など…誇れるものが沢山ありますが学力・偏差値・教育環境はどうでしょうか?
そこで今回のコラムでは「北海道の学力って、全国と比較してどれぐらいなんだろう」「冬は雪で大変そうだけど、教育環境はどうなってるんだろう」こういった疑問について解説していこうと思います。
北海道は教育環境として適するのか?
結論から書かせて頂きますと…「北海道は教育環境として適する」と言えます。
学力や偏差値に関するデータと意外な調査結果もありますので、それを踏まえて「北海道は教育環境として適するのか」について、読者のみなさんもぜひ一緒に考えてみてはいかがでしょうか。
北海道の学力は全国の平均より下
学力の参考として文部科学省による「平成30年度の全国学力・学習状況調査」をご紹介します。
各教科の 平均正答率 | 小学校6年生 | 中学校3年生 | |||||||||
国 語 (A) | 国 語 (B) | 算 数 (A) | 算 数 (B) | 理 科 | 国 語 (A) | 国 語 (B) | 数 学 (A) | 数 学 (B) | 理 科 | ||
平均 正答率 (%) | 北海道 | 70 | 53 | 62 | 49 | 59 | 77 | 61 | 65 | 46 | 67 |
全国 | 71 | 55 | 64 | 52 | 60 | 76 | 61 | 66 | 47 | 66 | |
平均 正答率 (問) | 北海道 | 8.4/12 | 4.2/8 | 8.7/14 | 4.9/10 | 9.4/16 | 24.5/32 | 5.5/9 | 23.4/36 | 6.4/14 | 18/27 |
全国 | 8.5/12 | 4.4/8 | 8.9/14 | 5.1/10 | 9.6/16 | 24.3/32 | 5.5/9 | 23.8/36 | 6.6/14 | 17.9/27 |
このように全国的に見ると北海道の学力は、やや平均より低いことが分かります。
データだけ見ると北海道が教育環境として適していないように思えますが、これについては後述してまいります。
全国学力・学習状況調査とは?
上記にてご紹介した「全国学力・学習状況調査」とは日本全国の小学6年生・中学3年生の全員を対象に行われるテストです。
学力低下が問題視され、文部科学省より2007年からテストが開始されました。
テストの実施科目は以下の通りです。
- 算数(数学)A,B
- 国語 A,B
- 理科(3年に1回)
※Aは知識力を問う問題、Bは知識活用力を問う問題
また、学力を問う問題だけでなく、生徒の学習や生活環境のアンケート調査も行っています。
北海道の全国ランキングは?
次に、47都道府県の中で「北海道」の全国学力・学習状況調査に関するランキングをご紹介します。
【平成30年度】
・国語A➝30位
・国語B➝43位
・算数A➝33位
・算数B➝43位
・理科➝39位
・国語A➝13位
・国語B➝17位
・数学A➝32位
・数学B➝23位
・理科➝18位
北海道の小学校ランキングは悪いほうですね。
中学校も、まずまずのランキングだと思います。
平成29年、28年度については割愛しますが、順位は同じような結果でした。
もしかしたら、地域で差があるのでは?
「札幌や函館と、へき地では学力に差があるんじゃないの?」と思ってしまいませんか?
この疑問について調べた結果、確かに北海道の学力は地域差が非常に大きいことがわかりました。
札幌市の全国学力・学習状況調査は、北海道全体の平均と比較すると以下の通りでした。
- 小学6年生➝+1.25点
- 中学3年生➝+1.8点
それぞれの科目で+0〜3点となっています。
北海道では都市部ほど成績が良い傾向があるようで「札幌市」「函館市」「旭川市」の3都市合計の全国学力・学習状況調査と平均正答率は、小学校国語Aと中学校の全教科で、むしろ全国平均を上回っています。
そのため、一概に北海道は教育環境に適していないとは言い切れないと言えるでしょう。
北海道の3都市に関してはむしろ全国水準、それ以上とも言える学力を誇っているため、難関校の受験を志す生徒さんにも適していると言えます。
ここまでのまとめ
・北海道の全体では全国平均より学力が低い
・都市部では全国平均より学力が上回る
・その他の市町村では、全国平均を下回る
北海道の地域別の人口どうでしょうか
先ほどの全国学力・学習状況調査結果から、北海道地域の「人口」と「学力」は関連性が高いと思われます。
ここからは、少し北海道の人口について書かせていだきます。
北海道で一番人口が多い市町村といえば”札幌市”です。
その逆に、北海道で一番人口が少ない市町村は”音威子府村”( おといねっぷむら)です。
人口の詳細については、総務省統計局による平成27年の国勢調査を参考にすると…
・北海道全体➝5,383,579人(約540万人)
・札幌市➝1,953,784人(約200万人)
・音威子府村➝832人
この結果を見ると、札幌市の人口が多くを占めているのがわかりますね。
北海道全体の人口の「36.3%」となります。
また、札幌市、函館市、旭川市の人口上位3市では、北海道全体の人口の「47.5%」だそうです。
北海道内で179市町村あるわけなので、人口上位3市だけで約50% を占めるのは驚きですね。
音威子府村の人口832人もなかなかイメージが湧きませんが、満員電車1両でだいたい300人だそうですから、満員電車3両ぐらいでしょうか。
とても少なく感じますよね。
平成30年度、全国学力・学習状況調査の小中学校数、児童数の比較によると…
・小学校数➝203校 児童数➝14383人
・中学校数➝99校 児童数➝13804人
・小学校数➝1校 児童数➝2人
・中学校数➝1校 児童数➝4人
となっています。
学力や偏差値から少し話がそれてしまいましたが、北海道の地域による「人口の格差」が大きいことがより分かっていただけなのではないでしょうか。
ここからは、「人口」と「学力」の関連性について書いていこうと思います。
「北海道だけではなかった」地域によるの学力格差
北海道内で札幌市は
- 全国学力・学習状況調査の成績が良かった
- 人口比率が高い
ということがわかりました。
そこで”北海道地域の「人口」と「学力」は関連性が高いのではないか”という仮説を立てて検証してみましょう。
結果、北海道だけではなく、「多くの都道府県で地域による学力の格差がでる」という傾向があることがわかりました。
その理由は3つあります。
①モチベーションの違い
都市と地方を比べたとき「勉強に対するモチベーション」に違いが出やすいことがわかりました。
都市では、良い会社に就職するためには「学歴」が重要視される傾向があると思います。
地方では、就職に高学歴が必ずしも必要とされない傾向があるようです。
価値観の違いもあるみたいですが、単純に地方には高校や大学が都会に比べ極端に少なく、自分の偏差値だけで高校や大学を選べない理由があると思われます。(距離的な意味で)
地方で育ち、地方で就職を考えている児童にとって就職に高学歴が必ずしも必要ないとなれば、勉強に対するモチベーションの維持はむずかしいと思います。
ちなみに、北海道民は修学旅行でしか道外へ出たことがない方が割と多いそうです。
②需要と供給のバランス
人口が少ないということは、あらゆる機関の「需要」が減ることにつながると言えます。
需要が減るということは、「供給」も減ってしまいますね。
地方は都市に比べ、需要と供給は減ってしまっても土地の広さは変わらないまま。
北海道ならむしろ東京の約40倍の面積があります。
つまり、文具店・書店・学習塾・学校・自習できる施設などの勉強に関連する場所も「少ない」「遠い」ということになります。
参考書や学習塾へ行くのに、片道1時間や2時間以上バスや電車で行くことになったら、行くのがとても大変で、行く気にならないかもしれません。
③あらゆる機会の差がある
都市はありとあらゆる「人」や「物」、「情報」に溢れています。
そして、都会の生徒はそれらを浴びるように接していると思います。
例えば…
- 老若男女、外国人と様々な人
- 最新の家電や本、音楽
- ビッグデータ、AIなどの情報
- 優れた教職員、講師
こういった「人」や「物」、「情報」に触れる機会が地方に比べると多くなると思います。
必ずしも学力に良い影響を及ぼすとは言い切れませんが、児童の知的好奇心の刺激という意味では学力に影響するといってもいいのではないでしょうか。
また、様々なことを知る機会が増えるという点では、将来性を見出すきっかけや幅が広がることは確かでしょう。
北海道の偏差値はどれぐらい?
北海道にある高校・大学の偏差値は、以下の通りです。
- 高校➝36〜71
- 大学➝40〜68
このように幅広い差があります。
しかし、「学校の軒数」に着眼すると…
・高校➝285
・大学➝38
・高校➝435
・大学➝138
となっており、やはり北海道は東京の約40倍の面積があるにも関わらず、高校数、大学数ともに少ない印象が受けられると思います。
北海道では、児童によっては偏差値だけでなく学校までの距離も学校の志望動機に入るかと思います。
東京の学力がトップ!?違いました。
ここまでのデーターをまとめると、「都会のほうが地方より学力が高いのかもしれない」と思われがちですが、平成30年度、全国学力・学習状況調査を調べてみると東京の学力は、全国ランキングで「5位」であることがわかりました。
もちろん全47都道府県で5位というのは立派な数字です。
さらに、この全国ランキングを調べていると意外な事実が発覚しました。
- 秋田県
- 石川県
- 福井県
3県ともイメージ的には東京のような都会というイメージは少ないと感じている方も多いと思いますが、上記の3県が、全国学力テストのトップクラスだということです。
秋田県から学べる学力向上の秘訣「学びの十か条」とは
秋田県の教育方針には、秋田わか杉っ子「学びの十か条」というものがあります。
- 早ね早おき朝ごはんに家庭学習
- 学校の話題ではずむ一家団らん
- 読書で拓く心と世界
- 話して書いて伝え合う国語
- 難問・難題にも挑戦する算数・数学
- 新発見の連続、広がる総合
- きまり、ルールは守って当たり前
- いつも気を付けている言葉づかい
- 説明は筋道立てて伝わるように
- 学んだことは生活で学校ですぐ活用
1~10まで全てが、学力向上にも影響する点と言えます。
これは北海道のご家庭でも簡単に教えてあげることができそうですね。
「学び」に重要な習慣。授業を予習・復習すること
全国学力・学習状況調査ではアンケートも取っており、その項目の中で…
- 学校の授業以外で1日あたり1時間以上の家庭学習する児童
- 家で、自分で計画を立てて勉強する児童
- 家で、学校の授業の予習をする児童
- 家で、学校の授業の復習をする児童
といったものがあります。
秋田県はその全ての項目で全国平均を上回っていました。
家庭学習をする時間を大切にしているのでしょうね。
まとめ~教育環境がよくなくても学力は伸びる~
秋田県の「わか杉っ子学びの十か条」「家庭学習をする児童の比率の高さ」のような、学力向上の秘訣を教えることは学校や特定の都道府県、都市等の「場所」である必要はないと感じます。
学力向上の秘訣にまずは、家庭から実践できるのではないでしょうか。
これらの理由から「北海道は教育環境として適する」と言えるでしょう。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。