2009年度より北海道公立入試で導入されていた学校裁量問題。
しかし、2022年度より廃止されることが発表されました。
道教委は21日、道立高校入試の改善基本方針を発表した。学力検査は2022年度(令和4年度)から学校裁量問題を取りやめ、配点を100点満点、解答時間を50分に変える。インフルエンザにかかった場合の追試験を21年度から行う。
一般入学者選抜の学力検査においては、これまで、生徒の多様な個性や能力をきめ細かく評価するとともに、各学校の特色を生かした選抜ができるよう、平成21年度入学者選抜から「学校裁量問題」を実施してきたところであるが、新学校指導要領の趣を踏まえ、基礎的・基本的な知識及び技能の習得とともに、思考力、判断力、表現力等についてもバランスよく問うことに留意し、知識及び技能を活用する力に関する出題の充実に配慮する必要がある。
学校裁量問題は2009年度から北海道の公立高校入試において、当たり前のように存在するものであったため、その廃止には関係者や学生の間には大きく衝撃が走りました。
当記事では改めて学校裁量問題について説明するとともに、具体的な変更点、変更による影響などを考察いたします。
学校裁量問題とは?
まず簡単に学校裁量問題について説明しましょう。
学校裁量問題とは公立高校入試で出題される国語・数学・英語の問題の一部を難易度の高い問題にするというものです。
学校裁量問題の導入以前には公立高校入試の難易度があまり高くなく、上位層にほとんど得点差がつかないことにより、たった1つのケアレスミスによって合否が決まってしまうという問題を解決することにより導入されました。
以下に北海道新聞による学校裁量問題の説明を引用します。
学校裁量問題 2009年3月の道内高校入試から採用。5教科のうち英語・数学・国語の問題の一部で、全道一律の標準問題とは別に、「思考力・応用力」を重視した難度の高い問題を用意。差し替えるかどうかは学校ごとに選択できる。
当時の標準問題は成績上位層にとっては易しく、点数が高得点に集中。不注意による1、2点の差が合否を分けた。裁量問題は単なる暗記では対応できない、複数の知識を結びつけて解く問題とされ、導入で点差がつき、上位層の学力向上にもつながると期待された。
導入校は近年も増加傾向で19年3月入試では札幌南や旭川東、函館中部などの進学校を中心に45校が採用。20年3月入試では46校が行う。
具体的にどのように変わった?
では今回の学校裁量問題廃止によって、公立高校入試はどのように変わったのかをご説明します。
検査問題
検査問題の内容は学校裁量問題の廃止により、全ての生徒に同一の内容が出題されるようになりました。
試験時間の変更
試験時間は各教科45分から50分と5分間延長されました。
配点の変更
配点が各教科60点満点から100点満点へと変更されました。
インフルエンザ罹患者等への対応
入試内容とは直接的に関係ありませんが、学校裁量問題の廃止と併せてインフルエンザ罹患者などに対して追検査の機会が設けられることが発表されました。
こちらの制度は学校裁量問題廃止よりも一年早く、2021年度(令和3年度)から実施されます。
当然問題は変更された内容となるため、入試難易度の統一といった問題はあると思います。
が、3月は風邪をひきやすい時期でもあるので非常に有用な制度と言えるでしょう。
定時制の自己推薦による選抜を実施
こちらも入試内容とは直接関係ありませんが、定時制課程の多様な学習ニーズに対応することを目的に、自己推薦による選抜を実施されることもまた発表されました。
学校裁量問題の廃止と同様に2022年度(令和4年度)から実施されます。
変わったことによる受験生の影響は?
北海道でトップの公立高校としてよく名前が挙がる札幌北・札幌南・札幌西・札幌東などを筆頭に、上位校への入学を考えている学生にとって特に大きな影響がある学校裁量問題の廃止。
ちなみに2019年度では道内で46校が学校裁量問題を採用していました。
では、これが廃止されることによって受験生にはどのような影響があるのでしょうか?
現状として廃止後の検査内容がはっきりとしていないので、あくまで予測とはなりますが、その影響を以下に説明いたします。
学習レベルの低下は何とも言えない
学校裁量問題が廃止される、と聞いて多くの方がまず連想したのは「学生の学習レベルが低下する」ということでは無いでしょうか。
確かにそもそも学校裁量問題が導入されたのは入試難易度をあげるためであり、それが無くなるということであれば学生の学習レベルが下がるのは当然のことのように思えます。
しかし、これに対しては必ずしもそうとは言えません。
何故なら、道教委が学校声量問題の廃止に際して以下の内容を発表しているためです。
道教委は21日、道立高(全日制)の一般入試学力検査について、2022年3月実施分から、難度が高い選択制の「学校裁量問題」を廃止し、基礎的な内容と、思考力などを問う高難度の内容を組み合わせた入試問題に一本化すると発表した。21年度に中学校で全面実施される新学習指導要領が「思考力・判断力・表現力」を重視しているため。
〜中略〜
新しい問題は、基礎的内容と、思考力・判断力・表現力などを問う高難度の内容をバランスよく組み合わせて作成する。現在は学校によって、標準問題だけの入試と、一部を裁量問題に差し替えた入試があるが、全ての受験生に同じ問題を課す。
上記のように新しく出題される問題内容は「思考力・判断力・表現力」を重視した内容になる、と報じられています。
よって、学校裁量問題と同等に単なる暗記だけでは解くことのできない思考力が必要な問題が出題される可能性が高い、と結論づけることができるでしょう。
そのため学校裁量問題が廃止されたからといって、一概に学生の学習レベルが下がるとは言えないのです。
実際に2022年度以降の出題内容が明らかにならないと何とも言えないところではありますが、それほど大きな学習レベルの低下が引き起こされることはないと思います。
二極化が激しくなる
学習レベルに関しては出題内容によるところも大きい一方で、引き起こされる可能性が高いとされているのが「学生の二極化」です。
上記で引用したように学校裁量問題を廃止した理由は、思考力などを重視した内容を全生徒に対して出題するため。
つまり暗記でカバーできるような基礎的な問題を得点源としていた下位層が、勉強に全くついてこれなくなってしまい「入試が難しすぎるから勉強しても無駄」と考えて、ますます上位層と差が生まれていく可能性があるのです。
そうすると高校入学時には圧倒的な学力差が生まれてしまい、北海道全体で見ると学習レベルの低下が引き起こされる可能性が生じます。
各中学校は、下位層の生徒でも思考力を必要とする問題にうまく対処できるような能力を与えることをより念頭において指導を行わなければなりません。
内申点の重要性
公立高校の受験では入試当日の得点と同様に内申点も非常に重要ですね。
北海道では当日の得点5:内申点5の割合で合否判定を行っています。
今回の変更により当日点は300点満点から500点満点へと変更されましたが、もし合否判定がそのままであれば、あくまで割合で決定されるため満点が何点であっても合否には関係ありません。
そのため、内申点の重要性も変化しません。
現状として特に合否判定については何も発表されていないためこのままである可能性も高いのですが、それだと上位層で点差がつきにくく学校裁量問題導入以前の問題を抱えてしまうことが考えられます。
また全校的には入試当日の得点と内申点を単に加算する加点方式を採用している自治体も多く、より差がつきやすくするためにこの方式に変更されることも可能性としては捨てきれません。
また現状の合否判定のままだとしても、割合を当日の得点5:内申点3にするといったこともありえるかもしれません。
つまり学生間で得点に差がつきやすいように、内申点の重要性が下がる可能性があるのです。
現状としては何とも言えませんが、このような可能性があることは頭に入れておくと良いでしょう。
まとめ
多くの学生や教育関係者を驚かせた学校裁量問題の廃止。
実施が2022年度以降ともあり、その影響はまだどのようなものかわからないことも多いですが、学生の学習内容が異なってくることは間違いないでしょう。
特に、ある程度暗記さえすれば十分に志望校合格を狙えた下位層や中間層の学生にとってその影響が大きいことが予想されます。
学校裁量問題の廃止によってどれほど学校での指導内容が変わるかということもまだ判然としませんが、変わった場合にも指導内容が十分でなく、あっという間に授業に置いていかれてしまう可能性もあります。
そのような場合は塾に通うなどして適切な対応をとるようにしましょう。
そもそも今回の変更が行われたのは「思考力・判断力・表現力」を全学生が培えるようにするためです。
これらは急速に変化を続ける現代では、ますます重要性が高まっている能力です。
高校受験に際してそこまで考えることはなかなか難しいと思いますが、2022年度以降の出題が上記の目的に沿った適切なものであれば、これからの将来において役立つ能力が身につけられることは間違いありません。
「もしかしたら入試が難しくなるかもしれない」とネガティブに捉えず、前向きに新たな学習内容に取り組まれてください。
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この記事を監修した人
「大成会」代表
池端 祐次
2013年「合同会社大成会」を設立し、代表を務める。学習塾の運営、教育コンサルティングを主な事業内容とし、札幌市区のチーム個別指導塾「大成会」を運営する。「完璧にできなくても、ただ成りたいものに成れるだけの勉強はできて欲しい。」をモットーに、これまで数多くの生徒さんを志望校の合格へと導いてきた。