ホームスクールという道

【小学校に通わせない】ホームスクールをどう考えるか

小学校での教育は義務教育なので、「子供は絶対に小学校に通わせなければならない」と考えている人は少なくないと思いますが、その認識は10%ほど間違っています。

「子供は小学校に通わせなければならない」のは事実ですが、「絶対に」ではありません。
文部科学省は「小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱い」を定めていて、小学校に通わない子供を中学校に入学させる道を用意しています。

ホームスクールも、小学校に通わせずに中学校に進学する道です。
ホームスクールは、子供を家庭で教育する仕組みのことで、保護者が居間で子供に国語を教えても、ホームスクールです。

「小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱い」について

ホームスクールの仕組みを紹介する前に、なぜ小学校に通わない子供が中学校に進学できるのか解説します。

文部科学省が定めた特別ルール

原則は、小学校に通い、定められた教育を受け、定められた学力を身につけ、小学校を卒業した子供しか、中学校に入ることはできません。
そして原則、保護者は子供を小学校に通わせなければなりません。

文部科学省しかし、不幸な事情を抱えた子供や、不登校に追い込まれた子供にまで「小学校を卒業しないと中学に入学させない」としてしまうと、もうひとつの義務教育である中学教育を受けさせることができませんし、その後の高校や大学といった進学もできなくなってしまいます。

そこで文部科学省は、小学校に通っていない子供を中学校に入学させるルールをつくりました。
その内容は20166月に、都道府県教育委員会などに「小学校等の課程を修了していない者の中学校等入学に関する取扱いについて」という通知で周知しました。

誰でも選択できるわけではない

この通知によれば、小学校に通わずに中学校に入学できる子供は次のとおりです。

  • 保護者による虐待や無戸籍といった複雑な家庭の事情や犯罪被害等により、学齢であるにもかかわらず居所不明となったり、未就学期間が生じたりした子供
  • 不登校等により長期間学校を欠席する間に、やむを得ない事情により小学校未修了のまま小学校相当年齢を超過した子供
  • 病弱や発育不完全等の理由により、小学校相当年齢の間は就学義務の猶予または免除の対象となっていた子供
  • 海外から帰国した子供が、重国籍や日本語能力の欠如といった理由により、就学義務の猶予または免除の対象となって外国人学校の小学部等に通った子供
  • 日本国籍を有しない子供がいったん外国人学校の小学部等に通った後、経済的な事情や居住地の変更等といった事情がある子供

かなり複雑な事情を抱えた子供に限り、特別な措置が受けられるわけです。

学習支援は必要

小学校は通わなくてよいものの、子供に小学6年生レベルの学力がないと中学に入ってから苦労します。
そこで文部科学省は都道府県教育委員会に対し、小学校に通わずに中学に入学しようとする子供がいた場合、市町村教育委員会と学校が、学校支援組織やNPOなどの民間団体と連携して、個別の支援計画や教材を準備して、学習支援や進路指導を検討するよう指示しています。

ホームスクールは、「市町村教育委員会と学校が、学校支援組織やNPOなどの民間団体と連携すること」に準ずることになります。

ホームスクールの定義はあいまい

ホームスクールの定義はあいまいで、1)小学校ではなく、家庭などで保護者などが子供に勉強を教える、2)適切な年齢に達したときに小学校を卒業する手続きをする、といったことくらいしか決まっていません。

1)についてですが、ホームスクールによる家庭学習では、「文部科学省の小学校学習指導要領に基づいた学習をさせなければならない」「文部科学省が承認した教科書を使わなければならない」「教員免許を持った者が教えなければならない」「塾に通わせなければならない」といった決まりは一切ありません。

保護者は何を教えてもいいですし、子供は何を何時間学んでも構いません。

また学習した内容をどこかに報告する義務もありません。

2)についてですが、地元の小学校や市町村教育委員会とまったく接触のないままホームスクールを実行することはできません。

ある日突然、親が12歳の子供を小学校に連れていき、校長に「この子をホームスクールで教育しましたので、ここの小学校を卒業したことにしてください」と依頼することはできません。

ホームスクールをする保護者と子供は、市町村教育委員会と小学校に「事前に」相談する必要があります。

事前に相談して、市町村教育委員会と小学校の許可または了解を取ることでホームスクールを始め、6年間ホームスクールを行い、小学校を卒業したことにしてもらう必要があります。

どのような子供がホームスクールに向いているのか

保護者の方は、自分の子供がホームスクールに向いているかどうかを考える前に、やはり「どうにかして小学校に通わせることができないか」と考えてみてください。

それは、どれだけ手厚くホームスクール態勢を整えたとしても、小学校よりよい内容の小学教育を授けることは実質的に不可能だからです。

例えば、超優秀な家庭教師陣を編制して、ホームスクールで英才教育を行ったとします。
それで学力は伸びるかもしれませんが、同学年や上の子や下の子と交流する機会がほとんどなくなるデメリットを補うことはできないでしょう。

保護者は、子供が「小学校に行きたくない」と言ったからといって、すぐにホームスクールを検討することがないようにしてください。

子供に小学校に行きたくない理由を尋ね、その理由が誤解や無理解に基づくものであったら、考えを修正してあげて、小学校に通う楽しさや意義を教え諭してあげてください。

佇む女の子ホームスクールに向いている子供は、小学校の集団生活にどうしてもなじめない子供となるでしょう。

また、保護者自身が「日本の小学校教育はなっていない」と考えていたり、「うちの学区にはろくな小学校がない」などと思っていたりしたら、それはあらためたほうがよいかもしれません。
日本の小学校教育は世界的にみても高いレベルにあります。
小学校のことをしっかり調べれば「なっていない」というネガティブな印象は払しょくできるはずです。

もし、近所に保護者が気に入る小学校がなかったら、越境通学や全寮制の小学校を検討したほうがよいでしょう。

ホームスクールを検討するのは、最後のほうにしておいたほうが無難です。
そうしないと、「小学校で学ぶ機会を子供から奪う」ことになってしまいます。

ホームスクールの始め方

ホームスクールを選択するしかないと判断できたら、保護者は次の4項目に着手してください。

  • 子供の意思を確認する
  • 市町村教育委員会と小学校の校長に相談する
  • 学習カリキュラムを検討する
  • いつでも小学校に行ける準備をしておく

どれもとても重要なので詳しく解説します。

子供の意思を確認する

保護者は小学校に通ってもらいたいと思っているものの、子供がどうしても小学校に行きたくないと主張している場合、親は何度も「本当に小学校に通わなくていいのか」と確認してあげたほうがいいでしょう。

子供が「親がそこまでいうなら小学校に行ってみるか」と思えば、それに越したことはありません。
実際に小学校に通ってみて、子供が「やっぱり肌に合わない」とわかってからホームスクールを始めても遅くはありません。

市町村教育委員会と小学校の校長に相談する

ポーズをとる女性ホームスクールを始めると決めたら、保護者は市町村教育委員会と学区内の小学校の校長に相談に行ってください。

市町村教育委員会と小学校の校長がホームスクールの実施を承認していないと、子供を「小学校を卒業したことにしてもらう」ことができなくなります。

このとき保護者は、協力を仰ぐ気持ちを持っておいてください。
つまり、対立姿勢を持たないようにしてください。

「うちの子には特別な事情があるので、ホームスクールの形式で子供を教育することに協力してください」という気持ちで臨んだほうが無難です。

「ホームスクールで小学校を卒業した子供は全国に何人もいるのだから、うちのケースでも認めなさい」という強硬姿勢は取らないほうがいいでしょう。

教育委員会も校長も、保護者に、小学校に通う意義や小学校に通わせない不利益を、何度も説くでしょう。
それもしっかり聞いてください。

校長によっては、保護者に授業をみてもらったり、担任となる教師と面談させたりするかもしれません。
それにも応じてください。

保護者が真摯な態度を取ることで、「小学校を卒業したことにしてもらう」手続きがスムーズに進みます。

そして保護者は、校長が変わっても、「小学校を卒業したことにしてもらう」約束が消えてしまわないように、市町村教育委員会にも「小学校を卒業したことにしてもらう」約束をしてもらいましょう。

市町村教育委員会や小学校によっては、ホームスクールを始める子供にも教科書を無料で供与してくれることがあるので、受け取ってください。

学習カリキュラムを検討する

ホームスクールを実施する以上、保護者は学校を模した教育を子供に授けたほうがいいでしょう。
ホームスクールの内容は自由に決めることができますが、教科書に沿った勉強をさせたほうが将来に役に立つはずです。

保護者は教科書や小学校学習指導要領を熟読して、6年間の学習カリキュラムを作成してみてください。
学習カリキュラムといっても厳密なものでなくても大丈夫です。
「国語の教科書は1カ月で○ページ進む」といった大まかな内容でも構いません。

それを文書にしておいたほうがいいでしょう。
子供の励みになりますし、それを校長に提出すれば、校長も安心できます。

学習カリキュラムには、塾やオンライン教材などを採り入れてもいいでしょう。

校長によっては、ホームスクールを認める代わりに、定期的な面談を求めるかもしれません。
例えば、校長が保護者に「半年に1回、保護者と子供が校長室を訪れ、1カ月の様子を報告してもらいたい」と依頼したら、可能な限り応じるようにしてください。

いつでも小学校に行ける準備をしておく

学校の支度子供が急に「小学校に行きたい」というかもしれません。
保護者はそのときに備えて、いつでも学校にいけるようにしておいてください。

そのためには、校長だけでなく市町村教育委員会にも、小学校に通う段取りを確認しておいてください。
小学校に通うには、机や椅子、ロッカー、下駄箱、給食などさまざまな用意が必要だからです。

また、保護者が「子供が小学校に通いたいと言い出したときの準備」をすることで、校長や市町村教育委員会は、保護者に好印象を持つでしょう。
その好印象が、保護者と校長と市町村教育委員会の信頼のベースになります。 

コミュニケーションをどう教えるか

子供をホームスクールで教育するとき、勉強もさることながら、コミュニケーション力をどのように身につけさせるかが大きな課題となります。

人のコミュニケーションは、年齢が高くなるにしたがって難しくなります。
つまり、小学校でのコミュニケーションは、中学校でのコミュニケーションの練習になります。
そして大学までの学校全体でのコミュニケーションは、社会でのコミュニケーションの練習になります。

そのため、小学校に通わないことで、コミュニケーション学習の初期でつまずくことになりかねません。
ホームスクールを実施する場合、保護者は、より意識的に子供を外の世界に触れさえるようにしましょう。

塾を上手に使って

塾の学習室ホームスクールで学力を維持、向上させるために、塾を有効利用してみてください。

塾のなかには、不登校の子供を受け入れたり、フリースクールを実施していたりするところがあります。
そのような塾は、ホームスクールの保護者と子供をサポートするノウハウがあります。

個別学習に対応してくれる塾もあります。

塾に通わせれば、ホームスクールを経験しても大学に通わせることができるかもしれません。

そして塾は「外の世界」なので、コミュニケーション力の獲得にも役立つはずです。

まとめ~いろいろな教育の形がある

学校に通うだけが教育ではありません。
小さな子供が「死ぬ思い」で小学校に通うくらいなら、ホームスクールのほうが何倍も「まし」です。

そして小学校は、どうしても「平均的な小学生」に合わせたカリキュラムにせざるを得ません。
平均から大きく離れた子供に対応できないことは、当然に起き得ます。 

平均から大きく離れることは、まったく悪いことではありません。
それは現代では多様性と呼ばれています。

子供がどうしても小学校に通いたくないと思っていて、「ホームスクールのほうが子供の幸せを大きくする」と保護者が考えたら、準備に取り掛かってみてください。

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