受験の難関である英語長文ですが、苦手な方も多く居られるようです。
英語で「分からないので教えてほしい」と相談に来る生徒の中でも最も多いのは長文の読み方に関する相談です。
長文問題は捨てると割り切ってしまう受験生も多いのですが、逆に考えると英語長文をマスターすれば他の受験生よりも大きなリードを持つことが出来ます。
つまり長文は狙い目であると言えます。
なお本記事の学習方法や考え方は高校受験だけではなく大学受験、その後の英語学習についても効果がありますので、英語学習に行き詰まったら読み返すようにして下さい。
英語長文が苦手になる理由と対策方法
英語長文が苦手な生徒に「具体的にどの部分が苦手か分かる?」と聞くとおおよそ3タイプに分類することが可能です。
その内訳は「単語」「文法」「記述(もしくは穴埋め)」の3種類です。
それぞれにきちんと対策方法をお答えいたしますので苦手な方はどうぞ御覧ください。
単語がわからない
単語が分からないと相談してくる生徒の皆さんには「単語だけを勉強しなくても良い」と伝える事にしています。
なぜなら単語が分からない生徒の皆さんは単語帳を見て単語をノートに書き続ける、もしくは単語帳&単語カードを見続けるという非効率的な方法で単語を学習しているからです。
確かに単語のみを学習する方法は昔から日本の受験で行われてきたもので、一定の効果があると思われがちですが、受験後に役に立つことは殆どないと考えていただいて結構です。
長らく日本では翻訳法で英語を学んできました。
そのため英単語1ワードに対してひとつ(もしくは2〜3個)の日本語訳を覚えてこられたかと思います。
多くの単語帳ではそのように作られています。
しかし、それだけでは長文に対応することは殆ど不可能です。
単語を勉強するのであれば生きた文章の中で意味を推測し、その後に辞書などをチェックし意味を確かめると良いでしょう。
現代ではスマートフォンという便利な機器がありますので、Weblioや有料アプリにはなりますがWISDOMを活用するとスムーズです。
要するにできるだけ多くの文章を読むことで単語を覚えつつ読解力を上げることが出来るという事です。
特別なことは何も必要ありません。
もし単語帳をお求めの場合は旺文社から出版されている「英文で覚える英単語ターゲットR」などが宜しいでしょう。
ただし英文の中には難しい単語が含まれているものもあるので、すぐには諦めず粘り強く取り組んでみて下さい。
中学生の皆さんは駿台文庫から出版されている「システム英単語 中学版」が最も良い選択です。
ただし、単語帳はあくまで「インプット作業の一環」としてのみ考え、それが単語学習の全てだとは思わないよう注意して下さい。
どこにどの文法が隠れているか分からない
長文学習で単語の次に分からないと言われる事が「文法」についてです。
定期テストの問題は、その単元の定着や習熟を測るために行われます。
そのため生徒の皆さんもある程度予想が立てやすく、解答する際もある程度見当がつきます。
しかし入試問題をはじめとする長文問題では多くの文法が長文の中に紛れ込んでおり、どこでどの文法が使われているのか全くわからないという事態が多く見受けられます。
この事態に対する対策方法もやはり「多くの英文を読み慣れる」という事が最も効果的です。
一番わかり易い文法が不定詞です。
中学校では「名詞的用法」「副詞的用法」「形容詞的用法」を取り扱いますが、英語長文の問題ではどの使い方をされているのか分かりません。
加えて不定詞は情報を付け加えるという性格上、長文の中でも頻繁に使用されているものです。
そのため不定詞をマスターするためには文章の中で前後の文脈から推測するなど読解の経験を積む事が一番の近道ということです。
文法を学習する上でよく見受けられるのが “have + PP:〜したことがある” のように文の一部を切り取ってまとめノートを作ってしまうことです。
これだと具体的にどのように使うのか分からないという事態が避けられません。
文法のみを切り取って訳をつける事は絶対にやめましょう。
記述(穴埋め)式問題が分からない
“Fill in the blank”のような問題に頭を抱えた受験生の皆さんは多いのではないでしょうか。
長文に空欄が設けられ適する語を選択するという問題を苦手な方も多いようです。
こちらに関しては「単語力」と「文法力」の両方に自信がない生徒の皆さんからの相談が多いようです。
穴埋め問題では単語を選ぶ問題や時制を選択する問題など様々な形式で出題することが出来るためです。
こちらに関しては単語力も文法力も求められる総合的な対策が必要となってきます。
対策方法についてはどちらも「多くの文章に出会う」という事で統一しているので、それぞれの気をつけたいポイントに関しては各項を確認していただきますようお願いいたします。
ただし虫食い式の問題には「一秒問題」と呼ばれる難易度の低いものも存在し、運良くその問題に当たれば必ず得点を稼ぐ事のできるポイントでもあります。
具体的に言うと「時制タイプ」と「前置詞タイプ」の二種類です。
前者から紹介すると ”He (空欄) his homework last night.” という文章に対して選択肢が “did, do, has done, has been done”と時制を選択するタイプの問題です。
論外なのは “do”と“has been done”の二種類。
”last night”の文言があるので昨晩のうちに宿題が終了していなければなりません。
”has done”を選択してしまうと「宿題をしたことがある」という意味になってしまい不適切。
そのため ”did” が正解となり「彼は昨夜、宿題を終わらせた」という意味となります。
時制についてよく分かっていればひと目で分かる内容です。
後者の場合は例えば “He looked his smartphone (空欄) check the train schedule.”という問題に対して選択肢が ”for, on, to, in”と選択肢が設けられているタイプのものです。
空欄直後に動詞があることから、不定詞とすれば良いと判断することが出来た方は問題ないでしょう。
ひとつの文に主語と動詞はひとつずつです。
不定詞は動詞の原形を用いていますが、動きを表す言葉として機能しているわけでは無いので注意しましょう。
正解は “to” で文章の意味は「彼は時刻表を確認すべくスマートフォンを見た」で良いでしょう。
※ toの後には「場所を表す言葉」か「動詞の原形」しか続かないので覚えておくと役に立つでしょう。
是非これを機に覚えておいて下さい。
受験の長文はどのように読めばいい?
ここまでは普段の勉強法についてお話してきました。
要点だけ述べておくと「出来るだけ多くの長文を読んで対策をする」という事です。
では具体的にはどのように長文を読み進めればよいのでしょうか。
絶対に和訳を行わない
この見出しをご覧の皆さんは驚かれたことでしょう。
実は長文読解に和訳は不要です。
和訳は時間がかかり効率が悪いだけではなく、英語を話す際に日本語を介してしまう癖がつくため将来的にも良くありません。
確かに慣れるまで大変であることは承知していますが、それでも取り組む価値はあります。
日本語を介さずに英語長文を読むためにどうすれば良いのでしょうか。
それは「イメージ化」です。
皆さんが日本語を話す場面を想像して下さい。
「りんご」と言われると「赤くて丸い果物」を想像するのではないでしょうか。
もしくはウサギの形に切られた物でも構いません。
とにかくリンゴという言葉から何かしらの画像をイメージすることが出来るはずです。
では “Apple” という言葉から連想される画像は何でしょうか。
こちらもやはり「赤くて丸い果物」でしょう。
中にはiPhoneを連想される方もおられるでしょう。
どちらも正解です。
要するに「言葉から日本語」ではなく「言葉からイメージ」を連想することが大切です。
更に分かりやすい例えをしますと “have” という言葉が挙げられます。
“have” という言葉の意味には「持つ」「食べる」「飼う」など多くの意味がありますが、コアとなる部分には「ある程度自分の近くにある物を対象にする」という共通点に気づくでしょう。
仮に上記の3つの日本語訳しか知らない場合に “I had a good time there”という文章を見た場合「いい時間を… 持つ?食べる?飼う?」などと困惑する事になります。
しかしコアの概念を押さえていた場合は「自分の身の回りに楽しい時間があった」というイメージを持つことが可能で、更に「良い時間をそこで過ごすことが出来た」という意味を掴むことが出来ます。
長文を解き進める際は意訳を推奨します。
直訳では日本語に馴染まない文章となる場合が度々起こるので絶対にしないようにしましょう。
できるだけ楽に問題を考える事も長文読解のポイントです。
鳥の目と虫の目を使い分けるべし
英語長文で一文いち文を丁寧に処理すると圧倒的に時間が足りません。
そのため最初はざっくりと文章のテーマを見るために流し読みをします。
これが長文読解を克服する第一歩です、上空から全体を見つめる事のできる鳥になぞらえて「鳥の目で見る」と言うこともあります。
ざっくりと「どの場所にどの様な情報が書いてあるか」を把握した上で設問を確認します。
内容を捉えられる自信がない方は先に設問を見て、どのようなトピックか予想して本文を鳥の目で見ても良いでしょう。
とにかく何が書いてあるのかを把握することに努めましょう。
内容と設問を確認した後で問題に取り組む事になるのですが、問題文で問われている事と対応する段落を見比べて解答を探すことになります。
そちらに関しては次の見出しで解説する事にします。
注目すべきは「各段落の第一文」
「ひとつの段落にトピックは一つ」これを覚えておけば長文問題の難易度が格段に下がります。
例えば全体的なトピックが「地球温暖化に関するもの」であれば、第一段落では導入文、次の段落では気温などのデータ、その次は筆者が考えている事… のように同じ段落でトピックが変わる事はありません。
そのため設問に「日本では海面温度が何度上昇していると述べていますか」という文言があればデータを紹介している段落を見れば良いという事です。
余裕があれば余白にキーワードを残して、目当ての段落を見つけやすくするという工夫を行うと良いでしょう(ただし時間をかけて行うものでもありませんので拘り過ぎには要注意)。
英語長文の対策に役立つ参考書
英語長文の対策に役立つ参考書を掲載しています。
どの様な参考書を買えばよいか迷っている方は参考にして下さい。
札幌や函館、北見などの都市部にある書店では間違いなく販売されているであろう有名な本を紹介しています。
またAmazonや楽天市場でもお求めになることが出来ますので、お近くの書店に並んでいない場合でも取り寄せが可能です。
大学入試ステップアップ 英語長文(受験研究社)
大学入試に向けて英語長文を押さえておきたい受験生の方に特にお勧めしたい一冊です。
基礎編、標準編、発展編と難易度が分かれている事に加えて収録されている英語長文は10本以上と多いことが特徴です。
そして特筆すべきはその値段で一冊600円ほど。
気軽に買い求めることが出来ます。
トピックも大学受験やセンター試験で取り扱われるような内容なので長文を集中して対策したい場合はお勧めです。
新中学長文問題集(教育開発出版)
中学生の方にはこちらの問題集をお勧めします。
一般的な公立高校入試で出題されるようなトピックを取り扱っており、長文の数は50本弱と圧倒的な収録数を誇ります。
A, B, Cとレベル別に豊富な数の問題が設けられており、受験生となる3年生の春から取り組めば余裕を持って受験に臨むことの出来るボリューム感となっています。
インターネット上から音声をダウンロードすることが可能なのでリスニング対策を行うことも可能です。
一億人の英文法(東進ブックス)
長文読解をメインに取り扱った参考書ではありませんが、長文読解に役立つコンテンツが多数収録されているのでご紹介します。
一億人の英文法では「話すための英語」をテーマに文法や単語を解説しています。
英語をスムーズに話すことに重点を置いているため、脳内で英語を素早く回すためのコツが満載です。
インプット・アウトプットを素早く行うことは余裕を持って長文を読む事に直結するので、余裕の有る方は試してみて下さい。
まとめ
英語長文は多くの受験生が苦手としている分、しっかりと対策すれば他の受験生との差が広がるポイントです。
攻略するためには生きた英語長文を読み、できるだけ多くの単語や文法に慣れ親しむことが重要です。
勉強のコツはできるだけ日本語を介さないことや一秒問題を落とさない事など、受験勉強に悩んだときには本記事を読み直して下さい。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。