ゲームは悪い影響があるから、子どもにあまりやらせたくないという親御さんは多いです。
ただ、ゲームは悪い影響ばかりではなく、子どもにとって良い効果を与える側面もあります。
そこで今回は、ゲームが子どもに与える影響について、良い面と悪い面、さらにそれが脳へどのような効果を及ぼすのか、このあたりについてみていきます。
ゲームの記事に関連して、eスポーツと呼ばれる競技についても過去に紹介しています。興味がある方はこちらも併せてご覧ください。
家族関係への良い影響
ゲームの良い影響の1つとして、家族の関係性を強めることが挙げられます。
たとえば、兄弟間についてみてみます。
兄弟関係
兄弟は、たとえば成長してくると、互いにやっているスポーツが違っていたり、同じでも所属しているカテゴリーが異なっていたりします。
そうなると、小さい頃は近くの公園でよく一緒に遊んでいた兄弟も、それぞれのコミュニティーを持ってそこがメインとなります。
お兄ちゃんは地元のサッカーチーム、弟はミニバス、といった具合です。
兄弟は成長につれ疎遠になる
スポーツというのは、基本的に1つのものに集中するものです。
特に学生のうちは、月曜はバスケ部に行くけれど、火曜はサッカー部に行く、などということはできません。
小学生の頃が唯一、まだ部活ではないことあって、学校のクラブ活動はサッカーをしているけれど、放課後のスクールではテニスをしている、などということもあります。
ともあれ、そういった子も中学に入って部活に属せば、やはり当該部活に専心することになります。
このとき、兄弟で一緒のものに夢中になることが少なくなります。
となると、兄弟間の会話が少なくなり、コミュニケーションが上手く取れず、日頃の不和が喧嘩につながりやすくなります。
ゲームが兄弟関係をつなぎとめる
アメリカ、ユタ州の名門私立大学であるブリガム・ヤング大学が行った調査によると、ゲームを一緒にやる兄弟は関係が良くなるという結果が出ています(※)。
※参考:Brigham Young University Video games are good for girls – if parents play along
最近では、PCやiPadで行うバトルロワイヤル系の協力ゲームが流行っています。
PUBGやフォートナイトといったタイトルは、日本で今最も勢いがあります。
PS4やSwitchでもプレイできるようになっていて、より多くのゲーマー層を取り込んでいます。
このゲーム性は、特に他のプレーヤーと殺し合うなかで、味方と協力して生き残ることに醍醐味があります。
他のプレーヤーが全て敵ではないことが重要です。
■PUBGでは兄弟が協力する
たとえばPUBGでは、銃を手に入れて他のプレーヤーの頭を射抜き(ヘッドショット)続け、他のプレーヤーを全て倒せば(味方以外)、ドン勝(最後まで生き残ること)を取れます。
そしてもし自分がヘッドショットなどを喰らったとします。
このとき、ソロプレイでは即死亡ですが、味方がいるといったんは「気絶(ダウン)」の状態になります。
もう一度一定のダメージを食らうと死にますが、気絶中に味方に蘇生してもらえば復活できます。
兄弟で協力してプレイしているなか、たとえばお兄ちゃんが相手の銃弾を喰らいダウンしているときに、弟によって助けられる、というドラマティックな出来事が起こります。
たとえゲームのなかでも、弟に助けられたとなると、ありがとうや弟のおかげで助かった、という脳に感謝の念がインプットされます。
・勝つためにコミュニケーションが必須
恩を感じている相手に、普段の生活で意地悪なことを言ったり、したりすることはなくなるものです。
PUBGのようにドン勝を目指すゲームであれば、声の掛け合いが必須の要素となります。
良い武器を拾ったら相手にいるかどうか聞いたり、敵を見つけたらいた方向を教えたりします。
このように協力をしていくなかで、自然とコミュニケーションが生まれ、ゲーム外でも自然と会話ができるようになります。
親子関係
上記の図式は、もちろん兄弟間だけではありません。
前出のブリガム・ヤング大学の別調査では、家族間のコミュニケーションにも良い影響を及ぼすことが分かっています(※)。
※参考:Brigham Young University Video Games Can Make Brothers Cooperate Better: A Study
特に女子がいる家庭では、家族のつながりがより良くなったり、子どもの心がより強くなるという調査結果が出ました。
マリオカートやWiiスポーツなどを家族と一緒にすることで、やはり自分一人でやるよりも家族と一緒にやったほうが楽しいという情報が、脳に刻まれます。
それが総じて家族と一緒にいると楽しいという認識に摩り替わり、もって家族と一緒に過ごす時間が増え、その影響もポジティブなものになりやすいです。
ゲームによる学習効果
ゲームには学習効果があります。
脳トレや英会話系のゲームソフトではなくても、学習面での恩恵があります。
かつてのファミコンは、ゲームに出てくる文字は全て平仮名でした。
しかし、今では普通に漢字が出てきます。
たとえばRPGで、南東の小島にある洞窟の地下5Fで勇者の紋章が手に入る、とあったとします。
これを理解するには、東西南北を理解していないとできません。
そして地下5Fというのを憶えておかなくてはなりません。
さらに紋章というやや難しい漢字も字面を把握して読めることにつながります。
このように、ゲームを通して記憶力や方向感覚、語彙を増やしたり、攻略のために論理的な思考力を養ったりすることができます。
英語学習も可能
日本語の理解がゲームで補えるだけではありません。
最近では、ネットゲームが主流になっている関係で、英語の学習も可能になっています。
たとえば、前掲のPUBGでは、会話をしながらプレイすることが必要だと述べました。
そして、外国人とチームを組んでプレイすることもできます。
このとき、もちろん、日本語は通じませんから、共通語である英語を話すことになります。
対面でないのでゆっくり話せる
言語は、基本的に対面でのシチュエーションのほうがハードルが上がります。
すぐに応答しなければならないので、やはり即座に文章を頭で考える必要があります。
しかし、英語で話すことに慣れていないと、上手く文が出てこず、黙り込んでしまうケースがあります。
チャット形式で、しかもゲーム中であれば、ある程度のブランクタイムは許されます。
相手も、今は集中しているのかな、と考えます。
こちらも相手が自分をじっと見ているなど切迫感がないので、なんて言おうかじっくりと考えられます。
定型的な文章で対応可能
また、ゲームでは、長い文を考える必要はありません。
ある程度定型的な文章を憶えておけば、それだけで成立させることもできます。
たとえば、チームでプレイしていると、自分が手に入れたアイテムを味方の誰かが欲しい場面があります。
その意向を確かめることが、よくあります。
このときは、「Does anyone want ~?」という定型文を憶えておけば済みます。
~には、M24など味方に渡したいアイテム名が入ります。
ネイティブが普通に喋ってくると、まだ英語に慣れていない人の耳だと全く何を言っているか分からないことがよくあります。
このときは、「please speak more slowly」と伝えましょう。
もっとゆっくり喋ってください、という意味です。
このように、ゲームをプレイしているなかで、必要な文や単語を憶えていくことが求められます。
これにより、言語能力が必要性のなかで自然にアップしていきます。
ゲーム障害というリスク
2019年5月にWHO(世界保健機関)がゲーム障害を精神疾患として認定しました。
これについては、関係各所から様々な批判的声が聞かれます。
ゲームを長時間していても、皆がゲーム障害ということはありません。
WHOでは、ゲームをする時間を自分でコントロールできず、ゲームに対する優先度が他に比して甚だしい状態を、ゲーム障害と定義しています。
仕事や学校よりも、ゲームを優先してしまい、やめたくてもやめることができないのであれば、それはやはりゲーム障害という一種の病気といわざるを得ません。
ゲームを夜明けまでしたら明日起きれなくて会社や学校に行けないのが分かっているのにするのだとしたら、それは文字通り障害です。
ゲーム障害と脳の関係
特にゲーム障害を発症している人は、前頭前野の動きが鈍くなっているのが特徴です。
前頭前野は、理性を働かせる部位です。
理性が働かないために、己の欲求のままにしたいだけゲームをして、つぎこみたいだけ課金をします。
そして日常生活のパフォーマンスが著しく下がり、ゲームのために借金を抱えたりします。
とりわけ小学生や中学生がゲーム障害に陥りやすいというのはここに原因があります。
つまり、まだ脳の発達が未熟で前頭前野が大人ほど活発に働かないところ、ゲームのしすぎによってより働きが悪くなるわけです。
子どもの頃にゲーム障害を起こすと、完治が難しく、大人になってなお影響を及ぶすことが多いです。
ゲーム障害で日常生活ができなくなる
前出のようにゲームは家族関係を良好なものにするなど、良い側面があります。
しかしその一方で、やりすぎて歯止めが利かなくなると、脳に悪影響を及ぼし、日常生活にも支障をきたします。
学生だと、遅刻の頻発や不登校、退学といった問題が生じます。
大人になれば、無断遅刻・欠勤、やがてクビとエスカレートします。
ゲーム障害とネット依存症
ゲーム障害は、ネット依存と性質が似ています。
先述のように最近ではパソコンを使ったオンラインゲームが主流になっていて、こちらのほうが依存性が高く、ゲーム障害を引き起こしやすいです。
ネット依存にはもちろん、ネットゲームへの依存も含まれます。
SNSなどへの依存だけではなく、ゲームもまた、ネット依存の大きな構成要素となっています。
ゲーム障害の治療方法
ゲーム障害は、自力で治すことが難しいです。
ゲームへの依存が深刻になって初めてゲーム障害となるからです。
そのため、ゲーム障害を治療するには、病院の助けがいります。
既に述べたようにより広義のネット依存を治療するという診療科目で、実施しているケースが多いです。
たとえば、久里浜医療センターでは、インターネット依存症治療部門を設けています(※)。
丁寧な診察を通して、問題点を把握します。
そのうえで、解決のために認知行動療法を行ったり、運動、健康面でのレクチャーを実施したりします。
必要性がある場合には、6~8週間の入院治療を行うこともあります。
ゲーム障害が重度である場合、通院での治療では足りないケースがあります。
入院治療をすることで、生活を根本から改め、悪化した脳の働きを改善していきます。
ゲームの良い影響と悪い影響についてまとめ
今回は、特にゲームが子どもに与える良い影響と悪い影響についてみてきました。
ゲームは良好なコミュニケーションツールとして機能します。
ゲームを一緒にやることで、家族に会話が生まれ、関係が良くなるという事例がよくあります。
さらにゲームは自然と学習効果を発揮します。
特に英語に触れられるというのは、現代のゲームの大きな利点です。
一方で、やはりやりすぎは日常生活に支障をきたし、脳にも悪い影響があり、そのうえ治療には通院・入院が必要になるなどリスクが大きいです。
この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。